GⅠ凱旋門賞(2017年)は今年もGalileo産駒+A・オブライエン厩舎の管理馬が好走するのか?ーーレース展望

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日本調教馬のマカヒキ(4歳牡馬友道康夫厩舎)が遠征した2016年の凱旋門賞は、A・オブライエン調教師(アイルランド)の管理するGalileo産駒の牝馬ファウンド(当時の4歳)がシャンティイ競馬場の直線を早々に抜け出すと、R・ムーア騎手のパワフルなアクションに応えて1着でゴール板を通過しました。2着ハイランドリールと3着オーダーオブセントジョージの2頭はともにGalileo産駒+オブライエン厩舎の管理馬。同一の調教師と種牡馬の1-2-3は凱旋門賞史上初の快挙となりました。

Galileo産駒は昨年1〜3着を独占するまで凱旋門賞では連対が「0」。現在欧州でもっとも活躍しているSadler's Wells系種牡馬としては物足りない成績が続きましたが、2016年のファウンドの勝利によって不振から抜け出しました。

今年の凱旋門賞は、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを含むGⅠ4連勝と勢いに乗る3歳牝馬Enableが圧倒的な1番人気に支持されています。イギリスのゴスデン厩舎が管理するEnableはGalileo直仔のNathanielを父にもつことから、今年も昨年と同じシャンティイ競馬場でレースが行われるのはプラス。すでに「名牝」とも呼ばれるこの3歳牝馬を破るのはGalileo産駒なのか、それとも名伯楽オブライエン調教師の管理馬なのでしょうか?

 

今年の凱旋門賞に出走予定のGalileo産駒は?

JRAのHPに掲載されている「2017年凱旋門賞(GⅠ)の出走予定馬について【9月22日(金曜日)現在」を参考にすると、このなかでGalileo産駒は6頭、その内の4頭がA・オブライエン調教師の管理馬です。

 

A・オブライエン厩舎(アイルランド)

ハイランドリール 5歳牡馬

オーダーオブセントジョージ 5歳牡馬

ウインター 3歳牝馬

カプリ 3歳牡馬

ハイランドリールとオーダーオブセントジョージは昨年の凱旋門賞の2、3着馬。両馬ともに今期GⅠを勝っており、昨年から大きな力の衰えはありません。ただ、ハイランドリールは前走のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSでEnableに9馬身差の4着に負けており、凱旋門賞での巻き返しがなるのか……。

3歳牝馬ウインターはGⅠ英愛1000ギニーを制しているマイラーで、2400mの距離は今走が初めて。前々走のGⅠナッソーS(芝1980m)を勝っており2000mまでの距離はOK。3歳牡馬のカプリはGⅠ愛ダービー(芝2400m)とGⅠ英セントレジャー(芝2920m)を連勝してここへ参戦します。古馬との力関係は微妙なものの距離はOK。

(✳︎追記:ハイランドリールは出走回避。それに替わり、オブライエン厩舎からは4歳牡馬のアイダホが出走予定)

 

M・スタウト厩舎(イギリス)

ユリシーズ 4歳牡馬

イギリスの名門M・スタウト厩舎からはユリシーズ1頭が出走予定。ユリシーズは4歳になった今年に入り、エクリプスSでGⅠを初制覇。その後はキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSでEnableの2着に入るなどここにきてグングンと成長しています。前走のGⅠ英インターナショナルSも危なげなく勝利し、凱旋門賞でも上位の人気に支持されるでしょう。

 

A・ファーブル厩舎(フランス)

ヴァルドガイスト 3歳牡馬

フランスの名調教師ファーブル厩舎からは、GⅠ仏ダービー(芝2100m)2着のヴァルドガイストが出走予定。仏ダービーはシャンティイ競馬場で行われたため、凱旋門賞と同じコースでの好走歴は大きなプラス。

 

Galileo産駒が好走するには?

今年の凱旋門賞が行われるシャンティイ競馬場は起伏が少なく、ヨーロッパの芝でも比較的速い時計の出る馬場として知られています。日本調教馬でディープインパクト産駒のエイシンヒカリがシャンティイで行われたGⅠイスパーン賞を圧勝したように、コテコテの欧州的なパワーをもつ馬でなくとも好走することが可能です。

欧州の種牡馬界をリードする大種牡馬GalileoはSadler's Wells直仔で、日本では今年のオークスを制したソウルスターリングの父父として、昨年のGⅡ青葉賞を制したヴァンキィッシュランの母父にその名前を見つけることができます。ただ、重厚なパワーを伝えるGalileoは時計の速い日本の芝にはなかなかフィットしていないことからも、シャンティイ競馬場では緩みのないペースでレースが流れることが好走の条件となるでしょう。

 

昨年の1〜3着の独占は?

Galileo産駒が昨年の凱旋門で上位を独占した理由は、直線で外からの差しが利きにくい馬場だった(インが有利)ことと、オーダーオブセントジョージとファウンドが前々で緩みのないペースを作ったことが挙げられます。フランス的な重厚なキレよりも、スタミナとパワーが活きる質のレースになったことが、Galileo産駒の1-2-3を実現させました。

今年も、オブライエン厩舎からは先行馬のハイランドリールとオーダーオブセントジョージの2頭が出走するとあって、どのようなペース・メイクが行われるのかは注目。1番人気のEnableは重い馬場のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを制しているパワー型ですから、オブライエン調教師がどのような作戦を立てるのかはレースを予想する上での大きなポイントです。

 

R・ムーア騎手がオブライエン厩舎のどの馬に騎乗するのかに注目

日本でもお馴染みの世界NO.1ジョッキー、R・ムーア騎手がオブライエン厩舎から出走する馬のどれに乗るのかは注目。昨年は、ムーア騎手のファウンドが凱旋門賞を制したように、もっとも勝利に近い馬がどれなのかがすぐにわかります。もちろん、大波乱となった今年の英ダービーでオブライエン調教師の管理する16番人気のウイングスオブイーグルスが制したように、R・ムーア騎手が乗っていない馬が勝つこともありますが、それはそれ。とりあえず、ムーア騎手の騎乗する馬はチェックしなければいけません。

 

スタミナを削り合うレースならGalileo

凱旋門賞をGalileo産駒が連対すらできない時期があったことからも、その年その年によってレースの質が異なります。出走メンバーも馬場もレース展開も一つとして同じものはないのですから、Galileo産駒がゴリゴリとパワーで押し切る年もあれば、しなやかなドイツ血脈のデインドリームが直線でキレる脚で差し切ることも、Shirly Heightsのフランス的なキレをもつソレミアがオルフェーヴルを差し切る年もあるのです。

もし、今年の凱旋門賞が昨年のようなペースに緩みのない持続戦になるのであれば、Galileo的なパワーをもつ馬たちがゴール前にどっと押し寄せてくるはずです。スタミナを削り合う展開をGalileo産駒に乗ったムーア騎手が「あの」パワフルなアクションで抜け出してくるシーンを思い描いただけで、もう胸がドキドキしますね。

 

まとめ

Sadler's Wells3×2という濃いクロスをもつEnableはキレよりもスタミナとパワーでゴリゴリと押してくる先行馬。この馬が1番人気に支持される今年の凱旋門賞は、Galileoのパワーが活きる展開になる可能性が高く……。また、Enableに対してオブライエン調教師の管理馬たちがどのような作戦でレースに臨むのかも今から楽しみです。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。