ジャパンカップ(2017年)に出走するアイダホ、イキートス、ギニョール、ブームタイムの外国馬4頭を解説!

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「1着賞金3億円」の国際GⅠジャパンカップ(東京芝2400m)は今年、4頭の外国調教馬が参戦します。出走馬は以下の通りです。

2017年ジャパンカップ出走の外国調教馬

アイダホ 4歳牡馬(アイルランド)

イキートス 5歳牡馬(ドイツ)

ギニョール 5歳牡馬(ドイツ)

ブームタイム 6歳牡馬(オーストラリア)

(50音順)

欧州を代表する調教師A・オブライエンの管理するアイダホ、近年の日本にもその血統が次々と輸入されているドイツからイキートスとギニョール、14年ぶりにジャパンカップへの出走となるオーストラリアからブームタイムと楽しみな馬が揃いました。今回は4頭を1頭ずつ解説します。

 

外国調教馬の4頭

外国招待馬がジャパンカップを制したのは、2005年のアルカセットまで遡らなければなりません。それ以降に連対した馬はおらず、馬券圏内に入ったのは2006年3着のウィジャボードのみという状況です。

「ジャパンカップでは外国招待馬は買わなくてOK!」と言われるほどに、日本調教馬のレベルは上がっています。今年の外国馬はそれらを覆す好走を見せることができるのでしょうか?

 

アイダホ 4歳牡馬

父:Galileo

母:Hveger(母父:デインヒル)

厩舎:A・オブライエン(アイルランド)

今年、GⅠ27勝の大記録をマークした欧州の名門A・オブライエン調教師の管理馬。日本を知り尽くしているR・ムーア騎手が乗ることも大きなプラスです。

3歳時には英ダービー(GⅠ・芝2410m)3着、愛ダービー(GⅠ・芝2400m)2着と好走したものの、未だGⅠは未勝利。古馬になった今年はキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSで凱旋門賞馬イネイブルの3着、その後は精彩を欠くレースが続いています。

 

血統

アイダホの全兄ハイランドリールは、昨年の凱旋門賞2着、香港ヴァーズではサトノクラウンの2着と欧州トップレベルの中距離馬です。兄は英愛仏だけではなく、ドバイや香港でも好走しており、馬場をあまり問わない実力馬と言えます。

父Galileo×母父デインヒルの配合はソウルスターリングの父として知られるFrankelと同じで、コテコテの欧州的な血統。Galileo直仔は日本の芝にマッチしないこと、また兄よりもやや重厚さのある走り(✳︎)から、上りの速い競馬に対応できるかがキーポイント。

✳︎馬場コンディションがタフだった今年の凱旋門賞は、アイダホとハイランドリールの2頭が登録していたましたが、良馬場が希望の後者は回避しました。

アイダホの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

ジャパンカップに向けて

日本の競馬に慣れたR・ムーア騎手が乗るのは大きなプラスです。全兄のレースぶりからは速い時計の芝に対応できる可能性も……。ただ、上り3Fで11秒台前半のラップが2つ以上求められると苦しく、馬場状態が鍵になります。

 

イキートス 5歳牡馬

父:Adlerflug

母:Irika(母父:Areion)

厩舎:H・グリューシェル(ドイツ)

昨年のジャパンカップにも出走し、16番人気の低評価を覆す7着。上り2位となる34.4秒でインから伸び、4着のゴールドアクターとはタイム差ナシですから、もう少しだけ時計がかかれば……という内容でした。

今年は7着と敗れた凱旋門賞を除けば、(1 - 4 - 0 - 0)と安定した成績を残しており、昨年よりも成長していることは間違いありません。日本の芝にも対応可能な重厚なストライドで走る馬で、上りがかかれば好走できる下地は十分です。

 

血統

父Adlerflugは独仏で走り11戦4勝、独ダービーを勝った活躍馬です。父はNorthern Dancer3×4、Mill Reef4×4と強いクロスをもつため、アウトブリードな母Irikaと好相性。

Mill ReefやCaroの影響が出た細身+胴が長く、直線の長いコースでジリジリと脚を伸ばすように、この馬はストライドで走るタイプ。上りが34秒ソコソコなら対応でき、理想はストライドの活きる持続戦です。

 

ジャパンカップに向けて

昨年と同じ内の3枠に入り、ふたたび直線でインに突っ込めるシチュエーションが叶います。現在の東京芝は内外の伸びはイーブン(コースロスはある)なので、インが渋滞する恐れもなく、極端に上りの速い展開にならなければ昨年以上の結果も。

サトノクラウンはロングスパート戦+上りのかかる展開を得意としているため、キタサンブラックにプレッシャーをかけてレースが中盤以降で流れるのなら、イキートスにもチャンスがあります。また、もう1頭のドイツ馬ギニョールが逃げ馬なので、どのようなペースを刻むのかにも注目です。

