ダイワメジャー産駒のアドマイヤマーズは朝日杯FS(2018年)を好走できるのか?ーー展望

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12月16日(日)、2歳のマイル・チャンピオンを決める朝日杯FS(GⅠ・阪神芝1600m)には、「大器」と称される牝馬グランアレグリアが牡馬に混じって出走。

対する牡馬勢からはデビューから3連勝でデイリー杯2歳Sを制したアドマイヤマーズ、同じく3連勝で小倉2歳Sと京王杯2歳Sを制したファンタジストが出走し、グランアレグリアの前に立ちはだかります。

 

好配合のダイワメジャー産駒アドマイヤマーズ

6月の中京芝1600mの新馬戦を快勝したアドマイヤマーズは、その後の中京2歳S→デイリー杯2歳Sを連勝し、この世代の牡馬を引っ張る1頭となりました。

ダイワメジャー産駒らしく、スパっとキレる脚がないため、「スローペース+上り勝負」となった新馬戦とデイリー杯2歳Sは僅差の勝利。それに対して、前後半800mが47.2 - 47.5と平均ペースだった中京2歳Sは2着馬を0.5秒離す走りを見せており、上り勝負にならなければパフォーマンスがアップするタイプと言えるでしょう。

 

好配合のダイワメジャー産駒

2018年の12月12日(水)現在、JRAの芝GⅠを制したダイワメジャー産駒は以下の4頭。

カレンブラックヒル(母父Grindston)

コパノリチャード(母父トニービン)

メジャーエンブレム(母父オペラハウス)

レーヌミノル(母父タイキシャトル)

レーヌミノルを除く3頭はすべて母父が中距離(2000〜2400m)をGⅠを制した種牡馬が入ります。これは上りのかかるレースを得意とするダイワメジャー産駒にとって、母父から豊かなスタミナを取り込むことがゴールまでの粘りに繋がるからでしょう。

また、上記の4頭すべてにDrone、Caerleon、Red Godなどダイワメジャーの父父Haloと脈絡するしなやかなスピード血脈をもつのも大きな特徴です。この豊かなスピードこそが、ダイワメジャー産駒の「先行力」を引き出す源となっています。

 

アドマイヤマーズは好配合?

アドマイヤマーズは母父にMachiavellian直仔のマイラーMediceanが入るものの、母母父がジャパンカップを制した中距離馬のシングスピール。また、母ヴィアメディチがHalo4×4のクロスをもつため、上記の馬たちと似たような配合となっています。

アドマイヤマーズが脚さばきのキレイなフットワークで走るのは自身がHalo3×5・5のクロスをもつからです。そして、デイリー杯2歳Sの直線でメイショウブシンを抜かせなかったのはシングスピールのスタミナを振り絞ったからと言えます。

 

母ヴィアメディチは名繁殖牝馬

素晴らしいのはヴィアメディチが母系に入って良さが出るMachiavellianとシングスピールを通してHaloをクロスすることです。日本においても母父Machiavellianからはヴィルシーナ、ヴィブロス、シュヴァルグランの姉弟がGⅠを制していますし、母父シングスピールと言えばオークス馬のシンハライトが出ています。

Machiavellianの母Coup de Folieとシングスピールの母Glorius SongはHalo直仔の名繁殖牝馬。この2頭を通じてHaloをクロスするヴィアメディチも繁殖牝馬として大きな期待のかかる1頭です。サンデーサイレンスの血を引く種牡馬と好相性なので、今後も活躍馬を多く出すことは間違いありません。

 

アドマイヤマーズ 2歳牡馬

父:ダイワメジャー

母:ヴィアメディチ(母父Medicean)

厩舎:友道康夫(栗東)

生産:ノーザンファーム

騎手:M・デムーロ

ここまでの3連勝は「いかにもダイワメジャー産駒のらしい」もの。上りの速い勝負となった新馬戦とデイリー杯2歳Sは苦戦し、前後半イーブンペースの中京2歳Sを楽勝するのですから、アドマイヤマーズはメジャーエンブレムと似たタイプだとわかります。

 

メジャーエンブレムと似たタイプ

阪神JFとNHKマイルCを制したダイワメジャー牝駒のメジャーエンブレムは、上りの勝負となるとキレ負けする馬でした。敗れたアルテミスS(2着)と桜花賞(4着)は「前後半800mが後傾ラップ+上り3F34秒前半」となり、この馬に向かないレースだったと言えます。

