ディープインパクト産駒が前傾ラップの1200m戦をぶっこ抜く!ーーCBC賞('17年)回顧

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7月2日(日)、開幕週の中京競馬場ではサマースプリントシリーズの第2戦GⅢCBC賞が行われ、スプリント路線に転向したシャイニングレイ(5歳牡馬高野友和厩舎)が2年間の休養から完全復活を告げる勝利を上げました。勝ちタイムは1分8秒0。

 

シャイニングレイ 5歳牡馬

レース前に突然降り出した大雨の中、前後半の1000mが33.2 - 34.8のハイペースを2番で追走したセカンドテーブルが直線グイグイと抜け出し、「水口騎手の初重賞制覇か!」となりかけたゴール前、大外から33.2の脚で伸びたシャイニングレイが捕らえて1着に入線。2着には最後まで粘り切ったセカンドテーブル、3着にも逃げたアクティブミノルが粘りこみ波乱の決着となりました。

'14年のホープルフルS以来の重賞2勝目を上げたシャイニングレイはこれで6戦3勝。屈腱炎による2年の休養から完全復活を遂げる勝利で、層の薄いスプリント路線に新たなスター候補として名乗りを上げました。

 

旺盛な前進気勢

2年の長期休養明け2戦目となった福島民報杯(福島芝2000m)は14着と大敗したシャイニングレイ。このレースでは1コーナーからかかってしまい強引にハナを奪うレースになったことで折り合いがまったくつきませんでした。

高野調教師はこの敗戦を受けて1400mの距離を試すことになります。シャイニングレイにとって初の1400m戦となった安土城Sは道中掛かる仕草を見せたものの、好位から抜け出して完勝。折り合いにそれほど気を遣わないスプリント路線への転向がズバッとハマった1戦だったと言えます。

1200mのCBC賞でも折り合いの難しさを見せていたように、今後はこの前進気勢をどのようにコントロールしていくのかがポイントになってくるでしょう。

 

1400mベストの馬なのに……

シャイニングレイは体型を見ても1400〜1600mの距離がベストのマイラー。マイラーが距離の短いスプリントのレースに出走した場合、前傾ラップになると追走に足を使ってしまうため、伸びてこれないのが一般的です。

ところが、33.2 - 34.8というハイペース(雨が降って滑りやすい馬場を考えても)を33.2の脚で差し切ってしまったのですから、シャイニングレイは「ここではモノが違う」という内容の勝利でした。

ディープインパクト産駒としては「しなやかさ」よりもパワーの勝ったタイプで、母シェルズレイの影響が強いマイラー。今回は雨によって緩くなった馬場も味方したのでしょうが、それにしても2番手から抜け出した2着馬を後方から一気に飲み込むというのは、スプリント戦においてはなかなかお目にかかれないレースぶり……1400mベストのロードカナロアがスプリントもマイルの安田記念もぶっこ抜いたときのことを思い出してしまいました……。

 

中京芝の1200mの不思議さ

今年のCBC賞は1着が追い込んだシャイニングレイ、2着が2番手から抜け出したセカンドテーブル、3着が逃げ粘ったアクティブミノルという結果。この決着は、昨年の同レースの1〜3着馬とまったく同じ決まり手です。

 

'16年 ラップ:33.8 - 33.4=1分7秒2

着順 馬 名 歳性 人気 通過順
1着 レッドファルクス 5牡 3 9 - 9
2着 ラヴァーズポイント 6牝 7 2 - 2
3着 ベルカント 5牝 2 1 - 1

 

'17年 ラップ:33.2 - 34.8=1分8秒0

着順 馬 名 歳性 人気 通過順
1着 シャイニングレイ 5牡 2 16- 16
2着 セカンドテーブル 5牡 13 2 - 2
3着 アクティブミノル 5牡 8 1 - 1

 

