キーンランドカップ(2019年)にはノーザンF生産馬2頭が出走!ーーノーザンFはスプリント路線を制圧できるのか?

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サマースプリントシリーズ第5戦「GⅢ・キーンランドC」は8月25日(日)、札幌競馬場の芝1200mで行われます。WAJS(ワールドオールスタージョッキーズシリーズ)に負けない、白熱したスプリント戦が繰り広げられることに期待しましょう。

 

スプリント路線の変化

昨年から今年にかけて、JRAのGⅠはノーザンファームの1人勝ちが顕著になっています。とくに今年の上半期は、ダートのフェブラリーSとスプリント戦の高松宮杯、ダービーの3レースを除くすべてGⅠをノーザンファーム生産馬が制するほどの独占状態。

ダービーを制したロジャーバローズは生産者こそ飛野牧場ですが、育成はノーザンファームが担当しており、ピュアな「非ノーザンファーム」の馬ではありません。となると、ノーザンファームの力が及びにくいカテゴリーは「ダート&スプリント」戦のみと言えるでしょう。

 

スプリント路線に変化が?

さて、上記のように「ノーザンファームの独占状態」とはなっていないスプリント路線に変化の兆しが現れています。

Twitterでツイートした北九州記念2着のディアンドルがまさにソレです。この馬は昨夏の中京芝1200mでデビューすると、その後はGⅠやクラシックには脇目も振らず、スプリント路線のみに出走し(5 - 2 - 0 - 0)と好成績を上げています。

もちろん、ディアンドルが桜花賞やNHKマイルCなどの3歳春のマイルGⅠに出走しなかったのは、高いスプリント能力を買われてのものだけではないでしょう(体調面や成長面を考慮したなど)。ただ、2〜3歳時から積極的にスプリント路線のみに出走させることで、ノーザンファームにさまざまなデータが蓄積されることは間違いありません。

 

テスト・ケース

ノーザンファームが現在の「GⅠの独占状態」を構築するのに、さまざまなトライ&エラーがあったことでしょう。

C・ルメール、R・ムーア、J・モレイラ、O・マーフィーなどの外国人騎手を積極的に登用し、セカンド・ドライバーとして石橋脩、北村友一騎手などを育てる。アーモンドアイのようにステップレースを挟まずにGⅠに直行する、有力馬のレースを使い分けるなども、その試行錯誤のひとつです。

スプリント路線におけるディアンドルも、ノーザンファームにとってはテストケースになるはずで、それは主戦となる騎手を固定していないことから伺えます。ここでテストされるさまざまなデータが、今後の「ノーザンファームによるスプリント路線の制圧」に大きな影響を与えることは間違いないでしょう。

 

現状はテストの要素が濃い

現状のスプリント路線においては、「ノーザンファーム生産馬を買っておけばOK!」とはなりません。もし馬券に活かせるとすれば、ノーザンファームがノウハウを蓄積する数年後となります。

私たちにできることは、「芝1200mのレースでノーザンファーム生産馬の独占」が生じる時期を見極められるのか、その1点だけがポイントとなるでしょう。

 

キーンランドCに出走予定のノーザンファーム生産馬は?

先にも述べたように、キーンランドCは「ノーザンファーム生産馬を買っておけばOK!」というレースではありませんが、先週の北九州記念を2着と好走したディアンドルの例もあるので、ノーザンファーム生産馬をチェックしておくのはプラスです。

今年のキーンランドCに出走するノーザンファーム生産馬はリナーテとデアレガーロの牝馬2頭。まずはこの2頭を見ておきましょう。

 

リナーテ 5歳牝馬

父:ステイゴールド

母:マルペンサ(母父Orpen)

厩舎:須貝尚介(栗東)

生産:ノーザンファーム

マルペンサの2番仔となるリナーテはステイゴールドを父にもちます。半兄サトノダイヤモンドのように2〜3歳から能力をフルに発揮することはなかったものの、昨年に1000万下と1600万下を連勝すると、5歳となった今年は京都牝馬Sと京王杯SCのふたつの重賞を続けて2着と好走し、バリバリのオープン馬として活躍しています。

