シャケトラは重馬場とスローペースを味方につけてGⅠ天皇賞・秋(2017年)を好走できるのか?ーー展望

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第156回天皇賞・秋(GⅠ・東京芝2000m)はGⅠ馬8頭が顔を揃える豪華メンバーとなりました。今年の出走馬のなかでもっとも注目を集めるのは、年内での引退が発表されたキタサンブラック(5歳牡馬・清水久詞厩舎)。昨年の年度代表馬はラスト3戦でどのような走りをするのかが楽しみですね。

関西の名門・角居勝彦厩舎の看板馬シャケトラ(4歳牡馬)は今秋、天皇賞・秋→ジャパンカップ→有馬記念への出走を予定しています。これはキタサンブラックとまったく同じローテーション。未だGⅠに手が届いていないシャケトラを、GⅠ5勝キタサンブラックとの対戦となる3レースにぶつけたのは、角居調教師の期待の表れでしょう。

 

シャケトラ 4歳牡馬

父:マンハッタンカフェ

母:サマーハ(母父:シングスピール)

厩舎:角居勝彦(栗東)

生産:ノーザンファーム

体質の弱さから3歳の6月デビューとなったシャケトラは、クラシック路線に乗ることができませんでした。角居厩舎の管理馬らしく、心身の成長に合わせてゆったりとしたローテーションが組まれ、今春の日経賞(GⅡ・中山芝2500m)で重賞を初制覇。

GⅠ初挑戦となった天皇賞・春は3人気に支持されたものの、道中で折り合いを欠いたこともあって、見せ場もなく9着に敗退しました。その敗戦から2ヶ月後、立て直しをはかって臨んだ宝塚記念(GⅠ・阪神芝2200m)は2人気に推されると、スムーズにレースの流れに乗り、見せ場たっぷりの4着。GⅠ級の能力があるところを示した1戦となりました。

 

連敗となったGⅠの2レースをふり返る

シャケトラの4歳シーズンは日経新春杯(GⅡ・京都芝2400m)2着からスタートし、日経賞1着→天皇賞・春9着→宝塚記念4着の4レースに出走。ここでは連敗となったGⅠの2レースについて、敗因とともにふり返ります。

 

天皇賞・春9着

シャケトラは最内枠からのスタートで出遅れ、鞍上の田辺騎手がポジションをリカバリーするために馬をうながすと、1周目の3コーナーに入るところでかかってしまいました。

その後は道中をスムーズに追走したものの、2周目の3〜4コーナーではいつものスピードに乗った捲りが見られず、9着と敗退。デビュー以来、初めてとなる掲示板外となる大敗でした。

 

天皇賞・春の敗因

シャトラの天皇賞・春での敗因は以下の4つです。

1. 初のGⅠ出走で、一線級の馬たちと初対戦

2. 「超」高速の馬場が合わなかった

3. 3200mへの出走が初めてだった

4. パワーピッチの走法ため、京都の外回りコースが合わなかった

GⅠへの初出走ということもあり、大レースでの経験の少なさがモロに出てしまいました。また、シャケトラは小気味の良い回転とパワーあふれるフットワークで走るため、小回りの中山や内回りコースに向くタイプです。3コーナーから下り坂が始まり、直線が平坦の京都はこの馬の適性に合っていません。

 

宝塚記念4着

5分のスタートからシュヴァルグランを先に行かせ、道中は2番手で流れに乗ります。前半1000mを通過するところで、外からサトノクラウンがジワリとペースを上げ、シュヴァルグラン、シャケトラ、キタンサンブラックの前を走る有力馬へプレッシャーをかけます。

今年の宝塚記念はゴールまで残り1200mからのロングスパート戦となり、逃げ・先行馬には苦しい流れでした。シャケトラは4コーナーからスムーズに加速し、直線で先頭に立ったものの後ろから交わされて4着に敗退。阪神内回りコースは、パワーあふれるピッチ走法のこの馬にベストの舞台ですから、天皇賞・春よりもパフォーマンスを上げました。

 

宝塚記念の敗因

宝塚記念の敗因は以下の3つです。

1. ロングスパート戦となり、苦しくなった

2. 天皇賞・春の疲労が抜けていなかった

3. 4コーナー先頭の積極的な競馬でラストが甘くなった

シャケトラに乗ったルメール騎手は、「勝つ」ための積極的な競馬で4着と好走させました。逃げ・先行馬が大きく崩れるペースだったこと、大レコードがマークされた天皇賞・春の疲労が残っていたことを考えれば、この4着は上々の内容です。

 

血統

母サマーハは現2歳のサラーブをのぞくと、JRAに出走した3頭の仔がすべて勝ち上がっている優秀な繁殖牝馬。その3頭はすべて父が異なることも、母の優秀な繁殖能力を示しています。サマーハの父シングスピールはジャパンカップ(GⅠ・東京芝2400m)の勝ち馬で、欧州馬ながら日本の芝にも適応しました。

