今秋のGⅠシリーズは、秋華賞(京都芝2000m)をディアドラ、エリザベス女王杯(京都芝2200m)をモズカッチャンが制し、ハービンジャー産駒の活躍が目立っています。ここまでは2頭の3歳牝馬がGⅠを盛り上げましたが、次は3歳牡馬のペルシアンナイトがGⅠ初制覇を目指してマイルCSに出走します。
ペルシアンナイト、ディアドラ、モズカッチャンに共通することは?
ハービンジャー産駒の「当たり年」と言われた今年の3歳世代は、ここまで3頭がGⅠを連対。
▼ハービンジャー産駒のGⅠ連対馬
ペルシアンナイト:皐月賞2着
ディアドラ:秋華賞1着
モズカッチャン:オークス2着・エリザベス女王杯1着
この3頭に共通するのは、母系にNureyevの血を引くことです。名牝Specialを母にもつ、この欧州の名牝血・名種牡馬が母系に入ることで、ハービンジャーを日本の芝向きにカスタマイズしていると言えるでしょう。
ハービンジャー産駒の特徴について、以下の記事でより詳しく解説しているので、よければご覧下さい。
ペルシアンナイトはマイルCSを好走できるのか?
ハービンジャー産駒の2頭のGⅠ牝馬はともに、京都芝コースで栄冠をつかみ取りました。京都芝1600mで行われるマイルCSをペルシアンナイトは好走できるのでしょうか?
ペルシアンナイト 3歳牡馬
父:ハービンジャー
母:オリエントチャーム(母父:サンデーサイレンス )
厩舎:池江泰寿(栗東)
生産:追分ファーム
アーリントンC(GⅢ・阪神芝1600m)を重厚なストライドで差し切ると、その後はマイル路線ではなく、皐月賞→ダービーとクラシック路線を歩むことになります。
皐月賞は道中で内々を立ち回って後方から前へとポジションを押し上げ、直線でインを突いて伸びたものの、アルアインの末脚に屈しての2着。これがハービンジャー産駒として初のGⅠレースでの連対となりました。
ダービーはテン乗りの影響もあったのか、向正面から3コーナーにかけてかかってしまい、直線ではもう脚が残っておらず、7着と敗退。この敗戦を受けて、秋は「マイル路線」へ向かうことが決まりました。
前走の富士S5着の敗因は?
ペルシアンナイトが今秋の復帰初戦に選んだのは、古馬との初対戦となったGⅢ富士S(東京芝1600m)。このレースは天皇賞・秋の前日に行われ、そう、あの「不良馬場」のなかで走ることに……。道悪馬場を苦にしたとは言えないものの、5着と敗退しました。
富士Sの敗因は大きく2つ考えられます。
1. 不良馬場
2. 久しぶりのマイル戦
ペルシアンナイトはシンザン記念(GⅢ・京都芝1600m)3着のときに「重」馬場を経験しており、「まったく走れない」というタイプではありません。ただ、プラスでなかったのは確かでしょう。
馬場よりも、休養明け+久しぶりのマイル戦とあって、追い出されてからの反応がイマイチ……。エアスピネルには離されたものの、2着のイスラボニータとは0.5差ですから、大きく悲観する内容ではありませんでした。
ペルシアンナイトはマイラーなのか?
この秋はマイル路線に向かうペルシアンナイトですが、皐月賞2着など中距離でも活躍を見せていることから、「マイラーなのか?」は疑問が残ります。
半姉クイーンチャーム(父キングカメハメハ)は、先週の比叡S(1600万下・京都芝2200m)を勝った中距離馬。キングカメハメハからハービンジャーに替わったとしても、マイラーの出る下地はありません。
血統や走法からは1800mベストの中距離馬で、マイルもこなせるタイプです。イメージとしては、イスラボニータに近いかな、というところ。ペルシアンナイトも古馬になってつくべきところに筋肉がつき、マイラーに適性が寄るかもしれませんが……現状は純粋なマイラーではないと言えます。
京都芝1600mへの適性は?
