安田記念<中山記念の適性をもつ馬(エアスピネル他)たちーー安田記念展望

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春のマイル王を決めるGⅠ安田記念が6月4日、東京競馬場で行われます。

今年の安田記念は昨年の覇者ロゴタイプ、皐月賞馬で昨年の夏マイルCS2着のイスラボニータ、3歳時はクラシック路線で好走したエアスピネルなど有力馬が目白押し。モーリスが引退した後のマイル王に誰が君臨するのか?注目の1戦です。

 

4歳世代の注目はエアスピネル

ハイレベルと言われた昨年のクラシック3冠を4、4、3着と完走したエアスピネルは今年、京都金杯の1着で復帰を果たすと、マイル路線に照準を絞ったローテーションでの出走。

東京新聞杯3着→マイラーズC2着と昨年と同じような好走すれど勝てずの歯がゆいレースが続いています。ただ、崩れることなく安定してパフォーマンスを発揮できるのは大きな魅力で、総合的な力が上位であることは疑いようがありません。4歳世代の代表格として出走する安田記念ではどのような走りを見せてくれるのでしょうか?

 

エアスピネルはピッチ走法

エアスピネルは現代の日本競馬で繁栄を続けているアイドリームドアドリーム牝系の出身。母エアメサイアもGⅠ秋華賞の勝ち馬で、名血・名繁殖牝馬です。

エアメサイアの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

近親のエアシャカール、エアデジャヴー、エアシェイディはピッチ走法なので内回りや小回りの適性が高く、それはエアスピネルにも伝わっています。

本来、ピッチで走る馬は直線の長い外回りコースだと、ゴール前の苦しくなったところで脚の回転が鈍ってしまいます。エアスピネルは京都の外回りコースで重賞を2勝していますが、いずれも俊敏な脚さばきで先に抜け出すレースでの勝利。一瞬の鋭さで抜け出せるのがこの馬の最大の武器ですから、直線の長いコースだと最後に甘くなるのをどこまで耐えられるかの勝負になります。

適性としては中山記念(中山芝1800m)がずんどばなので、内回り小回りの1600〜1800mのGⅠがJRAに存在しないのはツライところです。そもそも、JRAの古馬マイルGⅠは安田記念、マイルCSとすべて直線の長いコース(3歳限定のNHKマイルカップ、牝馬限定の桜花賞とヴィクトリアマイルも直線の長いコース)で行われるため、ピッチ走法のマイラーが輝く舞台はGⅡ中山記念くらいしかないのが現状です。

 

ピッチ走法は東京コースが苦手?

ピッチ走法だからと言って東京コースではまったく走れないかというとそうでもなくて、記憶に新しいところでは先週のダービーを勝ったレイデオロ、昨年の安田記念を勝ったロゴタイプと俊敏な脚さばきで抜け出して勝てる質のレースになればチャンスもあります。

第84回東京優駿('17年)回顧ーー分かり合えているからこそ - ずんどば競馬

 

ピッチ走法が東京コースで好走するには?

ピッチ走法の馬が東京コースで好走するためには、どのようなレースになるのがベストなのでしょうか?

答えは先に述べた2つのレース、レイデオロのダービーとロゴタイプの安田記念にあります。

 

スローペース+上り3Fの競馬

 

レイデオロのダービーも安田記念のロゴタイプも上り3Fに特化したスローペースを先行抜け出しで勝ちました。この2頭は脚の回転が速く、瞬時に加速できるのが強みです。

昨年の安田記念、ロゴタイプは瞬時の加速力では絶対王者のモーリスを上回っていて、このピッチ走法だからこそ可能な鋭さを活かすためには3F特化のスローペースがベストです。

 

アレ?でも、ロゴタイプって?

ここで、「アレ?!」と思った人は競馬通。ロゴタイプは1分58秒0の好タイムで皐月賞を勝っていて、中山の3〜4角でペースアップする厳しい流れでも好成績を出している馬。どうして東京コースだとスローペースがベストなのか不思議に思う人も多いはずです。

ロゴタイプ | 競走馬データ - netkeiba.com

 

ピッチ走法はコーナーで加速できる

中山競馬場の直線は310m。上り3Fと言われるゴール板から600mの地点は3角にあたります。そのため、コーナーで加速できるかどうかが3Fの速さに直結するのが中山の小回りコースです。ピッチ走法の馬はストライドで走る馬よりもコーナーで加速するのに長けているので、3角過ぎから器用に加速します。

反対に東京競馬場の直線は525.9mで、上り3Fの地点は4角の出口あたり。そのため、ストライドが伸びる馬が有利で、3Fの特化戦にならないかぎりピッチ走法の馬が最後で甘くなるのは仕方のないことなのです。

 

今年の安田記念出走馬でピッチ走法の馬は?

今年の安田記念に出走するメンバーの中で、明らかにピッチ走法の馬は3頭。

 

エアスピネル

ロゴタイプ

ロジチャリス

 

これらの馬は東京コースでペースがそこそこ流れると最後に苦しくなってしまう可能性が高く、昨年の安田記念のようなスローペースが希望のタイプです。

ロジチャリスは前走のダービー卿CTのレースぶりを観ても明らかなパワーピッチ。スタートを出して先行できれば、中山コースの適性は抜群なので前走くらい走って当然の馬。

上の3頭の名前を見れば、いかにも中山記念で好走しそうな馬ばかりなことが分かります。中山芝1800mのGⅠがあれば……とついつい考えてしまいますね。

(*安田記念に出走登録のあるディサイファは母ミズナの父Dubai Millenniumの血が古馬になって発現してきて、内回り小回り向きのパワーピッチに近づいています。ただ、上記3頭のような明らかなピッチかというと「?」がつくので、ここでは除外しました)

 

今年もスローになるのか?

今年の安田記念もピュアな逃げ馬が不在。先週のダービーもどの馬が勝つのか以上に「どの馬が逃げるのか?」が難解なレースでしたが、今週も逃げ馬に悩まされることになりそうです。

逃げるとすれば、ロゴタイプ、ロジチャリス、サンライズメジャーあたりになるのでしょうか。どの馬が逃げるにしてもスローが濃厚で、昨年の再現があるのならピッチ走法の輝く舞台に。

 

エアスピネルについての補足

エアスピネルは2走前の東京新聞杯で、上り3F特化になったレースにも関わらず3着に敗退しました。逃げたブラックスピネルの上り3Fは32.7。10.9 - 10.8 - 11.0ですから、5番手を追走していたエアスピネルがピッチで抜け出すと言っても10秒中盤の脚を使わないと前と差を詰められません。物足りないと言えばそれまでですが、ここまでのスローになってしまうとピッチ走法の優位性が出にくいレースになりましたね。

 

まとめ

スローペースになれば、上記の3頭は適性として好走する可能性が高いと言えます。もしかしたら、俊敏なピッチでストライドで走る馬を封じてワンツースリーも……。

それぞれの競走馬のもつ適性はコースだけではなくペースによっても変わるというのが競馬の面白さの1つ。

先週のダービー、「レイデオロはピッチ走法」だからと早々とノーマークにしていましたが、蓋を開けてみればどスローの3F特化戦になり、ピッチの加速力が活きるレースに……。だから競馬は難しく、だけど競馬は面白い、そんなことを考えさせられる1週間になりますね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。