GⅡ京都大賞典(2017年)は7歳牝馬のスマートレイアーがインをふてぶてしく伸びて1着にーーレース回顧

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優勝馬に天皇賞・秋の優先出走権が与えられるGⅡ京都大賞典(京都芝2400m)は、4人気の支持を受けた7歳牝馬のスマートレイアー(大久保龍志厩舎)が中団から直線で馬群をぬうように伸びると、先に抜け出していたトーセンバジルを捕らえて1着でゴール。1人気のシュヴァルグランは3〜4コーナーから外を回して直線に向き、ジリジリと伸びてきたもののトーセンバジルを交わさずに3着と敗れました。勝ちタイムは2分23秒0(良)。

 

スマートレイアーの渋い差し脚

スマートレイアーが京都大賞典でマークした上り3F33.4は、時計の速い今開催の芝コンディションを差し引いてもなかなかの好タイム。2014年のGⅡ阪神牝馬S(阪神芝1400)を後方から上り3F33.3の鋭さでびゅんとキレていたスマートレイアーを思い出させるような今回の走りでした。

ただ、マイル以下の距離で「キレッキレッ」だった若い頃のスマートレイアーの差し脚はもうどこかに消えてしまい、今は「ほらほら、そこどきなさい!」と言いながらふてぶてしく差してくる「渋い」脚が魅力となっています。

 

もうスマートレイアーにはマイルは短い……

昨年のGⅢ東京新聞杯(東京芝1600m)で逃げ切り勝ちを上げ、それまでの差し・追い込みからモデルチェンジを果たしたスマートレイアー。さらに、昨年末にシャティン芝2400mで行われた国際GⅠ香港ヴァーズをサトノクラウンの5着と好走すると、今年はGⅡ京都記念(京都芝2200m)2着、GⅢ鳴尾記念2着と2000mを超える距離のレースで好結果が出ています。1400〜1600mの重賞3勝の実力馬が7歳になってクラシック・ディスタンスで好走するのですから、競馬というのは本当に面白いものです。

初GⅠ制覇をかけて臨んだ今春のヴィクトリアマイルも直線でしぶとく伸びての4着。好走すれど勝ち切ることができなかったのは、もう渋い差しな脚が武器のこの馬にとってマイルの距離が短いのでしょう。前半をゆったりと入り、末脚を長く引き出すレースをするには2000〜2400mの距離がベストです。

 

母父ホワイトマズルと父母ウインドインハーヘアーのスタミナが前面に

スマートレイアーの母父ホワイトマズルは牡駒はアサクサキングスやイングランディーレなど長距離GⅠを勝つスタミナ型に、牝駒はビハインドザマスクなどの短距離を得意とするスピード型に出ることが多い種牡馬。現在のスマートレイアーが「男性的」な末脚で牡馬相手の重賞を好走しているのは、このホワイトマズルのスタミナが加齢とともに前面に出てきているからでしょう。

スマートレイアーの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

このスタミナの源はホワイトマズルの母父Ela-Mana-Mouとディープインパクトの母母Burghclereとの相似の血統構成によるものです。この2頭に共通するDonatelloやHyperionやCourt MartialやPetitionのパワーとスタミナの血のクロスが、スマートレイアーに伝わっていたスタミナを加齢とともに発現させたのだと考えられます。

Burghclereの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

Ela-Mana-Mouの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

スマートレイアーが「女性的なキレ」から「男性的な持続力」へと歳を重ねるにつれて変化したのは、強大なスタミナを誇る母父ホワイトマズルの影響によるものです。

 

今秋のGⅠに向けて

牝馬路線のトップホースとして走り続けているスマートレイアーは7歳秋のシーズンを迎えています。もう、競走馬としての生活も残りわずかですから、今秋のGⅠ制覇へかける気持ちは並々ならぬものがあるでしょう。

京都大賞典の1着馬には天皇賞・秋への優先出走権が与えられますが、対戦メンバーを考慮に入れるなら最大目標は牝馬限定のエリザベス女王杯になります。京都芝2200mの外回りコースはこの馬のしぶとい末脚が最大限に発揮できる舞台。ハイレベルと言われる3歳牝馬相手にスマートレイアーは初GⅠを制覇できるのか、そのふてぶてしい走りに注目です。

 

