天皇賞・秋(2018年)はレイデオロやスワーヴリチャードなどの4歳馬が中心のレースに!ーー展望

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第158回天皇賞・秋(GⅠ・東京芝2000m)は昨年の3歳牡馬クラシックを制したアルアイン、レイデオロ、キセキ、今春の大阪杯を制したスワーヴリチャード、今夏の札幌記念を制したサングレーザーの4歳馬5頭が中心となるレース。

3歳のダービー馬ワグネリアンが回避したものの、GⅠ馬8頭(ディアドラが回避なら7頭)が顔を揃える豪華メンバーとなりました。キタサンブラックの後を担う「チャンピオン」となるのはどの馬なのでしょうか?

 

4歳馬が中心のレース

天皇賞・秋に出走予定の4歳馬は以下の7頭。

アルアイン

キセキ

サングレーザー

スワーヴリチャード

ダンビュライト

ディアドラ

レイデオロ

(50音順)

赤色でマークしたGⅠ馬5頭に加え、サングレーザーとダンビュライトはGⅠ3着の好走歴がある実力馬です。マイルCSに向かうペルシアンナイトを除けば、4歳牡馬のトップレベルがズラリと揃いました。

前年のクラシックを好走した馬たちの多くが、4歳秋のGⅠシリーズに顔を揃えるのは近年だとレアなケース。同年の皐月賞馬とダービー馬と菊花賞馬が天皇賞・秋で再戦するのですから、白熱したレースが期待できます。

 

注目はレイデオロ vs スワーヴリチャード

注目は昨年のダービー以来の対戦となるレイデオロとスワーヴリチャードの2頭です。ともに古馬中距離路線を引っ張る存在だけに、この直接対決は楽しみが広がります。

 

レイデオロ 4歳牡馬

父:キングカメハメハ

母:ラドラーダ(母父シンボリクリスエス)

厩舎:藤沢和雄(美浦)

生産:ノーザンファーム

レイデオロは母父シンボリクリスエスの影響が出た胴の長い馬体をしており、いかにもストライが伸びる体型をしています。ただ、走り出すと回転の速い小気味の良いフットワークをしていることから、本質的には小回りコースに向いているタイプです。

ダービーの1着は歴史的なスローペースを俊敏なピッチで抜け出したものと解釈できますが、不思議なのは締まったペースとなった昨秋のジャパンカップでも2着と好走したこと。直線の長い東京コースでキタサンブラックに先着しているのですから、改めて競争能力の高さを示しました。

 

ジャパンカップ2着は想像を超える強さ

東京芝2400mで行われるジャパンカップでも、上り3Fに特化したような「スローからの瞬発力勝負」になるならレイデオロにも好走のチャンスがあると考えていましたが、レースはキタサンブラックと武豊騎手のコンビが淀みのない美しいペースを作りだしました。

2017年ジャパンカップの公式ラップ

13.0 - 11.2 - 12.1 - 12.1 - 11.8 - 12.1 - 12.3 - 12.2 - 11.8 - 11.3 - 11.8 - 12.0

この締まったペースを追走し、末脚を削がれることなく直線で伸び切って2着に好走したレイデオロは立派の一言。コース適性を素質(競争能力)が上回るというパフォーマンスを見せたと言えるでしょう。もちろん、ひと夏を越しての成長も十分に見せた1戦となりました。

 

天皇賞・秋に向けて

直線の長い東京コースであれば、昨年のダービーのようなスローペースがベスト。今走はピュアな逃げ馬が不在のため、この馬に向いた展開になりそうです。

馬込みでも我慢ができますし、ルメール騎手が乗るのであれば折り合いに心配のない馬。道中のポジションをこだわらない自在性も魅力で、スンナリとしたレースなら大崩れのシーンはイメージできません。

不安を上げるなら、トーセンジョーダンの勝った2011年のような「ハイペースの消耗戦」か、マイラーが好走するよう「超高速馬場」になったとき。ただ、このメンバーで消耗戦になる確率は低いですし、超高速馬場だったとしても大きく崩れるのかは「?」が付きます。

 

スワーヴリチャード 4歳牡馬

父:ハーツクライ

母:ピラミマ(母父Unbridled's Song)

厩舎:庄野靖志(栗東)

生産:ノーザンファーム

3歳の早くから素質を期待されたスワーヴリチャードは、今春の大阪杯で初GⅠ制覇を上げました。古馬になって前目のポジションを取れるようになってきたのは、ジャスタウェイに代表されるハーツクライ産駒らしい成長曲線を描いているからでしょう。

今春の安田記念は前半800mが45.5のペースにもかかわらず、好位をうなりながら追走していたように、緩かったトモがパンとしてきたのがはっきりとわかります。本質は中距離馬なので、1分31秒4で東京コースのマイル戦を走破したのは驚きしかありません。

 

ハーツクライ産駒らしい成長曲線

古馬になってGⅠを制したハーツクライ産駒は、スワーヴリチャードも含めて3頭を数えます。

ジャスタウェイ:天皇賞・秋、安田記念

シュヴァルグラン:ジャパンカップ

スワーヴリチャード:大阪杯

ディープインパクト産駒のようにしなやかにキレるというよりも、実直な末脚でグイグイと押し切るレース得意としており、スワーヴリチャードの大阪杯はいかにもこの父らしいレースぶりでした。産駒の制したGⅠからわかるように、直線の長い東京競馬場はベストのコースです。

 

