不思議な強さをもつレイデオロは有馬記念(2018年)を好走できるのか?ーー展望

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「歴史的なスロー・ペース」と言われた昨年のダービーを制したレイデオロは昨秋、神戸新聞杯→ジャパンカップの2戦でハイレベルな走りを見せ、名実ともに現4歳世代のトップホースであることを示しました。

今年は春こそ京都記念3着→ドバイシーマクラシック4着と惜敗したものの、秋に入ってからオールカマー→天皇賞・秋を連勝し、キタサンブラックの跡を継ぐ芝中距離のエースへと成長しつつあります。

2018年のレイデオロの「走り納め」はグランプリの有馬記念。キタサンブラックがターフを去った後、世代を超えたチャンピオンとして競馬界を引っ張る存在の1頭となれるのか、そのレースぶりに注目しましょう。

 

不思議な強さをもつレイデオロ

レイデオロはこれまでにダービーと天皇賞・秋の2つのGⅠを制しています。「チャンピオン・コース」と称される東京競馬場の芝2400mと芝2000mのGⅠを勝っていることから、高い競争能力をもつことは間違いありません。

 

東京コースは不向き?

「スローペース+ラスト3Fの瞬発力勝負」になった昨年のダービーから、レイデオロは「機動力と俊敏性に優れている」ことがわかります。しなやかなストライドで走るタイプではないため、本質的には直線の長いコースに向く馬ではありません。

ところが、俊敏な脚さばきをもつレイデオロは後半1000m57.4のロングスパート戦になった今年の天皇賞・秋において、ストライド走法のサングレーザーとキセキを力でねじ伏せました。

上り3Fに特化したレースなら、直線の長い東京芝2000mでも好走する下地はあると考えていたものの、これほどの完勝劇はこの馬の成長力と「ポテンシャル=素質」の高さを示していると言えます。

 

レイデオロ 4歳牡馬

父:キングカメハメハ

母:ラドラーダ(母父:シンボリクリスエス)

厩舎:藤沢和雄(美浦)

生産:ノーザンファーム

主戦:C・ルメール

レイデオロは母父シンボリクリスエスの影響が出た胴の長い馬体をしており、いかにもストライドが伸びる体型をしています。ただ、走り出すと回転の速い小気味の良いフットワークをしていることから、本質的には小回りコースに向いているタイプです。

休養明けのぶっつけで挑んだ皐月賞(中山芝2000m)を5着と敗れているものの、2歳時には同じ舞台のホープフルSを快勝しているように、中山などの直線の短いコースがベターな馬でしょう。

 

東京コースのGⅠを2勝

それでは、しなやかにストライドを伸ばすタイプではないレイデオロが直線の長い東京コースで行われたダービーと天皇賞・秋を勝てたのはどうしてなのでしょうか?

2017年のダービー

上にも述べたように、昨年のダービーは「歴史的」と形容されるほどのスローペースになり、実質的に上り3Fに特化したレースでした。そのため、俊敏に加速できる(=トップスピードにすぐに到達する)レイデオロがしなやかにストライドを伸ばすスワーヴリチャードを退けることができたのです。

瞬発力勝負にもさまざまなものがあって、上り3Fに特化したレースでは、すぐにトップスピードに到達できる「加速性能」の高さが問われます。そして、この俊敏さこそがレイデオロの最大の武器なのです。

2018年の天皇賞・秋

今年の天皇賞・秋は昨年の菊花賞馬キセキがハナを切り、前半1000mが59.4の通過。前後半1000mが「59.4 - 57.4」と2.0秒の後傾ラップ(スローペース)となりました。ただ、道中で1F12秒台のラップがひとつもなく、全体としては締まったペースだったのが大きな特徴です。

上り3Fは「10.9 - 11.6 - 12.0」。4コーナーの地点が最速(10.9)ラップだったことからも、直線はスピードを落とさずにどこまで我慢できるかの勝負となりました。コーナーを俊敏に加速力できるレイデオロにとって、この上り3Fのラップ構成は願ってもないものだったと言えます。

 

俊敏なピッチ走法

レイデオロは俊敏な脚さばきが最大の特徴で、前脚がしなやかに伸びる走りではありません。そのため、本質的には東京よりも中山向きの機動力をもつ馬。昨年のダービーは歴史的なスローを小気味良いフットワークで抜け出すと、「女性的なキレ」でスワーヴリチャード以下を完封しました。

回転の速いフットワークは瞬時にトップスピードに乗れる反面、そのスピードを長く持続するのが苦手。「直線の長いコース+前傾ラップ」になると、ジェンティルドンナやラブリーデイのようなピッチ走法の馬はストライド走法の馬に差されてしまいます。

 

高速決着は得意

レイデオロやジェンティルドンナのように「俊敏な脚さばき」で走る馬は、上り3Fと全体の時計が速くなるレースは大の得意です。その理由は以下の2つ。

1. 時計が速くてもスタミナをロスしない

2. 瞬時にトップスピードに乗れる

脚さばきが俊敏なことはそれだけスタミナのロスを抑えることができます(燃費の良い走り)。また、ピッチ走法はすぐにトップスピードに乗れるため、上り3Fが速くなっても対応可能です。

レイデオロが1分56秒8のレコード決着となった今年の天皇賞・秋を、上り3F33.6の鋭さで差し切ったのは高速決着に強いピッチ走法だったからでしょう。

 

有馬記念に向けてのレイデオロ

レイデオロは今秋のGⅠのトレンドとなっている「ノーザンファーム生産+C・ルメール騎手+関東馬」の組み合わせ。また、ジャパンカップをパスして有馬記念に備えたローテーションも好感がもて、レースに向けての準備に不安はありません。

ノーザンファーム生産馬については先日の記事に詳しく書いているので、よければそちらをご覧下さい。

 

中山コースはOK!

先にも述べたように、レイデオロはジェンティルドンナと似たピッチ走法なので、小回りの中山コースに向いています。コーナー加速力に優れており、3コーナーからペースアップすることの多い有馬記念はほぼベストの舞台です。

 

ロングスパート戦もOK!

今年の天皇賞・秋は後半5Fが「11.6 - 11.3 - 10.9 - 11.6 - 12.0」のロングスパート戦となりました。ピッチ走法のレイデオロが東京のコースをロングスパートで差し切ったのは素晴らしく、これなら3コーナーからペースの上がる有馬記念にも不安はありません。

有馬記念は3〜4コーナーのペースが速く、ラスト1F12秒台の決着になるのがデフォルト。天皇賞・秋のラストの我慢比べを制したレイデオロにとって、ロングスパート戦となるのは大きなプラスだと言えます。

 

時計のかかる馬場は?

今開催の中山芝は秋ほどの高速馬場になっておらず、そこそこに時計がかかっています。レイデオロはタフな馬場だった京都記念を3着と敗れていることから、上りのかかるレースを不安視する声もあるのでしょう。

この馬が3着以下となったレースは、スタートで大きく出遅れた皐月賞を除くと、かかる気性を上手くなだめられなかったことが敗因として上げられます。

母系はスタミナとパワーに優れた名牝ウインドインハーヘアーとRobertoの入り、時計のかかる決着に不安のない配合。また、父キングカメハメハは母系の特徴をストレートに引き出す種牡馬なので、その点も後押ししますね。

 

まとめ

レイデオロは適性に合わない東京コースのGⅠを2勝しています。この馬はまだ本当の強さを奥に秘めているだけに、中山コースにおける走りが楽しみですね。

以上、お読みいただきありがとうございました。