'16年は後傾、それに対して'17年は前傾ラップにも関わらず、1〜3着馬の通過順は同じになっています。また、昨年の7月開催の中京開幕週は逃げ・先行が有利な馬場コンデション、今年は外差しの利く馬場という違いがありました。

この2つのレースに共通していることは、レッドファルクスとシャイニングレイが不利な流れをものともせずにズバっと差し切ってしまったことです。その後のレッドファルクスの活躍からも、ここでは「モノが違った」という能力を見せたレースだったと言えますし、それは今年のシャイニングレイにも当てはまります。

シャイニングレイはパワー・マイラー「なのに」前傾ラップを豪快に差し切ったのですから、レッドファルクス以上の活躍を期待できる1頭です。

 

2、3着馬について

セカンドテーブルの主戦を務める水口騎手は騎乗技術やペースを読む力などに長けていて、「もっと騎乗数が増えても……」と思うのですが……初重賞制覇に後一歩だっただけに、悔しい敗戦となりました。セカンドテーブルは昨年の春にOP特別を勝ってからなかなか賞金を加算することができず、押せ押せでレースに使っていた疲れが休み明けのここ2戦の大敗につながっていたのでしょう。

上りのかかる前傾ラップ+1分8秒台前後の時計が好走できるゾーンのセカンドテーブルにとって、今日のレースはドンピシャだったと言えます。ここで賞金が加算できたのは今後のレース選択を考えると大きなプラスです。小回りコースもOKなので、サマースプリントシリーズも十分に視野に入れられますね。

ブリンカーを着用して積極的に逃げたアクティブミノルは、馬の行く気に任せてびゅんびゅんと飛ばしていた2〜3歳春の頃を思い出させるような走り。3歳の秋にセントウルSを34.0 - 33.8という後傾ラップで逃げ切り勝ちを上げると、大人しいレースぶりにモデルチェンジをし、そこから歯車が狂ってしまいました。やはり、前傾ラップでゴリゴリと先行した今回のレースが刺激になるはずで、今後のレースぶりにも注目したい1頭。

 

1番人気メラグラーナについて

雨が降って馬場が緩くなると、どうしても推進力がなくなってしまいます。メラグラーナの父Fastnet Rockはパワースプリンターですが、クッションの効いた柔らかい(馬場の硬度が低い)馬場はOKでも、雨などで緩んだ馬場を得意とする仔が出ていません。

メラグラーナは相変わらず筋肉のつききっていない馬体で、もう少しパワーがついてこないと一線級のスプリンターが相手の前傾ラップでは苦しいレースになってしまいます。

秋のスプリンターズSまで残された時間はそれほどないので、馬体の成長を祈りながら次走のパドックを待ちたいところですね。

CBC賞('17年)展望ーーザクロ(メラグラーナ)はいつ熟すのか? - ずんどば競馬

 

◎ラインスピリットについて

前走から+2kgの馬体重で、「もう少し増えてもいいかな……」というパドック。レース前に雨が降り始めた時に「あ〜、ここで雨が降るのか……」と肩を落としました。

レースは好スタートからアクティブミノルの2番手の位置を取ろうとした時に、外からセカンドテーブルに寄られて森一馬騎手が手綱を引っ張っぱったところで、ラインスピリットのレースは終了。

今走は疲れが残らないレースでしたから、しっかりと馬体を回復してアイビスサマーダッシュへ向かって欲しいですね。このままだと人気もなさそうなので、また◎にしてしまう可能性が……。

 

まとめ

シュウジがゴリゴリと逃げたGⅢ函館スプリントSに続いて、サマースプリントシリーズの第2戦のCBC賞もハイペースになりました。もっとも驚いたのは、ディープインパクト産駒のシャイニングレイがこの前傾ラップを後方からぶっこ抜いたことです。スプリント路線に現れた新星がディープインパクト産駒にとって鬼門の「スプリントGⅠ」を勝つことができるのか? シャイニングレイの今後の走りに期待しましょう。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。