ブレスジャーニーとトーセンビクトリーの内枠+人気薄の2頭は有馬記念を好走できるのか?

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第62回有馬記念の枠順が12月21日(木)に決まり、1人気のキタサンブラックは1枠2番、2人気のスワーヴリチャードは7枠14番からのスタート。レースの展開や結果を大きく左右する要素と言える「枠順」が確定し、「有馬記念モード」もますます高まります。

 

レース展開の鍵を握るのは内枠の馬

枠順とともに「レースの展開」を握るのは、前々のポジションを取れる逃げ・先行馬。ただ、内枠に入ったキタサンブラックのハナを叩いて「逃げ」られる馬がいるのかは不透明です。

また、キタサンブラックが3コーナー過ぎから仕掛け、直線入口で先頭に立つようなレースになったときにはインコースがガラリと空き、そのスペースを使う内枠の馬も展開の鍵を握ると言えるでしょう。

 

逃げ馬は?

逃げる可能性があるのは内目の3枠を引き当てたトーセンビクトリー。枠順確定後のインタビューで、田辺騎手が「逃げ」を匂わす発言していたことからも、武豊騎手+キタサンブラックのハナを叩くのはこの馬かもしれません。

 

インコースがガラリと空く可能性も……

トーセンビクトリーの田辺騎手は人気薄の馬で逃げると、「ドスロー」にコントロールすることがままあります。例えば、2016年の安田記念を勝ったロゴタイプでは、「タナベ・スロー」と揶揄されるほどの遅いペースにもち込み、1人気のモーリスを封じ込めました。

トーセンビクトリーの逃げであれば、キタサンブラックは2番手の外で折り合いに専念し、後続の仕掛けをコントロール。武豊騎手が3コーナー過ぎから少しずつスピードを上げ、4コーナーで先頭に立つレースをする可能性が高くなります。

キタサンブラックはストライドを伸ばして走る馬なので、スピードを上げながらラチ沿いをぴったりと回ることはできないため、3〜4コーナーで「イン」がガラリと空くシーンも十分。このスペースを使える内枠の馬は……と探してみれば、ヤマカツエース、ブレスジャーニー、クイーンズリングの3頭です。

 

ブレスジャーニーとトーセンビクトリー

上で述べたように、展開の鍵を握るのは内目の枠に入った馬たち。そのなかでもブレスジャーニーとトーセンビクトリーは同馬主だけに、お互いにどのような作戦を立ててレースへ臨むのかは注目です。

今回の記事ではこの人気薄2頭にスポットを当てて、好走の可能性について考察します。

 

ブレスジャーニー 3歳牡馬

父:バトルプラン

母:エルフィンパーク(母父:タニノギムレット)

厩舎:佐々木晶三(栗東)

生産:競優牧場

騎手:三浦皇成

2歳時にサウジアラビアRC(GⅢ・東京芝1600m)→東京スポーツ杯2歳S(GⅢ・東京芝1800m)と重賞を連勝し、早くからクラシック候補と期待された素質馬。今年の3月に判明した骨折によって春を全休し、復帰したのは秋の菊花賞から。

長期休養明け+歴史的な不良馬場となった菊花賞を12着と敗退したものの、叩き2戦目となったチャレンジC(GⅢ・阪神芝2000m)を3着と好走し、上昇ムードで有馬記念へと臨みます。

 

血統

父バトルプランは日本でも種牡馬として繁用されたエンパイアメーカー直仔で、その母FlandersがBCジュヴェナイルを勝った名牝という良血馬。自身はMr. Prospector4×3とNorthern Dancer4×4のクロスをもつので、父よりも芝向きの馬を出す可能性の高い種牡馬です。

母エルフィンパークはダイナカールにさかのぼる名門牝系の出身。ブレスジャーニーが東京コースでしなやか+重厚にキレるのは、エアグルーヴやドゥラメンテを出したこの牝系に特有のストライドで走るからだと言えるでしょう。

ブレスジャーニーはノーザンテースト≒Storm Bird4×4(ニアリークロス)をもつのが特徴。前走のチャレンジCで内回りをスムーズに立ち回れたのは、このクロスの器用さによるものでしょう。本質的には東京向きですが、中山がまったく向かない配合ではありません。

 

3歳世代トップクラスの馬

ブレスジャーニーはスワーヴリチャードを東京スポーツ杯で差し切っているように、この世代トップクラスの実力をもっています。全体的にクロスのうるさい父と母をもつものの、母系は成長力に富んでいることから、単純な早熟馬ではありません。