メジャーエンブレムの敗戦

アルテミスS(GⅢ・東京芝1600m)

勝ちタイム:1分34秒1

前後半800m:47.3 - 46.8

レース上り3F:34.2

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桜花賞(GⅠ・阪神芝1600m)

勝ちタイム:1分33秒4

前後半800m:47.1 - 46.3

レース上り3F:34.3

前半800mの通過が47秒台だと後半にキレ負けしてしまうので、前半からどれだけしっかりとペースを上げていけるかがダイワメジャー産駒にとって大切なポイントです。

アドマイヤマーズが前後半49.5 - 45.9となったデイリー杯2歳Sを勝てたのは、レースのレベルが低かったことと少頭数だったことによるもの。上り3Fが「11.6 - 10.8 - 11.5」のレースではこの馬のパフォーマンスも低くなってしまいます。

メジャーエンブレムの制した阪神JFとNHKマイルCのように、前半800mが46秒台のペースにならないと、ダイワメジャーの長所を活かすレースはできないと考えてOKです。

 

血統

母ヴィアメディチの仔はJRAに出走した2頭(フレッチア、アドマイヤマーズ)が3勝以上を上げています。フレッチアの父はDansili、アドマイヤマーズの父はダイワメジャーと、種牡馬が替わっても好成績を上げていることから、ヴィアメディチは間違いなく好繁殖牝馬です。

先にも述べたように、ヴィアメディチは母系に入って良さの出るMachiavellianとシングスピールを引き、5代血統表のなかに名繁殖牝馬が詰め込まれた名血。自身も競走馬として高い能力を発揮し、その仔は高確率で競争能力を受け継ぎます。

アドマイヤマーズはダイワメジャー産駒としては柔らかなフットワークで走り、これはHaloのクロスと母系に引くしなやかな血が発現しているからでしょう。メジャーエンブレム級の好配合なので、GⅠ馬になれるだけの素材です。

 

朝日杯FSに向けて

まず、この馬のパフォーマンスを上げるためには、前半800mを46秒台で通過するペースにもち込めるかがカギとなります。上り3F勝負だった前走のデイリー杯2歳Sのようなペースは避けたいところです。

 

理想のラップは?

先週の阪神JF(阪神芝1600m)の勝ちタイムが1分34秒1なので、朝日杯はよほどのスローペースにならなければ1分33秒5〜34秒0がマークされると考えられます。アドマイヤマーズにとって理想のラップは以下の通りです。

前後半800mのラップ

46.5 - 47.0(1分33秒5)

少なくとも前半800mは46.5〜46.9で通過しないとこの馬のもち味をフルに発揮することができません。M・デムーロ騎手がしっかりとペースを引き上げられるのか……この点が不安ですね。

 

不安はM・デムーロ騎手のスタート

M・デムーロ騎手はスタートが不安定……。こればかりはスタートを切ってみないとわからないことなのですが、C・ルメール騎手などのリーディング上位騎手と比べて、出遅れのリスクは高いと考えておくのがベターです。

アドマイヤマーズは後ろからバキューンとしなやかにキレる馬ではなく、スタートで後手を踏むようだと苦しくなります。また、前半からペースを引き上げるためにも、前々のポジションを取らなければならず、スタートはしっかりと決めたいところですね。

 

ノーザンファーム生産馬はプラス

今年の秋のGⅠは短距離のスプリンターズSとダートのチャンピオンズCを除くと、すべてノーザンファーム生産馬が制しています。朝日杯FSもこの流れは続くでしょうから、アドマイヤマーズがノーザンファーム生産馬が生産馬というのは大きなプラスです。

 

まとめ

アドマイヤマーズとグランアレグリア、現時点でどちらの馬がより高い競争能力をもつのかは走ってみないとわかりません。ただ、2頭ともに「好配合」で素晴らしいフットワークをもつだけに、この対決は今から楽しみです。

アドマイヤマーズがダイワメジャーの血を振り絞って粘り込むのか、グランアレグリアがディープインパクトらしいしなやかなフットワークで差し切るのか……。

以上、お読みいただきありがとうございました。