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第84回東京優駿('17年)回顧ーー分かり合えているからこそ

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東京優駿の前に行われた1000万下の青嵐賞(2400m)の勝ちタイムが2分23秒8。レース実況のアナウンサーが「古馬1000万下で23秒台の決着」と高いテンションで語っていたように、日曜日の東京芝は高速化していました。

素晴らしい天候に恵まれた東京競馬場は金曜日に降った雨も完全に乾き、土曜日よりも明らかに内枠有利なコンディション。ダービーのひとつ前に行われた「むらさき賞」も先行勢+内枠の決着になり、大外枠のアドミラブルは大丈夫なのだろうかと心配になったと同時に、「ダービーはどれが逃げるのだろうか?」という結論が出ないまま、気付けばソプラノ歌手の国歌斉唱が流れ、「こうした大舞台で逃げるというのは騎手としてもプレッシャーがかかるのだろうな」と考えているうちに第84回ダービーのスタートが切られたのでした。

アルアインとダンビュライトが好スタートを切ったその間から、スルスルとハナを主張したのは横山典騎手のマイスタイルで、「ノリだとスローに落とすだろうから、これならアルアインは楽々番手に行けるな」と楽観視していたのもつかの間、向こう正面で捲ったのがレイデオロとルメール騎手のコンビ。

アルアインの松山騎手はレイデオロとペルシアンナイトを先に行かせて外へ進路を取ったのを観ても、レイデオロの捲りによってペースが上がるのではないかと読んだのでしょうが、逃げる横山騎手と番手で抑えたルメール騎手の思惑が「スロー」で一致しているのですから、3〜4角にかけてのペースは緩みました。

ここで、ペースを落として折り合えたことがレイデオロの最大の勝因で、キングカメハメハ産駒のピッチ走法がどスローのまま余力を持って直線を向いたら、後続が差すのはどうしたって難しい……。俊敏な脚捌きで瞬時に加速して1着でゴール板を駆け抜けたレイデオロの姿はラブリーデイの天皇賞・秋を思い起こさせるもの。長い直線の東京コースでもスローになればピッチ走法が輝くのだということを「また」思い知らされた東京優駿。

第84回東京優駿はオークスに続いてルメール騎手+藤沢和雄厩舎のコンビの勝利となりました。勝ちタイムは2分26秒9。

 

マイスタイルの逃げで「超」のつくスロー

横山典騎手のマイスタイルがすんなりとハナに立つとスローにコントロールして向こう正面へ入ります。アルアインの松山騎手は折り合いに専念し、ダンビュライトの武豊騎手はインのポケットで我慢をする展開になりました。1000mの通過が63秒でかなりのスローな上、向こう正面でレイデオロが捲って2番手に上がった時点でもペースは上がることはなく……。

3〜4角にかけてもペースが上がっているようには見えず、これはレイデオロが瞬発力を活かせる展開になったな、と淡々とレースを観ることができました。

 

分かり合えているからこそ

オークスのソウルスターリングと同じように、レイデオロも新馬戦からルメール騎手が手綱を取り続け、向こう正面で動いたとしてもかかることなく折り合える自信があったからこそ、あの時点での仕掛けが可能だったのだと思います。

ダービーは乗り替わりが鬼門とよく言われますが、今年はその格言を噛みしめる結果のダービーに。乗り替わった戸崎騎手のペルシアンナイトは道中でコントロールできなかったように、やはりテン乗りというのはこの大舞台では大きなリスクになり得ます。

ルメール騎手は日本での通年騎乗を希望した理由の一つに「新馬からクラシックまで続けて馬に乗れること」を挙げていて、今年のダービーとオークスはまさにその言葉の通りに掴んだ勝利だっと言えますね。

 

レイデオロ

父キングカメハメハのレイデオロは母系にもサンデーサイレンスの血が入らない競走馬。'10年のダービー馬エイシンフラッシュも非サンデーサイレンスの血統構成をした馬で、奇しくもこの2頭のダービーの勝ちタイムはともに2分26秒9。

スローからの上り3Fの瞬発力勝負であれば、レイデオロやエイシンフラッシュの父父Kingmamboの加速力がサンデーサイレンス系を封じ込めることができるのだと改めて思い知らされたダービーに。

向こう正面で動いて、かつ3角でペースを落としたまま直線を向けたのがレイデオロの勝因。直線を向いてからの瞬発力勝負にしたい横山典騎手とルメール騎手の思惑が一致すれば、そこで無用なペースアップはなく、淡々とレースが進み中団以降の馬にとっては厳しい展開でした。

新馬戦からホープフルSまでの3連勝も瞬時に抜け出す競馬で、母父シンボリクリスエスの影響を受けた胴と脚の長い馬体はピッチ走法としてはしなやかさがあるものの、東京競馬場のGⅠではスローにならないと厳しいだろうなとダービーでは初めからノーマーク。

レイデオロが向こう正面で上がっていったことも、道中で11秒台が1度も記録されないような上り3Fの瞬発力勝負になったことも予想するのは難しい……ただ蓋を開けてみればこの馬が勝つ競馬としてはコレしかなかったとも言えて、東京優駿でドンピシャリのレースをして勝ち切るというのは騎手と馬ともに賞賛に値します。

 

2着スワーヴリチャード

スタートで出脚がつかずに中団からの競馬になりますが、内枠を利して先行勢の直後にポジションを取ります。レイデオロとペルシアンナイトが向こう正面で動いたところで、アルアインが外に進路を取り、そこを見逃さずに外へ進路を取ったのはさすが四位騎手。4角ではコーナーリングで上手に外に出して前を追いますが、上り3Fの競馬でレイデオロを出し抜くのは厳しかった……という2着。

