チャンピオンズC(2017年)はゴールドドリームが勝利!ーーダート・チャンピオンの座に!

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「ジャパンカップダート」を前身とする国際GⅠ「チャンピオンズC」は12月3日(日)、中京ダート1800mを舞台に行われました。

レースは最内枠から逃げたコパノリッキーと2番手につけたテイエムジンソクが4コーナーから後続を離しにかかる展開。直線で2頭の「行った行ったになるのか!」と思われたところに、大外から1頭だけ伸びてきたのはR・ムーアのアクションに応えたゴールドドリームでした。

 

コパノリッキーと田辺裕信騎手

2014年フェブラリーSから3年半の間に積み重ねたGⅠ勝利は10を数え、ダート路線の中心的な存在となったコパノリッキー。GⅠ11勝目をかけて臨んだチャンピオンズCの鞍上には、この馬を初GⅠ制覇へと導いた田辺裕信騎手の姿がありました。

最内枠から好スタートを決めて1コーナーまでにハナを取り切ると、全体のペースを巧みにコントロール。田辺騎手が3コーナー過ぎからジワリと仕掛け、直線まで後続の動きを封じる完璧なレース運び。

ゴールドドリームに差されたものの、ゴール前100mまでコパノリッキーとテイエムジンソクの「行った行った」を演出したことことからも、レース全体を支配したのは紛れもなく田辺騎手だったと言えます。

 

コパノリッキーの揉まれ弱さと成長力

コパノリッキーの父ゴールドアリュールは母系に気難しいVaguely Nobleを引くので、産駒は多かれ少なかれ馬群のなかでの競馬が苦手です。もう有名な話ですが、この馬も逃げるか外目をスムーズに走れないともてる能力を発揮できません。

チャンピオンズCは最内枠を引いたため、選択肢としては「逃げ」か「追い込む」かの2択。前走のJBCスプリントでも出遅れたように、スタートが安定しない馬ですから、この1枠は不安な材料だったと言えます。

コパノリッキーはその不安を吹き飛ばす「逃げ」を打ち、7歳となった今でも大きな衰えがないことを示す今走の3着。ティンバーカントリー×トニービン×リアルシャダイとつながる母系の血は成長力も十分で、揉まれさえしなければまだまだ高い競走能力を発揮できます。

年内での引退が決まっているコパノリッキーは、ラストランとなる東京大賞典(JpnⅠ・大井ダート2000m)も引き続き田辺騎手が手綱を取ります。このコンビが有終の美を飾れるのかどうか、また、どのようにレースを組み立てるのかにも注目です。

 

テイエムジンソクと古川吉洋騎手

今年のチャンピオンズCで1人気に推されたのは今夏にOP特別を連勝し、前走のみやこSで初重賞制覇を飾ったテイエムジンソク。現在のダート中距離路線はホッコータルマエのようなチャンピオンが不在のため、GⅠ勝ちのある実績馬たちを尻目にこの馬がファンの支持を受けました。

テイエムジンソクのここまでのレースぶりは豊かなスピードで先行し、3コーナー過ぎから長く脚を使って後続の追撃を完封するもの。チャンピオンズCはコパノリッキーが絶妙なペースで逃げを打ったこともあり、2番手から抜け出すレースで2着と好走しました。

週中の展望記事でも書いたように、テイエムジンソクはアエロリットやミッキーアイルなど前向きな気性で先行する活躍馬が出るMy Juliet牝系の出身。脚を溜めてバキューンと差すよりも、スピードとパワーでゴリゴリと先行して味が出るタイプです。

 

古川吉騎手の騎乗は?

コパノリッキーを4コーナー手前から交わしてしまう積極的なレース運びをしなかったことから、「消極的だったのでは?」という意見もチラホラと見かけます。ただコレ、積極的に乗っていれば勝てたかどうかは不透明なだけに、判断が難しいところです。その理由は以下の2点。

1. コパノリッキーを交わしている

2. 差してきたのはゴールドドリームのみ

もし、逃げたコパノリッキーを交わせなかったのなら、ビュンと伸びる脚をもっていないテイエムジンソクの騎乗は「脚を余した」と捉えられても仕方ありません。また、結果として差してきたのはゴールドドリームのみですから、先行馬ペースの競馬になったことも事実です。

そもそも、ゴールドドリームが上り35秒台の切れ味をここで引き出せるのかは誰も分からなかったことなので、古川騎手がコパノリッキーを4コーナーで交わすような騎乗はできなかったでしょう。ただ、このレースでダート一線級の馬たちとの力関係もはっきりとしましたし、次からはより積極的な仕掛けができるはずです。

 

テイエムジンソクのベストの距離は?

