JRAは7月29日(日)から新潟、小倉、札幌競馬場の3場所開催がスタートしました。開幕週の新潟競馬場のメインを飾るのは、「直線芝1000m」で行われる日本で唯一の重賞「GⅢアイビスサマーダッシュ」。究極のスピード勝負を制するのはどの馬なのか、今からレースが楽しみですね。
直線1000mの重賞はスピードが問われるレース
アイビスサマーダッシュはJRAの芝重賞の中でもっとも短い距離で行われること、そしてスピードが落ちるコーナー部分がないことから、「究極のスピード」が問われるレースになります。ただし、スタートからガンガン飛ばせばOKというわけではなく、しっかりとペースを守らないと後半でバタバタになってしまうのもこのレースの特徴です。週中の記事で書きましたが、アイビスサマーダッシュの勝ち馬の上り3Fから計算すると前半の2Fは22秒前半で入るのが理想です。以下がアイビスサマーダッシュの過去5年の勝ちタイムと上り3F、前半2Fの表になります。
▼勝ちタイムと上り3F
年 | 馬 名 | 歳性 | 勝ちタイム | 上り |
16 | ベルカント | 牝5 | 54.1 | 31.7 |
15 | ベルカント | 牝4 | 54.1 | 31.9 |
14 | セイコーライコウ | 牡7 | 54.3 | 31.9 |
13 | ハクサンムーン | 牡4 | 54.2 | 31.9 |
12 | パドトロワ | 牡4 | 54.2 | 32.2 |
平均 | 54.18 | 31.92 |
▼前半2F
年 | 前半2F |
16 | 22.2 |
15 | 22.1 |
14 | 21.7 |
13 | 22.3 |
12 | 21.5 |
平均 | 21.96 |
アイビササマーダッシュの前半2Fの平均は21.96。勝ちタイムの平均が54.18ですから、レース上りの平均は32.22になります。
・勝ち馬のレース上り31.92<レースの平均上り32.22
上が意味することは、前半はゆったりと入って後半3Fでしっかりと脚を使えるタイプの馬が勝ちやすいということです。アイビスサマーダッシュは逃げ・先行という脚質にこだわらず、その馬自身に合ったペースで走らせることがもっとも重要なレースと言えます。
7月29日(土)に行われた閃光特別(3歳以上500万下)のタイムは?
アイビスサマーダッシュの勝ちタイムを予想する上でもっとも参考になるのが、29日(土)の9Rに行われた「閃光特別(3歳以上500万下 直線芝1000m)」です。まずは、勝ちタイムとレースのラップを見ておきましょう。
閃光特別
3歳馬アースミステリーは4枠から好スタートを切ると、2番手につけたグラミスキャッスルをを前に見る形でレースを進め、ゴール前で粘る2着馬をしぶとく交わしてゴール。
着順 | 馬 名 | 歳性 | 勝ちタイム | 上り |
1 | アースミステリー | 牡3 | 54.9 | 32.7 |
2 | グラミスキャッスル | 牝4 | 54.9 | 32.9 |
3 | チェルカトーレ | 牝5 | 55.1 | 32.8 |
昨年のこのレースで1着になったアースエンジェルがマークしたタイムが54秒8ですから、今年の馬場は去年とほぼ変わらないタイムが出ていることになります。上りがかかっているのは下級条件だからで、アイビスサマーダッシュになると後半の上りを詰めないと上位に入線することができません。
閃光特別の結果から、今年のアイビスサマーダッシュは54秒1前後の時計になることが想定できます。
直線1000mの特徴や人気上位馬の展望について
直線1000mの特徴や今年出走する人気上位馬については下の記事に書いていますので、よければご参照下さい。
JRAで唯一の「直線1000m」の重賞アイビスサマーダッシュ('17年)の展望とコースについての解説 - ずんどば競馬
夏の新潟開催が開幕!ーーコースと馬場の特徴をズバッと解説 - ずんどば競馬
予想
道悪になったり、強い向かい風のなかでのレースにならないかぎり、アイビスサマーダッシュの好走馬に求められるのはタイムです。まず、勝ち馬には前半2Fを22秒前半で走るダッシュ力と上り3Fを31秒台後半でまとめる能力が問われます。これをクリアできるスピード能力がないと、なかなか好走することが難しく……。
