GⅠ菊花賞はノーザンファーム生産馬が好成績? 京都競馬場は今週も重馬場に?ーーレース展望

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牡馬クラシック・レースの最後の1冠は京都芝3000m外回りコースで行われるGⅠ菊花賞。今年はダービー馬のレイデオロが神戸新聞杯をステップにジャパンカップへ向かい、確たる主役が不在と言われています。セントライト記念2着から菊花賞に参戦する皐月賞馬アルアインは3000mの距離が不安視され、神戸新聞杯2着のキセキ、セントライト記念1着のミッキースワローなど春のクラシックに乗れなかった馬たちが上位の人気に推される混戦模様。

今年の3歳牡馬は皐月賞に牝馬のファンディーナが参戦したことからもわかるように、全体的なレベルに疑問符がつくメンバー。また、頭一つ飛び抜けた馬もいないため、どの馬にもチャンスがあると言えます。混戦模様の菊花賞を勝つのはどの馬なのでしょうか?

 

クラシックは社台系ファームの生産馬が強い?

菊花賞トライアルのセントライト記念(GⅡ・中山芝2200m)は1〜3着をノーザンファーム生産馬が独占し、同じくトライアルの神戸新聞杯(GⅡ・阪神芝2400m)は1、3着にノーザンファーム生産馬が入線する結果になりました。

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桜花賞から秋華賞まで、すでに行われた5つのクラシック・レースもノーザンファーム生産馬の活躍馬が目立ち、今年のダービーは1〜3着を独占。先週の秋華賞もノーザンファームのディアドラとリスグラシューがワンツーを決めています。

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生産者にとってクラシックはGⅠのなかでも特別な舞台ですから、レースに向けて多くのリソース(資源)を競走馬に傾けることのできるメジャーな生産者が好成績を上げるのは自然なことです。以下は2017年のクラシックで1〜3着に入線した馬の生産牧場をまとめた表になります。

 

2017年 3歳クラシックの1〜3着馬と生産牧場

レース 着順 馬 名 生産牧場
桜花賞 1 レーヌミノル フジワラファーム
2 リスグラシュー ノーザンファーム
3 ソウルスターリング 社台ファーム
皐月賞 1 アルアイン ノーザンファーム
2 ペルシアンナイト 追分ファーム
3 ダンビュライト ノーザンファーム
オークス 1 ソウルスターリング 社台ファーム
2 モズカッチャン 目黒牧場
3 アドマイヤミヤビ ノーザンファーム
ダービー 1 レイデオロ ノーザンファーム
2 スワーヴリチャード ノーザンファーム
3 アドミラブル ノーザンファーム
秋華賞 1 ディアドラ ノーザンファーム
2 リスグラシュー ノーザンファーム
3 モズカッチャン 目黒牧場

ノーザンファームを赤色でマークし、社台系ファーム(社台ファーム、社台コーポレーション白老ファーム、追分ファーム)を青色でマークしました。5つのレースの1〜3着馬のなかで、非社台系の生産馬はレーヌミノル(桜花賞1着)とモズカッチャン(オークス2着、秋華賞3着)の2頭のみ。3連単が100万円を超えた大荒れの皐月賞も社台系ファーム生産馬がキッチリと好走しています。この成績からも、3歳クラシックが「社台の運動会」と揶揄されるのも致し方のないことです。

 

菊花賞もノーザンファーム生産馬が好相性のレース

菊花賞はダービーほどではないものの、社台系ファーム生産馬の相性が良いレースのひとつです。過去5年では昨年が1〜3着を独占し、馬券圏内に好走できなかったのはゴールドシップの勝った2012年のみ。また、社台系のなかでもノーザンファーム生産馬は過去5年で2勝と抜群の相性を誇っています。以下は2012〜16年菊花賞の1〜3着馬の生産牧場をまとめた表です。

 

