皐月賞(2020年)は高速馬場になるのか? 上位人気のディープインパクト産駒2頭をズバっと解説!

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2014年、中山競馬場の芝コースは「排水性」を高めるために大規模な「馬場改修工事」を行いました。これにより、3歳牡馬クラシックの第1冠・皐月賞は近年、「高速馬場=時計の速い決着」が続いています。

 

皐月賞は高速馬場がデフォルト

馬場改修以降の皐月賞がどれほどの高速馬場になっているのか、レースの勝ちタイムを振り返ってみましょう。

2015〜19年の皐月賞の勝ちタイム

2015年:1分58秒2

2016年:1分57秒9(レースレコード)

2017年:1分57秒8(レースレコード)

2018年:2分00秒8

2019年:1分58秒1

2016年→17年と2年続けてレコード決着となったことからも、あきらかに高速馬場化しているのが分かります。

✳︎2018年は雨の影響を大きく受けた稍重馬場でのレース

 

高速馬場ならディープインパクト産駒

馬場が「軽く」なったことによる変化は時計面だけではありません。16年ディーマジェスティ、17年アルアインとディープインパクト産駒が2連覇。

また、稍重馬場だった18年を除けば、馬場改修工事以降のディープインパクト産駒は(2 - 2 - 2 - 9)。毎年かならず馬券に絡んでいる(3着以内)のも大きな特徴です。

時計のかかる(=上り3Fがかかる)中山コースで行われる皐月賞は、「ディープインパクト産駒にとっては鬼門」と言われていましたが、それも今は昔となりつつあります。

今週末は雨の予報が出ていることもあり、高速馬場で行われるかは不透明です。時計のかかるコンディションになるのか、それとも、ディープインパクト産駒の得意な「高速馬場」になるのでしょうか?

 

皐月賞の馬場コンディションは?

今週末は金・土曜日と雨の降る予報が出ています(15日現在)。皐月賞の行われる日曜日は「晴れ→曇り」となっていますが、当日がどのような天気になるのかはまだはっきりとしません。

先週は日曜日のメインレース・春雷S(OP・芝1200m)で1分08秒3の勝ち時計がマークされていたように、現在の中山芝は速いタイムの出るコンディションです。芝コースの排水性の高さを考えると、週末を通して雨が降り続くことがなければ、時計のかかるタフな馬場まで悪化はしないでしょう。

 

雨が降らなければ「超」高速馬場へ

JRAの馬場造園課は土・日曜日に「雨の予報」が出ている場合、週中〜末の散水を控えるのが一般的です。もし雨が降らずに晴天になると、馬場がより乾くために「高速化」します。

 

馬場が回復するのも早い

芝コースの時計が速くなるかどうかは、馬場に含まれる「水分量」によります。そのため、降雨があっても日差しが出て馬場が乾けば、すぐに速い時計の出るコンディションに回復するのです。

例えば、2017年の9月18日、前日の雨の影響で午前中は重馬場でのレースとなったものの、晴天に恵まれたことで午後にはみるみる回復し、メインレースのセントライト記念は「良」馬場で行われました。

そのレースを制したミッキースワローの上り3Fが33.4ですから、時計の速い馬場へとすぐに変化したことがわかります。

つまり、雨が降って芝が悪化したとしても、日差しによって馬場に含まれる水分量が減れば、すぐに速い時計の出るコンディションへと変化すると言えるでしょう。

 

ディープインパクト産駒をチェック!

もし、雨が降らないとなれば、皐月賞は速い時計の出る馬場でレースが行われることになります。今年は2年越しの「レースレコード更新」となっても驚けません。

高速馬場でのレースとなったときは、近年の傾向からもディープインパクト産駒に有利。とくに、1分58秒を切る勝ちタイムになると、1着まで突き抜けてしまいます。

今年の皐月賞に出走予定のディープインパクト産駒は以下の5頭。

コントレイル

サトノフウジン

サトノフラッグ

ラインベック

レクセランス

コントレイルとサトノフラッグは上位の人気に推されている2頭。とくに前者は東京スポーツ杯2歳S(GⅢ・東京芝1800m)で1分44秒5と破格のレースレコードをマークしており、高速馬場への適性の高い1頭と言えます。

今回の記事では、上位の人気に推されるであろうコントレイルとサトノフラッグの2頭に焦点を当て、血統やこれまでの走りをチェックしていきましょう。

 

コントレイル 3歳牡馬

父:ディープインパクト

母:ロードクロサイト(母父Unbridled's Song)

調教師:矢作芳人(栗東)

生産:ノースヒルズ

新馬→東スポ杯2歳S→ホープフルSとデビューから3連勝でGⅠを制覇した素質馬。この馬の最大の長所であるしなやかなフォームは、父ディープインパクトから受け継いだものでしょう。

ディープインパクトのA級産駒と同じく、適性に合うのは直線の長い東京コース。タイプとしてはダノンキングリーと似ており、ベストパフォーマンスを叩き出せるのは東京芝1800〜2000mでしょう。

 