リナーテの長所は兄譲りのしなやかなフットワークと揉まれてもOKな気性、そして小回りコースを苦にしない器用さを併せもつことです。前走のUHB賞(札幌芝1200m)を快勝したレースぶりからも、馬群からスッと抜け出すときのフォームはいかにも「マルペンサ」らしさを感じさせるものでした。

 

血統

リナーテの父ステイゴールドは自身も父も母も強いクロスをもたないアウトブリードな配合。細身の馬体としなやかな体質をもつ点はディープインパクトと似ています。

ステイゴールド産駒のGⅠ馬オルフェーヴル、ゴールドシップ、フェノーメノなどからも、ノーザンテーストのパワーをONにする配合が成功しており、母系からいかにパワーを取り込めるのかがキーポイント。

マルペンサがもつAlmahmoudの強いクロスは、その父Mahmoudがノーザンテーストの母Lady Angelaと脈絡し、ステイゴールドのパワーをONにします。リナーテの配合は母がNatalmaとRibotの強いクロスをもつフェノーメノと似ていることから、好配合と言えるでしょう。

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マルペンサはオルフェーヴルが配された3番仔のマルケッサだけがJRA未勝利となっています。ステイゴールド直仔のオルフェーヴルは自身がノーザンテースト4×3のクロスをもつため、クロスの濃いマルペンサに配するとパワー過多の産駒が出ます。

このことからも、マルペンサは5代アウトブリードの種牡馬と好相性だとわかるでしょう。

 

キーンランドCに向けて

C・ルメール騎手が乗れないのはマイナスも、武豊騎手を確保できたのはプラスです。リナーテ自身は気性的な難しさのあるタイプではないので、乗り替わりそのものは苦にしません。

コーナー距離の長い札幌コースは器用さの求められるコースですが、Halo3×4・5のクロス(俊敏性と器用さを伝える)をもつリナーテにとってはずんどばの舞台です。

時計の速い勝負になってもOKですし、後肢が緩くなりがちなステイゴールドの牝駒とあって、坂のあるコースよりも平坦がベストでしょう。現時点では大崩れのシーンがイメージしにくい1頭と言えます。

 

デアレガーロ 5歳牝馬

父:マンハッタンカフェ

母:スーヴェニアギフト(母父Souvenir Copy)

調教師:大竹正博(美浦)

生産:ノーザンファーム

今年の京都牝馬S(GⅢ・京都芝1400m)で重賞初制覇を飾ると、続く高松宮記念(GⅠ・中京芝1200m)は勝ち馬と0.5差の7着と健闘しました。1200〜1400mの距離であれば、一線級と相手とも差のない競馬ができるだけに、休み明けを克服できればチャンスも十分にあります。

 

血統

母スーヴェニアギフトはJRAに4頭のオープン馬を送り出した好繁殖牝馬。オープンまで出世した産駒はすべて1200〜1600mの距離で活躍しているのは、母がスピードとパワーを強く伝えるからだと考えられます。

デアレガーロはLow Sociaty≒Alleged Gift3×2の強いニアリークロスをもち、これが洋芝向きのパワーと小回り向きの器用さの源です。

古馬になってからもジワジワと成長しているのは父と母からHyperionの血を多く引くからでしょう。洋芝も苦にしませんし、札幌の芝1200mは血統の字面からもずんどばの舞台です。

 

キーンランドCに向けて

高松宮記念以来の出走となりますが、休み明けをそれほど苦にしないのはプラス材料です。大竹調教師+ノーザンファーム生産馬に池添騎手が乗るわけですから、これはもう「ブラストワンピース」のアレですよね!

高松宮記念でもスタートで大きく遅れたように、この馬は前半のポジショニングがポイント。少なくとも中団あたりで流れに乗れれば、好走のシーンも十分です。

 

まとめ

ノーザンファーム生産馬の主戦騎手と言えるC・ルメール騎手がタワーオブロンドンに乗ることから、「ノーザンファーム生産馬だから」という理由でリナーテとデアレガーロが好走できるとは限りません。ただ、少なくともマイナス面は少ないので、メンバー次第ではチャンスもありそうですね。

今すぐノーザンファーム生産馬がスプリント路線を独占することは考えにくいものの、いつかはその時代が来るはずなので、それをしっかりと見極められるかが鍵となります。