ロードカナロア産駒のアーモンドアイは桜花賞(2018年)を好走できるのか?

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3歳牝馬クラシックの第1冠「桜花賞」は阪神芝1600mを舞台に行われます。今年の1人気はデビューから4連勝で臨む2歳女王のラッキーライラック。前走のチューリップ賞は阪神JF(GⅠ・阪神芝1600m)の再戦となったリリーノーブルやマウレアを寄せ付けない走りで、クラシックへ向けて上々のスタートを切りました。

桜花賞は15年ルージュバック、16年メジャーエンブレム、17年ソウルスターリングと3年続けて「単勝1倍台」の人気馬が連対を外しているレース。それだけに、圧倒的な1人気に推されるラッキーライラックも安心はできません。

2歳女王に挑戦する若き乙女たちのなかで、もっとも未知の魅力があるのは、シンザン記念(GⅢ・京都芝1600m)を快勝したアーモンドアイ。直線大外をズドーンと差してくる脚は、荒削りながらも豊かな素質を感じさせるのに十分なもの。桜花賞はこの馬の好走があるのでしょうか?

 

新種牡馬ロードカナロア産駒の素質馬

アーモンドアイの父ロードカナロアは2017年の「2歳リーディング」で2位に入り、新種牡馬として好スタートを切りました。産駒は父譲りのスピードと穏やかな気性をもち、しなやかなストライドで走るのが最大の特徴です。

 

アーモンドアイとステルヴィオ

初年度産駒(現3歳)を代表するのは、牝馬アーモンドアイと牡馬ステルヴィオの2頭。ともに走りと脚質が似通っており、「ロードカナロア産駒のスタンダード」と言えます。

 

2頭の特徴は?

ロードカナロアの代表産駒とも言われる2頭の特徴は以下の通りです。

1. ストライド走法

2. 穏やかな気性

3. 適性距離はマイルよりも長め

 

ストライド走法

ロードカナロアはスプリンター(1400mベストのスプリンター)としては体質が柔らかく、ストライドの伸びる走りをするのが特徴でした。

もてるスピードの値がもともと高いため、小回り・内回りのスプリント戦でも先行していましたが、マイルの安田記念を中団からバキューンと差し切ったように、本質的には直線の長いコースを得意とします。

産駒にもその特徴は受け継がれており、アーモンドアイとステルヴィオはともに「しなやかなストライド」で走り、直線の長いコースがベストです。

 

穏やかな気性

父はスプリンターらしい「前進気勢」の強い馬ではなく、レースにおいて「ガッーとかかってしまう」ような姿を見せることはありませんでした。おっとりとした穏やかな気性だからこそ、マイルGⅠの安田記念を制することができたのでしょう。

産駒はレースでかかるシーンを見せることが少なく、スピードの違いで逃げ・先行することはあるものの、中団〜後方からバキューンと差す脚を発揮する馬が多く出ています。

 

距離適性は長め

産駒は父よりも長めの距離をこなし、ベストの距離は1600〜2000m。おっとりとした気性からレースにおいてかかるところがなく、しなやかな体質は追走に脚を使う速いペースが合わないことから、マイルよりも長い距離に向く馬が多いと言えます。

アーモンドアイとステルヴィオはマイルの速いペースだと騎手がやや促すような追走になっており、本質的には1800m以上の距離がベストでしょう。

 

2頭の血統は似通っている

アーモンドアイとステルヴィオの2頭はその血統構成も似通っています。前者の母フサイチパンドラは父サンデーサイレンス×母父Nureyev、後者の母ラルケットは父ファルブラヴ×母父サンデーサイレンスという配合。

Nureyevは名牝Specialを母にもつNorthern Dancer直仔。ファルブラヴの父フェアリーキングはNureyevと4分の3同血の間柄ですから、フサイチパンドラとラルケットは父と母父を逆さまにした血統構成です。

アーモンドアイはNureyev5×3のクロス、ステルヴィオはNureyev≒フェアリーキング5×3のニアリークロスをもち、ともに名牝Specialの「キレ」が発現しています。この2頭がともに長い直線でバキューンとキレる脚を使うのは、似通った配合形だからです。

 

アーモンドアイ 2歳牝馬

父:ロードカナロア

母:フサイチパンドラ(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:国枝栄(美浦)

生産:ノーザンファーム

騎手:C・ルメール

アーモンドアイとステルヴィオは管理する厩舎と所有する馬主が異なるとは言え、「ロードカナロア産駒+ノーザンファーム生産+C・ルメール騎手」の組み合わせで、それぞれ桜花賞と皐月賞に臨みます。

