中距離馬とマイラーの追走力の差ーー桜花賞(2017年)回顧

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2017年、クラシック第1冠目の桜花賞は無敗で挑んだ1番人気ソウルスターリングが3着に敗れ、勝利したのはフィリーズレビュー2着から巻き返したレーヌミノルでした。2着には追い込みに徹したリスグラシューが入線。

 

日曜日には雨が上がり稍重まで回復した阪神芝コース、桜花賞の勝ちタイムは1:34.5で前半と後半800mのバランスは46.5 - 48の前傾になりました。3角前でカワキタエンカが大外から注文をつけてハナに立ち、離し逃げの形になったので、実質は集団を率いた2番手のヴゼットジョリーがペースメイカーに。

ヴゼットジョリーを目安にすれば、桜花賞はほぼイーブンのペース。これを4番手から直線早めに先頭に立って押し切ったレーヌミノルはマイラーとしての完成度が他の馬とは違っていたのでしょう。

 

有力馬について

1番人気のソウルスターリングは3着、2番人気のアドマイヤミヤビは12着、3番人気のリスグラシューは2着の入線となりました。ここでは有力馬3頭について解説します。

 

ソウルスターリング

 スタートから阪神JFやチューリップ賞のような行き脚がつかずに中団の外目を追走。道中はスムーズに折り合い、4角手前からルメール騎手が徐々に促して前との差を詰めます。直線、馬場の真ん中に出すと5番手から前を捕らえに追い出されますが、伸びはジリジリで、先に抜け出したレーヌミノルとの差を詰めることができません。残り200mを切ってからも伸びずバテずの内容で、最後は外から迫ったリスグラシューに交わされての3着。ぴゅっと前を捕らえる脚がなかったことと、稍重の馬場で追走に脚を使ってしまったのが末脚に影響したのかもしれません。

ソウルスターリングの本質は中距離馬なので、マイラーのレーヌミノルが勝つようなレースだとどうしても遅れをとってしまいます。ただ、桜花賞でもバテずにジリジリと脚を使い、大きく崩れなかったのは評価できるもの。オークスでは追走も楽になるので、巻き返しに期待したいですね。

 

アドマイヤミヤビ

スタートからMデムーロ騎手が促しますが行き脚がつかずに後方から。3角過ぎから手綱を動かしながらの追走になり、フォレストレートでは鞭が入ります。直線で大外に出して追いますが、残り200mの地点ではデムーロ騎手も強く追うのを止めてしまい12着。

パワーに勝った中距離馬で、ソウルスターリングと同様に追走で脚を使ってしまって大敗を喫する結果になりました。戦前からマイルでの追走は不安な点がありましたが、それが現実となってしまったのが残念です。オークスでは追走が楽になる分、百日草特別やクイーンCで見せた末脚が見せられる可能性は高まります。

ただ、牝馬が大敗から巻き返すのはかなり大変なことなので、外厩調整も含めて立て直しができるかが今後の注目です。

 

リスグラシュー

スタートを五分に出ると、逃げ・先行馬を行かせて自然と中団の位置へ。道中はソウルスターリングの内を追走し、4角手前から武豊騎手が押っつけながら仕掛けて直線を向きます。ソウルスターリングの外からじりじりと前との差を詰めて残り200m過ぎから持続力のある脚で追い込み2着。

勝負ところの4角でモタついてしまうのは、この馬もソウルスターリングやアドマイヤミヤビと同じように中距離馬だからで、最後の200mのドッシドッシと追い込む脚は母系に入るMill Leefの重厚さから来ているのでしょう。

この馬も桜花賞よりはオークス向きで、武豊騎手としてはクラシックの2冠目に確かな手応えを感じた2着だったのではないかと思います。

 

本質的には中距離馬の3頭は、馬個体の能力でマイルをこなすのが厳しかったという内容の敗戦でした。追走で脚を使ってしまった分だけ、最後詰め切れなかったのはマイラーとしてのスピードの乗りがレーヌミノルに劣っていたからだと言えます。

