アルゼンチン共和国杯(2017年)はスワーヴリチャードとセダブリランテスの3歳馬に注目!ーー展望

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11月5日(日)、東京競馬場の芝2500mで行われるアルゼンチン共和国杯(GⅡ)は、ジャパンカップ(GⅠ・東京芝2400m)へのステップレース。昨年1着のシュヴァルグランはその後のジャパンカップで3着と好走しており、目の離せない1戦です。

今年は、ダービー2着スワーヴリチャードと3連勝でラジオNIKKEI賞を制したセダブリランテスの3歳馬が上位の人気に支持されます。この若さあふれる2頭は、神戸新聞杯1着からジャパンカップへと向かうレイデオロに続き、アルゼンチン共和国杯からGⅠへと向かうことができるのでしょうか?

 

3歳馬の2頭が人気の中心

今春のダービー2着馬スワーヴリチャードは菊花賞(GⅠ・京都芝3000m)を回避し、このレースから秋の初戦をスタートさせます。

デビューから3連勝と勢いのあるセダブリランテスも、予定していたセントライト記念(GⅡ・中山芝2200m)を回避してここへ。

3歳馬2頭ともに体調面での不安を抱えながらの出走。レースで力を発揮できるのかは半信半疑といったところでしょう。

 

スワーヴリチャード 3歳牡馬

父:ハーツクライ

母:ピラミマ(母父:Unbridled's Song)

厩舎:庄野靖志(栗東)

生産:ノーザンファーム

2月の共同通信杯(GⅢ・東京芝1800m)を制し、春のクラシックは皐月賞6着→ダービー2着の戦績を上げました。夏の休養が長引いたことで帰厩が遅れ、秋はアルゼンチン共和国杯からの復帰となります。

右回りのコースに較べ、左回りはレース運びがスムーズなスワーヴリチャードにとって、東京芝2500mは適性に合った舞台。3歳世代の牡馬トップクラスを引っ張ってきた素質馬が、初の古馬相手の重賞でどのような走りを見せるのでしょうか?

 

血統

ハーツクライ産駒はGⅠ4勝のすべて(✳︎)を東京コースで上げているように、活躍馬の多くは長い直線をストライドで駆け抜けるタイプと言えます。

*ハーツクライ産駒のGⅠ馬は3頭。勝ち鞍は以下の通りです。

ジャスタウェイ:天皇賞・秋

ワンアンドオンリー:ダービー

ヌーヴォレコルト:オークス

母ピラミマはJRAに出走した産駒のすべて(5頭)が2勝以上をマークしている好繁殖牝馬。スワーヴリチャードの全姉エマノンは現1000万下で活躍しています。

ハーツクライ×Unbridled's Songは5代アウトブリードの配合。晩成傾向を産駒に伝える父の血からも、この配合は馬体の完成が遅め。そのため、ワンアンドオンリーやヌーヴォレコルトのように、3歳春の時点でGⅠを勝つにはNorthern Dancerなどのクロスを重ねることが重要です。

5代アウトブリードのスワーヴリチャードが3歳春のクラシックを好走したのは、以下の2つの理由のどちらかによるものでしょう。

1. 今年の3歳牡馬のレベルが低い

2. スワーヴリチャードが掛け値なしの一流馬

1なのか2なのかは、この馬の今後の走りにかかっているのですが、所感としては1>2かなとも……。

 

トニービン譲りのストライド

 ハーツクライの母父トニービンとUnbridled's Songの母父Caroは、いずれもGrey Sovereignの血を引くため、5代血統表外で薄いクロスとなります。スワーヴリチャードが東京コースでストライドを伸ばすのは、トニービンと母系に入るRivermanの重厚なキレが伝わっているからです。

1周距離の長い東京コースであれば、緩い4コーナーから直線にかけてスピードをアップできるので、スローになっても対応可能なのがこの馬の長所。馬体がパンとすれば、末脚の持続力を活かした先行抜け出しのレースもできるようになるでしょう。

 

アルゼンチン共和国杯に向けて

皐月賞からマイナス12kgの馬体重で臨んだダービーの疲労が取れず、夏の休養が長引いたスワーヴリチャード。帰厩が遅れたことで、仕上がり面については不安が残ります。

左回り+直線の長い東京コースは、この馬にとってはベストの舞台。初の古馬相手となりますが、ジャパンカップを展望する馬は不在で、この馬にもチャンスのあるメンバー構成となりました。

