オールカマー出走のPacific Princess牝系のモンドインテロは中山の高速馬場乗り切れるのか?

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秋のGⅠを展望する馬と夏の重賞を好走した馬とが集まる「GⅡオールカマー(中山芝2200m)」は、1着馬に天皇賞・秋の優先出走権が与えられる前哨戦。重賞は未勝利ながらOP特別3勝の実力馬モンドインテロ(5歳牡馬 手塚貴久厩舎)がオールカマーに出走し、秋のGⅠ路線を目指します。半弟のセダブリランテス(3歳牡馬 手塚貴久厩舎)が今夏にGⅢラジオNIKKEI賞を果たしたことからも、兄としては重賞タイトルを何としても手に入れたいところです。モンドインテロは数多くのGⅠ馬を輩出する名門Pacific Princess牝系の出身として、オールカマーを足がかりに「実りの秋」とすることができるのでしょうか?

 

名門Pacific Princess牝系の出身

名牝Pacific Princessは3冠馬ナリタブライアン、2冠牝馬ファレノプシス、ダービー馬キズナなど日本の競馬において数多くのGⅠ馬を出し、現在でも活力のある一大牝系を築いています。

モンドインテロは曽祖母にPacific Princessをもち、そこにFappiano×ブライアンズタイム×ディープインパクトがかけられ、今夏のラジオNIKKEI賞(GⅢ 福島芝1800m)を制したセダブリランテス(父ディープブリランテ)の4分の3兄。

モンドインテロと同じくPacific Princess出身で父ディープインパクト×母父ブライアンズタイムと言えば、昨年のラジオNIKKEI賞と今夏の七夕賞(GⅢ 福島芝2000m)を制したゼーヴィントが挙げられ、この2頭は配合のアウトラインが似通っています。

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モンドインテロとゼーヴィントの血統構成

モンドインテロとゼーヴィントは同じ牝系の出身かつ父と母父が同じのため、その血統構成(アウトライン)も似ています。

 

モンドインテロ

モンドインテロの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

ゼーヴィント

ゼーヴィントの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

モンドインテロの3代母とゼーヴィントの4代母がPacific Princessで、父ディープインパクト×母父ブライアンズタイムも共通。モンドインテロの母母父がFappiano(Mr. Prospector直仔)、ゼーヴィントの母母父がDayjur(母父がMr. Prospector)と全体の血統構成が似通っています。

2頭ともに、ディープインパクト産駒としてはキレる脚はそれほどでもなく、小回り・内回りを母系に入るRoberto的なパワーで捲るのが得意。ただ、母系にMr. Prospectorが入るためしなやかさもあり、それがコテコテのパワーに偏らずに、直線の長いコースでもソコソコに好走できてしまう要因なのでしょう。

 

ブライアンズタイム←Robertoのパワーに特化していないから……

ゼーヴィントもモンドインテロも名門牝系の出身らしい素質馬ですが、母母父がコテコテのパワーではない分だけ小回り・内回り専用というタイプではなく、コースをそれほど問わずに好走できます。小回りコースの札幌日経OPを連覇したモンドインテロが、直線の長い東京競馬場で行われたGⅡ目黒記念4着やGⅡアルゼンチン共和国杯5着に入線したり、京都外回りコースのGⅡ日経新春杯3着があるのも、パワー「だけ」に特化していないからだとも言えるのです。

モンドインテロやゼーヴィントは中山の芝をブライアンズタイム←Robertoのパワーとスタミナでゴリゴリと捲るのに特化していないからこそ、コース不問でソコソコに好走できるのですが、それだとどうしてもGⅠでワンパンチ足りなくなります。

 

中山芝2200mはモンドインテロにとってほぼベストの舞台

血統構成の似通ったゼーヴィントが中山芝2200のGⅡセントライト記念とGⅡアメリカジョッキーズクラブCをともに2着しているように、モンドインテロにとってもこの舞台はほぼベストです。母母父Fappianoのモンドインテロは母母父Dayjurのゼーヴィントよりもスタミナに寄った配合ですから、距離はもう少し長くてもOKとは言え、適性としてずんどば。

オールカマーで久しぶりにモンドインテロとコンビを組む田辺騎手が、調教で乗ったイメージをコメントしており、この馬の特徴をしっかりと捉えています。以下はサンスポZBAT!競馬に掲載されているものの引用です。 

