JBCクラシック(2017年)に出走するJRA所属の全7頭をスバっ!と解説ーーレース展望

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11月3日(金)、3つのカテゴリー(✳︎)のダート・チャンピオンを1日の内に決める競馬の祭典「JBC(ジャパン・ブリーダーズ・カップ)」が、今年は大井競馬場を舞台に行われます。

「ダートのすべてが、ここにある。」

参照元:JBC特設サイト2017【トップページ】

 そのキャッチコピー通りに、JRAと地方所属の馬がチャンピオンの座を争う熱い1日から目が離せません。

✳︎

JBCクラシック:3歳以上ダート2000m

JBCスプリント:3歳以上ダート1200m

JBCレディスクラシック:3歳以上牝馬ダート1800m

格付けはすべてJpnⅠ

今回の記事では、JBCクラシックに出走するJRA勢7頭について解説します。

 

JRA所属の出走馬

2017年JBCクラシックは7頭のJRA所属馬が出走します。出走馬は内枠から順に以下の通りです。

1枠  1番:アウォーディー

3枠  3番:オールブラッシュ

4枠  5番:ミツバ

5枠  7番:グレンツェント

6枠  8番:サウンドトゥルー

7枠10番:アポロケンタッキー

8枠12番:ケイティブレイブ

JBCクラシック連覇を狙うアウォーディーは最内枠に、今夏の帝王賞馬ケイティブレイブは8枠とそれぞれ極端な枠に入りました。それでは内枠から順に1頭ずつ見ていきましょう。

 

アウォーディー 7歳牡馬

父:ジャングルポケット

母:ヘヴンリーロマンス(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:松永幹夫(栗東)

騎手:武豊

5歳の秋にオークランドRCT(1600万下・阪神ダート1800m)を快勝し、芝からダート路線へと転向。その後は2016年のJBCクラシック(GⅠ・川崎ダート2100m)まで6連勝を飾り、中距離ダート路線の主役の座に着きました。

中央GⅠ初制覇を目指したチャンピオンズC(中京ダート1800m)は手応え十分に直線で抜け出したものの、後方から鋭く脚を伸ばしたサウンドトゥルーに差し切られての2着。この敗戦から今年の帝王賞まで、掲示板内に好走するものの勝利からは見放されています。

2016年 東京大賞典:2着

2017年 ドバイWC:5着 帝王賞:3着

 

血統

父ジャングルポケットと母ヘヴンリーロマンスともに東京競馬場の芝GⅠを勝っており、アウォーディーも目黒記念4着と芝で好走した実績をもっています。

地方交流重賞6勝の半姉アムールブリエ(父:Smart Strike)、アメリカのクラシック3冠を完走した半弟のラニ(父:Tapit)とアウォーディーの妹弟はダートで活躍しました。

母ヘヴンリーロマンスはどのような種牡馬を配してもパワー型の仔を産む名繁殖牝馬で、これは母系にSadler's Wells×Ribotと欧州の重厚な血が入るからでしょう。英愛のリーディングサイアーに14回輝いたSadler's Wellsは、日本の速い芝への適性はありませんが、そのパワーとスタミナは子孫へと受け継がれています。

アウォーディーもパワー型で速い脚に欠けるタイプ。ダートが合っているというよりも、パワーとスタミナを求められる持続戦のレースで強さを発揮する馬です。

 

JBCクラシックに向けて

コースや体調面に大きな不安はありません。6月の帝王賞(JpnⅠ・大井2000m)以来のの出走となりますが、もともと休み明けを苦にしない馬。同馬を管理する松永幹夫調教師はラッキーライラックで重賞アルテミスSを制するなど、厩舎のムードも上がっています。

 

アウォーディーの不安点

アウォーディーの不安点は2つ。1つは最内枠に入ったこと、もう1つは昨年の東京大賞典から気の悪さを見せていることです。

 

1. 最内枠を克服できるのか?

3枠のオールブラッシュ、8枠のケイティブレイブと逃げ・先行馬が内に切り込んでくることが想定され、インに閉じ込められないように外目へ誘導できるのかがポイントです。速い脚を欠くアウォーディーにとって、内々で窮屈なレースになるのは避けたいところでしょう。

 

2. 気の悪さ

昨年のチャンピオンズCは直線で先頭に立った後、馬が「ソラ」を使って急ブレーキを踏んだため、サウンドトゥルーに差されてしまいました。また、昨年末の東京大賞典と今夏の帝王賞ともに、仕掛けられてからの反応がスムーズさを欠くもの。

気の悪さによって、もてる能力を発揮できていないことから、馬券圏内に好走したとしても、他馬に足元をすくわれる可能性も十分にあります。

 

