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GⅢ京成杯AH('17)は1分31秒6の好時計でグランシルクが重賞初制覇ーーレース回顧

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9月10日(日)、秋の中山開催開幕週に行われたGⅢ京成杯AHは、田辺騎手の手綱に導かれた1番人気のグランシルクがこれまでの詰めの甘さを払拭する捲り差しで完勝し、重賞初制覇を飾りました。2着に後方から脚を伸ばした11番人気のガリバルディ、3着に中団からグランシルクと馬体を併せて捲った6番人気のダノンリバティが入線。勝ちタイムは1分31秒6(良)。

 

1分31秒6の好時計でも後傾ラップに

今年の京成杯AHは前後半の800mが45.9 - 45.8と0.1秒の後傾ラップになりました。同じく1分31秒台の決着になった2013年は、45.2 - 46.6(1分31秒8)と前傾ラップになっての好時計ですから、今開催の中山競馬場はここ数年のなかでもかなり速い時計の出る馬場になっています。

 

エアレーション作業によるソフトな馬場にはなっていない?

ここ2年、秋の中山開催の開幕週はエアレーション作業によって、クッションの利いたソフト(柔らかい)な馬場になっているのがデフォルト。そのため、やや時計がかかり差し馬に優勢な馬場コンディションでした。ところが、今年は2013年の秋の中山開催に近い速い時計が出ており、ペースによって逃げ〜追い込みまで決まるイーブンな馬場へと変わっています。

秋の中山開催の馬場について考察した記事にも書いたように、JRAは今年の馬場をやや硬めに作ってきましたね。詳しい解説については、よければ下の記事をご覧下さい。

秋の中山開催開幕週はエアレーション作業によって2017年も「外差し」になるのか?ーー馬場考察 - ずんどば競馬

 

紫苑Sもスローペースで好時計をマーク

京成杯AHの前日、9月9日(土)のメインレースとして組まれた秋華賞トライアルの紫苑Sは、前半1000mの通過が61.3秒のスローペースにもかかわらず、勝ち時計は1分59秒8と2分を切りました。後半1000mが58.5秒、後半800mが46.2秒とマイル戦のようなラップになっており、いかにスローペースと言っても3歳牝馬限定戦でこれほど後半が速くなるのは、馬場コンディションによるところが大きいと言えるでしょう。

 

JRAが週中に散水をするかどうかに注目

速い時計が出るかどうかは、馬場に含まれる水分の量によって決まります。9月1日から8日にかけて、中山競馬場では3日を除いたすべての日で雨量が記録されたことから、JRAは芝の育成を目的とした散水を行いませんでした。レースの行われた土日は雨量が0mmなので、芝はより乾いた状態になっています。9日と10日の時計の速い馬場を受けて、JRAが積極的に散水を行うのかはチェックが必要です。もし、このまま芝の含水率が低下すれば、今春の皐月賞のようなレコードタイムのマークされる高速馬場になることもありえます。

 

京成杯AHのレース内容について

マルターズアポジーがいつも通りの好スタートからハナヘ(それにしてもこの馬のこの運動神経の良さは、体質の柔らかいミッキーアイルとはまた違って、父母から受け継いだパワーによるものなのでしょう)。ウインフルブルーム、マイネルアウラートが2、3番手につけ、ボンセルヴィーソは前にスペースを空けて好位のインを追走。早々に隊列が決まったので、マルターズアポジーはこの馬らしい逃げを打ちます。

田辺騎手のグランシルクは中団に構えると、2コーナーを過ぎたところでダノンリバティを先に行かせて外へ進路を取ります。このとき、田辺騎手は後ろを振り返って他馬の動きを確認しているので、もうこの時点で「外から捲る」と腹を決めたのでしょう。

マルターズアポジーは前半800mを45.8で通過すると、その後もペースを緩めることはありませんでした。58kgを背負ってこれだけのペースを余裕十分に走れるのですから、かなり馬場が良かったと言えます。グランシルクは3コーナーから仕掛け始めると、田辺騎手がもっとも得意とするスピードを落とさないコーナリングで直線半ばで先頭に立ち、2着馬を離しての完勝。これまでの詰めの甘さは何だったのか……と思えるほどの素晴らしい捲りでした。

 

1着:グランシルク

父ステイゴールド×母父Dynaformer(Roberto直仔)らしいパワーが表現された馬で、3歳時のNZT2着と今春のダービー卿CT3着からも中山をズバッと捲るのがもっとも合っています。適正とはズレている、直線の長い中京コースで行われた中京記念で2着に入ったように、今が充実期なのでしょう。若駒の頃から期待をされていた素質馬がここでやっと初重賞制覇を上げました。

これまで1分33秒1のもち時計しかなかった馬が、今走で1分31秒6をマークしたことからもかなり時計の出る馬場で、これに対応したのは立派です。今年の日経賞でシャケトラを見事な手綱さばきで勝利に導いたように、中山の芝を捲らせたら現役屈指の田辺騎手。戸田博文調教師の騎手選択がズバリとはまりました。

 

マイルCSに向けて

次走以降、グランシルクのローテーションがどうなるのかは未定ですが、富士S→マイルCSとなるようなら、その2戦ともこの馬の適正とはズレてしまいます。充実期の今ならある程度はこなしてしまう可能性も……。東京や京都の外回りであれば、ペースが流れるよりもスローの加速力勝負になった方がベターで、どちらかと言えば、京都外回り>東京という適性です。もし、東京コースの重賞でしなやかにキレたとしたら、マイルCSでも好走する可能性は高くなりますね。

 