ここ6年は3連単が10万円を超えることはありませんから、ほぼ大きな波乱のないレースです。今年もおそらくフィドゥーシア、アクティブミノルなどの上位人気馬はソコソコに好走する可能性が高いと言えます。
◎ラインスピリット 6歳牡馬
CBC賞の回顧のときに「アイビスサマーダッシュへ向かって欲しい」と書いたラインスピリット。
ディープインパクト産駒が前傾ラップの1200m戦をぶっこ抜く!ーーCBC賞('17年)回顧 - ずんどば競馬
CBC賞はレース直前に降り始めた雨の影響を受けて15着と大敗。さらに2走前の高松宮記念で大きく減らした馬体は、3ヶ月の休養を挟んだにもかかわらず+2kgしか回復していませんでした。馬体を戻しながらの調整をした上での新潟遠征ですから、期待よりも不安が先に立ちます。
ただし、昨秋のルミエールオータムダッシュ(オープン 新潟直線芝1000m)でラインスピリットがマークした勝ちタイム54秒9は10月末の野芝+斤量57kgを背負ってのものとしては出色。もともとビュンビュンと飛ばすタイプの逃げ・先行馬ではなく、しっかりと自分のペースを守って上りの脚を使えたときに好走していることから、この舞台への適性はずんどばです。
岩田騎手+ルミエールオータムダッシュの内容が評価されて思ったより人気になっていますが、少しでも雨が降るとダメですし、馬体重が444kg以上に回復して出走できるのかも微妙……アイビスサマーダッシュでの走りをずっと観たかった馬なのでここは◎の印を。
◯シンボリディスコ 7歳牡馬
7歳で56kgの斤量というのは条件としては厳しいものの、まだそれほどレースの数を使っていない馬ですから、ここは何とか我慢して欲しいという期待を込めての◯です。一昨年のこのレースで56kgを背負って2着に好走していることから、単純に力は足ります。
シンボリディスコの不安点は伴騎手と加齢によるスピードの衰えの2つ。6〜8月の成績が(1 - 4 - 1 - 2)の夏馬ですから昨年のアイビスに出れていれば……と悔やまれますね。そうは言っても、このメンバーであれば2着には好走できるはずで、伴騎手に託します。
上位の人気馬について
アクティブミノルは前走CBC賞のときの坂路の追い切りで4F50.4秒の時計を出したときには「あ〜、これは直線芝1000m」は合うだろうなと思いました。「ミスター直線芝1000m」と言えるネロが同じく坂路で50秒を切る時計をいつも出しているように、栗東の坂路で速い時計を出せる馬はこの条件への適性をもっています。今回は大外枠に入ったことから、酒井騎手がハクサンムーンで勝ったときと同じくペースを守ってガンガン飛ばさなければチャンスも。CBC賞のラップを踏むのであればアウトですから……。
フィドゥーシアも大きな欠点はなく、前走の韋駄天Sと同じラップを踏めるのであれば勝ち負けにもち込んでもおかしくはありません。外枠に入ったダッシュ力のある先行馬が外ラチを取りにいくでしょうから、石橋脩騎手がどこまで前目のポジションを主張するのかが難しいですね。イオラニが無理やりフィドゥーシアの前を横切って行くようだと不安はあります。
ネロは58kgがアウト。ここで好走したらもう脱帽です。カルストンライトオ、パドトロワなど重い斤量を背負ってきた馬がことごとく苦しんでいるレース。斤量58kg以上の馬を買うという選択肢はナシです。
買い目
◎ラインスピリット→◯シンボリディスコの馬単を。雨が少しでも降ったり、ラインスピリットの馬体重が442kgを下回っていた場合は馬券は回避の方向でいきます。
馬単
4→7
まとめ
直線芝1000mは予想をするのは楽しいものの、オッズが厳しくなる傾向があるため、馬券を組み立てるのが難しいレースです。「これは人気が薄いのでは?!」とワクワクしているとそうでもなかったり……というわけで、高松宮記念→CBC賞に続いてアイビスサマーダッシュでも◎はラインスピリット。ここ2戦は馬場と体調面が整わなかったことが最大の敗因ですから、ここで改めて期待します。
皆様にとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。