出世レースと言われるGⅢ新潟2歳Sは、中内田厩舎の管理するフロンティアが直線の半ばで先頭に立つと、しぶとく脚を使って1着でゴール。3コーナーからハナに立ち最後まで粘りに粘ったコーディエライトが2着、インの好位からするすると内を抜けたテンクウが3着に入り、先行馬が上位を占める結果となりました。勝ちタイムは1分34秒6(良)。
中内田厩舎は2年連続の新潟2歳Sを制覇
開業4年目となる中内田充正調教師は、'17年8月27日(日)終了時点で全国調教師リーディング3位と好成績を上げています。今年はすでに昨年の31勝を上回る37勝とハイペースで勝星を量産。
厩舎の初重賞制覇となった昨年のヴゼットジョリーに続き、今回のフロンティアの好走によって同一重賞レース連覇となりました。
中内田厩舎の2歳馬はフロンティアの他にも、デビュー戦を楽勝した評判馬ダノンプレミアム、そしてまだデビューしていない期待馬たちが数多く入厩しています。調教師リーディング争いを考えても、2歳戦でどれだけ勝星を上積みできるのか今後に注目です。
中内田厩舎の期待の2歳馬フロンティアが新潟2歳Sに出走!ーー中内田厩舎の今年の成績は? - ずんどば競馬
中内田厩舎の2歳戦の成績
中内田厩舎のここまでの2歳戦の成績は(4 - 0 - 1 - 2)という好調さ。イヤ、もう、ね、厩舎の勢いそのままにフロンティアで重賞を勝ってしまいました。以下は2歳戦の成績を表にまとめたものです。
▼中内田厩舎の2歳戦の成績 8月27日(日)終了時点
日付 | 馬 名 | 着順 | 人気 | クラス | コース | 騎手 |
6/18 | サナコ | 3 | 1 | 新馬 | 阪神芝1600m | 川田将雅 |
6/25 | ダノンプレミアム | 1 | 1 | 新馬 | 阪神芝1800m | 川田将雅 |
7/1 | フロンティア | 1 | 1 | 新馬 | 中京芝1600m | 川田将雅 |
7/8 | サナコ | 4 | 1 | 未勝利 | 中京芝1200m | 川田将雅 |
8/23 | パクスアメリカーナ | 4 | 1 | 新馬 | 新潟芝1600m | 川田将雅 |
8/27 | ベルーガ | 1 | 1 | 新馬 | 札幌芝1200m | J・モレイラ |
8/27 | フロンティア | 1 | 3 | GⅢ | 新潟芝1600m | 岩田康誠 |
キレイに「1番人気」が並んでいましたが、フロンティアが今年初めての3番人気での出走。新潟の外回りコースで「逃げる」かもしれないことが嫌われたのでしょう。まだ、2歳戦の全レースで掲示板内という成績は継続中。この成績だと今後デビューしてくる馬たちは「厩舎人気」を背負って走ることになりますね。中内田厩舎の期待の2歳馬については過去に記事としてまとめてあるので、よければご覧下さい。
中内田充正厩舎の期待の2歳馬('17年)をズバっと解説!&私的なベスト3を発表 - ずんどば競馬
フロンティア 2歳牡馬
父:ダイワメジャー
母:グレースランド(母父:トニービン)
厩舎:中内田充正(栗東)
馬主:サンデーレーシング
生産牧場:社台コーポレーション白老ファーム
GⅠでの2着が3回ある活躍馬ドリームパスポート (父:フジキセキ)の半弟。母グレースランドはサッカーボーイ、ステイゴールド、ショウナンパンドラなどのGⅠ馬を出したダイナサッシュ牝系の出身。
ダイワメジャー産駒のGⅠ馬は、メジャーエンブレム(母父オペラハウス)やカレンブラックヒル(母父Grindstone)、コパノリチャード(母父トニービン)とすべて母父にクラシック路線を走れるスタミナをもつ種牡馬が配されていることから、フロンティアも大きな期待をかけたくなります。ただ、この馬が上記の3頭と異なるのは、パワーとピッチ走法を伝えるノーザンテーストのクロスがあること。父ダイワメジャーの頑強なパワーがより増すことで、スピードやしなやかさに欠ける恐れが出てしまいます。フロンティアは母系に引くPrincely Giftのしなやかさがどれほど現れてくるのかが今後のポイントになるでしょう。
