才女ソウルスターリングが毎日王冠へ出走ーーエネイブルと対戦することはできるのか?

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イギリスのJ・ゴスデン調教師が管理する3歳牝馬のEnable(エネイブル)は、キングジョージ&クイーンエリザベスSに続き、欧州クラシック・ディスタンスのチャンピオンを決める凱旋門賞を圧勝し、スターホースへの階段を一気に駆け上がりました。そして、エネイブルと同世代の日本のオークス馬ソウルスターリングが、秋の初戦として古馬+牡馬相手となるGⅡ毎日王冠(東京芝1800m)に出走します。

凱旋門賞の出走馬と較べても遜色ないほど、欧州の血統で固められたピカピカの良血馬ソウルスターリングが秋の初戦でどのような走りを見せるのでしょうか?この才女にとって、毎日王冠は最大目標の天皇賞・秋へ向けての大切な1戦となるでしょう。

 

ソウルスターリングはエネイブルよりも奥行きのある配合

ソウルスターリングの父Frankelはエネイブルの馬主ハーリド・ビン・アブドゥラ・アール=サウード殿下の所有馬で、競走馬としては14戦14勝(内GⅠ10勝)、国際レーティング史上最高の「140」をマークした名マイラー(2000mのGⅠを2勝)。

英愛のリーディングサイアーGalileoと世界中で活躍馬を出している大種牡馬デインヒルを父にもつKindとの間に産まれたFrankelは、Northern Dancer3×4のクロスをもつので、現在の欧州にあふれかえっているSadler's Wells(Galileoの父)やDanzig(デインヒルの父)の血を引く牝馬と交配すると、どうしてもクロスのうるさい配合になってしまいます。

ソウルスターリングの母スタセリタは父Monsunがドイツ血脈で固められた非Northern Dancerの名種牡馬ですから、Frankelとの配合がバッチリと決まります。また、母系にShirly Heightsなどの重厚なキレ味をもつ血が入るのも日本の芝を走る上では好印象です。

ソウルスターリングとエネイブルは父父Galileo、母系にShirly Heightsの血を引くところは共通していますが、ドイツ血統のしなやかさが表現されている前者は、Sadler's Wells3×2の強度のインブリードによってパワーが前面に出ている後者よりも配合的な奥行きがあります。

ソウルスターリングの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

エネイブルの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

成長力も十分にあるソウルスターリング

ソウルスターリングは2歳の夏にデビューし、無敗でGⅠ阪神JFを制するなど早期から活躍を見せました。デビューから4戦4勝で挑んだ桜花賞を3着と敗退したことから、「もしかして早熟なのでは?」という声も聞かれましたが、続くGⅠオークスをしっかりと勝ち上がったことで、その成長力も見せつけました。

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母スタセリタはその父Monsunが抱えるKaiserkrone5・5のクロスをのぞくと5代アウトの配合。父FrankelがNorthern Dancer3×4のクロスをもつので、ソウルスターリング自身はNorthern Dancer4・5×5の薄いクロスが発生します。血統表のなかに濃い血があるわけではないこと、そしてドイツ固有の血統で固められたMonsunが母父の位置に入ることからソウルスターリングは豊かな成長力を見込めます。3歳の秋を迎えて春よりもどれほどパワーアップしているのかが楽しみな1頭です。

 

今秋は毎日王冠→天皇賞・秋というローテーション

ソウルスターリングは牝馬クラシックのラスト1冠「GⅠ秋華賞」に向かわず、古馬+牡馬との対戦となる天皇賞・秋を目標に定めています。3歳牝馬ということで斤量面の恩恵を受けるとは言え、この時期でトップレベルの牡馬を相手に戦うことは楽なことではありません。

3歳馬が天皇賞・秋を好走することは簡単ではなく、キタサンブラック、サトノクラウンなどのGⅠ馬を相手に好走するのはハードルが高いのも事実です。とは言え、ここをクリアしなければエネイブルを追いかけることなどできませんから、この才女にとっては今秋の毎日王冠と天皇賞・秋が大きな試金石となります。

 

毎日王冠を好走することはできるのか?

