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I Dreamed a Dream 夢は札幌でーーエアスピネルのGⅡ札幌記念('17)展望

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'16年の3歳牡馬クラシック3冠レースのすべてに出走し、皐月賞4着→ダービー4着→菊花賞3着とGⅠに手が届かなかったエアスピネルは4歳になった今年、マイル路線へ転向しました。今春の目標だった安田記念(GⅠ 東京芝1600m)は2番人気の支持を受けたものの5着に敗れ、またもGⅠの壁に跳ね返される結果に。そのエアスピネルが休養明け初戦に選んだのはマイル戦ではなく、芝2000mの札幌記念(GⅡ)。無冠の素質馬が秋のGⅠ戦線に向けてどのようなスタートを切るのか、札幌記念は注目の1戦となります。

 

日本で繁栄するアイドリームドアドリーム牝系

エアウピネルの曾祖母にあたるアイドリームドアドリーム(I Dreamed a Dream)は、牝馬クラシック3冠を好走したエアデジャヴー(父:ノーザンテースト)、皐月賞と菊花賞の2冠を制したエアシャカール(父:サンデーサイレンス)といった活躍馬を産んだ名繁殖牝馬。さらに、エアデジャヴーの仔から2年連続で有馬記念3着と長く重賞戦線で活躍したエアシェイディ(父:サンデーサイレンス)、秋華賞馬エアメサイア(父:サンデーサイレンス)が出るなど、アイドリームドアドリーム牝系は日本で大きく繁栄を遂げています。エアメサイアの仔エアスピネル(父:キングカメハメハ)もこの名門牝系の出身です。

 

アイドリームドアドリーム牝系の特徴

アイドリームドアドリーム牝系のなかで、牡馬と牝馬クラシック3冠を好走したのはスピネルを含めて4頭。デジャヴー、シャカール、メサイアスピネルはいずれも3冠すべてのレースを走り、かつ掲示板内に好走しています。

 

4頭のクラシックにおける戦績

生年 馬 名 レース 着順
1995年 エアデジャヴー 桜花賞 3
オークス 2
秋華賞 3
1997年 エアシャカール 皐月賞 1
ダービー 2
菊花賞 1
2002年 エアメサイア 桜花賞 4
オークス 2
秋華賞 1
2013年 エアスピネル 皐月賞 4
ダービー 4
菊花賞 3

ケガすることなくクラシック3冠を走り切っていること、そして、コンスタントに好走しているのは素晴らしいの一言です。この戦績を見るだけでもアイドリームドアドリーム牝系のもつポテンシャルの高さがわかります。

上記の表で赤くマークした箇所は東京芝2400mで行われたダービーとオークスにおける成績を表し、デジャヴー、シャカール、メサイアはいずれも2着と「後一歩」で栄冠をつかむことができませんでした。

エアデジャヴーのオークスは、先に抜け出したエリモエクセルにゴール前まで追いすがったものの届かずに2着。シャカールのダービーは、無駄のない脚さばきで直線先頭に立ったところを河内騎手の渾身のムチに応えたアグネスフライトに差されての2着。メサイアのオークスは、こちらも俊敏な脚さばきでゴール前先頭に立ったところをシーザリオに差されての2着。

いずれも無駄のないキレイな脚さばきで、「おっ!」と思わせる伸びを見せたものの、直線の長い東京コースではあと一歩……足りませんでした。エアスピネルのダービーも直線をピッチ走法で抜け出したところをマカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティに差されての4着ですから、この牝系らしい敗戦と言えます。

 

小回り・内回りでこその機動力

小回り中山コースで行われた皐月賞をエアシャカールが、京都内回りコースの秋華賞をメサイアが勝ち、デジャヴーも中山1800mのGⅢクイーンS1着(当時は秋華賞トライアル)で高いパフォーマンスを出しているように、この牝系は内回り・小回りがベストの舞台です。

いかにも回転の速いピッチ走法のエアスピネルもこの特徴を受け継いでいて、クラシック3冠のなかでもっともチャンスがあったのは皐月賞。その皐月賞は4着と敗れたとは言え、1000m通過が58.4のハイペースを3、4番手につけ、4コーナー手前から捲る積極的な競馬をした結果で、エアスピネルのベストパフォーマンスは間違いなくこのレースでしょう。この牝系の長所も短所も知り尽くす武豊騎手だからこその強気な競馬。負けたのはサトノダイヤモンド、マカヒキ、ディーマジェスティといった世代を代表する馬たちですから、決して悲観する内容ではありませんし、この馬の「強さ」をはっきりと示した1戦となりました。