シングスピールは母父にHalo(サンデーサイレンスの父)をもつため、このスピードと素軽さ(俊敏さ)が日本の芝でも走れた理由でしょう。

種牡馬としてはBMS(母父)に入ると優秀な成績を上げていて、日本でもオークス馬シンハライト(父ディープインパクト)を産んだ名繁殖牝馬シンハリーズの父としても知られています。サマーハもシンハリーズも小回り・内回り向きの仔を出すのは、シングスピールとサンデーサイレンス系の種牡馬を配するとHaloのクロスが発生するから。

Haloクロスはスピードと器用さを伝え、シャケトラが中山コースの日経賞を俊敏に捲ったのは、この血によるものです。小回りを捲るためにはパワーが必要となり、この馬の雄大な馬体と力強いフットワークは母系に引くWoodmanの影響が出ています。

シャケトラの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

パワーあふれるピッチ走法が武器

シャケトラの長所は、重厚感のある馬体と回転の良いフットワークで走ること。パワーあふれるピッチ走法は、3〜4コーナーでの加速力に優れているため、小回り・内回りコースを力強く捲るのに向いています。

 

ピッチ走法は直線の長いコースが苦手?

ピッチ走法はトップスピードに達するまでの時間が短く、それに対してスピードを長く持続するのが苦手です。そのため、直線の長い東京コースは本質的に不向き。

ただ、天皇賞・秋はモーリスやラブリーデイなどのピッチ走法の馬が活躍することがあります。これについては過去の記事で解説しているので、よければそちらをご覧下さい。

天皇賞・秋はペースと重馬場、そして「ピッチかストライドか?」がポイントーー展望 - ずんどば競馬

 

天皇賞・秋に向けて

26日(木)に天皇賞・秋の枠順が確定し、シャケトラは大外の18番枠に入りました。東京芝2000mは1コーナー奥のポケットからスタートし、2コーナーに入る前に鋭角のカーブがあるため、大外枠は不利と言われます。

距離をロスすることとポジションを取りにくいことから、シャケトラにとってこの枠はマイナス。2コーナーから向正面にかけてスムーズに流れに乗り、できるかぎりインコースへ潜り込みたいところでしょう。

 

ピッチ走法なのでスローが希望

ここ2年の天皇賞・秋は前半1000mの通過が60秒台のスローペースになり、ピッチ走法の馬が直線を俊敏に抜け出して勝ち切っています。スローになれば、ピッチがストライドを上回るのがこれまでの天皇賞・秋で、緩いペースになればシャケトラにもチャンスが……。

 

今年の天皇賞・秋はスローになる?

今年の天皇賞・秋は逃げ・先行馬が少なく、どの馬が逃げるにしても、1人気のキタサンブラックが実質的なペースを作ります。武豊騎手はこの馬で前半からレースのペースを引き上げることはなく、ほぼ残り800m(4F)からの持続戦にもち込むのがデフォルトです。

前半がゆったりとした流れになり、武豊騎手の仕掛けが少しでも遅くなれば、シャケトラがパワー・ピッチで抜け出せる可能性も。ただ、今年はリアルスティールなどのピッチ走法の強敵も揃っているため、スローになったときの差し脚較べでどこまでやれるのかが鍵になります。

 

重馬場は大の得意

東京競馬場は2週続けて雨のなかでレースが行われ、芝の傷みも進みました。今週末、東京は台風22号の影響で雨の予報が出ており、重馬場でのレースになる可能性もあります。

先週の芝コースは「不良」馬場まで悪化しており、今週はどこまでコンディションが回復しているのかは注目です。もし、天皇賞・秋が雨のなかでの開催となれば、タフなレースになることは間違いありません。

シャケトラは前躯の発達したパワフルな馬体をもち、フットワークはパワー・ピッチですから、重馬場は大の得意。前脚のかき込みも強いため、道悪になればなるほどパフォーマンスは上がります。

GⅠ天皇賞・秋(2017年)は台風の影響で「重〜不良」馬場でのレースとなるのか?ーー重馬場が得意な馬は? - ずんどば競馬

 

休養明け初戦で体調は?

今年はGⅠを含む4レースに出走し、宝塚記念の後で休養に入りました。休み明けを苦にするタイプではなく、角居廐舎+ノーザンファーム生産馬ですから、春の疲労のケアはしっかりとなされています。

馬体の柔らかさが戻っていれば、日経賞のパフォーマンスをここでも出せるはずです。夏の休養を経て、さらにパワーアップしたシャケトラの姿を見られるのかが楽しみですね。

 

まとめ

シャケトラは今秋、現役最強馬キタサンブラックとまったく同じローテーションを歩みます。角居調教師の期待も大きい馬だけに、秋の初戦の走りは注目です。

スローペースと重馬場を味方につけて、シャケトラは不向きな東京コースを克服できるのでしょうか?

 

POINT

シャケトラは重馬場が得意で、東京コースならスローペースがベスト!

 

以上、お読みいただきありがとうございました。