今年の毎日王冠は、昨年のダービー馬マカヒキ、今春の安田記念を制したサトノアラジン、昨年のドバイターフを勝ったリアルスティールなどのGⅠ馬だけではなく、素質馬グレーターロンドンなど有力馬が顔を揃えた1戦となりました。

ソウルスターリンがここを好内容で勝ち切るようなら、来春は「海外遠征」というプランも現実味を帯びてきます。この才女はここで結果を残すことができるのでしょうか?

 

毎日王冠に向けてのポイント

ソウルスターリンが毎日王冠を好走するためのポイントは大きく5つあります。

 

1. 馬体の成長はどれくらいあるのか?

2. スタートをしっかりと切れるか?

3. エアレーションが実施された馬場にフィットするか?

4. 3歳牝馬と古馬との力関係は?

5. 毎日王冠はスローペースがデフォルト

 

1. 馬体の成長はどれくらいあるのか?

先ほども述べたように、3歳秋の時点で古馬と対戦するためには一夏を越しての成長が不可欠です。今春は馬体中の割に細身に見せる体つきをしていたので、どこまでどっしりとした造りになっているのかはチェックが必要です。

 

2. スタートをしっかりと切れるか?

ソウルスターリングは2歳暮れの阪神JFからスタートを安定して出ています。ただ、休み明けだといつもよりもモコっとしたスタートになることも考えられるので、しっかりと前目のポジションを取れる発馬ができるのかはポイント。

東京コースではアイビーSとオークスでしなやかなキレを見せましたが、ソウルスターリングは本質的に速い上りを出すタイプではなく、しっかりとポジションを取ってからの先行抜け出しが勝ちパターン。スタートで後手を踏むようなことがあると、古馬相手では大きなロスとなるため、スタートをしっかりと切りたいところでしょう。

 

3. エアレーション作業が実施された馬場にフィットするか?

開催1ヶ月前に馬場をソフト(柔らかく)するエアレーション作業が実施されると、ややタフなパワー型が好走する馬場になります。5月の東京開催の開幕週に組まれたオークストライアルのGⅡフローラSは、ハービンジャー産駒がワンツー。エアレーションさ行が実施された東京の芝は欧州的なパワーを伝えるハービンジャーが好走できる馬場コンディションになります。

欧州血統のソウルスターリングはエアレーションが実施されたソフトな馬場を問題なくこなすとは思いますが、道悪になった桜花賞で苦戦していたことからも楽観はできません。

 

4. 3歳牝馬と古馬との力関係は?

今年の3歳牝馬はハイレベルと評価されています。紫苑SやローズSにも古馬1000万下を勝って参戦した馬も多く、全体的なレベルは同世代の牡馬よりも上かもしれません。とは言え、古馬GⅠで勝ち負けを演じている馬場に混じっての毎日王冠は、もう2ランク上の能力が求められます。

ソウルスターリングが歴戦の古馬相手に通用するのかはレースを走ってみないと判断はできません。ここはオッズが先物買いに値するかどうか……でしょう。

 

5. 毎日王冠はスローペースがデフォルト

ソウルスターリングにとって大きなプラスは、毎日王冠がスローペースになることの多いレースということです。初の古馬+牡馬との対戦となると、速いペースで追走に脚を使わされてしまうのが「いかにも」な負けパターン。そのため、オークスのようなゆったりとしたペースで進めば、好走のチャンスも出てきます。

今回はビュンビュンと飛ばしてペースを作る馬がいないため、最悪逃げてもOK。しっかりと好位を確保してからこの馬らしいしなやかな伸び脚を発揮できればいいですね。

 

まとめ

同世代の牝馬が海の向うで古馬・牡馬を相手に凱旋門賞を制覇。日本のオークス馬ソウルスターリングも遅れをとってはいられません。来年に海外遠征のプランを実現するためにも、毎日王冠はしっかりと結果を残さないといけません。

今からこの才女の走りが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。