引用元:NAKAUCHIDA Stable | Nakauchida Stable's official Website.
2歳のマイルチャンピオンを決める「朝日杯FS(GⅠ・阪神芝1600m)」は、1人気のダノンプレミアムが好位のインから上り33.6の鋭さで抜け出し、2着のステルヴィオに0.6秒差をつける完勝。勝ちタイムの1分33秒3は同日の古馬1600万下(元町S)を0.5秒上回るもので、この時期の2歳馬としては優秀な時計での勝利となりました。
ダノンプレミアム 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:インディアナギャル(母父:Intikhab)
厩舎:中内田充正(栗東)
生産:ケイアイファーム
騎手:川田将雅
ディープインパクト産駒ながらムキムキの好馬体をもち、名牝ジェンティルドンナのような小気味の良い先行力が魅力の1頭。ポンと好スタートを切れるのは、しっかりと筋肉のついた後脚を踏ん張ることができるから。
2歳の早期に筋肉がついているのは、母インディアナギャルのもつDanzig4×3のクロスとRobertoのパワーによるものです。このパワーこそが、先行力と豊かなスピードの持続力をダノンプレミアムに与えています。
この馬の血統や過去の2走については、以下の記事に詳しく書いているので、よければご覧下さい。
朝日杯FSの内容について
ダノンプレミアムはここでも好スタートを切り、外から押して押してハナを主張したケイティクレバーとファストアプローチを先に行かせて好位のインをキープ。
直線に向いてケイティクレバーとファストアプローチの間を余裕十分の手応えで抜け出して先頭に立つと、そのまま後続を寄せ付けない完勝劇となりました。
レースは前後半800mが47.2 - 46.1のスローバランス。この馬自身も上り33.6をマークし、速い上りにも対応したのは大きな収穫と言えます。ここでは「モノが違う」という勝ちっぷりからも、来年のクラシックが楽しみな1頭です。
中内田充正調教師は初GⅠ制覇
開業4年目の中内田充正調教師は、ダノンプレミアムの朝日杯FSが初GⅠ制覇。今年は勝ち星もすでにキャリアハイを更新し、管理する2歳馬が次々と重賞を勝つなど、飛躍の年となりました。
好調な中内田厩舎のなかにあって、素晴らしいのは2歳戦の成績。12月17日(終了時点)での2歳戦は(11 - 4 - 2 - 9)。この内4勝が重賞でのものとあって、勝率や連対率だけではなくその内容の濃さも特筆モノです。
厩舎には将来有望な2歳馬が多く、来春のクラシックに向けても目が離せません。今後の活躍がますます期待されます。
来春に向けて
ダノンプレミアムの最大の長所は脚が地面を離れている時間の長い、重厚なストライドで走れることです。この美しいフォームはびゅんと加速はできないものの、スピードを持続するのに長けていることから、直線の長いコースに合っています。
ストライドが大きいということは、小回りコースだとバランスが取りにくくなり、今後はコーナーでの加速力が課題。高い競走能力をもっていることは間違いなく、ストライドが活かせるレースであれば、大きく崩れることはないでしょう。
ベストの距離は?