父クロフネ、そして母系から豊かなスピードとパワーを受け継いでいるテイエムジンソクはその前向きな気性からも、2000mを超える距離で好走できるのかはまだ不安があります。現状では1800mの距離がベストと言えるでしょう。

この後、年末の東京大賞典を目指すようであれば、スタミナを振り絞るレースになったときに2000mの距離を克服できるのかが大きなカギを握ることになります。来年に向けて試金石となる1戦です。

 

ゴールドドリームとR・ムーア騎手

ゴールドドリームはマイラーなので、コーナー4つの1800m戦であれば、直線で速い上りを使って差せるレースが理想です。昨年は出遅れ+消耗戦だったこともあり、キレ味を活かしたいこの馬には不向きな流れでした。

この馬もコパノリッキーと同じゴールドアリュール産駒なので、揉まれずスムーズに外へ出せれば直線でバキューンと脚を使えます。今走はムーア騎手が直前まで仕掛けを我慢したのが好騎乗。もし3〜4コーナーから動いていたら、あの脚は引き出せなかったでしょう。

マイルの適性が高いコパノリッキーが3着に粘り込めるレースですから、マイラーのゴールドドリームにとってはシメシメの展開となりました。追走に脚を削がれないペース、直線の長いコース(コーナーで押し上げなくてもOKのコース)であれば、今後も高い競走能力を発揮できます。

 

フェブラリーSの連覇は?

チャンピオンズCのレース内容から、来年のフェブラリーSは「グリグリの◎」に押されることがほぼ間違いのないゴールドドリーム。ただ、ゴールドアリュール産駒が東京ダート1600mで好走するには条件があります。

フェブラリーSは1分35秒台の決着になるとゴールドアリュール産駒が好走し、34秒台の決着になるとSeattle SlewやA.P. Indyの血をもつ1400mベストのマイラーが好走するのがデフォルトです。そのため、雨が降って脚抜きの良い馬場になるようだと、ゴールドドリームにとっては割引です。

 

◎ロンドンタウンは15着の最下位に……

14着のメイショウスミトモが1着馬と0.9秒差ですから、今年のチャンピオンズCは各馬が大きく離されることなくゴールしたことがわかります。ロンドンタウンはメイショウからさらに0.9秒離されているので、力を出し切ったとは言えない敗戦となりました。

道中はスムーズに流れに乗ったものの、4コーナーから鞍上が激しく手綱を動かしても前に進もうとせず、ズルズルと後退……。パドックの雰囲気も良好だったので、この結果はう〜ん、と唸るしかありません。もし東京大賞典に出走するようなら、もう1度狙いたいですね。

 

その他の馬について

4着のケイティブレイブは福永騎手らしいソツのない競馬。直線で追い出されたときに内へかなりササッたため、前の2頭から離されてしまったのが痛かった……。ただ、直線だけでビュンと反応する馬ではないので、このペースであれば4コーナーからスピードを上げたかったところでしょう。そもそもが中距離馬ですから、1800mの距離でマイル適性の問われるレースだと苦しくなりますね。

5着のアウォーディーは前の2頭のペースに付き合ってしまい、昨年のようなスタミナをふり絞るレースにもち込めませんでした。この馬の理想は、残り5Fから12.0がずっと続くような流れ。11秒台半ばを2つ続けて差し切る脚はないので、この馬「らしい」5着だったと言えるでしょう。大きな衰えはないものの、条件が整わないと好走できないのは確かです。

6着のミツバは後方の外目の揉まれない位置を取れたので、直線で脚を使えました。能力を出し切る走りでしたし、松山騎手ももうこの馬を手の内に入れたと言えるでしょう。揉まれなければ力を発揮できるので、馬群がバラけやすい地方交流重賞だとよりチャンスが広がりますね。

 

まとめ

4歳馬ゴールドドリームがJRAの2つのダートGⅠを制覇し、ダート路線は世代交代の波が押し寄せてきています。この馬が今後のダート界を背負うチャンピオンとなれるのか、来年以降の走りが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。