長期休養明け+不良馬場だった菊花賞をのぞけば、大きく崩れていない馬。3歳牡馬はスワーヴリチャードがアルゼンチン共和国杯を楽勝し、レイデオロがジャパンカップ2着と好走していることから、トップレベルの馬であれば古馬と互角に戦えます。

 

有馬記念に向けて

スタートが遅く、どうしても後ろのポジションになってしまうのは不安があるものの、好枠に入ったのは大きくプラス。前走で内回りコースにも対応していることから、ノーザンテースト≒Storm Birdのクロスでインを器用に立ち回れればチャンスもあります。

3歳馬が有馬記念を勝つためには菊花賞1着からの臨戦が絶対条件ですが、2・3着ならこのローテーションでもOKです。スワーヴリチャードとこれほどのオッズ差が付くような馬ではないので、この好枠を活かし切りたいですね。

ヤマカツエースやクイーズリングなどキタサンブラックの直後のインを取れる馬たちが、3〜4コーナーから外へと進路を取るなら、インのスペースがガラリと空くので、この馬にもチャンスが……。レインボーラインよりも前のポジションを取り切れれば面白い1頭と言えます。

 

トーセンビクトリー 5歳牝馬

父:キングカメハメハ

母:トゥザヴィクトリー(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:角居勝彦(栗東)

生産:ノーザンファーム

騎手:田辺裕信

3歳秋のローズS(GⅡ・阪神芝1800m)では2着ミッキークイーンと0.1差の3着に好走するなど、クラシック路線でも活躍が期待された1頭。今春の中山牝馬Sで初重賞制覇を飾りました。

牝馬限定のGⅠでも掲示板に入っておらず、強力な牡馬相手の有馬記念は厳しいレースになりますが、血統+ピッチ走法から中山コースはずんどばだけに、舞台適性を活かしての好走にわずかな望みをかけたい馬です。

 

血統

母トゥザヴィクトリーはエリザベス女王杯を勝った名牝で、自身も有馬記念を3着と好走しています。全兄のトゥザグローリー=トゥザワールドが、俊敏にコーナーを回るピッチ走法を武器に有馬記念を2・3着と好走していることからも、この血統は中山コースがずんどばです。

トーセンビクトリーは全兄たちと同じピッチ走法を母から受け継いでおり、中山牝馬S1着、札幌のクイーンS2着と小回りの重賞で好走。有馬記念は願ってもない舞台と言えます。

 

有馬記念に向けて

適性はずんどば!なので、後はこの馬の力が足りるかどうかがポイント。ピッチ走法を活かし切るためには、前半で落とせるだけスローに落として逃げ、4コーナー手前から3Fの瞬発力勝負にもち込むのがベストです。

ただ、2番手にキタサンブラックが付けた時点で、4コーナーまでスローのままレースが進むとは考えにくく、田辺騎手がどのようなアイディアをもって乗るのか……。この馬がアレヨアレヨを演出するには以下の条件が揃わないと苦しいでしょう。

 

逃げて好走するには

トーセンビクトリーが逃げて好走するには、以下の条件が重なる必要があります。

1. スローなのに後続が離れる

2. キタサンブラックの仕掛けが遅れる

「ドスロー+馬群が団子状態+4コーナーまで誰も動かない」という展開は望めないので、少なくとも上の2つの条件が揃わないと、前残りは厳しいと言わざるを得ません。もし、キタサンブラックがスタートで出遅れて中団のインを追走するレースになるなら、ドスローの団子状態でもOKですが……。

いずれにせよ、この馬が好走するには田辺騎手のアイディアによるので、どのような展開にもち込むのかは楽しみにしています。

 

まとめ

トーセンビクトリーがスタートから飛ばして逃げ、平均ペース以上のラップで2周目の3コーナーまでハナに立つ展開であれば、有力各馬にとっても苦しい流れになり、「ブレスジャーニーの末脚が!」というシーンもゼロではありません。

中山の芝は開催1ヶ月前にエアレーション作業を実施するようになってから、週を重ねるにつれて「馬場が高速化+前目有利」のコンディションになり、近年の有馬記念でも4コーナーで中団に位置していた馬が直線で外から差してくるシーンはほぼありません。

競走能力ではブレスジャーニー、コース適性とレース展開ではトーセンビクトリーに分があり、同馬主の2頭がどのような作戦でレースを組み立てるのかが今から楽しみですね。どちらも人気が薄いため、もし2・3着に入線することがあれば、「アッ!」と驚く高配当も期待できます。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。