マイルを1分33秒台で走り切るスピード能力やムキムキの馬体からも、ベストは1800mだと考えられます。血統としてもミッキーアイルをさらにパワーアップさせたイメージ。
皐月賞2着のペルシアンナイトがマイルCSを制したように、3歳春の時点ではそれほど距離適性を心配する必要はありません。気性的にスピードをコントロールできるのであれば、マイラーが2000mの皐月賞を好走することは可能です。
小回りの皐月賞を克服できるかが鍵
ここまでの3戦は直線の長いコースでのものとあって、皐月賞に向けての課題は小回りに対応できるかどうか……。このレースは3コーナーからスピードが上がるので、加速しながらコーナリングをする必要があります。
そのため、本質的にはストライド走法の馬に適してはいないレースです。ダノンプレミアムがコーナーでスピードを上げるには、ストライド・ロス(コーナーで外に膨れる)を承知で乗れるかどうかでしょう。
2015年の皐月賞を制したドゥラメンテが3〜4コーナーで内から大外へ瞬時にワープしたような、あの走りができるかどうかが試されます。
2着ステルヴィオと3着タワーオブロンドン
2着には直線の外から追い込んだステルヴィオ、3着にタワーオブロンドンが入線し、今年の朝日杯FSは1〜3人気が上位に入りました。
ステルヴィオ 2歳牡馬
父:ロードカナロア
母:ラルケット(母父:ファルブラヴ)
厩舎:木村哲也(美浦)
生産:ノーザンファーム
ステルヴィオは今年の2歳馬が初年度となるロードアナロア産駒。まだ馬体に緩さがあるため好スタートが切れず、どうしても後ろからの競馬となってしまいます。トモがしっかりと成長してスタートが良くなれば、この馬が完成したと言えるでしょう。
胴の長い馬体からもマイルだと距離がやや短く、現状は1800mくらいがベストでしょう。この馬もしなやかなストライドで走るので、直線の長いコースがベスト。皐月賞の中山コースはやや割引です。
タワーオブロンドン 2歳牡馬
父:Raven's Pass
母:スノーパイン(母父:Dalakhani)
厩舎:藤沢和雄(美浦)
生産:ダーレー・ジャパン・ファーム
主戦のルメール騎手は距離を意識したかのような乗り方で、中団のインでジッと脚を溜めます。直線に向いてダノンプレミアムの直後を取ると、そこから追い出されたもののジリジリとしか伸びずに3着。
ルメール騎手は強い1番人気に対して2着を拾うのではなく、真っ向勝負を挑みました。京王杯2歳Sのように重厚なキレ味を引き出すレースをしていれば(ステルヴィオのように乗れば)、2着はあったかもしれません。
コロコロとした馬体の重厚感からも現時点では1400mがベストで、将来的にはスプリントに寄ってくるのでしょう。この馬がマイルをこなすとしたら2歳早期でしょうから、朝日杯FSへの挑戦は納得です。
タワーオブロンドンについては血統や過去の走りついて詳しく解説しているので、よければそちらをご覧下さい。
今後に向けて
朝日杯も46.0 - 47.0の前傾ラップになっていたら、スプリント性能の高い馬にもチャンスは巡ってきたのでしょうが、今回はその流れにはなりませんでした。
3歳を迎えるとさらに距離適性はスプリントにシフトするはずで、NHKマイルCはまた距離の問題が出てきます。ただ、リエノテソーロのような1400mベストのタイプでも、NHKマイルCは好走できる舞台。人気を背負う馬だけに、今後の取捨選択が難しいですね。
こういうパワータイプ+しなやかさもあるスプリンターは近年にいなかった(シュウジがタイプとしては近い)ですから、香港スプリントをぶっこ抜けるような馬へ成長してくれることを願っています。
ライトオンキューとファストアプローチ
期待したライトオンキューは12着、ファストアプローチは6着という結果になりました。前者はスタートで出遅れて最後方からの競馬となり、あまりにもロスが大きくノーカウント。後者は好スタートから直線で見せ場を作ったものの、3着争いに入るのがやっとという競馬。
ライトオンキューはパドックでも素晴らしい馬体で、タワーオブロンドンとは趣の違う好マイラー。今走のペースでも3コーナーでかかっていたように、現時点では1F長いのかもしれません。これからグングンと成長するでしょうから、来年以降が楽しみですね。
ファストアプローチも走らせるとしなやかな馬で、藤沢和雄調教師が外回りの阪神マイルを使いたくのもわかります。前で競馬したのは、ダノンプレミアム「勝つ」ための乗り方としては最善策。この馬も母がサトノクラウンの全姉ですから、まだまだ強くなるでしょう。
まとめ
ダノンプレミアムの強さだけが際立った今年の朝日杯FS。もともとの競走能力が高いことは十分に示しましたから、この完成度の高さを3歳以降どこまで維持できるのかが今後の課題と言えます。
それよりも今は、中内田調教師の初GⅠ制覇を祝福しましょう!
以上、お読みいただきありがとうございました。