 

レーヌミノル

マイラーらしく、直線で先頭に立っての押し切りは見事でした。池添騎手の積極的なレース運び、馬場やペースを最大限に味方につけたこと、桜花賞に体調のピークを持ってきたことなど勝因はさまざまだと思いますが、力のない馬にはできないことで、マイルの距離での完成度はこの馬がもっとも高かったのだと証明した1戦になりました。

クイーンC→フィリーズレビュー→桜花賞というローテーションからも、距離の適性が1400>1600mだと認識していたので、ソウルスターリングとリスグラシューを後ろに従えての押し切り勝ちには脱帽するしかありません。

フィリーズレビューの1、2着馬が揃って桜花賞で好走できたのは、後半800mのラップから推測できます。ラストの半マイルは11.8 - 11.5 - 11.9 - 12.8の失速ラップで、これは阪神内回り1400mでよく現れる流れと似ています。1400ベストの馬が失速ラップを味方に好走したのが2017年の桜花賞で、上りの3Fをバキューンと差すようなレースにはなりませんでした。

レーヌミノルがハイペースのフィリーズレビューで、直線先頭から内に大きく切れ込んで複数の馬の進路を妨害したのは褒められたものではないですし、鞍上の浜中騎手は重い制裁を受けましたが、トップジョッキーが乗ってもびゅんと加速した時に制御できないのはそれだけの脚があるからで、その脚が桜花賞で花開いたのだと思います。

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カラクレナイ

4着に好走したカラクレナイは、ストライドを伸ばした走りで、現時点では力を100%出し切ったの敗戦。直線で前との差を詰める時の脚は1番鋭かったものの、2着のリスグラシューに伸び負け、3着のソウルスターリングを交わせなかったのは外マイルだと末脚比べで苦しくなってしまうからでしょう。

内回り・小回りでの田辺騎手の捲りは現役NO.1ではないかと思うほどに素晴らしく、9Rの内回り忘れな草賞も計ったような捲り差しで勝ったように、カラクレナイの直線でのスピードの乗せ方は抜群でした。ただ、最後の最後で苦しくなったのは馬個体のポテンシャルに上位とは開きがあったのだと言わざるを得ません。

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オークスに向けて

桜花賞ではマイル向きのレーヌミノルとカラクレナイの間に割って入ったのが中距離馬のリスグラシューとソウルスターリング。

これが東京の2400mという舞台でどのように着順が入れ替わるのか?

中距離馬の3頭はオークスでの巻き返す可能性の高い馬たちですから、今から楽しみが広がりますね。

 

予想

 ◎ソウルスターリングは3着。◯ゴールドケープは13着、▲ベルカプリは17着とトンチンカンな予想になってしまいました…

チーン…

馬場の重さ以上に、マイルでの追走力が問われたレースになったために、ソウルスターリングは無敗の桜花賞馬になることができず。

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まとめ

牝馬3冠は桜花賞(阪神芝1600m)、オークス(東京芝2400m)、秋華賞(京都芝2000m 内回り)とコース距離共に異なる舞台でレースが行われます。マイルから中距離までの距離をこなし、内回りのコースでのコーナリングの器用さも問われる、そのようなすべての面で優れた牝馬だけが3冠馬となれるわけですから、どのようなレースでも1着になるというのは本当に難しいことなのだ、と改めて痛感した桜花賞。

レーヌミノルは阪神JFとクイーンCでソウルスターリングとアドマイヤミヤビに完敗の内容で、だからこそ桜花賞では低評価(8人気)に甘んじたものの、それを覆す走りを見せるのですから、競馬は難しいと同時に面白いものだな、と思うのです。

クラシックの第2冠目のオークスではどのような結末になるのか? 今からレースが楽しみになりますね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。