天皇賞・秋(GⅠ・東京芝2000m)はペースによって、ストライド走法とピッチ走法のどちらのタイプも好走することができるレースです。ペースが速く(ハイ)なればストライド走法が、反対に遅く(スロー)なればピッチ走法の馬に有利となります。今年はどちらのタイプが好走するのでしょうか?
ストライド走法とピッチ走法とは?
競走馬の走るフォームは、大きく2つに分けることができます。1つは、身体をしなやかに伸縮させて1完歩を大きくするストライド走法。もう1つは重心をぶらさずに四肢の回転を速くするピッチ走法です。
2つの走法の特徴については以下の記事で詳しく解説をしていますので、よければそちらをご覧下さい。
東京コースはストライド>ピッチ
天皇賞・秋の行われる東京競馬場はストライド走法が有利なコースです。東京のコースはホームストレッチ(直線)が長く、コーナーが短いため、全身を大きく伸ばして走るフォームの馬に向いています。
ストライド走法はスピードを上げるのに時間がかかりますが、それを維持するのに長けているので、直線の長さがプラスとなるのです。
近年の天皇賞・秋はどちらの走法も好走できる
ピッチ走法はすぐに加速できる反面、最高速度を長く維持するのが苦手。そのため、直線の長い東京コースはストライド>ピッチという図式が当てはまります。それならどうして、天皇賞・秋はどちらの走法も好走できるのでしょうか?
ペースによって有利な走法が変わる
ここ5年ほどの天皇賞・秋はスローペースになることがデフォルトです。ペースが緩み、直線での瞬発力勝負になると、すぐさま加速できるピッチ走法がストライド走法を打ち負かしてしまいます。
2015年、16年の天皇賞・秋は前半1000mの通過が60秒台のスローペース。この2年の勝ち馬はいずれもピッチ走法でした。
▼天皇賞・秋のペースと優勝馬
2016年
前後半1000m:60.8 - 58.5(2.3秒の後傾)
優勝馬:モーリス
2015年
前後半1000m:60.6 - 57.8(2.8秒の後傾)
優勝馬:ラブリーデイ
ここ2年は前半1000mの通過が60秒台と緩いペースとなりました。ピッチ走法のモーリスとラブリーデイは直線ですっと加速して馬群から抜け出す完勝。スローペースのレースになると、ストライド走法の馬が加速している間にピッチ走法の馬がゴール板を駆け抜けてしまうのです。
重馬場はピッチ>ストライド
今年の天皇賞・秋はペースだけではなく、馬場もレースの結果を大きく左右する要素となります。東京競馬場は21日(土)の午後から22日(日)にかけて雨の予報。これで3週続けて雨のなかでの開催となり、芝コースは重まで悪化するでしょう。
重馬場はしなやかに四肢を伸ばすストライドよりも、パワーで小気味よく脚を回転させるピッチに向いています。
理由:ピッチ走法の馬は体質の硬いパワー型のため、重心が高く安定している
天皇賞・秋に出走するサトノクラウンはしなやかなストライド走法ですが、重馬場は得意。ストライド=重馬場が不得手とは言い切れないので、注意が必要です。
出走馬をストライドとピッチに分けると
今年の出走馬をストライドとピッチに分類してみましょう。どちらにも分けられない馬については、「中間」とします。中間を除いて分類すると以下の通りです。
▼ストライド走法
サトノクラウン
キタサンブラック
ソウルスターリング
ミッキーロケット
サトノアラジン
ワンアンドオンリー
1、2人気の2頭キタサンブラックとサトノクラウンはともにストライド走法の馬。ここに名前の挙がった馬たちは持続力戦>瞬発力戦という適性ですから、スローペースが苦手です。重馬場が得意なサトノクラウンは赤色でマークしました。
サトノクラウンについては、以下の記事に詳しい解説を書いていますので、よければそちらをご覧下さい。
キタサンブラックは先行馬なので、内回り・小回り向きと考えられがちですが、GⅠ5勝のうち4勝が直線の長い東京と京都外回りコース。宝塚記念や有馬記念を勝ち切れないのは、ストライドを伸ばす走りだからと言えるでしょう。
サトノアラジンはストライド走法なので、外からスムーズに加速しないとダメな馬。 スローでも対応はできるものの、本質的には今春の安田記念のような締まったペースがベストです。また、トビがキレイな馬のため、重馬場はマイナス。
▼ピッチ走法
サクラアンプルール
リアルスティール
ヤマカツエース
ディサイファ
シャケトラ
スローになれば、すぐに加速ができる馬たちです。重馬場がOKな馬を赤色でマークしました。このなかでも「重の鬼」と言えるのはパワーあふれるピッチ走法のシャケトラ。馬場が悪くなればなるほどチャンスは広がるでしょう。
リアルスティールとシャケトラについては、以下の記事に詳しい解説を書いていますので、よければそちらをご覧下さい。
ヤマカツエースは母父グラスワンダー譲りのピッチ走法。前脚のさばきが力強く、中京コースの金鯱賞を連覇しているものの、直線の長いコースであればスローがベター。
今年の天皇賞・秋はストライドかピッチか?