ペルシアンナイトはディアドラやモズカッチャンと同じく「キレるハービンジャー産駒」ですから、京都の外回りコースはOK。牝馬2頭に較べるとやや重厚なストライドで走るので、本質的には阪神がベストでしょう。
3〜4コーナーの下り坂は「?」
ペルシアンナイトとディアドラとモズカッチャンの3頭は、京都の3〜4コーナーの下り坂をロスなく走る血が入りません。ただ、牝馬2頭はHaloやMr. Prospectorなどのクロスをもつことで、道中をロスなく走る適性に優れています。
ペルシアンナイトはどちらかと言えば、阪神向きの重厚なストライドなので、下り坂への適性は高くないため、ここでのペースアップに対応できるかがキーポイントです。
マイルCSを好走できるのか?
さて、ここから本題に入ります。ペルシアンナイトがマイルCSで好走するためのポイントは大きく5つあります。
1. 純粋なマイラーではない
2. 下り坂への対応は「?」がつく
3. ややタフな馬場はOK
4. 古馬との力関係
5. M・デムーロ騎手が乗る
1〜5についてそれぞれ見てみましょう。
1. 純粋なマイラーではない
この馬は純粋なマイラーではないため、道中の追走で脚を削がれるようなペースは合いません。似たような距離適性のイスラボニータが、1分31秒台の決着になった今春の安田記念を敗退したように、速いペースに巻き込まれると凡走も……。
2. 下り坂への対応は「?」がつく
先にも述べたように、ペルシアンナイトは下り坂をロスなく走れる血がないため、3〜4コーナーからペースの上がるマイルCSでは、追走に苦労する可能性があります。
先週に続きややタフな馬場になり、ペースが緩むのならそれほど気にする必要はないものの、少なくともプラスになる要素はないので……。
3. ややタフな馬場はOK
1と2に関係するのが3の「ややタフな馬場」。時計がかかることで、体力をロスすることのない追走ができれば、この馬は直線で重厚なストライドを発揮することができます。
中距離であれば高速馬場もOKとは言え、マイルで時計が速くなるようだとイスラボニータの安田記念がチラチラと頭に浮かぶのです。
4. 古馬との力関係
これがもっとも難しい……。前走の富士Sの内容は、休み明け+不良馬場+一線級のマイラー(イスラボニータやエアスピネルなど)との初対戦だったことを考えれば、5着は及第点。
3歳牡馬はレベルが低いと揶揄されたものの、アルゼンチン共和国杯をスワーヴリチャードがアッサリと楽勝し、秋にかけて成長している馬であれば、通用する下地はあります。
モーリスやロゴタイプが引退した現在のマイル路線は、決してハイレベルとは言えない状況ですから、ペルシアンナイトが通用してもおかしくはありません。
マイルCSは3歳馬が苦戦するレース
マイルCSは3歳馬が苦戦するレースで、過去10年を見ても連対した馬はいません。古馬の壁に跳ね返されてしまうのがマイルCSですから、その点は不安が……。
ペルシアンナイトは皐月賞→ダービーとクラシックを戦ってきた馬なので、この世代のトップレベル。そのため、春から一夏を越して馬が成長していれば、スワーヴリチャードのようにここでも、の期待が……。
5. M・デムーロ騎手が乗る
M・デムーロ騎手は今走、お手馬のレッドファルクスではなく、ペルシアンナイトに騎乗します。同騎手はここまでGⅠレースで抜群の成績を上げており、心強いパートナー。
好走の可能性は上がりますが、その分だけ「ミルコ人気」になってしまうので、実力とオッズが見合うのかはよくよく考えないといけませんね。
まとめ
マイルCSはエリザベス女王杯に続き、ハービンジャー産駒+M・デムーロ騎手の連勝となるのか、注目が集まります。
ペルシアンナイトは重厚なストライドで走る馬なので、下り坂とマイルの距離をこなせればチャンスも。今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。