ハーツクライ産駒のこの馬はスタートをポンと出られるようになって、前で競馬ができらようになった時が完成期。今日のレースを観るかぎりはまだ成長途上なのでしょう。

 

3着アドミラブル

スタートでいくらか出負けして道中は後方の外目で折り合いに専念します。パワーピッチの走法で一気に脚を使うのが合っている馬で3Fの瞬発力勝負は不向き。最後の直線はよく追い込んできたという3着で、ここではもてるポテンシャルは1枚上だったのではという内容でした。

3〜4角でペースが緩んだ時にM・デムーロ騎手は溜める競馬を選択しました。ここで動かなかったことで、この馬としては不得意な瞬発力勝負に持ち込まれてしまい3着に押し上げるのが精一杯という結果に。音無調教師はアンビシャスでもそうですが、「折り合い」を重視することが多いので、「かかってもいいから勝てるポジションに押し上げる」という戦法を嫌います。そのため、今回のデムーロ騎手の騎乗をアレコレ言うことはないのでしょう。

今後のことを言えば、ディーマジェスティと似たような血統構成をしていることから、おそらく内回り・小回りコースを一気に捲ってしまう競馬がベストで、そう考えると有馬記念はずんどばな舞台です。

 

4着マイスタイル

好スタートからハナを主張しきると、この馬が好走するためのスローペースを横山典騎手が見事に演出して4着に入線。スローから直線で加速をしていくレースが合う馬ですから、適性にぴったりとはまったペースメイクをした騎手はさすがの一言です。

後ろが突いて来ないのであればどこまでもペースを落としてしまおうという逃げで、弥生賞の再現になりました。もともと、馬の気分を損なうことなくペースを作るのが天才的な横山典騎手ですから、マイスタイルに合った騎乗をした結果のスローペースで、後ろを完全に封じ込めてかつ自身も4着に残るのはなかなかできない芸当です。もし、この馬が掲示板になれなかったとしたら、今回の逃げは「レースを壊しただけ」と批判されることは間違いなく、そのリスクを背負った上でのこの騎乗はさすがと言う他ありません。

 

5着アルアイン

ハナを切れるくらいの好スタートからマイスタイルを行かせて3番手につけます。レイデオロが上がってきた時に外へと進路を取ったので、3角過ぎから前へ押し上げるかなと思いましたが、松山騎手はポジションをキープすることを選択して動きませんでした。

4角ではスワーヴリチャードとの加速力の差で外を回らされてしまい、直線はバテてはないものの瞬発力勝負では分が悪く5着まで押し上げるのが精一杯。この展開では末脚の持続力で勝負するこの馬にとっては真逆の流れで、ペルシアンナイトの外を回って押し上げるリスクを取ることができなかったのは悔やまれます。

ダービーでも崩れずに走れたことから、今後はどのようなローテーションを組むのか……注目したい1頭です。

 

6着ダンビュライト

武豊騎手らしい好スタートで、逃げ馬を行かせてインのポケットへ入ります。結果としてはこれが仇となり、最後の直線まで何もできずに瞬発力勝負に巻き込まれてしまいました。

誰が逃げるか分からないダービーですから、この馬の逃げもあるかなと思ったのですが、さすがにそこまでは無理でしたね。

どうしてもこの枠に入るとインのポケットから抜け出す競馬になるので、マイスタイルにペースをコントロールされてしまうとダンビュライの良さである末脚の持続力が活かせない展開に。

ストライドで走る馬で、ダービーでも大きくは崩れませんでしたから、京都の外回りで行われる菊花賞もチャンスはある馬です。

 

7着ペルシアンナイト

折り合いの上手い戸崎騎手があれだけ制御できないというのは、この馬にとってこのペースはかなり厳しかったのでしょう。ダービーでテン乗りというのはどうしても手探りの状態で乗るわけですから、難しいものです。

混戦と言われたレースだからこそ、テン乗りのリスクがモロに出てしまったという敗戦だったと思います。それでも7着ですから力は確かで、ハービンジャー産駒初のGⅠ制覇に向けて今後も期待したい1頭です。

今日のレースだけでは判断はできませんが、前向きな馬なので距離が延びる菊花賞でどうかは「?」がつきます。秋に阪神芝2400mの神戸新聞杯をクリアできるのなら……というところでしょう。

 

この他の馬

内枠のサトノアーサーは川田騎手らしく出していく競馬で中団につけましたが、四方を囲まれてしまい動くに動けずの10着。中団のインを取りに行った結果、このスローペースで包まれてしまい力を出し切ることはできませんでした。ただ、勝ちに行く競馬をしたわけですから、この敗戦は致し方なしでしょう。

サトノアーサーと同じように出して行ったベストアプローチも中団で動けずに9着。こちらもリスクを取って中団につけたので……。

 

まとめ

終わってみれば、ダービーもオークスに続いてルメール騎手と藤沢和雄調教師のコンビ。レイデオロとソウルスターリングは新馬戦からコンビを継続していたことも同じでした。

大舞台では、馬と騎手がお互いに分かり合えているからこそ、向こう正面で前に取り付いてもかからずに折り合える自信をルメール騎手はもてたのだと思います。

レイデオロは「走ることが好きで、どこまでも行ってしまう」と藤沢調教師がこの馬を評していましたが、走るのに前向きな馬を繊細に折り合わせるのはさすがの技術で、緩急自在に動ける馬と騎手の総合力で掴んだダービー。

 

今年もダービーが観れて本当に良かった。来年もまた東京優駿が観れますように。

 

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