名牝シンハリーズの娘ミリッサがHalo3×4の機動力で内回りの秋華賞を捲ることができるのか?ーーレース展望

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1996年のジャパンカップ(GⅠ・東京芝2400m)は逃げたカネツクロスが前半1000mを59.4秒で通過すると、残り1400mのラップが12.0 - 12.1 - 12.0 - 12.1 - 12.5 - 11.7 - 12.5の持続戦になり、L・デットーリ騎手のアクションに応えたシングスピール(Singspiel)がインで粘りに粘ったファビュラスラフィンを競り落として1着。Sadler's Wells直仔のIn the Wingsを父にもち、芝・ダートを問わずにGⅠを4勝したシングスピールは母父Haloのスピードを取り込み、日本の芝にも対応した名中距離馬。

シングスピール | 競走馬データ - netkeiba.com

種牡馬として日本でも安田記念を制したアサクサデンエンや重賞4勝のローエングリンといった活躍馬を出し、さらにはBMS(母父)としても阪神JF勝ちのローブティサージュや今春の日経賞を勝ったシャケトラなど多くの活躍馬を出しています。

そして、2016年のオークス馬シンハライトなど重賞勝ち馬を立て続けに出している名繁殖牝馬シンハリーズはその父がシングスピール。今週の秋華賞に出走予定のミリッサ(3歳牝馬・石坂正厩舎)もこの名牝の仔で、シンハライトの半妹という良血馬です。姉は秋華賞トライアルのGⅡローズSを勝った後、脚部不安によって競走馬登録を抹消したことから、ミリッサには不出走となった姉の分も期待がかかります。

シンハライト | 競走馬データ - netkeiba.com

 

ミリッサ 3歳牝馬

父:ダイワメジャー

母:シンハリーズ(母父:シングスピール)

厩舎:石坂正(栗東)

生産:ノーザンファーム

3歳春はエルフィンS3着→GⅢチューリップ賞4着と賞金を上積みすることも勝ち星を上げることもできずに、クラシック戦線を断念しました。その後は1600mの500万下と1000万下を連勝し、トライアルのローズS4着から秋華賞へと向かいます。

 

血統

シングスピールの母Glorious Song(父Halo)は日本でもタイキシャトルの父として知られるDevil's Bagの全姉。また、ヴィルシーナとヴィブロス全姉妹の4代母としてもその名前が見つけられます。

Glorious Songの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

Devil's Bagの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

ミリッサは父がダイワメジャーなので、Halo3×4をもつのが特徴。日本のGⅠを勝ったHaloクロスの馬と言えば、ヴィルシーナとヴィブロス全姉妹(Halo3×4・5)とサトノダイヤモンド(Halo3×5・4)、そしてシンハライト(Halo3×4)がパッと思いつきますが、どれも母系にGlorious SongとDevil's Bag全姉弟を通じてHaloを引き、父がサンデーサイレンス系種牡馬が配されているのが共通。

ヴィルシーナの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

サトノダイヤモンドの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

ミリッサの母シンハリーズはアダムスピーク(父:ディープインパクト)、リラヴァティ(父:ゼンノロブロイ)、シンハライト(父:ディープインパクト)とサンデーサイレンス系種牡馬との間に活躍馬を出している名繁殖牝馬。競走馬としての能力が飛び抜けていたシンハライトを除けば、この兄妹はHaloクロスらしい機動力とピッチ走法を受け継ぎ、小回り・内回りをサササっと捲る脚に優れています。

ミリッサはデビューから6戦すべてで直線の長い外回りや中京コースを走っており、直線の短い内回りコースを走るのは秋華賞が初めて。血統構成としてはこの舞台はずんどばですから、好走の期待が高まりますね。

ミリッサの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

追い込みではなく「捲り」のレースができれば

ミリッサの父ダイワメジャーも母父シングスピールも瞬発力勝負よりスピードの持続力に優れた種牡馬。デビュー戦の京都芝1600mは後方から一気に脚を使って4コーナーで先頭に立つと、上り33秒台の脚で押し切り勝ち。

2戦目以降は差し・追い込みのレースで好走しているものの、この馬の本質は新馬戦のような俊敏な捲り脚にあります。上り3F33秒台の足を使っていることとスタートで後手を踏むことが多いことから、直線で差す競馬をしていますが、この馬の適性を考えると3〜4コーナーからスピードアップしていくレースがベターです。

秋華賞の行われる2000mは初距離となるものの、マイラーというよりも中距離馬のような馬体をしており、主戦の福永祐一騎手がかかることをおそれずに3コーナーからしっかりとペースをあげられるのかがポイント。内回りコースであればペースは速くても遅くても対応できる馬ですし、内枠でも外枠でもスムーズな競馬さえできれば好走のチャンスがあります。

 

秋華賞に向けて

牝馬クラシックの最後の1冠「秋華賞」は小回り・内回り向きの機動力をもった馬が先行して抜け出してしまうこともあれば、直線の長いコース向きのストライドで走る馬が差し切ってしまうこともあるレースです。

昨年の覇者ヴィブロスはHalo3×4のクロスらしく器用さに長けたタイプですし、一昨年の覇者ミッキークイーンは父ディープインパクトの影響が出たしなやかストライドで走るタイプ。昨年は前半をゆったりと入り、残り4Fがすべて11秒台の脚を求められる瞬発力勝負でしたし、一昨年は前後半1000mが57.4 - 59.5というハイペースで差し馬が台頭するレースになりました。

ペースが緩ければ器用さのあるピッチ走法の馬に、ペースが締まればしなやかにストライドを伸ばして走る馬に有利になるのが秋華賞というレースの特徴です。今年はアエロリットとカワキタエンカ2頭の逃げ馬候補が出走すること、そして人気の一角となるファンディーナが4コーナー手前から捲るタイプということを考えると、ペースはそこそこに流れそうな可能性も……。今年の秋華賞はアエロリット、ファンディーナ、ディアドラ、リスグラシュー、ラビットランとストライドで走る馬が多く、それらの馬に有利な流れになるとミリッサには苦しい流れになりますね。

(*ペースの鍵を握るのはアエロリットとカワキタエンカの枠の並びになるため、まずは金曜日の枠順確定を待ちましょう)

ミリッサとしては平均ペースでレースが流れて、3〜4コーナーから器用に捲る展開になるのがベストです。

 

ミリッサの重馬場適性は?

週末の京都は雨予報が出ているため、秋華賞は「道悪」のレースになる可能性もありますが……最近のJRAは「日差し」があれば急速に馬場が乾くため、当日になってみないとどこまで馬場が悪化するのかは予想がつきません。そう、ローズSとセントライト記念は雨によって重馬場になるかと思いきや、一転して高速馬場でレースが行われたように……。

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ミリッサは「道悪」でのレース経験はありませんが、走法と血統からはパワーの要る馬場を苦にするとは思えず、泥をかぶるのをイヤがらなければこなせるはずです。ただ、こればかりはレースをしてみないとわかりませんが……。

 

まとめ

名繁殖牝馬シンハリーズの仔ミリッサは、秋華賞が初めての内回りコースでのレースとなります。このHalo3×4のクロスをもつ器用さに長けた馬がサササっとコーナーを俊敏に捲れるのかどうかが好走へのキーポイント。姉シンハライトの不出走だった秋華賞を半妹のミリッサが勝つことができるのか、今から週末のレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。