2着トーセンバジルはキレッキレッのハービンジャー産駒ではなく……

好位のインから鋭く抜け出したトーセンバジルは、昨年の京都大賞典2着アドマイデウスと同じような岩田騎手のイン突き。前半1000が59.9秒の通過でしたが、後半1000mが58.6と後傾ラップになったこともあり、今年の京都大賞典は「位置取りゲーム」の要素が高いレースとなりました。

1着のスマートレイアーはインから差してきたためコースロスなく運びましたが、3着になったシュヴァルグランは終始外を回る苦しい競馬。京都大賞典は逃げたラストインパクトが6着に粘っていたように、前目でインのポジションを取った馬が上位に好走するレース。しっかりと好位のインを取り切った岩田騎手の好騎乗が光りましたね。

トーセンバジルはどちらかと言えばキレるハービンジャー産駒。ただ、「キレッキレッ」というタイプではなく、京都の3〜4コーナーから勢いをつけてスピードを持続させるのがベストです。この馬は直線だけのキレ味勝負だとディープインパクト産駒に及びませんし、小回り・内回りコースを捲るにはややパワーが足りません。そのため、直線の長いコースで末脚を発揮してどこまで……という馬のため、2000mよりも長い距離で末脚の持続力を発揮するレースがベター。重賞を勝ち切るにはワンパンチ足りないのが現状です。

 

3着シュヴァルグランは最低限のレース

1人気のシュヴァルグランはスタートしてすぐに左右の馬に挟まれてポジションを下げると、後方からの競馬になりました。3コーナーから外目をじわりと捲り、直線でもジリジリと伸びてきましたが、この後傾ラップを外から差し切るほどの鋭さはなく3着と敗れました。

シュヴァルグランはスタミナが豊富なハーツクライ産駒ですから、直線が平坦な京都で上りの速いレースになるとどうしても鋭さ負けしてしまいます。天皇賞・春のようなロングスパート戦になれば京都の外回りコースでもOKとは言え、上り3F33秒台のレースだと勝ち切るまでは苦しいですね。

ただ、終始大外を回して3着まで押し上げ、ゴール前もトーセンバジルに迫る脚を見せたのは力のある証拠で、有馬記念に向けて上々のスタートを切りました。ピークのデキを過ぎていた宝塚記念こそ8着と敗れましたが、その操縦生の高さとおっとりとした気性から、コース不問で好走できるタイプ。Halo3×4のクロスの器用さとスタミナを活かせる有馬記念はシュヴァルグランにとってベストの舞台と言えるので、ここに体調面のピークをもってこれれば……。ハーツクライ産駒らしくジリジリと成長していますし、今年の有馬記念は昨年6着の雪辱を果たすにはもってこいです!

 

4着ミッキーロケットと5着レコンダイト

ミッキーロケットとしては久しぶりに好スタートを切って先行勢を前に見る位置でレースを進められましたが……3〜4コーナーで馬群の真っただ中に入ってしまい、スピードを上げたいところで動くに動けず……。直線でスペースを見つけて伸びてきたものの、そこはキングカメハメハ産駒だけあって、びゅんとキレるような脚は使えませんでした。ストライドを伸ばして走るので、急加速を問われるようだとどうしても踏み遅れてしまいますね。この馬は阪神か東京芝2400mの舞台がベストコースで、この後はジャパンカップあたりを目標とするのでしょうが、GⅠだともうワンパンチ欲しいというのが本音です。

5着のレコンダイトはこの馬らしいレースぶり。この馬のダラっとした差し脚を活かすにはトーセンバジルの位置が欲しかった……とは言え、直線の長いコースではソコソコに走れますから、上りが34秒台の質のレースになるのならまだまだ好走も可能です。次走のアルゼンチン共和国杯はいかにも人気になりそうな馬……馬場が渋って時計がかかるなら好走の可能性も……。

 

まとめ

◎スマートレイアー、◯ミッキーロケット、△レコンダイトがソコソコの競馬をしてくれたので、納得のレースだった今年の京都大賞典。次走がGⅠとなる馬たちによる白熱した争いとなりました。

GⅡ京都大賞典は京都外回り向きの◎スマートレイアーと◯ミッキーロケットに注目して - ずんどば競馬

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以上、お読みいただきありがとうございました。