オークス('17年)はハービンジャー産駒が大攻勢?ーーモズカッチャン他

f:id:hakusanten:20170516214810j:plain

'17年の3歳世代は牡馬・牝馬ともにハービンジャー産駒の活躍が目立っています。皐月賞2着のペルシアンナイト、フローラSを勝ったモズカッチャンとクラシックを狙える馬が登場しただけではなく、すでに2勝以上を上げている馬も多いので質量ともに揃っていると言えるでしょう。

5月21日に東京競馬場で行われる牝馬クラシックの第2冠オークス(優駿牝馬)に出走を予定しているハービンジャー産駒は5頭(内1頭のアドマイヤテンバは抽選対象)。フローラSの1、2着馬のモズカッチャンとヤマカツグレース、2勝馬のディアドラとモーヴサファイアと出走が確定している4頭もオークスで好走する魅力がたっぷりの馬たちがスタンバイ。今回の記事ではハービンジャー産駒の特徴と上記の4頭について解説をしていきます。

 

ハービンジャー産駒の特徴(適性)の変化

ハービンジャー産駒はデビュー当初、パワー型で小回り(内回り)向き、GⅠを勝ち切るまでの底力は……と言われていました。その当時の主な特徴をまとめるとーー

 

1. 洋芝向きのパワー

2. 小回り内回り向き

3. 直線平坦がベター

4. 重馬場は不得手

5. 瞬発力が武器だが……

 

ハービンジャー産駒は仕上がりが早く、2歳の函館や札幌、小倉などの新馬戦でデビューをする馬が多く、初年度から好成績を出していたことから、洋芝向きのパワーと小回り向きの器用さを持っているというイメージが定着しました。ただ、新馬を勝ち上がっても2勝目を上げる馬がなかなか現れなかったこともあって、「ハービンジャー産駒は2勝目の壁がある」などと揶揄されたのも記憶に新しいところです。

初年度産駒の初重賞は、現役のオープン馬として活躍しているベルーフが勝ったGⅢ京成杯。その翌年もプロフェットが京成杯を制したことで、やや時計のかかる中山などの小回りコースが適性として合っているというイメージがファンの間にも浸透し始めます。

クラシック・トライアルの時期になると、評判になっているディープインパクト産駒とレースで対決することになり、どうしてもハービンジャー産駒が直線でキレ負けしてしまうシーンを目にすることが多くなり、「瞬発力はあるもののディープインパクトには劣る」という評価を受けることに。

 

'17年に変化が……

今年のクラシック路線、ペルシアンナイトのアーリントンC、モズカッチャンのフローラSと重賞制覇の舞台は直線の長い外回りと東京コースでのものでした。ペルシアンナイトは母系のNureyevを感じさせる重厚なストライドでの差し切り、モズカッチャンは回転の速いピッチでびゅんと弾けたように、それまでのハービンジャー産駒「らしく」ない勝ちっぷり。

また、重賞勝ちだけではなく、「2勝目の壁」を打ち破る馬も多く、これは育成や調教などハービンジャーの特質を生産者側が掴んできたのもあるのかもしれません。それと、今年はディープインパクト産駒の大物が少ないのも影響していると思います。

 

オークスに出走予定の4頭を解説

優先出走権、獲得賞金によってオークスの出走枠に入っている4頭、モズカッチャン、ヤマカツグレース、ディアドラ、モーヴサファイアをピックアップして解説します。1勝馬アドマイヤテンバ(エルフィンS2着)は抽選対象なので、ここでは除外。

 

モズカッチャン

未勝利→3歳500万下→フローラSと3連勝してオークスへ駒を進めてきました。勝ち上がった3戦は小倉→中山→東京とすべて異なるコースのもの。初重賞制覇となった前走のフローラSは上り33.9の鋭さで、この馬はキレるハービンジャー産駒なのだと言えます。

フローラSの行われた春の東京開幕週は、開催前に路盤を柔らかくするエアレーション作業が施され、クッションの効いた走りやすい馬場。以前のように開幕週の前残りではなく、路盤が柔らかいことも影響して差し追い込みも決まる馬場になっていました。時計はそこまでかからないもののクッションの効いた芝はハービンジャー産駒にとっては大の得意条件。フローラSもそのことを考えれば納得の結果になりました。

モズカッチャンの長所はその操縦性の高さとピッチ走法らしい加速力です。1枠からのスタートだったフローラSはコースロスなく立ち回ったのも好走の要因ですが、それ以上に進路を探しながら馬群をすり抜けた器用な加速力がとくに目立ちました。 

hakusanten.hatenablog.jp 

オークスに向けて

オークスに向けての不安な点は2つあります。

1.間隔が詰まった中での関東への長距離輸送

ここ2戦は中山→東京と関西馬のモズカッチャンにとっては2度の長距離輸送となっています。オークスでは再度の遠征になるため、間隔が詰まっているなかでの輸送は疲労が残っていないか、そして、当日のテンションも不安な部分です。

2.ピッチ走法のためスローが希望

フローラSを脚の回転が速いピッチ走法で差し切ったように、本質的には直線の長い東京で勝ち負けするにはスローが希望。ペースがそこそこ流れるとストライド走法の差し馬に伸び負けするおそれがあるので、レースでの展開が好走への大きな鍵になります。