菊花賞の過去5年の1〜3着馬とその生産牧場

着順 人気 馬 名 生産牧場
2016 1 1 サトノダイヤモンド ノーザンファーム
2 9 レインボーライン ノーザンファーム
3 6 エアスピネル 社台ファーム
2015 1 5 キタサンブラック ヤナガワ牧場
2 2 リアルスティール ノーザンファーム
3 1 リアファル ノーザンファーム
2014 1 3 トーホウジャッカル 竹島幸治
2 4 サウンズオブアース 社台ファーム
3 7 ゴールドアクター 北勝ファーム
2013 1 1 エピファネイア ノーザンファーム
2 5 サトノノブレス メジロ牧場
3 3 バンデ 外国産馬
2012 1 1 ゴールドシップ 出口牧場
2 5 スカイディグニティ 大栄牧場
3 7 ユウキソルジャー 高橋ファーム

社台系ファームが1頭も馬券圏内に入れなかったのは、ゴールドシップの勝った2012年のみ。その12年はダービーの1〜4着馬が不出走のため、ゴールドシップが1.4倍の1人気に推され、2人気マウントシャスタの単勝オッズが13.1倍という完全な1強+2番手以下が混戦というレース。

ここ2年はノーザンファーム生産馬が2頭ずつ馬券圏内に入っており、昨年はワンツーを決めています。今年はノーザンファーム生産馬の好走はあるのでしょうか? 1頭ずつ見ていきましょう。

 

2017年菊花賞出走予定馬のなかでノーザンファームの生産馬は?

今年の菊花賞に出走する予定馬のなかで優先出走権利を得ている5頭(皐月賞1着、セントライト記念1〜3着、神戸新聞杯1〜3着)と獲得賞金上位の馬となります。出走馬の確定する19日(木)までどの馬がレースに出られるのかは未定ですが、出馬登録のなかからノーザンファーム生産馬をピックアップしてみましょう。

 

ノーザンファーム 優先出走権 

アルアイン:池江寿(栗東)

サトノアーサー:池江寿(栗東)

サトノクロニクル:池江寿(栗東)

ミッキースワロー:菊沢隆徳(美浦)

(*上から50音順)

池江寿厩舎は3頭が菊花賞の出走権利を獲得しています。しっかりとクラシックに照準を合わせてくるなんて、もう池江センセイは本当に素敵すぎますね。大将格は皐月賞1着→ダービー5着のアルアイン、次点は池江センセイが早くからその素質を認めていたサトノアーサー。池江厩舎のワンツーとなった皐月賞と同じく、菊花賞でも再現なるのかに注目です。

関東馬のミッキースワローはセントライト記念で皐月賞馬アルアインを余裕十分の差し切り勝ち。秋華賞で1人気7着のアエロリットもノーザンファーム+菊沢隆徳厩舎+横山典弘騎手の組み合わせでしたから、ミッキースワローがその悔しさを晴らせるのか……が楽しみです。

 

ノーザンファーム 優先出走権 

アドマイヤウイナー:須貝尚介(栗東)

ダノンディスタンス:佐々木晶三(栗東)

ダンビュライト:音無秀孝(栗東)

トリコロールブルー:友道康夫(栗東)

ポポカテペトル:友道康夫(栗東)

アドマイヤウイナーはGⅡ青葉賞3着に神戸新聞杯5着とこの世代のトップレベルの馬たちに大きくは劣らない成績を上げています。母系はスタミナ十分なだけに出走が叶えば……。

音無秀孝厩舎のダンビュライトは皐月賞3着→ダービー6着と春のクラシックで実績を上げた1頭。菊花賞では春に足りなかった「あと一歩」を詰め切れるのかに注目です。

友道厩舎からは2頭の素質馬が出馬登録をしています。トリコロールブルーは前走の1000万下日高特別(札幌芝2000m)を+32kgの馬体重で快勝してここへ挑みます。ポポカテペトルは全兄マウントロブソンがGⅡスプリングSの勝馬という良血馬。どちらも菊花賞を好走するだけの下地は十分です。

 

今年の菊花賞は高速馬場にはならない?

