名繁殖牝馬エリモピクシーの仔レッドアヴァンセはヴィクトリアマイル(2018年)を好走できるのか?

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現在の日本における名繁殖牝馬と言えば、ヴァルシーナ=ヴィブロス全姉妹とシュヴァルグランのGⅠ馬3頭を産んだハルーワスウィート、ラキシス=サトノアラジンのGⅠ姉弟を産んだマジックストームなどの名前が真っ先に上がるでしょう。

上記の2頭のように複数頭のGⅠ馬を出すのも優れた繁殖能力があってこそですが、OP〜重賞級の仔をコンスタントに出すのも「名繁殖牝馬」だと言えます。そして、「イチロー」以上のハイアベレージを残す名繁殖牝馬は、そう、「エリモピクシー」を置いて他にいません。

 

名繁殖牝馬エリモピクシー

先週のNHKマイルCで3着と好走したレッドヴェイロン、今週のヴィクトリアマイルに出走登録のあるレッドアヴァンセと、エリモピクシーの仔は2週続けて府中のマイルGⅠを走ります。まずは、おさらいとして、この名繁殖牝馬の産んだ仔の成績を見ておきましょう。

エリモピクシー(父ダンシングブレーヴ)

|--リディル(07年・アグネスタキオン)

   重賞2勝(全5勝)

|--クラレント(09年・ダンスインザダーク)

   重賞6勝(全7勝)

|--レッドアリオン(10年・アグネスタキオン)

   重賞2勝(全7勝)

|--サトノルパン(11年・ディープインパクト)

   重賞1勝(全5勝)

|--レッドベルダ(12年・ディープインパクト)

   0勝

|--レッドアヴァンセ(13年・ディープインパクト)

   4勝(阪神牝馬S2着)

|--レッドオルガ(14年・ディープインパクト)

   4勝

|--レッドヴェイロン(15年・キングカメハメハ)

  1勝(NHKマイルC3着)

牡馬は青色、牝馬は赤色、セン馬は黒色で表記

レッドベルダを除くすべての産駒が勝ち上がり、内4頭が重賞馬というアベレージの高さは「名繁殖牝馬」と呼ぶにふさわしいもの。これだけポンポンと好マイラーを出すのですから、エリモピクシーは確実に産駒へスピード能力を伝えるのでしょう。

 

遺伝力の強さ

11年〜14年まではディープインパクトが種付けされましたが、どのような種牡馬を配してもマイル前後を得意とするOP〜重賞級の仔が出ていることからも、エリモピクシーの遺伝力の強さが分かります。

その産駒は父よりも母の特質を確実に受け継いでおり、大まかな特徴はほぼ同じです。リディルもクラレントもレッドアリオンも、重賞勝ちは揉まれることなくスムーズに先行したときで、ビュンとしなやかにキレるというより粘り強く脚を引き出せるのがセールスポイント。

母のもつ資質を高確率で仔に伝えることができるからこそ名繁殖牝馬と呼ばれるわけで、産駒の特徴が似通っているのはそれだけ遺伝力が強いことを示しています。反対に、遺伝力の強さは「走る仔を産む」確率の高さにもつながっているのです。

 

産駒の特徴

エリモピクシーの仔は以下の4つの特徴をもっています。

1. 距離適性はマイル前後

2. 脚質は先行

3. 揉まれ弱い

4. 緩やかな成長曲線

 

適距離はマイル前後

エリモピクシーの仔の勝ち鞍は1400〜1800mの距離がほとんど。サトノルパンのように前進気勢の強い馬でなければ、マイルがベストと言えるでしょう。

 

脚質は先行

母エリモピクシーはエリザベス女王杯を制したエリモシックの全妹。ただ、姉よりもマイラー的なスピードとパワーがオンになっている(✳︎)ため、産駒は「しなやかにキレる脚」というよりも「持続的な末脚」をもつのが特徴です。

リディル、クラレント、レッドアリオンが先行して粘り強かったように、この母の仔は前々でレースの流れに乗ったときにもっとも力を発揮します。

✳︎エリモシックがピクシーほど活躍馬を産んでいないのは、前者が後者ほどにスピードとパワーを産駒に伝えないからでしょう。この2頭は同血にもかかわらず、伝える資質が異なるのです。

 

揉まれ弱い

気難しいVaguely Nobleを引くエリモピクシーの仔の多くは「馬群に揉まれる」と力を発揮できません。7、8枠に入ったときに好走するのも、この揉まれ弱さによるものでしょう。内枠に入るようだと大きなマイナスです。

 

緩やかな成長曲線

代表産駒のクラレントは8歳まで現役を続け、そのラストシーズンにも京王杯SC(GⅡ・東京芝1400m)を2着と好走するなど、豊かな成長力を見せました。この他にもエリモピクシーの仔は古馬になってOP級へと出世する馬が多く、全体的に緩やかな成長曲線を描きます。

 

レッドアヴァンセについて

エリモピクシーの6番仔レッドアヴァンセはヴィクトリアマイルに出走予定。前走の阪神牝馬Sは「外枠+先行勢が薄いメンバー」だったことから◎に推したものの、逃げたミスパンテールを捕らえきれずに2着と敗退しました。外目から揉まれずに先行できれば重賞級の力を発揮できるだけに、「GⅠでも!」と期待したくなります。

 

GⅠには手が届かない……

エリモピクシーは高い確率で重賞級の馬を出す反面、産駒にGⅠ馬はいません。これだけの遺伝力をもつ繁殖牝馬ですから、現時点でGⅠを勝てないということは……と心配になりますね。

ただ、先週のNHKマイルCでもレッドヴェイロンが3着と好走しているように、GⅠでも2・3着ならチャンス十分です。

 

高速馬場はOK

レッドアヴァンセは父がディープインパクトなので、しなやかな血を伝えるSir Gaylord6×5のクロスをもち、クラレントやレッドアリオンなどに比べてより柔らかい体質になっています。

直線の長いコース+高速馬場はOKなものの、ややパワーに欠けるため、重馬場になるとマイナスです。この馬が直線が平坦な京都を得意とするのは、少しだけパワーが足りないからだと考えられます。東京は月〜水まで雨が降り続いたことから、当日の馬場コンディションが心配ですね。

 

ヴィクトリアマイルに向けて

今年のヴィクトリアマイルはアエロリット、カワキタエンカ、レーヌミノルとペースを引き上げてもOKな先行馬が揃い、前半800mの通過が何秒になるのかは微妙なところ……。レッドアヴァンセとしては上り3F33秒台の決着になると苦しいので、前後半800mが46.0 - 46.0のイープンペースを先行して押し切りたいですね。

外目からスムーズに先行するためにも、7・8枠に入るのがベスト。このメンバー相手だと内枠で揉まれ込む展開だと難しいレースになってしまいます。カワキタエンカを逃がして2・3番手のポジションが理想的です。

GⅠで2・3着に入る力は十分にもっていますから、後は枠と馬場が噛み合えば……。

 

まとめ

名繁殖牝馬エリモピクシーの仔が2週連続でGⅠに出走するとあって、今回の記事では産駒の特徴についておさらいしました。

レッドヴェイロンに引き続き、アヴァンセが東京マイルのGⅠを好走できるのかに注目です!

以上、お読みいただきありがとうございました。