GⅡローズS('17年)は「世界的良血馬」ラビットランの圧勝劇!ーーレース回顧

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秋華賞トライアルのGⅡローズSは3日間開催の中日となる9月17日(日)、阪神芝1800mの外回りコースで行われ、「世界的な良血馬」ラビットランが直線大外をしなやかに伸びて逃げるカワキタエンカを交わして1着。春のクラシックを賑わせたトップレベルの牝馬たちをまとめて負かし、ラビットランが世代屈指の能力を持っていることを示した1戦となりました。2着にペースを緩めることなく逃げたカワキタエンカ、3着に後方から追い込んだリスグラシューが入線。勝ちタイムは1分45秒5(良)。

 

世界的良血馬の圧勝劇

ラビットランの母AmeliaはBCジュヴェナイル2着のHe's Had Enough(父:Tapit)など米国のGⅠや重賞レースで活躍する仔を出している名繁殖牝馬。日本では現3歳のラビットラン(父:Tapit)と小倉2歳ステークスを勝ったアサクサゲンキ(2歳牡馬 父:Stormy Atlantic)の2頭がJRAで出走し、どちらも重賞ウィナーとなりました。

繁殖牝馬情報:牝系情報|Amelia(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)

米日と国を問わず、芝・ダートも不問の仔を出しているAmeliaは名繁殖牝馬Courtly Deeにさかのぼる牝系。ラビットランの父Tapitは現在(2017年9月17日)、北米サイアーランキング4位(BloodHorse.com)に位置し、A.P. IndyやUnbridledなど北米のしなやかな血が凝縮した名血・名種牡馬です。「世界的な良血馬」と言えるラビットランはGⅡローズSを制したことで、競走馬としただけではなく繁殖牝馬としての価値も高めました。

数年後、ラビットランとディープインパクトの仔がセレクトセールに上場されたら、どれほどの落札額になるのか、もう今から胸がドキドキします。

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ラビットラン 3歳牝馬

父:Tapit

母:Amelia(母父:Dixieland Band)

厩舎:角居勝彦(栗東)

京都ダート1400mの新馬戦を楽勝すると、その後ダートを2戦してから芝へと路線を変更。前走の芝1600m戦(500万下)を後方から大外一気の脚で勝利したことで、ローズSへと駒を進めることができました。

北米の名種牡馬が代々かけられたラビットランはしなやかで軽い走りをするのが大きな特徴で、ストライドを伸ばせる直線の長いコースであれば芝・ダートは不問。阪神芝外回りコースのローズSは適性としてずんどばの舞台で、直線の坂を鋭く駆け上がってくるファームからはパワーも十分に感じさせます。

春のクラシックを賑わせた実績馬を相手に大外一気の勝利は、高い競走能力がないとできない走り。今後のGⅠに向けて大きな展望が拓ける勝利となりました。

 

秋華賞に向けて

ラビットランはしなやかにストライドを伸ばすので、直線の長いコースがベストの馬。京都内回りコースの秋華賞よりも外回りのエリザベス女王杯でパフォーマンスが上がるタイプで、次走はコーナーを器用に回れるのかがキーポイントになります。ラビットランのイメージは、ローズSでミッキークイーンを豪快に差し切ったタッチングスピーチをもっとしなやかにしたタイプだと言えるでしょう。

 

血統

アサクサゲンキの勝った小倉2歳ステークスのレース回顧でも書いたように、とにもかくにも母Ameliaの血統が素晴らしく、どのような父を付けても高い確率で「走る仔」を出せるのは、この馬の繁殖牝馬としての傑出した能力を示すものと言えます。アサクサゲンキは父Stormy Atlanticがどうこうというより、母系の良さが出ているからこそ重賞を制することができたのであって、これだけハイレベルの牝馬の仔が日本で2頭も走っているのは嬉しいかぎりです。

ラビットランは父Tapit×母父Dixieland Bandという配合と現在の体型から考えても、2000m前後の距離がベスト。母Ameliaからは良質なパワーとスピードを、父Tapitからはしなやかさとスピードを受け継いでおり、芝はまったく問題がありません。

吉田和子氏の所有馬だと「社台ファーム」で繁殖となる可能性が高く、ラビットランは非サンデーサイレンスの血統ですから、初年度からディープインパクトを付けるのでしょう。桜花賞やオークスの直線をバキューンと弾けて差す馬が産まれそうですね。

 

秋華賞への権利を確保した2頭

ローズSの2着カワキタエンカと3着リスグラシューが秋華賞への優先出走権を獲得しました。前者は素晴らしいペースの逃げで、ラビットランを除く後続馬を完封の内容。後者はオークスから+4kgとまだ細い身体つきでの出走となりましたが、阪神芝1800mはベストの条件だけにしっかりと脚を使って3着を確保しました。

 

2着:カワキタエンカ

ハイペースの桜花賞を逃げて7着に粘ったカワキタエンカが、ローズSでも果敢にハナを切ると前半1000mを58.6秒で通過し、後続馬に脚を使わせるペースにもち込みました。