今年の天皇賞・春の行われた日曜日の京都競馬場は「超」高速+インコース有利の馬場。キタサンブラックがディープインパクトのマークした芝3200mのレコードを大きく更新する3分12秒5のタイムを出したのは記憶に新しく、外から差してくる馬はノーチャンスのレースと言えるほどの高速馬場でした。

天皇賞・春と同じ京都芝外回りコースで行われる菊花賞も速い時計の決着になることが多く、インコースを器用に立ち回った馬の好走が目立ちます。近年の菊花賞は本質的なスタミナを問われるというよりも、下り坂をロスなく走れることとインを器用に立ち回れる馬に有利なレースだと言えるでしょう。

ただ、重馬場でレースが行われた先週の秋華賞から、京都は菊花賞当日までグズついた天気が続く予報。そのため、例年のような高速馬場でのレースにはならず、久しぶりにスタミナの問われるロングスパート戦になる可能性も……。上記の9頭のなかで、重馬場+ロングスパート戦がずんどばの馬をピックアップして解説します。

 

重馬場+ロングスパート戦OKの馬

上記9頭のなかで、重馬場もロングスパート戦も「ドンと来い!」の馬は2頭。それぞれ1頭ずつ見ていきましょう。

 

ダンビュライト 3歳牡馬

父:ルーラーシップ

母:タンザナイト(母父:サンデーサイレンス)

ダンビュライトは道悪馬場の宝塚記念とエリザベス女王杯を勝ったマリアライトなど重馬場を得意とする馬を多数出しているキャサリーンパー牝系の出身。父ルーラーシップも渋った馬場を得意としていたように、時計のかかる馬場はずんどばです。上りの脚に限界があるタイプで、京都外回りの菊花賞は少なくとも残り5F(1000m)からのロングスパート戦で瞬発力を問われないレースが理想です。

ダービー、神戸新聞杯と34秒台前半の上りには対応できないことははっきりしたので、京都芝の長距離戦を「庭」としている武豊騎手であれば、瞬発力勝負にもち込まれないようなレースプランを練っていることでしょう。母系はとにかくスタミナが豊富で、末脚の持続力に富んだ馬。簡単にはバテないため、武豊騎手が積極的はレース運びをするならチャンスも十分にあります。

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アドマイヤウイナー 3歳牡馬

父:ワークフォース

母:ソングバード(母父:ダンスインザダーク)

かつては「ダンスインザダーク」という名前を血統表の中で見かけたら、すぐさま「菊花賞と天皇賞・春で狙いたい!」と言うほど長距離戦で幅を利かせた種牡馬。ダンスインザダーク産駒は2003年ザッツザプレンティ、04年デルタブルースが菊花賞を連覇し、2009年にスリーロールスとフォゲッタブルがワンツーを決めるなど、この舞台での活躍が目立ちました。

先にも述べたように、近年は3000mでスタミナを問われるレースにはならず、器用さと下り坂でのスパート力を問われるレースがほとんど。馬場が悪くなり、有力馬の1頭ダンビュライトがロングスパート戦にもち込むのなら、父ワークフォース×母父ダンスインザダークのアドマイヤウイナーに大きなチャンスが生まれます。

青葉賞3着と神戸新聞杯5着の敗戦はバテているわけではなく、キレ負けしているから。少なくとも3000m走ってもバテることはない馬ですから、スタミナが問われ上りのかかる展開になれば「あっ!」と驚く好走が見られるでしょう。抽選を突破してゲートインできるか、そして、スタミナをふり絞れる先行策を取れるのか、その2点が好走へのキーポイントです。

 

まとめ

今年の菊花賞はノーザンファーム生産の有力馬が揃いました。上位人気を形成する馬たちが本番でどのようなレースをするのか、楽しみが広がりますね。

秋華賞の行われた日曜日からグズついた天気が続く京都競馬場。菊花賞は例年よりも全体の時計がかかり、久しぶりにスタミナの問われるレースになる可能性があります。そのときにダンビュライトやアドマイヤウイナーといったスタミナに優れた馬の好走が……天気とともに、どの馬が出走するのかにも注目しましょう。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。