紫苑S(2018年)に出走する良血馬フィニフティは秋華賞の優先出走権をゲットできるのか?

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中山競馬場の芝2000mで行われる紫苑S(GⅢ)は、3着以内の馬に秋華賞(GⅠ・京都芝2000m)への優先出走権が与えられます。今年の3歳牝馬路線の中心は、桜花賞とオークスの2冠を制したアーモンドアイ。この天才少女にストップをかける才媛は現れるのでしょうか?

 

紫苑Sは秋華賞に直結?

紫苑Sは2016年にOPから重賞へと格上げされてから、ヴィブロスとディアドラの関西馬2頭がここをステップにして秋華賞を制しています。これまで紫苑Sは秋華賞とつながらないトライアルとされましたが、重賞への格上げが素質のある関西馬を集めるひとつのキッカケとなり、それによってレースレベルが上がったと考えられます。

 

関西馬は?

今年の出馬登録のなかで関西馬は5頭。その内5人気以内に推されるのは藤原英昭厩舎の管理するフィニフティただ1頭です。名門厩舎のディープインパクト産駒とあって、ここで好走できるのかに注目が集まりますね。

ヴィブロス、ディアドラに続き、フィニフティが関西馬の3連覇を成し遂げられるのでしょうか?

 

フィニフティは紫苑Sを好走できるのか?

フィニフティは2歳の新馬戦を快勝した後に臨んだクイーンC(GⅢ・東京芝1600m)を2着と好走。クイーンCから直行した桜花賞は12着と大敗し、オークスに向かうことなく休養に入りました。

馬体重が420kg台の小柄な牝馬とあって、ガッチリとした身体をもつ全兄ステファノスとはややタイプが異なります。兄はパワフルな末脚を武器とし、コースを問わずにGⅠを好走していますが、フィニフティはディープインパクト産駒らしくしなやかなストライドで走るタイプです。

一夏を越して馬体に厚みが出てくるようになれば、兄のように小回り・内回りを3コーナーから捲る脚を使えるようになるでしょう。紫苑Sは小回りの中山コースで行われるので、馬体のパワーアップは必要不可欠です。

 

フィニフティ 3歳牝馬

父:ディープインパクト

母:ココシュニック(母父クロフネ)

厩舎:藤原英昭(栗東)

生産:ノーザンファーム

「ディープインパクト×フレンチデピュティ(クロフネの父)」はマカヒキやショウナンパンドラなどのGⅠ馬が出るニックス配合。ただ、母ココシュニックはパワーに優れたRobertoやDanzigなどの血を引くため、その仔はややしなやかさに欠けるのが特徴です。

全兄ステファノスはしっかりとした馬格があり、パワフルな末脚が最大の武器。国内外を問わず、さまざまなコースのGⅠで好走できるのはこのパワーによるものでしょう。そのため、GⅠ級となるにはパワーを活かせる「馬格」を必要とします。

 

フィニフティはショウナンパンドラになれるのか?

先にも述べたように、ショウナンパンドラとフィニフティは「ディープインパクト×フレンチデピュティ」の牝馬です。この2頭は重賞級の配合をしているものの、異なる点は母系に「しなやかな血」をもつかどうか……。

ショウナンパンドラはステイゴールドの母として知られるゴールデンサッシュ牝系の出身で、しなやかな「Princely Gift」などの血を引きます。それに対して、フィニフティはダート重賞路線で活躍したゴールドティアラを祖母にもち、しなやかさよりもパワーに優れた母系です。

祖母ゴールドティアラやフレンチデピュティのパワーを活かすには、それを支える筋骨量が必要です。フィニフティはパワーを活かす配合をしているため、しなやかなショウナンパンドラとは異なります。この馬がGⅠ級となるには、馬体がもう少し成長しないといけません。

 

紫苑Sに向けて

紫苑Sは小回りの中山コースとあって、コーナーをロスなく立ち回れるかが大きなポイント。フィニフティにとっては440kg以上の馬体重が欲しいところで、夏を越してどれほど馬体が成長しているかがカギになります。

ステファノスの戦績からも、この母系は成長曲線が遅目。フィニフティの本格化は来年以降かもしれませんが、GⅠを展望するためには3歳秋の時点でのパワーアップも欠かせません。しっかりとパワーが付いていれば、中山の3コーナーからバキューンと捲れるはずです。

 

エアレーション馬場への対応

秋の中山開催は2013年から芝にエアレーション作業を実施(開催1ヶ月前に作業を実施)しています。この作業は路盤をほぐし、芝のクッション性を高めるものです。そのため、芝コースは開幕週であってもインベタ(インコース+前々有利)にならず、外からの差しもそこそこに届く馬場となります。

エアレーションの入った中山芝はディープインパクト産駒の好走が目立つのも、クッションが利いて外差しの馬場になっているからでしょう。2016年の紫苑Sでワンツーを決めたビッシュとヴィブロスのディープインパクト産駒は、外からバキューンと捲り差してのもの。このことから、フィニフティにとってエアレーション馬場はプラスと考えられます。

 

戸崎騎手の不振

フィニフティにとっての不安点は「馬体が成長しているのか?」ともうひとつ……。それは鞍上予定の戸崎騎手がスランプに陥っていること。先週の新潟記念は、同じ藤原英厩舎の管理する2人気グリュイエールに騎乗し、10着と大敗しています。

また、8月はわずか「4勝」とリズムが悪いのも気にかかるところです。開催場所が変わることで不振から抜け出すことができるのか、9月8日の騎乗には注目しましょう。

 

まとめ

ディープインパクトは産駒に薄手の馬体を伝える種牡馬です。牝馬はとくに小柄で非力にタイプに出ることが多く、いかに母系からパワーと筋骨量を取り込めるかがカギを握っています。

フィニフティが全兄ステファノスのような活躍をするためには馬体重を増やすことが先決です。関東への輸送でいくらか減るとしても、+20kg以上なら今後に大きな楽しみがもてますね。

以上、お読みいただきありがとうございました。