中内田充正厩舎(栗東)は開業4年目となる2017年、年明けから勝率が3割を超える好調なスタートを切ると、一時は全国厩舎リーディングのトップに立つ活躍を見せました。
7月2日(日)終了時点でリーディング5位、勝率・連対率・複勝率ともに他の名門厩舎に引けをとらない高い数字をキープしています。
1年の節目となる東京優駿(日本ダービー)が終わり、いよいよ来年のクラシックを目指す2歳馬がデビューする時期を迎えました。素質馬を多く管理する名門厩舎が勝ち星を増やす時期だけに、中内田厩舎がリーディング上位をキープするためには2歳馬の好走が欠かせません。
今回の記事では、中内田厩舎からデビューした2歳新馬の成績(7月2日終了時点)と今後の活躍についてを考察します。
2017年7月2日時点の中内田厩舎の成績
中内田厩舎の7月2日(日)終了時点での成績を確認しておきましょう。
1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
平地 | 23 | 7 | 15 | 67 | 0.205 | 0.268 | 0.402 |
障害 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1.000 | 1.000 |
JRA合計 | 25 | 7 | 15 | 67 | 0.219 | 0.281 | 0.412 |
参照:JRA日本中央競馬会
全国調教師リーディング5位
勝率が3割を超えていた3月初めの頃から較べるとさすがにそれぞれの率は下がりましたが、まだ全体的にはハイアベレージをキープ。リーディング・トップ10内に位置していることも優秀な数字です。特徴的なのは出走回数の少なさが挙げられます。リーディング1〜4位の調教師と比較をするとその差は歴然です。
順位 | 調教師名 | 出走回数 |
1位 | 池江泰寿 | 175 |
2位 | 角居勝彦 | 190 |
3位 | 国枝栄 | 177 |
4位 | 藤原英昭 | 158 |
5位 | 中内田充正 | 114 |
参照:JRA日本中央競馬会
調教師は過去2年の成績をもとに管理できる馬房数が決まるため、開業4年目の中内田厩舎と名門と言われる1〜4位の厩舎とは出走数に差ができるのは自然なことです。
中内田厩舎は出走数の少なさから勝率や連対率、3着内率の率が高くなっているとも言えます。とは言え、少ない出走数にも関わらずリーディング5位につけているのは1着の数が多いためで、2、3着の数からすると「勝ち切っている」のが中内田厩舎の特徴の1つです。
デビューした2歳馬をチェック
中内田厩舎がこのままリーディング上位をキープするには所属馬の活躍が欠かせません。特に2歳馬の勝ち上がりは勝ち星に大きな影響を与えます。この世代で活躍馬を出せるのかはリーディング争いに直結することなので、まずはすでにデビューした2歳馬をチェックしてみましょう。
3頭の2歳馬がデビュー
7月2日(日)終了時点で中内田厩舎からデビューした2歳馬は3頭。
馬 名 | 着順 | 人気 | コース | 騎手 |
サナコ | 3 | 1 | 阪神芝1600m | 川田将雅 |
ダノンプレミアム | 1 | 1 | 阪神芝1800m | 川田将雅 |
フロンティア | 1 | 1 | 中京芝1600m | 川田将雅 |
(デビュー順に並べたもの)
3頭のデビュー戦はすべて芝+1番人気+川田将雅騎手。成績は(2 - 0 - 1 - 0)ですから2歳新馬は上々の滑り出しを見せています。それでは1頭ずつ解説していきましょう。
サナコ 2歳新馬
父:ダイワメジャー
母スイートハビタット(母父:Grand Lodge)
生産牧場:シンボリ牧場
馬主:R・アンダーソン
2歳新馬(6月18日) 阪神芝1600m(外回り)
頭数:12頭 馬場:良
着順:3着(1人気)
走破タイム:1分34秒4(1着馬との着差:0.4)
上り:35.3
通過順:6 - 6
騎手:川田将雅
レース解説
大外枠からのぼ五分のスタートを切ると、折り合いもスムーズに外目の中団を追走。4コーナー手前から前に取り付き、直線の半ばから仕掛けると内にヨレてしまい川田騎手が修正して再び追い出しますが……内を抜け出したコスモインァハートを捕らえられず、後ろからラテュロスにあっさりと交わされるなど1番人気としては物足りない内容でした。まだフラフラと走っていることからもう少しフォームがしっかりしてくれば……というところでしょう。
この日の阪神芝コースは好タイムが出ていたように、走破タイムの1分34秒4はソコソコのタイム。残り4Fのラップが11.8 - 11.6 - 11.7 - 12.1とダイワメジャー産駒の走れるゾーンの時計ですから、ここで切れ負けしたのは……ただ一定のスピードを見せたレースなので、次走はもう少し前目の位置からレースを運べればチャンスもあります。馬体重(438kg)以上に大きなフォームで走るので、現状は小回りよりも直線の長いコースがベター。