新潟2歳Sのレース内容
好スタートから3コーナーに入るまでは押し出されて先頭に立っていたものの、外からコーディエライトがハナを主張したところで下げ、道中は2、3番手の追走になります。4コーナー、そしてゴールまで残り600mを切るくらいまではレースのペースが上がらず、1000mの通過が61.6秒と「超」のつくスローな流れ。
直線に向いて2番手から追い出されたフロンティアは逃げるコーディエライトを残り200mで交わして先頭に立つと、しぶとく脚を使っての1着。最後まで抵抗した2着のコーディエライトを0.1秒だけ抑えました。この馬の上りは32.9。今年の新潟2歳Sを除いて32秒台の脚を使ったのは過去に7頭いて、それをまとめたのが下の表です。
▼新潟2歳Sで上り32秒台を使った馬
年 | 着順 | 人気 | 馬 名 | 上り | 通過順位 |
2009 | 1 | 1 | シンメイフジ | 32.9 | 18 - 18 |
2011 | 1 | 4 | モンストール | 32.7 | 9 - 9 |
2 | 1 | ジャスタウェイ | 32.6 | 11 - 12 | |
2013 | 1 | 1 | ハープスター | 32.5 | 18 - 18 |
2 | 4 | イスラボニータ | 32.7 | 12 - 13 | |
2015 | 1 | 1 | ロードクエスト | 32.8 | 18 - 17 |
2016 | 2 | 6 | オーバースペック | 32.9 | 15 - 14 |
この表から「32秒台の脚」を使う馬は少ないこと、ジャスタウェイやハープスター、イスラボニータなどのGⅠ馬が新潟の長い直線でその「素質」を見せていたことがわかります。
フロンティアがこの後どのような成長曲線をたどるのかはわからないものの、32秒台の脚を使ったことは評価しなければなりません。
この上りのタイムを出せたということは、速い脚も使えるということで、ダイワメジャー産駒としてはしなやかさも見られるタイプ。同じ父をもつアストラエンブレムやクライムメジャーのように、長い直線でもしっかりと速い時計で走れるのが長所と言えます。
今後に向けて
新馬戦を勝った後に放牧に出され、馬体の成長を促しながらの調整だったにもかかわらず、新潟2歳Sでは馬体重がマイナス10kgと大きく減らしてしまいました。「無駄肉が取れた」とも解釈ができるものの、それほど馬格のないフロンティアにとっては今後に向けて心配な点。レースに使うとガクッと疲れが来るタイプなのかもしれませんね。
今後はしっかりと休養を入れて、まずは朝日杯FSを目指すことに。阪神外回りのマイル戦はフロンティアにとっては願ってもない舞台ですから、ここでどのようなレースができるのかに注目です。
2着コーディエライトと3着テンクウについて
2着にフロンティアと同じダイワメジャー産駒のコーディエライト、3着には今年の2歳戦が好調なヨハネスブルグ産駒のテンクウが入り、スムーズに先行できた馬が上位を占めました。
レースの上りが11.4 - 10.4 - 11.2(33.0)ですから、しっかりと前々で流れに乗っていないとノーチャンスの競馬で、コーディエライトは津村騎手らしく4コーナーで後ろを引き離しにかかる逃げを打ち、テンクウはインを突いて上り32.6の脚を使いました。
コーディエライト 2歳牝馬
快勝した前走の未勝利戦(中京芝1400m)の内容を見ても、スピード色の強いダイワメジャー産駒。4分の3兄のサフィロス(父キンシャサノキセキ)、全姉のローガンサファイアと芝で活躍した兄姉の2頭が上げた全6勝は1400m以下のレースでのもの。母ダークサファイアはアメリカの主流とは言えない血統のOut of Placeを父にもち、アウトブリードな配合がされている繁殖牝馬ながら、似た傾向をもつ産駒が産まれるのはそれだけ自己主張が強いのでしょう。