ルメール騎手はアーモンドアイの新馬→未勝利の2戦に乗っていますし、「ノーザンファーム+シルクレーシング」の主戦騎手ですから、間違いなく最良のパートナーです。

✳︎シルクレーシングはノーザンファーム生産馬のプリモシーンを桜花賞に登録していますが、騎手は戸崎騎手を予定しています。

デビュー戦の新潟芝1400mは内回りコースと距離で2着と取りこぼしたものの、未勝利→シンザン記念は直線の長いコースをしなやかなストライドでバキューンと差し切りました。この馬の適性から考えれば、初めてとなる阪神の外回りコースは不安よりも期待の大きい舞台です。

 

血統

ロードカナロアはその母レディブラッサムのしなやかさを産駒に高確率で伝えるため、どんな繁殖に配しても「柔らかい体質」の仔を出します。種牡馬の方向性としてはその父キングカメハメハよりもディープインパクトに近いと言えるでしょう。

母フサイチパンドラはエリザベス女王杯を制したGⅠ馬(1位入線のカワカミプリンセスが降着となり、繰り上がりの1着)。繁殖としてはここまで「大物」を出してはいないものの、コンスタントに勝ち上がる産駒が多いのが特徴です。

アーモンドアイはNureyev5×3のクロスにより、柔らかいロードカナロアの体質を締め、ズドーンと差し脚を伸ばす「キレ」を引き出しています。おっとりした気性の父と中距離のGⅠ馬の母の配合からも、ベストは直線の長い1800m以上のレース。そのため、桜花賞よりはオークス向きの配合です。

 

桜花賞に向けて

ノーザンファーム生産馬とあって桜花賞に向けての「準備」は問題ありません。不安は次の3点が上げられるでしょう。

1. マイルの距離

2. ローテーション

3. 重馬場→消耗戦

 

マイルの距離

似たような配合のステルヴィオがスプリングSではマイルからの距離延長の影響あったのか、それまでよりも追走が楽になっていたように、アーモンドアイも本質的にマイルは短い……。

中距離馬がマイルで好走するには「高速馬場+前傾ラップ」にならないことがひとつの条件です。中距離馬は前半800mが46.0あたりの通過になると、追走に脚を使ってしまい、直線でバキューンと弾けることができません。

昨年の安田記念は前後半800mが45.5 - 46.0(1分31秒5)の速いペースとなり、中距離馬のステファノスは7着と敗れました。高速馬場で前傾ラップになると、1800m以上がベストなアーモンドアイにとっては苦しくなるでしょう。

 

ローテーション

桜花賞や皐月賞などの春のクラシックは「伝統」のあるレースのため、好走馬のローテーションはほぼ固定されます。アーモンドアイはシンザン記念から3ヶ月近くの休養明けとなる異例のローテとなり、不安がまったくないとは言えません。

管理する国枝栄調教師が早くからシンザン記念→桜花賞のローテーションを打ち出しており、GⅠに向けての準備はしっかりと整えた上での出走となるはずで、「このローテだから好走できない」とは思わないものの、こればかりは走ってみないとわかりません。

牝馬3冠のアパパネを管理した国枝調教師+ノーザンファーム生産馬とあって、レースに向けての調整に抜かりはないはずです。馬券を買う場合にはこのリスクとオッズが見合うのかの判断となりますね。

 

重馬場→消耗戦

阪神競馬場は週末に雨の予報が出ており、馬場の悪化が心配されます。アーモンドアイは雨のなかで行われたシンザン記念を快勝していることから、渋った馬場そのものは苦にしないものの、重馬場→時計がかかる→上りのかかる消耗戦になると不安が……。

しなやかストライドの馬は頑強なパワーを求められる前傾ラップの消耗戦は最も苦手としているため、この流れだけは避けたいところでしょう。桜花賞の日に時計のかかるタフ馬場になっているようだと不安です。

 

ロードカナロア≒ディープインパクト

桜花賞はもともと「ディープインパクトの娘を買っていれば当たる!」と言われたほどのレース。初年度産駒のマルセリーナからハープスターまで4連勝を上げるなど、舞台相性は抜群です。

ディープと似たしなやかさをもつロードカナロア産駒も桜花賞と好相性の可能性があり、ハープスターが勝ったときのように「大外バキューン」の利く展開と馬場であれば、アーモンドアイにも勝つチャンスは十分にあります。

 

まとめ

シンザン記念からのぶっつけという異例のローテながらも、ノーザンファーム生産馬+C・ルメール騎手のコンビで未知の魅力を秘めたアーモンドアイは桜花賞を2人気で迎えることになりそうです。

ラッキーライラックにストップをかけることができるのか、今からレースが楽しみですね。

以上、お読みいただきありがとうございました。