好配合のロンドンタウンは父カネヒキリに初GⅠをプレゼントできるのか?ーーチャンピオンズCに向けて

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ダートの国際GⅠ競争「チャンピオンズC」は12月3日(日)、中京競馬場1800mを舞台に行われます。今年はアウォーディー、コパノリッキー、ケイティブレイブなど7頭のGⅠ馬(地方交流のJpnⅠを含む)が顔を揃え、ハイレベルな1戦に。

そのGⅠ馬たちに立ち向かうのは、エルムS→コリアCと重賞を連勝している上がり馬のロンドンタウン(4歳牡馬・牧田和弥厩舎)です。父カネヒキリに初めてJRA重賞をプレゼントした孝行息子は、ここでGⅠのタイトルを獲得することができるのでしょうか?

 

この「美しき」ダート配合

ロンドンタウンの父カネヒキリは、JRAと地方交流を合わせてGⅠ7勝の名競走馬。種牡馬としては2014年に産駒がデビューし、ミツバ(マーキューリーC)とロンドンタウン(佐賀記念・エルムS・コリアC)が重賞を制覇しています。

カネヒキリは父フジキセキ×母父Deputy Ministerというニックス配合。この組み合わせからは昨年のチャンピオンズCを制したサウンドトゥルー(父フレンチデピュティ×母父フジキセキ)、ホワイトフーガ(父クロフネ×フジキセキ)、ミラクルレジェンド(父フジキセキ×母父Awsome Again)などの活躍馬が出ています。

)フレンチデピュティはDeputy Minister直仔、クロフネはフレンチデピュティの直仔

 

芝・ダート不問の名種牡馬フジキセキ

フジキセキは「日本競馬に革命を起こした」と言われるサンデーサイレンスの初年度産駒。デビュー戦から4連勝をしたものの、皐月賞を前に屈腱炎で引退し、「幻の3冠馬名」と称された名競走馬でした。

種牡馬としてもGⅠ馬を多く輩出。ダートではカネヒキリ、芝ではキンシャサノキセキやストレイトガールなどの活躍馬が出ています。父サンデーサイレンスのしなやかさよりも自身のパワーを産駒に伝えました。芝の重賞で活躍した仔の多くがマイル以下の距離に良績があるのも、このパワーによるものでしょう。

 

Deputy Ministerの素晴らしきパワー

Northern Dancer系を代表するパワー系種牡馬と言えば、北米のリーディングサイアーに輝いたDeputy Ministerがその筆頭。日本では、フレンチデピュティ(Deputy Minister直仔)を通してクロフネがサイアーラインを伸ばしています。

武蔵野Sとジャパンカップダート(現チャンピオンズCの前身)を圧勝したクロフネは、その重厚なストライドから芝・ダートを問わずに好走した名競走馬。ムチムチの馬体からあふれるパワーはいかにもDeputy Ministerを体現しており、この血が日本のダートにもフィットすることを証明した1頭です。

 

ロンドンタウンはIn Realityを増進した好配合

ロンドンタウンの母フェアリーバニヤンは自身がIn Reality3×4のクロスをもちます。In Realityはフジキセキの母母父にあたり、この種牡馬のパワーの源とも言える血です。

ロンドンタウン自身はIn Reality5×4・5のクロスとなり、カネヒキリ←フジキセキのパワーを増進しています。また、父系のDeputy Ministerと母系に入るStorm Birdを通してNorthern Dancerをクロスすることで、よりスタミナとパワーに優れたダート馬と言えるでしょう。

 

ロンドンタウンとドレフォンの血統的類似性

来春から社台SSでのスタッドインが発表された「北米最優秀スプリンター」のドレフォンは、父Gio Ponti×母父Ghostzapperという配合です。この種牡馬の父はStorm Cat系で、母父はAwsome Again(Deputy Minister直仔)×Relaunch(In Reality直仔)ですから、配合のアウトラインがロンドンタウンと似ていることがわかります。

ドレフォンは日本のダートにフィットする可能性の高い配合。シンプルに言えば、この種牡馬はカネヒキリにStorm Cat系の繁殖牝馬を配したのと似たような血統構成をしているのが特徴です。ドレフォンの5代血統表を見ていると、ロンドンタウンが重賞を勝つのも「ふむふむ」と納得できるものがあります。

 

このタイミングでドレフォンの導入は?