 

エアスピネル 4歳牡馬

父:キングカメハメハ

母:エアメサイア(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:笹田和秀(栗東)

新馬戦→デイリー杯2歳Sを連勝したときはクラシック候補生として大きな期待を集めました。単勝1.5倍に支持されたGⅠ朝日杯(阪神1600m外回り)では、直線スパっと抜け出して先頭に立ったところをしなやかなストライドで走るリオンディーズにゴール前で差し切られての2着。母エアメサイアがオークスでリオンディーズの母シーザリオに差し切られたシーンを思い起こさせる敗戦でした。朝日杯が以前のように中山芝1600mであれば、エアスピネルのピッチ走法がリオンディーズのしなやかストライドを凌いでいたのかもしれませんが……巡り合わせというのは時として「酷」なものです。

3歳クラシックは皐月賞、ダービー、菊花賞と完走し、すべて掲示板に入る走り。ダービーと菊花賞は距離の問題もあったとは言え、それ以上に直線の長いコースではこの馬の機動力を活かし切ることができませんでした。ベストパフォーマンスが出せる皐月賞は先行馬にとっては苦しいペースになり、3、4番手で強気に仕掛けたエアスピネルにとって不運な流れに……。

4歳となって迎えた2017年はマイル路線へ転向したものの、京都金杯1着→東京新聞杯3着→読売マイラーズC2着→安田記念5着とすべて直線の長いコース。着順をしっかりとまとめているあたりがこの馬の力を物語っているのですが、やはり、東京や京都・阪神の外回りコースではピッチ走法を活かし切ることができず歯がゆいレースが続きました。

 

ピッチ走法の馬にとってマイル路線は「イバラの道」

現在のJRAのレース体系では、古馬の芝マイルGⅠは春が安田記念(東京芝1600m)、秋がマイルCS(京都芝1600m外回り)の2つがあります。ただ、どちらも直線の長いコースのため、回転の速いピッチ走法よりもしなやかに身体を伸ばすストライド走法に向いた舞台。ピッチ走法はコーナーを俊敏に走れること、そして回転の速さで一気に加速できることが長所のため、内回り・小回りコースが適性としてずんどばです。芝マイルGⅠは直線の長いコースで争われることから、どうしてもピッチ走法のマイラーにとって「イバラの道」になってしまいます。

 

エアスピネルにとって札幌記念はベストの舞台

ピッチ走法のエアスピネルにとって、小回り芝2000mで行われる札幌記念は「ずんどば」な舞台です。小回りコースのなかでもコーナー距離の長い札幌競馬場は、この馬の俊敏な脚さばきにぴったりと合ったコース。今秋のGⅠ戦線へ向けて、しっかりと好結果を残したい1戦となります。昨年の皐月賞のように3コーナーからスピードを上げて捲る競馬ができれば、好走する可能性は十分に。直線で早目に先頭に立つレースが理想です。

 

武豊騎手からルメール騎手への乗り替わりは?

アイドリームドアドリーム牝系の「俊敏」で「無駄のない」脚さばきを活かすには、コーナーでしっかりとペースを引き上げられること、そして一気にトップスピードに乗せるレースが合っています。この牝系出身の馬に多く騎乗している武豊騎手からルメール騎手への乗り替わりはマイナス要素ではあるものの、後方から差すような競馬をしなければ……大きな不安はありません。

ルメール騎手も'13年のホープフルS(中山芝2000m)をアイドリームドアドリーム牝系出身のエアアンセム(8人気)で勝っていることから、このイメージで乗れれば好結果が出るはずです。折り合いの巧いルメール騎手よりもコーナーでポジションを押し上げてトップスピードに乗せるのが巧いデムーロ騎手の方がよりエアスピネルには合っているとは思いますが……。

 

I Dreamed a Dream(夢は札幌で)

GⅠという「夢」にいまだ手が届いていないエアスピネル。夢を花開かせるためのステップとして、GⅡ札幌記念では結果だけではなく内容も問われるレースとなります。

「I Dreamed a Dream(夢は彼方で)」

3歳時に果たせなかったGⅠの栄冠をつかむため、エアスピネルは札幌へ……。

レミゼラブルの劇中歌「I Dreamed a Dream」ではなく、武豊騎手と離ればなれになってしまったエアスピネルにはこの歌を送ります。

 

www.youtube.com

 

I Dreamed a Dream.

それが、I Dream a Dreamとなるような快走をエアスピネルに期待して。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。