サトノクラウンは内回りの苦行を乗り越えられるのか?ーー宝塚記念展望

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サトノクラウンがR・ムーア騎手を背に東京スポーツ杯2歳Sを勝った瞬間、「翌年のダービーはこの馬がゴール板を1着で駆け抜けるのでは?」と背筋に電気が走ったのを覚えています。

サトノクラウンは新馬→東京スポーツ杯→弥生賞と3連勝して挑んだクラシック第1弾の皐月賞は1番人気に支持されながらも6着に敗退。このレースを勝利したのはサトノクラウンと同厩舎のドゥラメンテでした。

サトノクラウンにとって、皐月賞とダービーの2冠を制したドゥラメンテが同世代にいたことはアンラッキーだったと言えます。ただ、3歳秋以降の成績はサトノクラウンの高いポテンシャルを考えると「物足りない」なく感じてしまうのも事実です。

 

精神面の課題

ダービー3着後のサトノクラウンは1着か掲示板外かの安定感を欠くレースを繰り返しています。これはレースにおいて集中力を欠くような走りを見せるように、気持ちのコントロールが難しいタイプの馬だからです。

昨年末の香港ヴァーズで凱旋門賞2着のハイランドリール(先日、プリンスオブウェールズSを制し通算GⅠ6勝)をジリジリと伸びる強靭な末脚で打ち負かしたサトノクラウン。海外の舞台でも心身のコンディションが整いさえすれば素晴らしいパフォーマンスを発揮しているのですから、もてる能力は疑いようがなく……。

関東の名門・堀宣行調教師の手によっても安定した成績が出せないのは、それほど精神面のケアが難しいタイプなのでしょう。

 

キタサンブラックとの実績面での差は広がるばかり……

ドゥラメンテの引退後、現5歳世代の中心となったのは今や「現役最強馬」の呼び声の高いキタサンブラックでした。古馬になってからも天皇賞・春、ジャパンカップなどの中長距離GⅠに勝ち、今週は春のGⅠ3連勝をかけて宝塚記念に参戦します。

サトノクラウンは前走の大阪杯で6着に敗れ、キタサンブラックとの差は決定的なもののように見えます。実績面では大きく差を広げられているので、将来種牡馬になる時のことを考えても何とかキタサンブラックに追いついて欲しい……。

 

サトノクラウンの苦行は続く

香港ヴァーズと京都記念の連勝によって2〜3歳春の頃の輝きを取り戻せたかに見えたサトノクラウンも、大阪杯ではキタサンブラックに完敗でした。

レース後にM・デムーロ騎手が「直線の短い内回りコースはこの馬に合わない」とコメントしていたように、パワーのあるストライドで走るサトノクラウンにとっては阪神の内回りは適性としてズレているコース。

胴の長い馬体で、2歳の頃のしなやかさも歳を重ねるにつれて失われつつありますが、その替わりに推進力の源になるパワーが発現してきました。

香港ヴァーズではJ・モレイラ騎手の好騎乗があったとは言っても、逃げ粘り濃厚なハイランドリールをジリジリと追い詰めたパワー溢れるストライドはため息が出るほどに美しく、これこそ一流馬の走り。

パワー・ストライドからも宝塚記念が阪神の外回り2400mで行われるのであれば、キタサンブラックが相手であっても迷わず◎にしたくなるくらいの馬なのですが……大阪杯→宝塚記念と春の古馬中距離路線のGⅠは内回りコースで行われるので、サトノクラウンにとっては苦行の道のりになります。

 

秋はジャパンカップが大目標に

宝塚記念に出走することで、秋はステップレースをスキップして天皇賞・秋→ジャパンカップというローテーションが組まれる公算が大きく、ストライドのこの馬にとっては5歳秋のこの2戦が本領発揮の舞台となります。

心身ともに整ったコンディションで東京コースに出走するのなら、完成形にあるキタサンブラックが相手でも勝てる可能性は十分にあるのです。キタサンブラックが凱旋門賞に向かうことを考えると、この秋の2戦はサトノクラウン陣営にとっては力の入る1戦になるでしょう。

 

宝塚記念でのレースプランは?

サトノクラウンが宝塚記念に向けてどのようなレースプランを立てるのかは難しいところです。馬場や枠順、コース適性などをもとにサトノクラウンが「勝つ」ためのレースプランを考察します。

 

阪神競馬場は高速馬場

先週の阪神競馬場の芝は「かなりの高速馬場」。オープン特別の米子Sはスローな流れだったにも関わらずレコードタイムが出てしまう馬場だったことからも、時計の速い芝のコンディションが続くようならパワーストライドのサトノクラウンにはマイナスです。

週中にまとまった雨量があり、土日にかけても雨の予報が出ている阪神競馬場は宝塚記念が行われる時に馬場がどのような状態になっているかはわかりません。もしかしたら、サトノクラウンにとっては大きなマイナスにならないタフな馬場へと変化しているかもしれませんが……こればかりは土曜日のレースを観るまでは保留事項。

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枠順と出走頭数

少頭数の大外枠に入り、ひとつ内のキタサンブラックを見ながらレースを運べるため、サトノクラウンとしては絶好枠が当たりました。

コーナーでスピードを上げるのが苦手なので、インで身動きが取りにくくなるよりは外めをスムーズに追走できるのはプラス。コーナーで他の馬と離されてしまうのを覚悟して、3角過ぎからペースアップするには外枠は有利です。

少頭数のレースになったことで、ペースが速くなることは考えられず、馬群はかたまった状態になります。さすがに古馬GⅠの舞台ですから、どの馬が逃げるにせよ3角から少しずつペースは上がるはずで、頭数が少ないだけにコーナーでの急速なペースアップは考えにくく、この点もプラスです。

 

内回り2200mへのコース適性

大阪杯のレースを観ても、キタサンブラックがペースを引き上げた3角過ぎでペースをなかなか上げられなかったように、サトノクラウンにとって内回りコースは苦行のレースになります。

サトノクラウンにとって救いなのは、大阪杯に比べて距離が200m長くなることです。1コーナーまでゆったりと入れるので、ここでしっかりと理想のポジショニング(外目の2、3番手)を取りきりたいところです。

コーナーを器用に回れないので、遠心力で外にフラれるのを覚悟の上(距離ロスは仕方ないと割り切る)で、外からグイグイと押し上げて行くしかありません。

 

理想のレースプラン

キタサンブラックをハナに行かせて、1コーナーに入るまでに外目の2番手を確保し向正面までゆったりとした流れで入ることが大切です(もし、キタサンブラックと他の馬が先手を主張しないのであれば、思い切って逃げてもOK)。

3角からキタサンブラックがペースを引き上げるところでは、外を回されるのは覚悟の上で合わせてペースアップして直線へ。ストライドを伸ばしているのであれば、直線は馬場の真ん中よりも外目へ出ていると思うので、後はキタサンブラックとの叩き合いに持ち込んで……1着になれるかどうかはわかりませんが、他の馬の動きに頼らず自ら勝ちに行く競馬をするのであればこれが最善手になります。

 

まとめ

内回りのGⅠ2連戦+現役最強馬キタサンブラックとの対戦とサトノクラウンにとっては苦行となる春シーズン。

もてるポテンシャルは「凱旋門賞でも!」と思わせるものがあるだけに、適性としてはズレていてもついつい好走を期待してしまいます。

皐月賞ではドゥラメンテやリアルスティール、そしてキタサンブラックを押し退けて1番人気に支持されたサトノクラウンが宝塚記念で「あっ!」と言わせる走りを見せることができるのか?

今からレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

 

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