デイリー杯2歳(2017年)は「2F特化戦」を機動力に優れたジャンダルムが勝利!ーー回顧

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朝日杯FSへのステップレース「デイリー杯2歳S(GⅡ・京都芝1600m)は、GⅠ馬ビリーヴの仔ジャンダルムが直線でインを鮮やかに抜け出し、2連勝を果たしました。

1人気のフロンティアは直線で伸びずに4着。2着には先行して抜け出したカツジ、3着に中団からレースを進めたケイアイノーテックが入線。それでは、このレースをふり返ってみましょう。

 

2Fに特化した瞬発力を問われたレース

デイリー杯2歳Sの行なわれた土曜日の京都芝は10Rから「良」に回復したものの、時計以上にややタフな馬場。それに従って、騎手は「前へ」の意識が乏しくなりました。

 

デイリー杯2歳Sは2Fの瞬発力戦

スタートからダッシュ良く飛び出したカクリョウがハナに立ち、外から抑えきれないメガリージョンが外目から競りかける形に。

3番手以下はこの2頭の先行争いから距離を取って追走します。3コーナーから故障を発生したメガリージョンが後退し、2番手にカツジがポジションをアップ。

前半800mの通過が48.7ですから、残り600mを切ったところで、1人気のフロンティアがさすがに仕掛け始めましたが、レース全体のペースが遅く、瞬時に加速できる馬に有利な流れになりました。

デイリー杯2歳Sの公式ラップ

12.6 - 11.0 - 12.1 - 13.0 - 12.3 - 12.4 - 11.6 - 11.3

4コーナー手前から直線入り口にかけてもペースが上がらず(水色でマークした12.3 - 12.4)、2F11.6 - 11.3と瞬発力勝負。これだと、ストライドを伸ばして走るフロンティアはびゅんと反応することはできません。

1着ジャンダルムも2着カツジもファームにあまり伸びのない走りの馬ですから、2F勝負になればパフォーマンスはアップします。

カツジとケイアイノーテックは同じディープインパクト産駒ですが、体質の柔らかさは前者<後者なので、この2、3着の差は順当な結果と言えるでしょう。

 

1〜4着に入線した各馬の解説

1〜4着に入線した馬はすべて上位の人気に推されており、2人気のメガリージョンにアクシデントが起こったことと、1人気のフロンティアが馬券圏内を外したことを除けば、レースとしては平穏な結果となりました。

参照記事

1〜4着の馬については、週中に詳しい展望記事を書いていますので、よければそちらもご覧下さい。

GⅡデイリー杯2歳S(2017年)に出走するフロンティア他、1〜5人気の5頭をズバっと解説!ーー展望 - ずんどば競馬

 

ジャンダルム 2歳牡馬

父:Kitten's Joy

母:ビリーヴ(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:池江泰寿(栗東)

ビリーヴの仔は母も管理した松元茂樹厩舎に預けられることが多いのですが、この馬は池江寿厩舎に入りました。

新馬戦を観てもわかるように、スローからの上り3F勝負になると強さを発揮するタイプ。Sadler's Wells直仔ながら早熟なマイラーだったEl Pradoらしいパワーと機動力が現れた走法ですから、今回は適性にあった展開になったと言えます。

 

血統

母ビリーヴはサンデーサイレンス直仔ながら、高松宮記念とスプリンターズSのGⅠを制した短距離馬。その母グレートクリスティーヌがNorthern Dancer×Icecapade2×2(✳︎)という濃いクロスに加え、似たような血統構成をしている父Dnzigと母Great Lady Mの配合により、コテコテのパワーとスピードが詰め込まれています。

✳︎この2頭の種牡馬は父Nearctic×母父Native Dancerが共通

ビリーヴの仔は祖母グレートクリスティーヌの影響が強いスピードタイプに出ます。ジャンダルムもその例に漏れず、母系のパワーと祖父El Pradoのイメージ通りの機動力型です。

Kitten's Joy産駒は、父のもつSir Ivorを刺激するとダッシングブレイズのような東京コースでびゅーんとキレるタイプになり、Robertoを刺激するとパワータイプが出ます。ジャンダルムはRobertoを活かす形なので、しなやかにキレるタイプではありません。

 

今後に向けて

急坂+小回り・内回りのマイル戦に向くので、ベストコースは阪神芝1400mと中山芝1600m。デイリー杯2歳Sのように上り特化のレースになれば、直線の長いコースでもOKでしょう。

朝日杯FSは阪神外回りコースなので、上り特化にならないと苦しいレースに……。GⅠ級なのかは「?」がつくものの、この時期に重賞を制覇したのですから、4分の3姉のフィドゥーシアよりも素材としては上。

JRAのマイルGⅠはすべて直線の長いコースで行われるので、機動力タイプのジャンダルムには受難の道のりになります。小回りのBCマイルは向くレースです。

 

カツジ 2歳牡馬

父:ディープインパクト

母:メリッサ(母父:ホワイトマズル)

厩舎:池添兼雄(栗東)

母メリッサのピッチ走法をそのまま受け継いだ、小気味の良いフットワークが大きな特徴のカツジ。ジャンダルムが好走する質のレースだと、この馬もセットで走ります。

しなやかにストライドを伸ばすタイプではないので、今後は直線の長いコースよりも小回り・内回りで機動力を活かすレースをしたいところですね。

 

3着ケイアイノーテックと4着フロンティア

レース映像を観るとよくわかりますが、このレースの3、4着馬は先着した2頭よりもストライドがキレイに伸びるので、その分だけ「俊敏な加速」ができません。

ケイアイノーテックもフロンティアも残り3Fのすべてが11秒台になるような瞬発力勝負であれば、まだ対応できたのかも……。ただ、このレースだとパワータイプのピッチ型に負けてしまいます。

3着と4着の差はディープインパクトとダイワメジャー産駒の差(*)とも言えるかもしれませんし、1800m寄りのマイラーに見えるフロンティアにとって、この展開は厳し過ぎたと言うしか……。

ダイワメジャー産駒は直線が平坦の京都だとキレ負けのおそれがあります。

 

負けたからこそわかることがある

ダイワメジャーの代表産駒メジャーエンブレムは、スローのアルテミスSでデンコウアンジュに差し切られてしまったことを糧に、GⅠ阪神JFを制しました。

主戦のルメール騎手はあの敗戦があったからこそ、GⅠで強気の先行策を取れたわけですし、フロンティアと岩田騎手のコンビも「負けたからこそわかり合える」ことがあります。

今走はレース内容として悲観するものではなく、朝日杯FSに向けて「経験」を積めたとポジティブに捉えましょう。ただ、フロンティアは3レースともにスローペースなので、持続戦でどれだけの脚を使えるのかが次走へのポイント。

持続戦になったときに「どれだけの脚を使えるのか?」を、デイリー杯で測りたかったというのが本音でしょう。次走におけるレースプランに注目ですね。

 

まとめ

1〜4着馬の順位はこの展開であれば順当な結果と言えます。各馬の血統と走法のイメージ通り。2歳牡馬のマイル路線は現在、ダノンプレミアムが一歩リードしており、デイリー杯2歳S組がそれに続くパフォーマンスだったかというと「?」が付きます。

これだけ後半2Fの特化戦だと、本当の強さはわからないので……。少しずつ朝日杯FSのメンバーも揃いつつあり、年末が楽しみです。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。