秋の阪神は全体的に時計が速く、雨で「重」になった土曜日でも2歳OP野路菊Sのワグネリアンが上り3F33.0で突き抜けたように、直線の路盤は硬いまま。良馬場に回復したローズS当日も路盤はそれほど柔らかくはならずにこの好時計。JRAの馬場は天候を抜きにしても本当に読みにくいですね……。

 

秋華賞に向けて

スタートセンスが良く、二の脚も速いためすんなりとハナに立つことができる馬。気性的な問題で「逃げ」ているというよりも、ディープインパクト産駒としては瞬発力に優れたタイプではないので、前々のレースを選択しているということでしょう。

父ディープインパクト×母父クロフネの血統。走りからはパワーもしなやかさも感じさせます。デビューから7戦のすべてが直線の長い外回りコースの出走となり、京都芝内回りで行われる秋華賞へのコース適性は未知数。

コーナーでスピードを上げながら後続の脚を削ぐペースにもち込み、ローズSのように瞬発力勝負にしないレースがベター。今回、時計の速いレースにも対応し、京都の芝も大きな不安はありません。

 

3着:リスグラシュー

オークスから+4kgしか体重を戻せず、一夏を越しても馬体をふっくらと見せることはできませんでした。ハーツクライ産駒としては完成が早めで、母リリサイドのクロスのうるささが影響しているのか、春先以上にパワーアップした印象はなく……。それでもローズSで3着に入線したのですから、力はあります。

ローズSの行われた阪神芝1800m外回りは、持続的な脚でズドーンと差したいリスグラシューにとってはベストの舞台で、締まったペースでレースが流れたのも向きました。休養明けの分を割り引いたとしてもラビットランには完敗の内容ですから、ベストのコースで力負けをしてしまったのは今後に向けて不安が先行します。

 

秋華賞に向けて

ハーツクライ産駒は京都芝のGⅠは未勝利。直線が平坦で、瞬発力勝負になりやすい舞台は不向き。ただ、今年のシュヴァルグランを含めて天皇賞・春は4年連続の2着。スタミナに優れたハーツクライは京都の下り坂をそれほどには苦にしない(得意というわけではない)ので、相手に取るのはOKです。

リスグラシューにとって京都芝の内回りコースは割引で、今走の馬体からもさらなる上積みは「?」が付き、秋華賞は苦しいレースになるでしょう。ラビットランと同じようにストライドで走るので、直線の短い秋華賞はハイペースからの持続戦になれば上位にも……。

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その他の注目馬について

1番人気に押されたファンディーナは+22kgとキッチリ馬体を戻したものの、パドックでは春先よりもテンションが高かったのがレースに響いたのか、6着と敗れました。直線に向いてガス欠したように伸びないというのは、皐月賞と同じような敗戦。競走能力うんぬんというよりも精神的な問題のある負け方で、緩い馬体が絞れたときにさらにレースでのテンションが高くなってしまうのは心配です。馬体は相変わらず見映えがして素晴らしく、復活の走りが観たい1頭です。

5番人気のミリッサは後方から追い込んでの4着。ストライドがしなやかに伸びるタイプではないため、直線の長い外回りコースでこの好走は素晴らしいの一言。母シンハリーズの仔らしいピッチ走法なので、内回りの秋華賞に替わるのは大きくプラスなだけに、ここで優先出走権を取りたかったところですが……。ただ、抽選だとしても秋華賞に出走して欲しい1頭。引き続き福永騎手なら期待がもてます。

7着のモズカッチャンは、カワキタエンカの作ったペースが合わずに敗戦。直線の長いコースであれば、フローラSやオークスのようにスローからの瞬発力勝負になった方がベター。内回りの秋華賞はコース適性としては合っているので、次走も内枠を引きたいところでしょう。

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ローズSは重馬場どころか高速馬場に……

ローズSの予想は重馬場になって、ズドーーーンと重厚なストライドで突き抜けられる馬をピックアップしましたが……。◎ブラックスビーチも▲メイズオブオナーにも苦しい馬場となりました。とは言え、◎は16着と大敗してしまったことから、重馬場になっていたとしてもズドーーーンと来たかは大きく疑問でしたね。ただ、走るファームは相変わらず素晴らしく、次走での巻き返しを期待したいところです。

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まとめ

紫苑SとローズSの2つのトライアルが終わり、秋華賞が楽しみになりました。現状ではディアドラとミリッサに注目。前者はハービンジャー産駒として初GⅠ制覇なるのかに期待をしたいです。

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世界的な良血馬のラビットランがローズSを制し、この馬が内回りの秋華賞でも豪快な追い込みを決めるとしたら、それはもう名繁殖牝馬Ameliaの血がなせるものとしか言いようがありません。外回りのエリザベス女王杯は秋華賞よりもベターの舞台ですから、このまま順調に行けば楽しみな1頭ですね。

皆さまにとっても素晴らしいレースになりましたでしょうか?

 

以上、お読みいただきありがとうございました。