今年「も」天皇賞・秋はストライドかピッチかの2択となります。スローになるのかならないのか、決め打たないといけませんね。
スロー → ピッチ走法
非スロー → ストライド走法
1、2人気のキタサンブラック、サトノクラウンがストライド走法なので、配当面を考えればスローに気持ちが傾きます。さらに、重馬場はパワーあふれるピッチ走法の馬に有利。
今年はパワー・ピッチの馬に◎を。
予想
◎はピッチ走法の馬のなかから「重馬場がずんどば!」なタイプをピックアップします。
◎シャケトラ 4歳牡馬
父:マンハッタンカフェ
母:サマーハ(母父:シングスピール)
厩舎:角居勝彦(栗東)
生産:ノーザンファーム
宝塚記念4着からしっかりと休養をとり、秋はここが初戦。天皇賞・秋→ジャパンカップ→有馬記念というローテーションはキタサンブラックと同じですから、この馬を管理する角居調教師の期待の高さはかなりのものです。
東京芝2000mの大外枠は厳しい条件。ただ、重馬場になって「内」が悪くなれば、この枠を味方につけることもできます。テン乗りのC・デムーロ騎手は来日初日にスワンS(GⅡ・京都芝1400m)を制覇していますし、鞍上に大きな不安はありません。
まだまだ成長が見込める馬で、重馬場+スローペースになれば、この馬の最大の長所と言える「パワーあふれるピッチ走法」で、直線をグイグイと抜け出すシーンも十分に描けます。雄大な馬体と美しい捲り脚をもつこの馬に◎を。
◯ネオリアリズム 6歳牡馬
父:ネオユニヴァース
母:トキオリアリティー(母父:Meadowlake)
厩舎:堀宣行(美浦)
生産:ノーザンファーム
パワーのあるフットワークで走る海外GⅠ馬。母トキオリアリティーはGⅠ馬リアルインパクトを出した名繁殖牝馬で、どのような種牡馬を配しても仔どもに豊かなスピードとパワーと先行力を伝えます。
ネオリアリズムのベストパフォーマンスは、渋った馬場でモーリスを完封した昨年の札幌記念(GⅡ・札幌芝2000m)。折り合いの巧みなモレイラ騎手やルメール騎手が抑えるのに苦労するほどの気性のもち主ですが、スムーズなレースができれば能力は一級品です。
今走はドイツから短期免許で来日したシュタルケ騎手が鞍上とあって、抑え込もうとすれば高い確率で折り合いを欠くでしょう。ただ、この腕っぷしの強いドイツ人騎手は、積極性は満点ですから、前々で気分良く運べれば「アレヨアレヨ」が期待できます。
シュタルケ騎手は日本で50勝以上を上げていますが、「逃げ」の勝ち鞍が「0」と不安は煽られます……う〜ん……。
休養明け初戦とあって、体調面については不安はあるものの、このオッズであれば◎とセットで狙いたい1頭です。
ネオリアリズムについては、以下の記事で詳しく解説しているので、よければそちらもご覧下さい。
その他の△候補として
このまま雨が降り続き、重まで悪化するのなら母父グラスワンダー譲りのパワー・ピッチで走る△ヤマカツエースは有力。重馬場とスローペースが大きくプラスの1頭です。
札幌記念1着から天皇賞・秋を制したヘヴンリーロマンスもスローをピッチで駆け抜けた1頭で、△サクラアンプルールはこの牝馬と姿が重なります。GⅠの蛯名騎手というのはイヤなものの、1枠からスローを利して抜け出せれば。
△ステファノスはピッチ寄りの走法。スローの天皇賞・秋を2年連続で好走したように、ペースが落ち着けばチャンスもあります。パワーも十分な馬なので、重馬場も苦にしません。
△リアルスティールはパワーのあるピッチ走法で、重馬場もOKなタイプ。直線の長いコースだとスローがベストですから、馬群が縦長の展開にならなければチャンスも。
ストライド走法の馬について
ストライド走法の馬は重馬場+スローペースに苦しむと考えて、無印で。今回はピッチ走法の馬たちに期待します。
キタサンブラックとサトノクラウンは東京コースであればセットで馬券になる2頭ですから、ペースが流れて馬場が「不良」まで悪化しなければ素直に有力です。もともと、天皇賞・秋は1人気と5人気の馬が勝つレースでもありますしね。この2頭のワンツーであれば納得ですし、馬券が外れても致し方なしですね。
買い目
◎シャケトラの単勝と◎◯の馬連を。そして、配当面から◎◯2頭軸から△4点への3連複を買います。
単勝
18
馬連
18 - 3. 5. 1. 12. 4
3連複
18. 3 → 5. 1. 12. 4
まとめ
今年の天皇賞は「重馬場+スローペース」を利して、ピッチ走法の馬たちが上位独占なるのかに注目です。「重の鬼」シャケトラの好走に期待します。
皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。