天皇賞・秋に向けて

昨年のキタサンブラックと同じく、秋の初戦を天皇賞・秋に定めたスワーヴリチャード。今走は次走に向けた仕上げで臨みます。もともとレース間隔を空けたローテーションで走っている馬ですから、休み明けそのものは苦にしません。左回りの東京コースもベストなだけに、楽しみの広がる復帰戦となります。

不安点を上げるとすれば、以下の2点。

1. スタートの出遅れ

2. 折り合い

M・デムーロ騎手はリーディングジョッキーのなかでも「出遅れ」ることが多いだけに、これはいつも不安要素です。トモがパンとした今ならそれほど心配をする必要がないかもしれませんが……。

もうひとつの不安は前走でマイルのGⅠを走ったことで、折り合い面に不安が出てきました。安田記念はあのペースをうなりながら追走していたので、距離の延びる今走は折り合い面が心配です。デムーロ騎手はルメール騎手よりも繊細な折り合いに欠けるため、引っかかる心配も……。

 

その他の4歳馬

レイデオロとスワーヴリチャード以外の4歳馬については、過去に血統や走りを開設した記事があるので、よければそちらをご覧下さい。ここではそれぞれ簡単に触れておきます。

 

アルアイン 4歳馬

レコード決着となった皐月賞を制したアルアインは、古馬になってからも一線級相手に安定したパフォーマンスを見せています。皐月賞から勝ち星に見放されているものの、ディープインパクト産駒としては器用さもあるタイプで、コースを問わずに走れるのが強みです。

今走はオールカマーに引き続き北村友一騎手が騎乗。騎手を選ばない器用さのあるタイプですから、ダービーのようなスローの瞬発力勝負にさえならなければ力を発揮できると考えます。ただ、ノーザンファームの騎手配置から、1着まではどうでしょうか……。

 

キセキ 4歳牡馬

歴史的な不良馬場となった昨秋の菊花賞を制したキセキ。その後は香港ヴァーズ、日経賞、宝塚記念と掲示板外に凡走したものの、前走の毎日王冠を3着と好走し、いくらかこの馬「らしさ」が戻ってきた印象です。

昨秋の神戸新聞杯でレイデオロに完敗していることから、そこからのスケールアップが求められますが……。ルーラーシップ産駒としては母父ディープインパクトの影響からかしなやかさのあるフットワークなので、直線の長い東京コースは合うでしょう。

 

サングレーザー 4歳牡馬

父:ディープインパクト

母:マンティスハント(母父Deputy Minister)

厩舎:浅見秀一(栗東)

生産:追分ファーム

✳︎この馬についての詳しい解説記事はないので、以下に血統についても書いておきます

昨秋にスワンS(GⅡ・京都芝1400m)を制すると、その後はマイル路線を歩みました。マイルCS3着、安田記念5着からGⅠ級の能力があることは間違いありません。今夏に中距離の札幌記念を制したことで、天皇賞・秋へ矛先を向けてきました。

 

血統

ディープインパクト×Deputy MinisterはショウナンパンドラやマカヒキなどのGⅠ馬を出しているニックス配合。サングレーザーはしなやかさを伝えるSir Gaylord6×5のクロスをもち、ビューンと弾ける脚を使えるのが最大の長所です。

ディープインパクト産駒らしい細身の馬で、馬体からはピュアマイラーには見えません。血統通りのしなやかさをもち、ベストは京都芝1800m。東京コースはセカンドベストだけに期待がもてます。

 

天皇賞・秋に向けて

ピュアマイラーではないため、1分31秒台になった安田記念でビュンと弾けなかったのは仕方なし。同レースに出走していたスワーヴリチャードとは内外の枠の差もあったとは言え、形としては完敗でした。2000mに距離が延びたことで逆転できるのかは微妙なところ……。

操縦性の高い馬でモレイラ騎手とは手が合うタイプ。ノーザンファーム生産馬ではないことがマイナスなものの、古馬になってからの成長力に期待しましょう。

 

ダンビュライト 4歳牡馬

3歳クラシックを完走し、皐月賞3着→ダービー6着→菊花賞5着とコースや距離を問わずに善戦したのはダンビュライトが高い競争能力をもっているからこそでしょう。

いかにもルーラーシップ産駒らしい持続力に優れた馬で、ベストパフォーマンスは中山芝2200mで行われたAJCC杯。ズドーンと脚を使うタイプだけに、東京コースは苦にしませんが、瞬発力勝負になるようだと割引です。

 

ディアドラ 4歳牝馬

ハービンジャー産駒として初GⅠ制覇を果たした孝行娘。秋華賞の後、いくらか調子を落としていたものの、クイーンS(GⅢ・札幌芝1800m)と府中牝馬S(GⅢ・東京芝1800m)を連勝し、GⅠ馬らしい雰囲気が戻ってきました。

この馬についてはいくつも記事を書いているので、よければ以下をご覧下さい。

ハービンジャー産駒のGⅠ馬のなかでももっとも品のある馬体をしており、しなやかな差し脚が最大の長所です。前走は牝馬限定戦ながらもリスグラシューを問題にしない走り。ペースが緩んで牝馬らしいキレの活きる展開になれば、あっと驚く好走があっても……。

 

まとめ

今年の天皇賞・秋は素質のある馬たちがズラリと揃いました。キタサンブラック引退後、この路線のチャンピオンとなるのはどの馬なのか、今から週末のレースが楽しみですね。

以上、お読みいただきありがとうございました。