大敗は考えにくい1頭

アウォーディーは大きな不安点を抱えているとは言え、実績や能力はこのメンバーでは最上位。インで包まれて進路を取れないなどがないかぎり、気の悪さを見せたとしても大敗は考えにくい1頭です。

 

オールブラッシュ 5歳牡馬

父:ウォーエンブレム

母:ブラッシングプリンセス(母父:Crafty Prospector)

厩舎:村山明(栗東)

騎手:C・ルメール

昨秋に1000万下→1600万下を連勝し、年明け初戦となったJpnⅠ川崎記念(川崎2100m)をアレヨアレヨと逃げ切っての勝利。全体的に手薄なメンバー構成だったとはいえ、単勝1.6倍の人気を背負ったサウンドトゥルーに快勝したのは立派です。

ダートの一線級が揃った前走の帝王賞は、スムーズに逃げて見せ場たっぷりの6着。3コーナー過ぎにクリソライトに捲られたものの、直線入口で踏ん張りを見せていましたし、力負けだとしても大きく悲観する内容ではありませんでした。

晩成傾向のあるウォーエンブレム産駒の5歳馬ですからまだまだ成長を見込め、JBCクラシックでの巻き返しがなるのかに注目です。

 

血統

ウォーエンブレム産駒は牡・牝によって特徴が大きく異なります。牡馬はシビルウォーやキングズガード、ウォータクティクスのようにダート重賞を、牝馬は阪神JFのローブティサージュや秋華賞のブラックエンブレムなど芝重賞で活躍。

また、ウォーエンブレムは強いクロスをもたない(アウトブロード)配合なので、牡馬は息の長い活躍を見せます。シビルウォーやキングズガードは、8歳という高齢になっても重賞戦線で活躍しました。

母ブラッシングプリンセスからはオールブラッシュ以外に目立った活躍馬は出ていませんが、祖母としてはJBCレディスクラシックにも出走するアンジュデジール、現1600万下クラスのアキトクレッセントなどの活躍馬を出しています。

オールブラッシュは母系に入るBlushing Groomの影響があるのか、ダート馬としては素軽い脚さばきをするので、時計の速い砂質+直線平坦のコースが適性としてはベストです。

 

JBCクラシックに向けて

4走前の観月橋S(1600万下・京都ダート1800m)は最内枠からインのポケットからの競馬で快勝していることから、オールブラッシュは逃げなくてもOKなタイプ。素軽いスピードで勝負する先行馬なので、スタミナを問われるハイペースの持続戦になると崩れる可能性が高くなります。

8枠のケイティブレイブは帝王賞で差して好走したことからも、ハイペースの先行争いにはならない公算が大。ルメール騎手も継続騎乗となるので、3コーナーから捲られないようなペースでの逃げであればチャンスも。この馬の瞬発力を活かせる展開にもち込みさえすれば、しぶとく脚を使える先行馬です。

 

ミツバ 5歳牡馬

父:カネヒキリ

母:セントクリスマス(母父:コマンダーインチーフ)

厩舎:加用正(栗東)

騎手:松山弘平

昨秋のOPブラジルCは横山典弘騎手を背に「大逃げ」を打ち、アポロケンタッキーやラニなどの強敵を相手に逃げ切り勝ちを上げました。2走前のマーキュリーC(JpnⅢ・盛岡ダート2000m)で交流重賞を初制覇。

前走のシリウスSは気の悪さを見せて8着と敗れましたが、ダート一線級の馬を相手にどのようなレースをするのかに注目です。

 

血統

ミツバの父カネヒキリは、JRAと地方交流重賞を合わせてダートGⅠ7勝の実績をもつ名競走馬。種牡馬としては2014年に初年度産駒がデビューしています。ロンドンタウン(4歳牡馬)が今夏のエルムS(GⅢ・札幌ダート1700m)で産駒としての初重賞制覇を飾り、ダート路線でますます目の離せない種牡馬です。

カネヒキリ自身は5代アウトブリードの配合で、母の特徴を引き出しやすい種牡馬と言えます。ミツバの母セントクリスマスはNorthern DancerとRaise a Native4×4のクロスをもち、カネヒキリとは好相性と言えるでしょう。

祖母ゴールデンジャックの父アフリートは馬群をイヤがる気性を伝えるため、ミツバが「逃げ」や「追い込み」と極端なレースをするのはこの血の影響によるもの。外目からスムーズなレースができるかがポイントです。

 

JBCクラシックに向けて

前走のシリウスSは極端に揉まれることはなかったものの、道中で気の悪さを見せて8着と敗れました。4枠に入ったことで、「逃げ」か「追い込み」の極端なレースをしなければもっている能力を発揮するのは難しい……。スムーズに外から追い上げられるように、やや遅目のスタートを切ることも考えられます。

