優勝馬にマイルCS(GⅠ・京都芝1600m)への優先出走権が与えられる「富士S(GⅢ・東京芝1600m)は、今春の安田記念(GⅠ・東京芝1600m)でも上位人気に推されたイスラボニータとエアスピネル、今年の牡馬クラシック路線を賑わせた3歳馬ペルシアンナイトとサトノアレスが出走し、今年もハイレベルなステップレースとなりました。
東京競馬場は先週からグズついた天気が続き、20日(金)の17時の段階で芝コースは「重」のコンディション。富士Sの行われる21日(土)も午前中から雨の予報が出ており、重馬場が回復する見込みはありません。東京競馬場の芝コースは排水性に優れているため、極端な泥んこ馬場になることは考えにくいものの、土曜日のレースは出走馬の「道悪」の巧拙が問われるでしょう。
東京競馬場の芝コースが重馬場になると
東京競馬場の芝レースは馬場が悪化するのか回復するのかによって、伸びるコースが異なります。どのコースが出走馬にとって走りやすいのかのパターンは大まかに3つ。
1. 馬場が乾いて回復傾向にある
東京競馬場の芝コースは排水性が良いため、日差しが出て気温が上がると急速に馬場が回復します。芝は内側から乾いていくため、馬場が回復傾向にある場合は「インコース」が有利です。
2. 馬場は回復しないが悪化もしない
雨が降った後、曇り空の下でレースが行われる場合、馬場は回復もしなければ悪化もしません。そのときは馬場の内外がイーブンの状態となります。
(✴︎その開催で伸びるコースがそのまま反映されやすい)
3. 雨が降り続き馬場が悪化する
雨が降り続いたなかでレースが行われると芝が悪化し、外のコースが伸びる馬場へ変化。ただ、コンディションが「不良」になると、外のコースが伸びたとしても「差し」が利きにくく、先行馬しか馬券に絡まないなど特殊な条件が発生することも……。各馬のポジション取りが大切になります。
10月21日(土)の東京競馬場は?
東京西部は20日(金)の夜から雨が降り続き、21日(土)も日差しが出ない予報。土曜日の天気だと芝が乾くことはほぼないため、インコース有利はないでしょう。午前から午後にかけて雨が降り続くようなら、どこかのポイントで外差しになる可能性もあります。芝レースの位置取り傾向はしっかりとつかんでおきたいところです。
富士S出走馬のなかで重馬場巧者は?
今年の富士Sに出走する15頭のなかで、重馬場に適性のあるピックアップしてみましょう。内枠から順に上げると以下の通りです。
▼重馬場巧者
サトノアレス
ペルシアンナイト
エアスピネル
ジョーストリクトリ
クラリティシチー
グランシルク
ミュゼエイリアン
クルーガー
(✴︎ピッチ走法+血統的にも重馬場が巧そうな3歳馬レッドアンシェルは、走ってみないとOKかどうかわからないので、ここでは除きます)
馬体と走法とこれまでのレースぶりから、上記の馬たちは重馬場がOK。土曜日の馬場がどこまで悪化するのかにもよりますが、泥んこになるようだとサトノアレスやミュゼエイリアンなど、パワー型で上りの脚に限界のあるタイプがスルスルと伸びてくるシーンも……。
人気のペルシアンナイトは馬場が渋るのはOKでもあまりにも悪くなり過ぎるとマイナス。ハービンジャー産駒はダートの成績が奮わないことからも、泥んこ馬場だと好走の可能性が低くなります。
エアスピネルとグランシルク、クルーガーは時計がかかるのはOKで、泥んこまで悪化したときは好走できるのかは未知の部分が……。父ステイゴールド×母父Dynaformer(Roberto直仔)のグランシルクは泥んこでもOKかもしれませんね。
今年の富士Sはスローペースを前提とした予想を
今年の富士Sは純粋な逃げ馬が不在で、どの馬が逃げてもスローにペースをコントロールするでしょう。マイルCSに向けてのステップレースですから、イスラボニータもエアスピネルも折り合いに気をつけて「どこまで脚を使えるか?」というプランで臨みます。
3歳馬を除けば、有力馬たちはお互いの手の内を知っている上でのレースとなるため、先行馬が逃げた馬を積極的に突ついてペースを引き上げるようなことは考えられません。騎手が重馬場を意識して、体力のロスを少しでも抑えようと控え気味の競馬をするなら、スローからの末脚勝負になる公算が大。
重馬場で行われた古馬マイル重賞として参考になるのは今春の京王杯スプリングC(GⅡ・東京芝1200m)。重馬場+スローペースになった京王杯スプリングCはスプリンターズSを連覇したレッドファルクスが馬群を割ってグイグイと伸び、上り33.7の末脚で1着。2着には大外枠からスムーズに先行したクラレントがしぶとく脚を使って粘りこみ、3着に外から追い込んだグランシルクが入線しました。今年の富士Sはこの京王杯スプリングCのイメージで予想します。