 

ギニョール 5歳牡馬

父:Cape Cross

母:Guadalupe(母父:Monsun)

厩舎:J・カルヴァロ(ドイツ)

5歳になった今年、バーデン大賞とバイエルン大賞の独GⅠを連勝し、前走では先述のイキートスを退けているようにメキメキと力をつけてきました。

左回りを得意としていることから、右回りの凱旋門賞をパスしてジャパンカップに向けたローテーションを組んでいるのも魅力です。

欧州のトップ中距離馬はジャパンカップ→香港ヴァーズとアジアを巡るローテーションの馬が多いものの、右回りを避けてきたことからも香港ではなく、ここが大目標と言えるでしょう。

 

血統

父Cape Crossは2頭の凱旋門賞馬Sea The StarsとGolden Horn、ジャパンカップ3着の名牝ウィジャボードなどを出している名種牡馬。自身はマイラーだったものの、産駒は中距離のカテゴリーで多く活躍しています。

母Guadalupeは伊オークス(GⅠ・芝2200m)の勝ち馬。半妹グワダラハラ(父Acatenango)が現3歳チャレアーダを出すなど日本で繁殖生活を送っており、時計の速い芝もOKな血統。

ギニョールは自身がNorthern  Dancer4×4、Never Bend5×5、Sir Gaylord5×6などのクロスをもちます。ただ、Monsunなどのドイツ血脈が入るため、成長力は抜群。5歳になって本格化したのも納得です。

日本の芝を走るのに欠かせないしなやかさをSir Gaylordのクロスで補っていること、父Cape Crossもジャパンカップ3着のウィジャボードを出すなど実績があることから、ここで好走する可能性は十分な配合と言えます。

 

ジャパンカップに向けて

東京芝2400mは「逃げ」切りが難しいコースの1つ。昨年はキタサンブラックが見事な逃げを見せましたが、それをミナリク騎手が再現できるのかがカギを握ります。

ミナリク騎手は2014年アイヴァンホウ、2015年イトウとジャパンカップで騎乗。

血統的には日本の芝にも対応できる下地があり、ほとんどの日本馬が得意としない持続戦にめち込めれば、アレヨアレヨも十分に。ただ、「勝ち」を意識してペースを緩めれば、上りの速い決着になり苦しくなることも……。

2014年エピファネイアが制したジャパンカップのような平均ペースを作れるなら、キタサンブラックがプレッシャーをかけることもなく、イキートスとともに上位を伺える可能性は十分に。とにかく、どのような「逃げ」を演じられるのかが最大のポイントでしょう。

 

ブームタイム 6歳牡馬

父:Flying Spur

母:Bit Of a Ride(母父:Snippets)

厩舎:H・ヘイズ(オーストラリア)

今年のコーフィールドC(芝2400m)で初のGⅠタイトル手にした「遅咲き」の馬。9月以降5戦を消化するハードスケジュールながら、ジャパンカップへと駒を進めてきました。同馬を管理するH・ヘイズ調教師は1990年にベタールースンアップでジャパンカップを制しており、その手腕にも注目が集まります。

 

血統

父Flying Spurはデインヒル直仔の快速スプリンター。母父Snippetsもスピードに秀でた産駒を出す種牡馬で、ブームタイムは重賞3勝のヤングマンパワーの父スニッツェルと似たような配合をしています。

ブームタイムの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

スニッツェルの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

この馬はキャンベルジュニアやメグラーナなど、吉田和美氏が所有してそうな南半球産「風」で、血統構成からは中距離馬とは思えません。小回りや内回りをパワーで捲るキャンベルジュニアをもう少しパワー寄りにしたイメージで、直線の長い東京でスパっとキレるのかは「?」が付きます。

 

ジャパンカップに向けて

ギニョールに付いて行き、どこまで粘れるのか……というのが正直なところ。血統そのものは日本の芝にも対応できる下地があるものの、血統からは芝2400mがベストとは感じられず、外国馬のなかでもっとも苦しい戦いを強いられるのでは……と。小回りでパワーと粘り強さを活かしたい馬なので、瞬発力勝負も不向きです。

 

まとめ

外国招待馬4頭のなかでは、ドイツ勢は日本芝への対応と実績的にジャパンカップで好走できる下地があります。アイダホは日本の芝には不安があるものの、R・ムーア騎手+A・オブライエン厩舎のコンビに期待。ブームタイムは「どこまで……」というのが正直な印象です。

ドイツのギニョールはレース全体のペースを握る馬なので、どのような「逃げ」にもち込むのかが楽しみですね。キタサンブラックとサトノクラウン、レイデオロにとって有利な流れになるのかを考える上でもキーポイントになります。

2006年のウィジャボード以来となる、外国招待馬の馬券圏内はあるのか、4頭の走りに注目しましょう!

 

以上、お読みいただきありがとうございました。