今走は多頭数の競馬になりますが、6頭は地方所属なので馬群がバラける展開になるのはミツバにはプラス。東京コースでGⅠ馬のアポロケンタッキーを破っているように、噛み合えば高いポテンシャルを発揮できる馬ですから、「あっ!」と驚く好走に期待をかけたい1頭です。

 

グレンツェント 4歳牡馬

父:ネオユニヴァース

母:ボシンシェ(母父:Kingmambo)

厩舎:加藤征弘(美浦)

騎手:森泰斗

出世レースとして有名な3歳限定のダート重賞レパードS(GⅢ・新潟ダート1800m)を快勝し、この世代のダート路線のトッペレベルへと登りつめました。その後も古馬相手のオープン競走で好走を続け、年明け初戦となった東海S(GⅡ・中京ダート1800m)は古馬を撃破しての2つ目の重賞をゲット。

前走の平安Sと前々走のアンタレスSは58kgの斤量を背負い大敗をしていることから、精神的・肉体的な立て直しができているのかが今走の最大のポイントになります。

 

血統

父ネオユニヴァースは芝・ダートともに重賞レースを制す産駒を出しています。代表産駒には小回り中山のGⅠを2勝したヴィクトワールピサ。パワーに優れ、コーナーを器用に捲れるのが大きな特徴です。

母ボシンシェは目立った活躍馬は出ていませんが、Kingmanbo×Irish Riverと名血が重ねられている繁殖牝馬。

グレンツェントは母系から欧州的なパワーを引き、そこにネオユニヴァースがかけられたので、血統通りの捲りの馬に出ました。母系の奥に難しい気性を伝えるWild Riskが入り、スムーズな競馬ができるかがポイントになるでしょう。

 

JBCクラシックに向けて

ここ2走は58kgを背負っての敗戦。斤量が1kg減るのは馬体重が470kg台のグレンツェントにとっては大きくプラスです。

体調さえ整っていれば、アポロケンタッキーなどの実力馬と五分に戦えるだけの実力のもち主ですから、休み明け初戦となる今走は力が入ります。

JBCクラシックの行われる大井ダート2000mは直線の長い外回りコース。小回りを俊敏に捲りたいグレンツェントにとっては割引です。ただ、3コーナーからの捲り合戦になれば、この馬のパワーと鋭さが活きるシーンも十分に考えられます。

休み明けは苦にしませんし、ここ2走の敗戦から心身ともにリフレッシュできていれば……。地方を代表する森泰斗騎手の手綱さばきにも注目しましょう。

 

サウンドトゥルー 7歳騸馬

父:フレンチデピュティ

母:キョウエイトゥルース(母父:フジキセキ)

厩舎:高木登(美浦)

騎手:大野拓弥

全43戦中、掲示板を外したのはわずかに5回という安定感のある実力馬。1600〜2100mまでの距離をこなし、2015年東京大賞典、2016年チャンピオンズCと2つのGⅠ勝ちを手にしています。

3走前のフェブラリーSは苦手な芝スタートでリズムに乗ることができず8着と敗退しましたが、その後の2戦はしっかりと掲示板を捕らえる好走。ここに向けてしっかりと立て直しが図られました。今走は体調と展開が噛み合えば勝ち切ることも十分に可能なメンバーです。

サウンドトゥルーはストライドで走るので、大井の外回りコースはプラス。残り1000mあたりからペースが上がる持続戦になればチャンスも広がるでしょう。歳を重ねて1800mの距離がベストになっているフシがあり、スタミナを問われるようなハイペースだと苦しくなります。

 

血統

フレンチデピュティ×フジキセキの配合はフェブラリーSなどダートGⅠを7勝したカネヒキリを筆頭に、好相性の組み合わせです。サウンドトゥルーもカネヒキリと同じようにフレンチデピュティの父Deputy Ministerのパワーとフジキセキのしなやかさが表現されたストライドで、直線の長いコースがベスト。

カネヒキリも屈腱炎による1年半の長期休養を挟みながらも7歳まで息長く活躍したように、サウンドトゥルーもまだまだ衰えは見られません。

 

JBCクラシックに向けて

地方交流重賞だと中団からの捲りで勝負するサウンドトゥルーにとって、包まれる心配の少ない6枠は歓迎材料。コンスタントに力を発揮できる馬で、チャンピオンズCのように自身に適した流れになれば鋭い脚を使えます。

自分から動いてレースをつくることができないため、どうしても展開待ちになってしまいますが、いつでもきっちりと馬券圏内には入ってくる馬。ここはオールブラッシュの逃げイチのメンバー構成となり、ケイティブレイブとアポロケンタッキーが早目に動いてくれるのならチャンスも十分に。追走に脚を使い過ぎてしまう展開にさえならなければ、大きく崩れることは考えにくい1頭です。