コーディエライトはローガンサファイアと同じくしなやかさのあるダイワメジャー産駒で、姉よりも胴長の馬体からはマイルもOKに見えますが、成長するにつれて距離適性もスプリントへシフトしていくと考えられます。今後はファンタジーS→阪神JFというローテーションが組まれる予定で、今日のような走りができれば楽しみが広がりますね。
テンクウ 2歳牡馬
新馬戦を快勝した内容からも器用に立ち回れるヨハネスブルグ産駒。新潟2歳Sでマークした上り32.6はスローペースによるものだったとしてもなかなか出せるものではなく、この時期に速い脚を使えたのは大きな収穫です。
ヨハネスブルグ産駒の勝ち頭と言えば、牡馬ならネロ、牝馬ならホウライアキコが挙げられます。テンクウは強いクロスをもたないことから、ネロと同じく3歳時に素軽いスピードを見せてソコソコ活躍し、古馬になってから一皮むけるという成長曲線をたどる1400mベストのスプリンターでしょう。母ピサノドヌーヴの牝系はコンスタントに活躍馬を出すものの、重賞を勝ち切るところまでは……というのがデフォルト。この馬が重賞に手が届くのかは見物ですね。
器用に立ち回れ、気性的な難しさがないことから、テンクウはレースで大きく崩れることの少ないタイプ。直線の長いコースでも小回り・内回りでも対応できる馬で、ベストはネロやホライアキコと同じく京都の芝1200〜1400m、小倉の1200mでしょう。
◎トッカータは11着
新潟2歳Sはしなやかにキレる馬が後方からバキューンと差すのが優勢なレースなので、ストライドを伸ばして走るトッカータに期待をしましたが、スローペースでほぼ最後方からの競馬+道中かかって騎手が馬を制御できなかったこともあって、直線でもちょろっと差を詰めただけの11着。今日はスローペースになったので、本質的に中有距離のトッカータにとっては追走が楽になる分、流れとしては悪くはありませんでした。ただ、スタートで後手を引いて勝負圏外へ……。この経験を活かして、次走に期待をしたいところです。
その他の有力馬と気になった馬
1番人気に支持されたムスコローソは12着、4番人気のプレトリアは7着と敗れました。2頭ともに、コーディエライトが3コーナーでハナに立ったところでポジションを後ろへ下げてしまったことが最大の敗因。今回は内目の枠に入ってスムーズなレースができませんでしたね。
ムスコローソはまだまだ馬体が緩く、ポンとスタートを切れないのもそこが原因でしょう。同じヘニーヒューズ産駒の活躍馬アジアエクスプレスも2歳時はずっと馬体が緩かったように、芝でキレるというよりはワンペースのレースが合っているのかもしれません。プレトリアはピッチで走る馬なので、今回のようなスローペースは歓迎。ただ、道中のポジションが後ろ過ぎた分だけ掲示板には載れませんでした。
4着のエングローサーについて
ダートGⅠを勝ったトランセンド産駒のエングローサーはしっかりとストライドを伸ばして4着と好走。上位とは力の差があった4着とは言え、芝向きらしいキレる脚を使っていたのは好印象。このしなやかさは母系に入るTom FoolとHabitatによるもので、下り坂のある京都の外回りコースでの走りを観てみたい1頭です。
この馬を管理する清水久詞厩舎は2歳戦が好調。ここもその勢いのままに管理馬が好走しました。清水久厩舎の2歳戦の成績については下の記事をご覧下さい。
清水久詞厩舎は'17年の2歳戦が絶好調!?ーー注目馬をピックアップ! - ずんどば競馬
まとめ
厩舎の勢いそのままに中内田厩舎が重賞制覇。今年も期待の2歳馬が続々と入厩していることから、来年の活躍も楽しみになりました。また、厩舎の看板馬と言えるGⅢ平安Sを圧勝したグレイトパールは骨折休養中とあって、よりフロンティアやダノンプレミアムといった2歳馬の活躍に注目が集まります。
皆様にとっても素晴らしいレースになりましたでしょうか?
以上、お読みいただきありがとうございました。