宝塚記念(2018年)は重馬場でなくともタフなレースになるのがデフォルトーー好走するための条件とは?

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春のグランプリ・宝塚記念(GⅠ・阪神芝2200m)は「梅雨時+開催最終日」にレースが施行されることから、時計のかかるタフな芝コンディションとなるのがデフォルトです。同レースの過去10年における「レースの上り3F」からも、タフな決着となっていることがわかります。

 

宝塚記念は上りのかかるタフなレース

それでは過去10年の宝塚記念を振り返ってみましょう。ここではレースの「上り3F」と「上り5Fのラップ」を併せて記載しておきます。レッラゴー!

宝塚記念の過去10年

2017年

勝ち馬:サトノクラウン

勝ちタイム:2分11秒4(稍重)

上り3F:35.7

上り5Fラップ:11.6 - 11.8 - 11.7 - 11.8 - 12.2

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2016年

勝ち馬:マリアライト

勝ちタイム:2分12秒8(稍重)

上り3F:36.8

上り5Fラップ:12.3 - 12.2 - 11.9 - 12.2 - 12.7

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2015年

勝ち馬:ラブリーデイ

勝ちタイム:2分14秒4(良)

上り3F:35.0

上り5Fラップ:12.5 - 11.7 - 11.0 - 11.6 - 12.4

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2014年

勝ち馬:ゴールドシップ

勝ちタイム:2分13秒9(良)

上り3F:35.6

上り5Fラップ:12.0 - 11.8 - 11.7 - 11.8 - 12.1

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2013年

勝ち馬:ゴールドシップ

勝ちタイム:2分13秒2(良)

上り3F:38.0

上り5Fラップ:12.3 - 12.4 - 12.7 - 12.7 - 12.6

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2012年

勝ち馬:オルフェーヴル

勝ちタイム:2分10秒9(良)

上り3F:35.3

上り5Fラップ:12.5 - 12.6 - 11.6 - 11.6 - 12.1

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2011年

勝ち馬:アーネストリー

勝ちタイム:2分10秒1(良)

上り3F:35.2

上り5Fラップ:12.1 - 12.0 - 11.5 - 11.7 - 12.0

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2010年

勝ち馬:ナカヤマフェスタ

勝ちタイム:2分13秒0(稍重)

上り3F:36.5

上り5Fラップ:12.3 - 11.9 - 12.1 - 11.9 - 12.5

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2009年

勝ち馬:ドリームジャーニー

勝ちタイム:2分11秒3(良)

上り3F:35.2

上り5F:12.3 - 12.1 - 11.5 - 11.7 - 12.0

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2008年

勝ち馬:エイシンデピュティ

勝ちタイム:2分15秒3(重)

上り3F:37.3

上り5Fラップ:12.5 - 12.3 - 12.2 - 12.2 - 12.9

レース上り3Fの最速はラブリーデイの勝った2015年の35.0。この年は前半1000mが62.5のドスローとなり、2番手に付けた勝ち馬がピッチ走法でサササッと抜け出したレースでした。上り3Fのラップのなかに「1F11.0」と速いタイムがマークされていることからも、例年の宝塚記念と異なる質のレースだったことがわかります。

 

良馬場でも上りがかかる

過去10年の内、「良馬場」でレースが行われたのは6回。ただ、すべてのレースで上りがかかっており、2015年を除けば1Fの最速が11.5と「速い脚」を問われないのがデフォルトです。

宝塚記念の行われる阪神内回りコースは直線が短いため、3コーナー過ぎ(残り4F地点)からの持続力勝負になるレイアウトとなっています。瞬発力よりも1F11秒台後半のラップでまとめられる末脚が求められるため、良馬場であっても上りがかかるのです。

 

スローペースになることも?

「スローペース+上りの速い」レースとなった2015年は6人気ラブリーデイ→10人気デニムアンドルビー→11人気ショウナンパンドラと入線し、3連単が50万円を超える高配当となりました。このレースを制したラブリーデイはスローが得意なピッチ走法の馬、2・3着には「キレる」タイプの牝馬2頭が入り、いつもの宝塚記念「らしく」ない結末。

今年の宝塚記念は逃げ馬が1600万下を勝ったばかりサイモンラムセス1頭のみで、昨年のキタサンブラック のような持続力に優れた先行馬が手薄とあって、2015年のスローペースが再現されることも考えられます。馬場が渋ればさらに騎手の「仕掛け」の意識も遅くなることから、前残り+内を器用に立ち回れる馬へのケアが必要です。

 

スローが得意なピッチ走法の馬は?