初コンビとなるM・デムーロ騎手は、素早くトップスピードに乗せるのが巧みな騎手ですから、四位騎手からの乗り替わりによる不安はそれほどありません。

逃げ・先行馬が少ない組み合わせですから、好位のポジションを取り切れるなら、長い直線でスワーヴリチャードの重厚なキレ味を十分に発揮できるはずです。

 

セダブリランテス 3歳牡馬

父:ディープブリランテ

母:シルクユニバーサル(母父:ブライアンズタイム)

厩舎:手塚貴久(美浦)

生産:社台コーポレーション白老ファーム

セダブリランテスは中山ダート1800mの新馬戦でデビュー勝ちを上げると、続く500万下の早苗賞(新潟芝1800m)→ラジオNIKKEI賞(GⅢ・福島芝1800m)と連勝し、ここまで3戦3勝の成績。

蹄底の炎症によって予定していたセントライト記念を回避し、無理をせずに菊花賞を自重しました。これまで1800mのレースを3走したセダブリランテスにとって、2000m以上のレースは未経験。3F以上の距離延長に対応できるかが鍵になります。

 

血統

母シルクユニバーサルは日本の競馬で広く枝葉を伸ばしているパシフィックプリンセス牝系の出身。3冠馬ナリタブライアン、その兄でGⅠ3勝のビワハヤヒデ、2冠牝馬ファレノプシス、ダービー馬キズナを出した牝系は現代においても活力を保っています。

セダブリランテスの4分の3兄モンドインテロ(父ディープインパクト)は6勝を上げている現オープン馬。父がディープブリランテに替わっても、パワーとスタミナに富む重厚な走りは兄に通じるものがあり、瞬発力勝負よりも時計のかかるレースに向くタイプです。

ディープインパクト×ブライアンズタイムの配合からは昨年の皐月賞馬ディーマジェスティ、ラジオNIKKEI賞勝ち馬のゼーヴィントなど内回り・小回りを捲るスタミナとパワーに優れた馬が出ています。祖父がディープインパクト×母父ブライアンズタイムのセダブリランテスは、ゼーヴィントと同じパシフィックプリンセス牝系出身+相似の血統構成。馬のスケールや能力は別としても父母を通して伝わっている大まかな特徴はモンドインテロやゼーヴィントと同じだと考えられます。

 

アルゼンチン共和国杯に向けて

4分の3兄のモンドインテロが昨年のアルゼンチン共和国杯で4着と好走しているように、東京コースと距離に大きな不安はありません。ただ、セダブリランテスはパワーと器用さで勝負するタイプだけに、小回りの福島から直線の長い東京コースに替わってパフォーマンスを上げられるのかは「?」が付きます。

東京競馬場は2週続けて不良馬場まで悪化したことから、芝の傷みが残るコンディション。さすがに時計の速い決着にはならないでしょうから、瞬発力勝負に不安のあるセダブリランテスにとってはプラスです。

逃げ・先行勢が少ない組み合わせとなり、前々で流れに乗れるこの馬には展開面の利もあります。小回り向きの脚質ということもあって、東京コースであればスローがベスト。荒れた馬場を味方につけての好走に期待をかけたい1頭です。

 

レベルが不安視される3歳牡馬

今年の3歳牡馬は、朝日杯FS1着のサトノアレスや皐月賞2着のペルシアンナイトなど世代トップクラスであっても、古馬混合重賞では4着以下と苦しい戦いが続いています。

中距離路線はラジオNIKKEI賞2着のウインガナドルが新潟記念で4着と好走しているのみ。ジャパンカップに出走するレイデオロが古馬に通用するのかどうかを考える上で、アルゼンチン共和国杯の結果は大きな意味をもつと言えるでしょう。

3歳世代トップレベルのスワーヴリチャードが古馬相手の重賞で通用するのかどうか……手薄なメンバーですから、結果を求められる1戦となります。

 

まとめ

スワーヴリチャードとセダブリランテス、3歳の素質馬2頭が挑むアルゼンチン共和国杯。ジャパンカップに向けて、結果だけではなくレース内容も問われる1戦。この2頭がどのような走りをするのかに注目しましょう!

 

以上、お読みいただきありがとうございました。