競馬は「きれいに折り合うこと」を競っているわけではないのに… 中山記念(2017年)回顧

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田辺騎手は「どうすれば人気馬を負かせるか?」を考えて騎乗するタイプで、1角過ぎでローエングリンが先手を取り切った時に急激にペースを落としました。

「田辺スロー」とも言われる極端に遅いペースに落とせば、折り合いの難しいネオリアリズムやアンビシャスの追撃を凌げると踏んだのでしょうが、そうはさせじと動いたのがマイネルミラノネオリアリズム

 

手綱が引っ張られ首を上げて窮屈そうに走るネオリアリズムを向こう正面で馬の気持ちに任せて行かせたミルコ騎手の判断は抜群で、3〜4角に掛けて「田辺のローエングリンの捲りに合わせて動く」タイミングも昨年のドゥラメンテの勝利の時と同様にドンピシャリとはまりました。

 

 公式のラップでは

12.6 - 12.1 - 12.6 - 12.9 - 11.1 - 11.6 - 11.6 - 11.3 - 11.7

後半の1000mはすべて11秒台の流れで、マイネルミラノの逃げを見ながら番手で競馬をしたネオリアリズムにとっては願ってもない展開になりました。

ネオリアリズムはパワーと持続力でねじ伏せるタイプですから、ローエングリンよりも先に捲って出ても好勝負だったと思いますが、ここは直線で差す競馬。

ゴール前でミルコ騎手が手綱を抑える余裕もありましたから、ネオリアリズムは折り合いさえつくならば中距離がベストですね。

 

勝ち馬ネオリアリズムについて

ネオリアリズム

ネオユニヴァース

トキオリアリティー(母父Meadowlake)

厩舎:堀宣行美浦

 

db.netkeiba.com

 

名繁殖トキオリアリティーの牡馬で、半兄のアイルラヴァゲインリアルインパクトを見ても分かるように古馬になってからも息の長い活躍を見せる血統です。

父がネオユニヴァースですから、リアルインパクト(父ディープインパクト)よりも小回り向きの脚質になりました。モーリスを撃破した札幌記念ミッキーアイルと壮絶に叩き合ったマイルCS(3着)などからも、道中かからずに走ることができれば能力は十分にGⅠ級の馬だと言えます。

今回の中山記念のように折り合えるなら1800〜2000mがベストの距離だと思うので、阪神内回りで施行される新設GⅠ「大阪杯」はこの馬にとって適性がばっちりのレースです。

 

中山記念予想

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マイネルミラノは向こう正面でローエングリンからハナを取り返し、徐々にピッチを上げる理想的な競馬ができましたが、ネオリアリズムにきっちりとマークされたこと、そしてローエングリンに捲られてしまったことを考えると、掲示板に載れない着順になってしまったのも致し方なしというところ。

 

リアルスティール

前半のスローペースでは折り合いを欠くこともなくスムーズに追走できましたが、残り1000mからの持続戦になったのはこの馬にとっては辛い展開になってしまいました。もう少し積極的な競馬が合うとは言え、4角で手応えが残ってないような走りでしたから、今後の取捨選択が難しくなりましたね。

 

アンビシャスについて

 音無調教師がルメール騎手を乗せたことで、今年も昨年の中山記念と同じような「折り合いに専念して差す競馬」をすることは予想ができました。

 

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馬群の外を4角手前でポジションを上げて差す競馬になりましたが、後半1000mの11.1 - 11.6 - 11.6 - 11.3 - 11.7という淀みない流れを差し切るというのは持続力だけではなく相当な瞬発力も要求されるので、厳しい言い方をすれば休み明けを考慮に入れたとしても天皇賞秋と同じような敗戦と言わざるを得ません。

 

きれいに折り合うことが目的ではなく… 

折り合いの技術が卓越したルメール騎手だからこそ、乗り難しいアンビシャスもきれいになだめることができるのですが、「折り合い」はレースに勝つための手段であってそれが目的ではありません。

横山典弘騎手が昨年の大阪杯で先行してアンビシャスを勝利に導いたように、極端に引っかからないのであればどのポジションでレースを進めたとしても問題はないはずです。

 

重賞であってもハイペースになることは稀なので

もう、JRAの芝のレースはGⅠであってもスローペースになることが多く、昨年の中山記念のように終始締まったレースというのは珍しいと言えます。昨年の天皇賞秋のようなスローペース(前後半差が1秒以上ある)が当たり前のようになってしまったのですから、アンビシャスは多少かかり気味になったとしてもポジションをとれるような競馬を試す必要があると思うのです。

 

まとめ

ドゥラメンテがターフを去り、キタサンブラックがチャンピオンとして待ち受ける古馬の芝中長距離路線に名乗りを上げたのは、かかることを恐れずに積極的な競馬をしたネオリアリズムだったということは、準チャンピオンだったアンビシャスとリアルスティールに大きな課題を突きつけたと言ってもいいでしょう。

もっともチャンピオンらしい競馬をして勝ったネオリアリズムは掛け値なしにGⅠ大阪杯の最有力候補になったのです。