3連勝は高い能力がないとなかなか出来ないものなので、オークスでの好走の期待が高まるモズカッチャン。ここ最近、手綱捌きが冴え渡っている和田騎手を背に有力馬を打ち負かすことができるのかに注目です。

 

ヤマカツグレース

3歳初戦となったフィリーズレビューで5着と敗れ、その後の君子蘭賞も逃げたカワキタエンカを捕まえきれずに2着。ここで賞金を加算できなかったことで、オークスに向けてフローラSへ参戦してきました。

フローラSは初めての2000mのレースということで折り合い重視で運び、逃げるタガノアスワドを直線に向いて交わすと、道中のスローペースを利してゴール前までしぶとい粘りを見せての2着。33秒台の末脚を使ったモズカッチャンには差されたものの、ディープインパクトの評判馬フローレスマジックを最後まで抜かせない勝負強さを見せ、中距離でも十分に力を発揮できることを示してオークスへと向かいます。

兄のヤマカツエース(父キングカメハメハ)と同じように、本来は小回りや内回りで持続力のある末脚を活かしたいタイプで、フローラSの2着はスローペースに助けられた部分はあったとしても、直線の長い東京でこのパフォーマンスを見せたのは力をつけている証拠です。配合的にも強いクロスを持たないので、兄と同じように本格化するのは古馬になってからだとは思いますが、2歳の早い時期から素質を見せていた馬、オークスでも楽しみな1頭です。

 

オークスに向けて

今年のオークスのメンバーは明らかに前が薄い組み合わせです。血統的に2400mの距離に大きな不安はないとは言え、この馬もスローには落としたいでしょうから、前付けして後ろの馬が牽制するような展開になればアレヨアレヨと粘ることも考えられます。

この馬も適性としては内回り小回り向きの機動力に長けたタイプで、長い直線の東京コースだとスローペースが希望。ただ、先週のヴィクトリアマイルのようにスローからの上り勝負だと分が悪く、できることなら上り34秒台後半のレースに持ち込むことができれば……。スタートに不安がない馬なので、横山典騎手の先行策と考えると当日の人気以上に怖い1頭になりそうです。

 

ディアドラ

2歳時は馬群を割ろうとするとためらう面があり、直線で大外に出さないとバキューンと伸びない馬でした。

年明け2戦目となった桜花賞トライアルのアネモネSでは、シュタルケ騎手のイン差しがズバッとハマり、馬群を抜け出してライジングリーズンに迫ったのは精神面での成長を十分にうかがえる走り。続く桜花賞は最後の直線で大外をグイグイと目立つ伸びを見せての6着。この時点で1勝馬としての賞金しか獲得していなかったため、矢車賞に出走して1着を取ってオークスへの出走を確定させました。

桜花賞で6着に入ったことが大きな自信になったのか、前走の矢車賞は他馬とは力が違うというような余裕十分な走りを見せ、上り33.8での完勝。この馬もキレるハービンジャー産駒で、東京の長い直線は適性としてはベストです。

 

オークスに向けて

母系は日本で多数の活躍馬を出しているソニンク牝系。この系統はランフォルセやノーザンリバーなどダートで活躍する馬が目立ちますが、そのパワーがストライド走法とマッチしてこの切れ味につながっているのでしょう。馬体を見ても2000mは十分にこなせるはずで、折り合いさえつけばオークスでも好走する可能性は十分にあります。

不安点は、中1週という間隔の詰まったなかで長距離輸送で体調ともども整っているのかどうか……これに関しては走ってみないと分からない部分は大きいですが、ペルシアンナイトと同じような重厚なストライドは東京コースでこそのタイプです。人気がないようであれば、積極的に狙いたい1頭。

 

モーヴサファイア

胴長で牝馬としては恵まれた馬格のある中距離馬。走っているフォームがとても見栄えのする馬で、素質を感じさせます。

前走のあすなろ賞は前半1000mの通過が59.2のペースを中団からの捲りで快勝。牡馬混合戦、2000mのレースとしては強い内容で、ストライド走法のこの馬にとって小倉は適性としてはズレているはずのところを勝ち切ったのは能力が高いからこそでしょう。

ブラックスピネルの半妹で、スパッとキレる脚はありませんが、近親のダンビュライトと同じように持続的な脚で粘り強い走りが最大の長所です。

 

オークスに向けて

アクシデントで忘れな草賞を回避し、あすなろ賞からオークスへの直行となるローテーションはマイナスではあるものの、馬体や血統、そして何よりもその重厚なストライドを見ていると、「もしかしてオークスでも」と感じさせる好素質馬です。

2400mという距離はこの馬にとっては力を発揮できるベストの舞台で、大跳びのストライド走法ですから東京コースもずんどば!

個人的には吉田和美氏の所有馬ということでそれだけでも応援したくなります。オークスの最後の直線でモーヴサファイアが伸びてきたら、カズミ、カズミと連呼してしまうでしょうね。

 

まとめ

今年のオークスに出走するハービンジャー産駒はなかなか粒ぞろいの4頭が揃いました。

個人的な期待度としては、ディアドラ>モーヴサファイア>ヤマカツグレース>モズカッチャンという順序ですが、それぞれの馬が力を発揮できれば、好走する可能性は十分にあり得ます。

GⅠにまだ手が届いていないハービンジャー産駒、この4頭の内のどの馬かがそれを打ち破ることができるのか?

今からレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうました。

 

関連記事

hakusanten.hatenablog.jp

 

hakusanten.hatenablog.jp