私は『X - File』で育った世代なので、「社台SSのドレフォン導入」のニュースが発表された「このタイミング」に「陰謀厨」の血がザワザワ……と騒ぎます。チャンピオンズCの直前にわざわざ……ザワザワ……。

ドレフォンは非サンデーサイレンス、かつ母系の奥にForli(名種牡馬Nureyevの母父、というより名牝Specialの父)とHabitatという日本の芝向きにカスタマイズできる血が入っており、産駒は芝・ダート不問の活躍を期待できる種牡馬。

ただ、産駒の主戦場はスピードとパワーでゴリゴリと押して行くダートになるはずで、オーソドックスな配合であればロンドンタウンのようなダートの一線級をポンポンと出すことになるでしょう。

初年度から質の高い繁殖牝馬を集めるためには、似通った配合をもつロンドンタウンのGⅠ勝ちがアピールとして手っ取り早く、ドレフォンの導入に呼応するような好走も……などと妄想してしまいますね。

 

ロンドンタウン 4歳牡馬

父:カネヒキリ

母:フェアリーバニヤン(母父:Honour and Glory)

厩舎:牧田和弥(栗東)

生産:松浦牧場

3歳春は昇竜S→伏竜SとOPで掲示板を外したものの、その後に1000万下と1600万下を連勝し、今年2月の佐賀記念で重賞初制覇を上げました。2走前のエルムSはレコードタイムでの快勝、前走のコリアCも楽勝しており、チャンピオンズCに向け好ムードで臨みます。

母父父Relaunchの影響が出た胴の長い馬体で、俊敏な反応はできないものの、高いレベルでスピードとパワーとスタミナを備えた中距離馬。Mr. Prospector=Gold Mine4×5の全兄妹クロスをもつことから、速い時計になっても末脚を削がれることなく追走できます。

 

チャンピオンズCに向けて

中京ダート1800mはロンドンタウンにはやや距離が短いものの、内枠に入ったのは大きなプラスです。この枠の並びであれば、テイエムジンソクやケイティブレイブなどの先行馬を行かせて、好位のインを取り切れるのも歓迎材料です。

パワーとスタミナに優れているので、エルムSのような高速馬場にならなくてもOK。今年は逃げ・先行馬が少なく、3コーナー過ぎからペースの上がるレースとなり、アウォーディーやアポロケンタッキーなどが外から捲る展開になるのもインから抜け出したいこの馬にはプラスでしょう。

ダート一線級の馬たちとは未対戦ながら、前走のコリアCでは帝王賞2着のクリソライトを退け、2走前のエルムSはテイエムジンソクを差し切っていることから、ここでも大きな力の差は感じません。韓国への遠征となった前走から2ヶ月半の休み明けとなりますが、もともと間隔を空けても力を出せる馬なので、マイナスにはならないでしょう。

 

不安点は厩舎

ロンドンタウンを管理する牧田和弥厩舎は2011年に開業し、ここまでJRAの重賞を2勝。リーディング上位の厩舎ではなく、GⅠを勝ち切るだけの「厩舎力」を備えているのかは「?」が付きます。不安なのはこの点だけで、ロンドンタウンの充実度を考えると、厩舎の初GⅠ制覇も十分に。

 

まとめ

ロンドンタウンは北米のダート重賞を走っていてもおかしくないような好配合。それだけ、日本のダート路線のレベルも着実に上がっていることがわかります。この馬が父カネヒキリに初めてのGⅠをプレゼントすることができるのかに注目です。