◎ミュゼエイリアン 5歳騸馬
3歳時にGⅢ毎日杯を制し、ドゥラメンテ、キタサンブラック、リアルスティールといった素質馬たちとクラシックで戦ったミュゼエイリアン。芝2200mのGⅡセントライト記念でキタサンブラックの2着と好走しているように、中距離路線で活躍していた実力馬です。
菊花賞8着以降、古馬になってからは馬券圏内に入っていませんが、1年近い休養と去勢したことなどが影響し、体調が整った状態で走ることがありませんでした。2走前の谷川岳S(OP・新潟1600m)はスムーズに先行すると、しぶとく粘っての5着。1800〜2000mの距離がベストな馬なので、マイル戦であればスローペースが理想です。
エルコンドルパサー産駒の母エールスタンスは、雨の中で行われたオークスを制したエリンコート(デュランダル)の半姉で、パワーとスタミナに優れた繁殖牝馬。スクリーンヒーローがかけられたミュゼエイリアンは母系に入るNureyevとRivermanの重厚なストライドがONになったパワー型。先行馬ながら直線の長いコース向きの走法ですから、体調さえ整っていれば重馬場+スローペースを利しての好走が期待できます。これだけ人気がないので、この馬に◎を。
◯グランシルク 5歳牡馬
前走の京成杯AH(GⅢ・中山芝1600m)は「善戦マン」グランシルクのツメの甘さを払拭する快勝。この馬の適性には合っていない、1分31秒台の好タイム決着になったレースを勝ち切ったのは総合力がアップした証です。東京コースは本質的には割引なものの、重馬場+スローペースで相殺できるでしょう。
GⅢ京成杯AH('17)は1分31秒6の好時計でグランシルクが重賞初制覇ーーレース回顧 - ずんどば競馬
母父Dynaformer(Roberto直仔)のパワーが表現されたマイラーで、内回り・小回り向きの捲り差しを得意とする馬。しなやかにストライドを伸ばすタイプではないので、直線の長い東京コースだとスローペースが理想です。重馬場もOKで、今春の京王杯スプリングCのようなレースができれば、好走の可能性ば十分にあります。
短期放牧を挟みながらゆったりとした間隔での出走も好感がもてますし、外寄りの6枠というのもコーナーでスムーズにスピードを上げたいグランシルクにはプラスです。田辺騎手とも手が合っており、大きなマイナスのないこの馬に◯印を付けます。
その他の有力馬
M・デムーロ騎手+池江寿厩舎+追分ファーム生産馬ですから、△ペルシアンナイトは55kgの斤量を克服できればここでも好走の可能性は十分。泥んこ馬場にならなければ「重〜不良」もこなすはずで、3着候補として。
GⅢ富士S(2017年)は重馬場適性のある3歳馬サトノアレスとペルシアンナイトに注目!ーーレース展望 - ずんどば競馬
3歳馬の△サトノアーサーは週中の展望記事でも書いたように、重馬場+スローペースがドンと来いの差し馬。初めての古馬重賞だった前走の函館記念は1枠からスムーズにさばけず、直線だけ脚を使っての6着ですから、悲観する内容ではありません。ルメール騎手を確保できなかったことと最内枠に入ったのが不安です。
△イスラボニータはしなやかなストライドで走る馬なので重馬場はマイナス。マイル戦であればスローの方がレースのしやすい馬で、大外枠というのもスムーズに走れることを考えればプラスです。ルメール騎手を確保したことからも3着候補としては外しにくく……。
△エアスピネルは放牧に出さずに自厩舎での調整が続いているのは「疑問」としか言いようがありません。ピッチ走法で走る馬で、東京コースのマイルであればスローがベスト。重馬場も苦にしないので好走の条件は整ってはいるものの、体調面と内枠の分で印を下げます。
△クラリティシチーはここまで人気がないなら3着候補として。この馬も東京コースであればスローがベストで、スムーズに先行できるなら。
買い目
◎ミュゼエイリアンから◯と△への馬連と、◎◯の2頭軸から△への3連複を。
馬連
12 - 11. 5. 1. 15. 6. 10
3連複
12. 11 → 5. 1. 15. 6. 10
まとめ
どこまで東京競馬場の馬場が悪化するのか……パワー型のミュゼエイリアンにとって恵みの雨となることを期待する富士S。マイルCSに向けて有力馬がどのようなレースをするのかにも注目ですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。