2018年のJRAの総決算「第63回有馬記念」は12月23日(日)、中山芝2500mを舞台に行われます。
有馬記念は1人気に推される馬が強いレース。過去10年の1人気の馬は(6 - 2 - 1 - 1)と安定した成績を残しています。ただ、1人気馬の安定感とは対照的に、人気薄の馬が2・3着に好走することも多いレースです。
2008年は1人気ダイワスカーレットが1着となったものの、2桁人気のアドマイヤモナーク(14人気)とエアシェイディ(10人気)の2頭が上位に入線し、3連単985,580円の配当が出ました。今年は2桁人気馬の好走はあるのでしょうか?
過去10年における2桁人気馬の好走例
過去10年において、2桁人気の馬は4頭が上位に入線しています。まずはこれまでに波乱の立役者となった馬たちをチェックしておきましょう。
▼2桁人気馬の好走例(過去10年)
2008年
2着:アドマイヤモナーク(14人気)
3着:エアシェイディ(10人気)
上り3F:12.0 - 11.7 - 12.7
-----
2009年
3着:エアシェイディ(11人気)
上り3F:12.0 - 11.7 - 12.3
-----
2010年
3着:トゥザグローリー(14人気)
上り3F:11.7 - 11.1 - 11.8
-----
2012年
2着:オーシャンブルー(10人気)
上り3F:12.1 - 11.9 - 12.0
過去10年において2桁人気馬が好走したのは上記の4レース。上り3Fの数字から、「ロングスパート戦」と「スロー+上り勝負」のどちらになっても、人気薄の馬は好走しています。
2桁人気馬の共通点は?
上記の4頭は「◯◯の血をもっている」などの血統的な共通点はありません。それでは、これらの馬に共通する点はあるのでしょうか?
・ピッチ走法
アドマイヤモナーク、エアシェイディ、トゥザグローリー、オーシャンブルーは脚の回転が速いピッチ走法の馬。4頭ともに小回り・内回りコースの重賞を好走しています。とくにエアシェイディとトゥザグローリーは母系から小回り向きの馬が多く出ており、中山コースへの適性が高い牝系の出身です。
小回り向きのピッチ走法を伝える血はForli(名牝Specialの父)、Danzig、ノーザンテースト、Robertoなど。これらの血をもつ馬のフットワークをレース映像で確認して、ピッチかどうかを判断するのがベストな方法だと言えます。
2018年・有馬記念の2桁人気馬は?
今年の有馬記念に出走する2桁人気馬をチェックしてみましょう。
▼2桁人気馬
ミッキースワロー
クリンチャー
マカヒキ
サクラアンプルール
リッジマン
サウンズオブアース
スマートレイアー
✳︎人気はあくまで想定です
7頭のなかで回転の速いピッチ走法の馬は、サクラアンプルールとリッジマンの2頭です。また、クリンチャーは母系にRobertoとDanzigが入るパワー走法なので、これも小回り向きのタイプと言えます。
ミッキースワローはカンパニーと似た馬です、本質的には長い直線をもつコースに向くタイプ。サウンズオブアースはコース不問の器用さをもつ馬なので、小回りがベストとは言えません。
マカヒキとスマートレイアーはディープインパクト産駒らしいストライドで走るので、小回りへの適性は「?」が付きます。ただ、Haloクロスをもつマカヒキは器用さももち合わせていますが……。
中山コース向きの3頭
2桁人気として好走の可能性があるのはクリンチャー、サクラアンプルール、リッジマンの3頭。さて、どの馬が波乱の立役者となるのでしょうか?
クリンチャー 4歳牡馬
今走は海外遠征帰りの初戦。オルフェーヴル級の馬であれば凱旋門賞帰りでも好走することは可能なものの、やはりローテーションはマイナスです。
RobertoとDanzigのパワーがもち味で、スタミナを問われるロングスパート戦を得意とします。歴史的な不良馬場だった菊花賞を2着と好走しているように、上りのかかるレースがズンドバのタイプです。
また、揉まれ弱い気性にもかかわらずスタートが遅いため、外からスムーズに先行できるかがキーポイント。中より外目の枠からスムーズに先行し、「ロングスパート+上りかかる展開」になればチャンスがあるかもしれません。
サクラアンプルール 7歳牡馬
サクラアンプルールは「スロー(後傾ラップ)+上り勝負」になると強さを発揮する小回り向きの馬。重賞における好走は小回りコースを器用に立ち回ってのものだけに、過去に有馬記念を好走した2桁人気馬と似たタイプと言えるでしょう。
昨年の有馬記念は16着と大敗したものの、勝負所で不利を受けるまでは「おおっ!」と思わせる脚色でした。前走の天皇賞・秋6着からも大きな力の衰えはなく、内目をスムーズに立ち回れるようならチャンスも出てきます。
不安はキセキがジャパンカップのようなロングスパート戦にもち込んだとき……。もともとスローの上り勝負を得意としているだけに、上り5F以上の持続戦になるようだとこの馬のキレ味が半減してしまいます。
リッジマン 5歳牡馬
JRAの芝で上げた5勝はすべて「中山・札幌・函館」の小回りコースです。前走のステイヤーズSはOP特別のようなメンバーだった(✳︎)こともあり、見た目以上の完勝劇でした。
✳︎4連覇を目指したアルバートが出走取消
小回りコース向きの器用な立ち回りと捲り脚がこの馬の最大の長所。スタートセンスもある馬で、内枠に入れれば中団よりも前のポジションに付けられるでしょう。
この馬はDamscus4×3とContinue5×4のクロスをもつことから、小回りを捲る脚質となりました。父スウェプトオーヴァーボードは自身が強いクロスをもたないため、母系の特徴を引き出す種牡馬。リッジマンは中距離馬だった母アドマイヤモンローからスタミナを受け継いだと考えられます。
現在の長距離路線(ステイヤーズSやダイヤモンドS)はハイレベルとは言えないため、リッジマンが有馬記念を好走できるのかは微妙なライン。ただ、適性としては十分な馬だけに好走があっても驚けません。
3頭のなかで注目馬は?
実績とコース適性からはクリンチャーとサクラアンプルールの2頭に注目。ただ、前者は海外遠征帰り初戦、後者は「後傾ラップがベスト」とそれぞれに不安を抱えています。リッジマンはコース適性も申し分なく、勢いのある5歳馬というのが魅力。後は競争能力がGⅠ級なのかだけでしょう。
枠順を無視してこのなかから注目馬を1頭選ぶのなら、蛯名騎手の乗るリッジマン。近年の蛯名騎手は「えっ!?」と首を傾げたくなる騎乗もチラホラと目にするものの、有馬記念だけはアテになります。かなりの人気薄になりますし、狙って面白いコンビです。
まとめ
有馬記念は2桁人気の馬がちょくちょく上位に入線するレース。1人気が馬券外に飛ばなくとも高配当を期待できるので、穴党は「バッチコーイ!」と手ぐすねを引いています。
今年は波乱となるのか、今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。
今秋GⅠのトレンド「ノーザンファーム生産馬」が有馬記念(2018年)「も」制してしまうのか? - ずんどば競馬