2017年のJRAの総決算「第62回有馬記念」は12月24日(日)、中山芝2500mを舞台に行われます。このレースでの引退が発表されている「現役最強馬」のキタサンブラック、今年のジャパンカップを制したシュヴァルグラン、ダービー2着の3歳馬スワーヴリチャードなどが出走を予定。2017年の競馬の頂点の座に就くのはどの馬なのでしょうか?
関西の名門・角居勝彦厩舎はシャケトラとトーセンビクトリーの管理馬2頭を有馬記念に送り出します。厩舎の期待を一身に背負うのは、今年の日経賞を制したシャケトラ(4歳牡馬)。今秋は「天皇賞・秋→ジャパンカップ→有馬記念」の3戦に出走するローテーションが組まれました。これはGⅠ6勝のキタサンブラックとまったく同じローテーションとあって、シャケトラに対する角居調教師の期待の高さが窺えます。
シャケトラ 4歳牡馬
父:マンハッタンカフェ
母:サマーハ(母父:シングスピール)
厩舎:角居勝彦(栗東)
生産:ノーザンファーム
騎手:福永祐一
体質の弱さから3歳6月デビューとなったシャケトラは、クラシック路線に乗ることができませんでした。角居厩舎の管理馬らしく心身の成長に合わせたローテーションが組まれ、初めて重賞を制したのは今春の日経賞(GⅡ・中山芝2500m)。
GⅠ初挑戦となった天皇賞・春は3人気に推されたものの、道中で折り合いを欠いたこともあって見せ場もなく9着と敗退しました。その敗戦から2ヶ月後、立て直しを図って臨んだ宝塚記念(GⅠ・阪神芝2200m)はスムーズにレースの流れに乗り、見せ場たっぷりの4着と好走。GⅠ級の能力があることを改めて示した1戦だったと言えます。
秋のGⅠレースは2戦ともに大敗
宝塚記念の後に休養に入ったシャケトラは天皇賞・秋(GⅠ・東京芝2000m)から復帰しました。歴史的な不良馬場のなかでレースが行われたこと、大外枠からのスタートでロスの多い競馬になってしまったことが響き15着と大敗。続くジャパンカップは4コーナーを素晴らしい手応えで回ってきたものの、追い出されてからバキューンと反応することなく馬群に沈み、ここでも11着と大敗することに……。
直線の長い東京コースは不向き
素晴らしい「パワー・ピッチ」で走るシャケトラにとって、直線の長い東京競馬場で行われた天皇賞・秋とジャパンカップは適性に合わない舞台。この馬の最大の長所はコーナーでの俊敏な「加速力」にあるため、ベストのコースは直線の短い宝塚記念と有馬記念の2つのグランプリレースです。
良馬場で行われたジャパンカップは4コーナーから直線坂下までスムーズに流れに乗り、追い出されてからは伸び負けという内容。馬体の造りなどからはひと夏を越しての成長がはっきりと見て取れ、小回りの中山コースへと替わる有馬記念は巻き返しへの期待が高まります。
血統
母サマーハは現2歳のサラーブをのぞくと、JRAに出走した3頭の仔がすべて勝ち上がっている優秀な繁殖牝馬。その3頭はともに父が異なることも、母の優秀な繁殖能力を示しています。サマーハの父シングスピールは1996年ジャパンカップの勝ち馬。欧州馬ながら2分23秒8の速いタイムで勝ち上がったことから、日本の芝への対応力をもっていました。
*)シングスピールの母Glorious Song(父Halo)は、ヴィルシーナ=ヴィブロス全姉妹やシュヴァルグランなどを産んだ名繁殖牝馬ハルーワスウィートの3代母にあたり、日本の芝への適性はここに由来しているのでしょう。
シングスピールはBMSとして優秀な成績を上げていて、日本でもオークス馬シンハライト(父デイープインパクト)を産んだ名繁殖牝馬シンハリーズの父としても知られています。サマーハもシンハリーズも小回り・内回り向きの仔を出すのは、シングスピールとサンデーサイレンス系種牡馬との配合でHaloのクロスが発生するから。
Haloクロスはスピードと器用さを伝え、シャケトラが中山の日経賞を俊敏に捲ったのはこの血によるものです。ジャパンカップでシュヴァルグランがインからスムーズに馬群をさばいて直線に向いたのも、Haloクロスの器用さによるものです。また、この馬の雄大な馬体と力強いフットワークは、小回りをバキューンと捲るのに必要なパワーを十分に感じさせます。
*)シュヴァルグランはHalo3×4・5のクロスをもつ。
有馬記念に向けて
シャケトラのベストパフォーマンスは間違いなく今年の日経賞ですから、有馬記念のコースはズンドバ! 内回りの宝塚記念でもコーナーを俊敏に捲って4着と好走したことからも、このコースであれば一線級の馬たちと五分に戦えます。
ロングスパート戦がベスト
有馬記念は3コーナーからのロングスパート戦になることが多く、ここでバキューンと捲れる馬に有利なコース。ただ、近年の暮れの中山開催は時計の速い馬場コンディションになっており、オルフェーヴル級の馬でないと大外をひと捲りというのは難しいのも確かです。
シャケトラは力強さだけではなく器用さももち合わせた馬ですから、イン捲りもできるタイプ。ロングスパート戦で馬群がバラける展開になれば、もち前のパワー・ピッチで俊敏に4コーナーを捲れます。できれば前走のように前目で立ち回りたいところでしょう。
福永祐一騎手はプラス
鞍上はジャパンカップから引き続き福永騎手が務めます。昨年の有馬記念はシュヴァルグランで4コーナー手前から外を捲り上げる積極的な競馬を見せていることから、同じようなイメージで乗れるならチャンスも十分にあります。
乗り替わりとなったシュヴァルグランがジャパンカップを制しているだけに、騎手として期するものもあるでしょう。スタートと折り合いの巧みな騎手ですから、後は「勇気をもってスタミナとパワーをふり絞る」レースができれば。
まとめ
ここ2戦は力を出し切ったとは言えない敗戦のため、ノーカウントでOKです。コースへの適性と名門厩舎の底力で、シャケトラが有馬記念をズバッと射止めることができるのかに注目しましょう。
以上、お読みいただきありがとうございました。