今後に向けて
福島牝馬Sを制したスイートサルサ(父:デュランダル)の半妹。サナコは姉と同様にしなやかさを感じさせる走りで、もう少し馬体がパンとしてくれば柔らかなストライドで走る外回り向きのマイラーになりそうです。
サナコは放牧に出されずに厩舎での調整となっていることから、どこかで未勝利戦を使ってくる可能性が大。できれば直線の長い中京開催中に勝ち上がりたいところですね。
ダノンプレミアム 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:インディアナギャル(母父:Intikhab)
生産牧場:ケイアイ牧場
馬主:ダノックス
2歳新馬(6月25日) 阪神芝1800m(外回り)
頭数:10頭 馬場:稍重
着順:1着(1人気)
走破タイム:1分48秒7(2着馬との着差:0.7)
上り:34.6
通過順:2 - 1
騎手:川田将雅
レース解説
ダノンプレミアムは好スタートから内のウインルーカスを先に行かせて2番手で折り合います。3コーナー手前で外から押し上げたアドマイヤビクーターがハナを奪い、ダノンプレミアムとウインルーカスの3頭が雁行状態で直線に入ります。
ダノンプレミアムは直線で先頭に立ち、馬場の内から4分所を重厚なストライドで伸び切って完勝。次走が楽しみな新馬戦の内容だったと言えます。
今後に向けて
ディープインパクト産駒としては重厚感のあるストライド走法。母インディアナギャルはIntikhab×デインヒルという配合からもディープインパクトのしなやかさを補うパワーにあふれた繁殖牝馬です。
ダノンプレミアムの前脚がグイグイと伸びるストライドは「非凡」なものがあります。レース上り34.6(11.6 - 11.0 - 12.0)は直線で先頭に立っていたこの馬自身のもので、スローペースを差し引いても2歳の早い時期にこれだけの上りを使えたのは、今後に向けての展望が大きく拓けました。
現在は放牧に出されており、馬体の成長を促しながらのローテーションとなるのでしょう。この馬はストライド走法ですから、外回りや直線の長いコースに向いており、新潟2歳ステークスや秋までレース間隔を空けるなら東京スポーツ杯2歳ステークスなどが有力。初戦は気性的な難しさも見せなかったですし、秋に向けて楽しみな2歳馬が登場しました。
フロンティア 2歳牡馬
父:ダイワメジャー
母:グレースランド(母父:トニービン)
生産牧場:社台コーポレーション白老ファーム
馬主:サンデーレーシング
2歳新馬(7月1日) 中京芝1600m
頭数:12頭 馬場:稍重
着順:1着(1人気)
走破タイム:1分38秒2(2着馬との着差:0.1)
上り:34.4
通過順:1 - 1
騎手:川田将雅
レース解説
好スタートから内枠を利してハナに立つと、川田騎手が折り合いに気をつけながらゆったりとした逃げに持ち込みます。前後半の800mが51.4 - 47.1。3.3秒差の後傾ラップですから新馬戦らしいスローペースのレースになりました。
直線の坂下から追い出されると、外から迫るアドマイヤアルバに最後まで差を詰めさせずに1着でのゴール。スローペースに落としての危なげのない逃げ切りでした。
フロンティアはパワーだけではなくしなやかさも感じさせるフォームのダイワメジャー産駒。ゴール前ではきっちりと前脚を伸ばすストライドで走っていたので、小回りよりは直線の長いコースの方が向くタイプでしょう。逃げなくても競馬ができるはずですから、次走もう少しペースが流れた時に新馬戦のような終いの反応を見せられるかに注目ですね。
今後に向けて
母グレースランドは初仔のドリームパスポート(父:フジキセキ)が阪神大賞典など重賞を2勝した活躍馬。フロンティアは父がダイワメジャーに替わり、しなやかさよりもパワーとスピードを増したマイラー。ノーザンテーストのクロスがかかっているにしては割としなやかに走るのが特徴です。
この馬も他のダイワメジャー産駒に同じように上りの脚には限界があるタイプでしょうから、後続の脚を削ぐようなペースで先行するのがベストでしょう。次走もマイル路線を使ってくれば、もう少しペースが流れた時にどのような反応を見せるのかに注目したいですね。
まとめ
デビューした3頭のなかでは「いかにも重賞級」という走りを見せたダノンプレミアムに期待が集まります。
中内田厩舎はカミノタサハラ、ボレアス、クリアザトラックの全弟フォックスクリークなどこの後も注目の良血馬がデビューを待っていることから、2歳戦は今後もかなりの好成績を期待できるのではないでしょうか。
ここまでデビューした2歳馬はすべて1番人気に支持されているように、人気を集めてしまうのはネックですが……新馬戦の馬券を検討する上でも川田騎手+中内田厩舎のコンビはチェックをしておきましょう。
グレートパールに続く厩舎の期待馬が2歳世代から現れるのか、これからも新進気鋭の中内田調教師から目を離せませんね。
以上、お読みいただきありがとうございました。