2着:ガリバルディ

重賞2勝のマルカシェンク(父サンデーサイレンス)の4分の3弟で、ストライドでキレるタイプの馬です。イメージとしてはマイルCSを勝ったダノンシャークやエキストラエンドに近いディープインパクト産駒で、そう言えばこの2頭とも京成杯AHは2着でしたね。

本質的にはパワーと器用さを求められる中山マイル向きではなく、東京や中京や京都と阪神の外回りが適正としてはずんどばですが、ガリバルディのしなやか差しが届くくらいに今の中山の馬場は速いと言えます。紫苑Sも重厚なストライドでキレるディアドラが1着でしたね。

藤原英昭厩舎の管理馬ですから10回に4回は3着内に入るので、このレースに出走したガリバルディとトーセンデュークのどちらかは馬券圏内に入る可能性が高かったと言えます。

 

今後に向けて

この好時計での反動が出なければ、今後が楽しみになる好走でした。京都の外回りコースはずんどばの舞台ですから、マイルCSに出走が叶うなら楽しみな1頭。この馬はストライドでキレるので、ペースが流れてもOKですから、もし、もし、マイルCSにマルターズアポジーとロゴタイプがセットで出走するようなら胸熱なレースになります。

 

3着:ダノンリバティ

ヴァーミリアンやソリタリーキングといったダート馬を叔父にもち、ダートも走れるパワー体質の馬ですから、グランシルクと同じように中山のマイルを外から捲ったのはバッチリでした。コーナーのスピードで勝ち馬に劣ったのは致し方なしで、この馬の能力はきっちりと出し切ったの3着。

前走の関屋記念では直線で進路を探すのに手間取ったこともあったので、今回は外枠から中団の外目をスムーズに走れたのが結果として幸いしました。松若騎手は、スタートしてからインに潜り込もうとする素ぶりは一切見せず、捲りのタイミングだけを図っていた騎乗。今走はインが大渋滞したため、この外捲りもバッチリでしたね。

 

4着:マルターズアポジー

京成杯AHのレースラップは12.5 - 10.9 - 11.2 - 11.2 - 11.3 - 11.5 - 11.6 - 11.4で、ゴールまで残り200mの地点で勝ったグランシルクが先頭に立ったため、青色でマークしたラスト1Fを除けば、残りはすべてマルターズアポジーの記録したラップです。これだけのペースを58kgで作れたということはそれだけ馬場が良かったと言えますが、それにしてもこの素晴らしいペースには溜息が出ますね。

もちろん、今走はインが渋滞し脚を余した馬もいましたし、3着馬とも0.3秒離されてしまったので、1800mベストのこの馬にはやはりマイルのスピード勝負だといくらか分が悪いかなという敗戦となりました。これだけスッとハナに立てるのは抜群の運動神経によるもので、同じようなロケットスタートを切るミッキーアイルと比較してもマルターズのスタートの安定感は「異常」です。

競馬ファンにとってはレースの展開とペースを読み「やすく」してくれるありがたい存在の逃げ馬で、これからもこの馬が出走してくるレースは予想をするのが楽しみですね。

 

その他の有力馬について

3番人気のボンセルヴィーソはマルターズアポジーを先に行かせて、上手くインのポケットに入りました。4コーナーから直線にかけてスムーズに馬群をさばいて進路を確保しましたが、仕掛けられも反応がなくズルズルと後退しての11着。前半の入りが速すぎたのか、終始外からプレシャーを受ける形で馬群のなかでの追走になってしまったからなのか、敗因は難しいですね。少なくとも、休み明けで前半800mを46秒で追走するのはなかなかハードで、能力の有る無しにかかわらず息切れも止むなしと言えるでしょう。大きなフォームで走るので、本質的にはインのポケットよりは外目をスムーズの方が合っているタイプだとは思います。

 

◎ウキヨノカゼは14着 ◯オールザゴーは10着

ウキヨノカゼは……結果としては2コーナーからトーセンデュークに外に張り付かれてしまい、3〜4コーナーにかけても外に出すタイミングがなく、横山典騎手はインへ進路を取り、盛大なドン詰まり。今走のグランシルクの捲り脚からすると、スムーズに外に出せても2着だったとは思いますし、今回は致し方なしですね。レースのダメージはまったくなく、フレッシュな状態で次走に向かえるのでそこはプラスでしょう。今年のメンバーであればGⅠスプリンターズSも面白いかもしれませんね。

好スタートを切ったオールザゴーは中団のインで待機しての10着。ゴール板を過ぎても伸びていたところを見ても、直線でスムーズならもう少し上の着順に入れたかもしれません。前走よりもレース振りは良くなっていますし、今度は1800mのレースでゆったりと先行できれば好走のシーンも十分にあり得ます。しなやかに走る馬なので、次は直線の長いコースに出走するのなら……。

GⅢ京成杯AH('17年)は中団のインから捲れるウキヨノカゼに◎をーー予想 - ずんどば競馬

 

まとめ

京成杯AHは1分31秒6の好時計がマークされ、秋の中山開催はここ2年とはまったく異なる馬場コンディション。このまま雨も降らずに芝の含水量が低下すれば、今年の皐月賞のような高速馬場ができあがることも考えられます。「高速馬場の造られ方」については、よければ下の記事をご覧下さい。

'17年の皐月賞と'16年の高松宮記念を比較してーー高速馬場の造られ方 - ずんどば競馬

マルターズアポジーの逃げ、グランシルクの重賞初制覇と競馬の魅力を存分に味わえた京成杯AH。馬券は外れても観戦料としては十分に元が取れるものでした。皆さまにとってはどのようなレースだったでしょうか?

 

以上、お読みいただきありがとうございました。