 

アポロケンタッキー 5歳牡馬

父:Langfuhr

母:Dixiana Delight(母父:Gone West)

厩舎:山内研二(栗東)

騎手:内田博幸

4歳時にダートのOP特別を連勝するなど着実に力をつけ、昨年のみやこS(GⅢ・京都ダート1800m)で重賞初制覇。その勢いに乗って臨んだチャンピオンズCでも5着と好走すると、続く東京大賞典はアウォーディーを破る大金星を上げました。

今年はドバイワールドC9着→帝王賞5着→日本テレビ盃(JpnⅡ・船橋ダート1800m)と着実に調子を上げ、GⅠ2勝目を目指してここへ臨みます。

 

血統

父LangfuhrがDanzig直仔のマイラーで、母父Gone WestもMr. prospector直仔のマイラーながら、アポロケンタッキーは2000m以上のダート戦が(5 - 1 - 1 - 3)の中距離馬。

今春のNHKマイルCを2着と好走した3歳牝馬のリエノテソーロは、アポロケンタッキーの父と母をひっくり返したような配合をしています。

リエノはアポロよりもMr. ProdpectorやNorthern Dancerのクロスがうるさい分だけ早熟性とスピード色が強く出ています。この3歳牝馬が2歳時に交流重賞を連勝したのも納得です。

強いクロスをもたないアポロケンタッキーは母系にパワーとスタミナの血が多く入るため、中距離馬としての資質が発現していると考えられます。

 

JBCクラシックに向けて

アウォーディーを破った昨年の東京大賞典は、前後半の1000mが64.8 - 61.0の「超」のつくスローペース。アポロケンタキーは他馬を出し抜くように4コーナー手前でスパートし、直線入口で先頭に立つ積極的な競馬。持続力戦にも瞬発力戦にも強いものの、中距離馬なので前半で追走に脚を使うようなペースは不向きです。

外目をスイスイと捲るレースが得意で、馬群に揉まれずにスムーズな流れであれば好勝負が期待できます。今走は外目の枠に入ったことから、ポジション取りも苦労はしないでしょう。タイミング良く捲りが打てるのなら且つ可能性も十分です。

 

ケイティブレイブ 4歳牡馬

父:アドマイヤマックス

母:ケイティローレル(母父:サクラローレル)

厩舎:目野哲也(栗東)

騎手:福永祐一

ケイティブレイブはJpnⅠジャパンダートダービー(大井2000m)でゴールドドリームに先着する2着、レパードSもグレンツェントの2着に入り、4歳世代トップクラスの実力馬です。

今年は帝王賞で嬉しいGⅠ初制覇。出遅れ+後方から追い上げる競馬にもかかわらず、直線で鋭く差し切ったレースぶりは、これまでの先行スタイルからのモデルチェンジとなりました。

交流重賞を4勝しているように、素軽く粘り強い先行力もこの馬の武器の1つ。ストライドが大きいので、本質的には小回りコースよりも直線の長いコースがベター。今年のJBCクラシックの行われる大井2000m外回りは帝王賞と同じコースですから、ケイティブレイブにとっては願ってもない舞台です。

 

血統

父アドマイヤマックスはスプリントGⅠ高松宮記念を勝ったマイラー。ケイティブレイブはこの父よりも母系のサクラローレル×Be My Guestからスタミナとパワーを受け継いでいます。胴の長さもここに由来しているのでしょう。

父マイラー×母父中長距離馬の配合で、母系のスタミナとパワーで先行して粘り込む競馬が合っています。

 

JBCクラシックに向けて

今走はスタートで後手を踏まなければ、オールブラッシュを先に行かせて外目の2番手のポジションを取る公算が大きい組み合わせです。帝王賞を鮮やかに差し切ってしまったので、福永騎手がどのようなレース運びをするのかは読みにくいところ……。

前走は2番手から押し切りを図ったものの、アポロケンタッキーとサウンドトゥルーに差し切られてしまいましたから、前に行くのか後ろで控えるのかが五分五分になりましたね。

大井競馬場の外回りコースはホームストレッチが386mと地方競馬場の最長を誇り、フォームの大きなケイティブレイブにとってはプラスの舞台。差しに回っても好走可能なコースですから、ペースが流れてストライドを活かせる流れになればチャンスも十分にあります。

 

まとめ

JRA勢の7頭は実力伯仲の好メンバーが揃いました。アウォーディー、オールブラッシュ、サウンドトゥルー、アポロケンタッキー、ケイティブレイブの5頭は帝王賞の再戦。地方馬も含めたダートのチャンピオンに輝くのはどの馬なのか、今からレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。