秋の中山開催がスタートすると、毎年のように競馬ファンの間で話題になるのが「エアレーション作業」です。
この記事をお読みになっている皆さまも、競馬場やWINSで「エアレ(=エアレーション)が効いているから、芝は時計がかかってるな〜」とか、「エアレだから外差し馬場だよ!」などと話している人たちを目にしているかもしれませんね。
今回の記事では、エアレーション作業とその特徴について解説していきます。
エアレーション作業とは?
「エアレーション」とは芝の生えている「路盤」に穴を開け、馬場を柔らかくほぐし、空気の通りをより良くする作業です。まとめると以下の2点となります。
・馬場をソフト(柔らかく)に
・通気性を良くする
作業としてはかなり大掛かりなもの。そのため、それぞれの競馬場によって実施する時期も決まっています。
エアレーション作業の実施時期は?
エアレーション作業は競馬場でレースが開催されていない期間に行われます。中山と東京競馬場の夏のオフシーズンを例にとってみましょう。
【中山:5月→8月】
【東京:7月→9月】
中山競馬場は皐月賞(GⅠ・中山芝2000m)が終わると、秋までレースはありません。夏にオフシーズンをとるのは東京競馬場も同じです。
このオフシーズンを使って、開催で傷んだ芝の発育を促すよう、エアレーション作業を行います。
それではエアレーション作業によって、どのような効果が現れるのでしょうか?
エアレーションの効果は?
エアレーションの効果として、大きくは以下の2つがあります。
1. 芝の発育が良くなる
2. 馬場がソフトになる
この2つの効果によって、レースにはどんな影響が出るのでしょうか?
1. 芝の発育が良くなる
エアレーション作業は馬場をほぐして通気性を高めるため、芝の発育が良くなります。これによって馬場の傷みが減少し、開催の後半になっても良好な馬場コンディションが保たれるのです。
開催が進んでも速い時計のまま
一般的に、芝のコースはレースが行われるにつれて傷みます。そのため、開催が進むと走破時計が少しずつ遅くなるのがデフォルトです。
ところが、エアレーション作業を行った芝コースは傷みが少なく、開催の終盤になっても「速い時計のまま」ということがあります。
「開催最終週=外差し」にならない?
芝は内側(インコース)から傷みます。これは内ラチ(コース内側の柵)に近いコースほど競走馬が多く走るからです。
開催が進んで内側の芝が傷むと、芝コースは外差しが効くようになります。エアレーションが実施される前の福島競馬場などはこの傾向が顕著でした。
ところが、エアレーション作業によって芝の傷みが少なくなったことで、「開催最終週=外差し」の傾向はなくなりつつあると言えるでしょう。
2. 馬場がソフトになる
エアレーション作業は路盤をほぐすこと、そして芝の育成が良くなることで、馬場がソフト(柔らかく)になります。もう少しこの理由を掘り下げてみましょう。
【理由】
◯ 路盤をほぐす
→フカフカとした馬場となる
◯ 芝の発育が良くなる
→芝のクッションが利くようになる
芝コースがフカフカと柔らかく、クッション(弾力性=柔らかい)が利くようになると、競走馬にとっては地面をしっかりとつかんで走れるタイプかどうかがキーポイントとなりますね。
ソフトな馬場が硬くなると……
ソフトな馬場の効果はもうひとつあり、それは以下です。
・開催が進むと馬場が硬くなる
エアレーション作業によってほぐされた路盤は、競走馬が走る(レースが行われる)たびに踏み固められます。これによって芝が硬くなり、開催が進むにつれて「時計が速くなること?!」もあるのです。
時計が速くなる?!
競馬通の人であれば、ここ数年、春の中山最終週に行われるGⅠ・皐月賞(中山芝2000m)の勝ちタイムが「高速化」していることに気づいているのではないでしょうか。
▼過去5年における皐月賞の勝ちタイム
2019年:1分58秒1
2018年:2分00秒8(稍重)
2017年:1分57秒8
2016年:1分57秒9
2015年:1分58秒2
エポカドーロの勝った2018年は雨の影響で時計のかかる馬場。その年を除くと、すべて1分58秒0前後の時計です。
皐月賞の結果からも、エアレーション作業の実施された馬場は「踏み固められると時計が速くなる」ことがわかります。
開幕週は外差し
それでは、開幕週の馬場はどのような傾向があるのでしょうか?
エアレーションによってクッションの効いた馬場になると、以下の点に当てはまる馬が有利となります。
1. グリップ力のある馬
2. 差し馬
グリップ力というのは、地面をしっかりとつかんで走ることを指します。クッションが利く馬場だと、しっかりと4本の脚をグリップできるかが大切です。
ソフトな馬場だと「先行馬に負荷がよりかかる」ため、どうしても差し馬が有利。近年の中山芝コースにおいて、差し馬を多く出すディープインパクト産駒の成績が向上しているのも、エアレーションと無関係ではないでしょう。
秋の中山開幕週はディープインパクト?!
秋の中山開幕週に行われる重賞は京成杯AH(GⅢ・芝1600m)です。新潟開催の2014年を除いた過去5年(2013年〜2018)において、ディープインパクト産駒は1勝2着4回3着1回。
すべての年で馬券圏内に好走し、昨年はミッキーグローリーとワントゥワンがワンツーを決めています。
開幕週だと、ついつい「逃げ・先行馬」に目が向きがちですが、秋の中山開催はディープインパクト産駒の差し馬に注意をしておきましょう!
✳︎しなやかなフォームで走るディープインパクト産駒は、もともと小回りの中山コースが苦手でした
まとめ
以前、暮れの中山開催(12月開催)はディープインパクト産駒にとって「鬼門」と呼ばれるほどでした。これは小回りコースに加えて、時計のかかる馬場が荒れていることによるもの。
しなやかに差し脚を伸ばすディープインパクト産駒にとって、時計のかかる荒れた馬場では思うように力を発揮できません。
ところが、現在のはエアレーション作業によって馬場の傷みが少なくなり、良好な芝コンディションが保てるようになっています。
◯ ディープインパクト産駒にとって、エアレーションはなくてはならないもの
さて、今後、エアレーションを味方につけるのはどのような種牡馬なのでしょうか?
以上、お読みいただきありがとうございました。