「けいこは初めて。もっとバキューンと伸びると思ったけど思ったよりモタモタしていた。動かないと聞いていたからこんなところなんでしょうね。」

「札幌で強かったけど、中山のほうがよさそう。」

参照元:【産経賞オールカマー】モンドインテロ好調キープ - サンスポZBAT!競馬

田辺騎手らしい的確なコメント。「バキューン」と弾けないのはモンドインテロがディープインパクト産駒としてキレるタイプではないからで、このコメントからも田辺騎手の得意な「捲り」のレースになりそうですね。今年のGⅡ日経賞をシャケトラで制したときのように、田辺騎手らしい「捲り」を打てればモンドインテロにも十分にチャンスはあります。

シャケトラの素晴らしい捲りーー日経賞(2017年)回顧 - ずんどば競馬

 

モンドインテロの最大の敵は中山の高速馬場

秋の中山開催は、開幕週のGⅢ京成杯AH(芝1600m)の勝ちタイムが1分31秒6、2週目のGⅡセントライト記念を勝ったミッキースワローがマークした上り3Fが33.4とかなり時計の速い馬場になっています。セントライト記念は前日の17日に台風18号の影響を受け、中山は「重」まで芝のコンディションが悪化したのですが、18日にカラリと晴れたことで馬場があっという間に回復し、速い時計の出る馬場に変化しました。

 

中山競馬場は2014年以降、水はけが良い

中山競馬場は2014年の馬場改修時に「暗渠排水管」を設置し、それ以降は水はけが格段に良くなりました。今春、中山開催の最終日に行われた皐月賞が、前の週に重馬場まで悪化したにもかかわらず、レースレコードの出る高速馬場に変化したのは記憶に新しいところです。

1:57.8のレースレコードになった皐月賞(2017年)回顧 - ずんどば競馬

この排水性の向上によって、雨が降った後に日差しが出て路盤が急速に乾くと、それ以前よりも「時計の速い」芝に変わります。時計の速さは路盤に含まれる水分量の多少によるため、排水管によってJRAが想定する以上に芝が乾いてしまうと、「えっ!?」と驚くような高速馬場になってしまうのです。

 

オールカマーの前の金・土曜日に雨の予報

関東地方の太平洋側は金曜日から土曜日の午前中にかけて「雨」の予報が出ています。そして、現在(22日14:30時点)は東京は雨がシトシトと……。これだとJRAの馬場造園課は芝の育成を目的とした「散水」を控えるため、土曜日の午後からカラリと晴れれば、セントライト記念と同じような「高速馬場」が出現する可能性が高まりました。ペースが少しでも緩めば上り33秒台がスコーンと出てしまうような、そんな「馬場」になるのでしょうね。金・土とかなりの雨量があったとしても、その後に日差しが出てしまえば「あっ」と言う間に芝は乾きますから、日曜日の晴れ予報からするとオールカマーは間違いなく「良」馬場で行われます。

 

33秒後半〜34秒前半の上りはモンドインテロには厳しく……

モンドインテロは田辺騎手がコメントしたように「バキューン」と弾ける脚を使えるディープインパクト産駒ではなく、器用さとパワーでズドンと「捲る」のが得意な馬ですから、レースの上りが34.0前後だとノーチャンス。さすがに、3歳限定のセントライト記念よりもオールカマーは後半1200mのペースも流れるのでしょうが、今のJRAの中朝距離重賞は前半ゆったりと入ることが多いので、怖いですね……。

オールカマーは有力馬のステファノスとタンタアレグリアが3〜4コーナーから捲るでしょうから、そこで1Fが11.5〜11.9のラップがゴールまでずっと続くような持続戦になればモンドインテロにもチャンスが出てきます。後はあまりにも馬場が速くならなければ……。日曜日の午前中の芝のレースで時計の出方はしっかりとチェックしておかないといけませんね。

 

まとめ

Pacific Princess牝系にディープインパクト×ブライアンズタイムがかけられたモンドインテロもゼーヴィントも中山芝2200mの舞台は適性としてずんどばです。半弟セダブリランテスが今夏に重賞を勝ったことから、モンドインテロにも重賞初制覇の期待がかかります。中山を捲らせたら現役屈指の田辺騎手のエスコートで、高速馬場を乗り越えられることができるのか、今からレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。