血統

父ディープインパクト×母父Unbridled's Songは、ダノンプラチナなどのGⅠ馬が出る有名なニックス(正確にはディープインパクト×Unbridledがニックス配合)。

母ロードクロサイトは母系にStorm Catを引き(✳︎)、Unbridledの血を増幅するFappiano3×4のクロスをもつことから、よりディープインパクトとの配合的な親和性をアップさせています。

✳︎「ディープインパクト×Storm Cat」はキズナ、アユサン、サトノアラジン、リアルスティール、ラヴズオンリーユーなどGⅠ馬を多数輩出。

この馬の配合のアウトラインとしては2つの強力なニックスを併せもち、かつ母系はUnbridledとStorm Catという名血・名種牡馬の血を増幅させているのが大きな特徴です。

血統からもベストは東京芝1800m(高速馬場)で、東スポ杯2歳Sの走りがこれまでのベストパフォーマンスでしょう。

 

皐月賞に向けて

皐月賞と同じ舞台のホープフルSを完勝しているものの、そのレースぶりはレコード勝ちした東スポ杯2歳Sと較べるとややパフォーマンスを落としています。

ダノンキングリーと同じく操縦性が高い(ただし、ガツンと引っかかる気性面の脆さは抱えている)ため、好位〜中団でピタリと折り合えれば直線の短い中山芝2000mでもOKです。

気性的に危うい面があるので、前に壁を作りやすい内枠に入るのがベスト。ただ、これまでのレースとは異なり、多頭数のレースで福永騎手が最内枠から馬群を捌けるのか……ここが焦点になるでしょう。

皐月賞直行はダービーから逆算したローテーションを組んでのことですから、十分に仕上がっているとは言えません。また、「トライアルをスキップしてクラシック」というのはノーザンファームのお家芸だけに、ノースヒルズがこなせるのかは?が……(✳︎)。

✳︎非ノーザンファーム生産馬のデアリングタクトは、トライアルをスキップして桜花賞を制しましたが、そもそも馬場が悪くなったときはノーザンファーム生産馬の好走率が下がります

[注意点]

✳︎フォトパドックなどでコントレイルの前脚蹄にエクイロックスが塗布されていることから、巷間にて不安説が巻き起こっていますが、そもそも私たちはコントレイルの蹄がどのような状態なのかを知ることはできません。

エクイロックスがどのような影響を与えるのか、レースにならないとわからないのであれば、私たちはそのリスクを鑑みた上で馬券を買うだけです。

 

サトノフラッグ 3歳牡馬

父:ディープインパクト

母:バラダセール(母父Not For Sale)

調教師:国枝栄(美浦)

生産:ノーザンファーム

新馬戦こそ6着と敗れたものの、未勝利から報知弥生ディープインパクト記念までの3連勝は横綱相撲のレースでした。

こちらはコントレイルとは異なり、スタミナとパワーを活かした渋とさで勝負するディープインパクト産駒。ただ、ゴールドシップ的なゴリゴリのスタミナ&パワーではなく、高速決着もOKなタイプです。

 

血統

母バラダセールは亜オークスなどを制したアルゼンチンの3歳牝馬チャンピオン。母系はLyphardとSwapsを通じるHyperion、Bambucaのクロス(3代母La Bambuca2×2)を通じるSon-in-Lowとスタミナとパワーに優れた血を引きます。

HyperionとSon-in-Lowはニアリーな血統構成をしていることから、これらの血が父ディープインパクトのLyphardと脈絡し、渋とい末脚を武器とするサトノフラッグが産まれたのでしょう。

父ディープインパクト×母父Not For Saleの配合は、阪神JFを制したダノンファンタジーと同じです。ただ、サトノフラッグは馬体からもあきらかな中距離馬。走法からも直線の短いと中山コースを苦にしないパワーを秘めており、キレないディープインパクト産駒の典型例と言えます。

 

皐月賞に向けて

ノーザンファームの生産馬ですから、鞍上にC・ルメール騎手を迎えられたのは大きなプラスです。スタミナとパワーで押すタイプの馬だけに、中山芝2000mのコースもあっています。

ディープインパクト産駒としては「キレ」る脚がなく、上り3F33秒台は使えません。あまりにも高速馬場+スローな展開だとキレ負けする可能性もありますが、皐月賞のレース傾向にフィットした1頭です。

C・ルメール騎手はこの手のディープインパクト産駒に乗ると、しっかりと前目のポジションを取る傾向にあるので、好位をキープできるかがキーポイントになります。

また、前走の報知弥生ディープインパクト記念の完勝からもわかるように、この馬は重馬場を苦にしません。週末の天気予報から、雨が降ってもOKなのは大きなアドバンテージと言えるでしょう。

 

まとめ

皐月賞が高速馬場となった場合、注目しなければならないのはやはりディープインパクト産駒です。ただ、コントレイルとサトノフラッグは同じ父の産駒でもタイプが異なるため、馬券を購入するときにはそのことも頭の片隅に入れておくとベターでしょう。

今年の皐月賞は高速馬場になるのか、それともタフな馬場になるのか……好走するタイプがガラリと変わるだけに、馬場コンディションはしっかりとチェックしなければなりません。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。