今年の宝塚記念に出走予定の16頭のなかで、ラブリーデイと同じ「あきらか」なピッチ走法の馬はいません。その替わり、「スローがベター+インを器用に立ち回れる」のは以下の馬たちです。

サトノダイヤモンド

ヴィブロス

ゼーヴィント

タツゴウゲキ

サトノダイヤモンドはHalo3×5・4、ヴィブロスはHalo3×4・5のクロスをもち、コーナーを器用に回れる素軽さがあります。この2頭はインを立ち回れるだけにスローペースもOKです。

ゼーヴィントはペースへの対応幅が広く、スローでもハイでも高いパフォーマンスを発揮します。ディープインパクト産駒ながら、母系に入るRoberto×Danzigのパワーが表現され、内回りを捲るのがずんどばです。気性的に難しいところがないので、この馬もインを立ち回れます。

タツゴウゲキは高速馬場のスローペースがベターなタイプ。重賞初制覇となった昨夏の小倉記念のようにインを器用に立ち回れる馬なので、馬場が渋らなければ……。

 

ステイゴールド産駒が好走する理由は?

過去10年の宝塚記念を制した馬の内、4頭(全5勝・ゴールドシップの連覇)がステイゴールド産駒となっています。

ゴールドシップ

オルフェーヴル

ナカヤマフェスタ

ドリームジャーニー

距離やコースを問わない名馬のオルフェーヴルを除けば、残りの3頭は上りのかかるコースとレースがベターのタイプです。

ゴールドシップは上りのかかる阪神内回りコースが(5 - 1 - 0 - 1)。唯一崩れたのはスローペースの2015年宝塚記念15着のみでした。

ナカヤマフェスタはタフな馬場となった凱旋門賞を2着と好走。母系にHis Majesty、Danzig、Cure the Bluesとコテコテのパワー系種牡馬が入ることから、上りのかかるタフなレースがずんどばです。

ドリームジャーニーはオルフェーヴルの全兄ながら、回転の速いピッチ走法が特徴。有馬記念・宝塚記念と小回り・内回りの上りのかかるコースでGⅠを勝っており、しなやかなキレに欠けるタイプと言えます。

 

種牡馬ステイゴールドの特徴は?

競走馬としてのステイゴールドはサンデーサイレンス産駒らしいしなやかなストライドで走り、スタミナに優れた中距離馬でした。種牡馬としては母系に入るノーザンテーストのパワーとPrincely Giftの柔らかさを伝えます。

そのため、ノーザンテーストやNorthern Dancerをクロスすると上りのかかる競馬を得意とするパワーが表現され、Princely Giftの影響が強くなると上りの速い競馬を得意とするしなやかさが発現するのです。

 

宝塚記念と天皇賞・春

ステイゴールド産駒のフェノーメノ、ゴールドシップ、レインボーラインの3頭が天皇賞・春を制しているように、Princely Giftのしなやかさをもつタイプは京都の下り坂でスムーズにスピードを上げることができます。この下り坂をスムーズに走れるPrincely Giftの特質は、3コーナーから直線の半ばまで下り坂となっている阪神内回りコースにマッチするのです。

直線が平坦な京都の外回りとゴール前に急坂のある阪神内回りコースは、上りの速さやコーナーのキツさなどが異なるものの、3コーナーから下り坂があるというレイアウトは一致しています。ステイゴールド産駒が宝塚記念と天皇賞・春の2つのGⅠを得意とするのは、コースの設定によるものと言えるでしょう。

 

下り坂を得意とする馬は?

下り坂をスムーズに走るにはしなやかさや柔らかさを伝える血が有効です。

ヴィブロス

サトノダイヤモンド

サトノクラウン

ステファノス

スマートレイアー

ミッキーロケット

ステイゴールド産駒のパフォーマプロミスは母父タニノギムレットのRoberto的なパワーも発現しているので、下り坂がずんどばなタイプかは「?」が付きます。

ルーラーシップはハーツクライと同じく母父に上り坂が得意なトニービンをもつため、下り坂は割引です。ハーツクライ産駒が天皇賞・春を5年連続2着と勝ち切れないのも、上り坂に向くトニービンの影響を強く受けているからでしょう。

ルーラーシップ産駒のキセキとダンビュライトはゴール前の急坂はOKなものの、下り坂のある3コーナーからのスパート戦だとやや不安が残ります。

 

重馬場と下り坂の適性は真逆のもの

西日本から東日本の太平洋側は20日(水)、梅雨前線前線の影響を受け、広い範囲で「大雨」となりました。そのため、宝塚記念はタフなコンディションでのレースとなる可能性もあります。

重馬場を得意とするのはRobertoやDanzigなどパワーのある血です。これらは下り坂をスムーズに走るためのしなやかさ(柔らかさ)とは真逆のものであり、馬場によってはパワーに優れた馬たちが台頭する余地も十分です。

重馬場適性については以下の記事に詳しく書いたので、よければご覧下さい。

 

まとめ

宝塚記念は上りのかかるレースになることがほとんどで、2015年のようにスローペースになると思わぬ波乱が……。今年は昨年のキタサンブラック のような圧倒的な存在がいないため、波乱があるとすれば3着内に下位人気の馬が2頭以上入線するパターンでしょう。

ロングスパート戦かスローペースからの3F戦になるのか、そして、重馬場になるのかなど、今年の春のグランプリは予想する要素が多く、今から週末が楽しみですね。

以上、お読みいただきありがとうございました。