1人気が好成績のセントウルS(2019年)は今年「こそ」高配当が出るのか?ーー阪神開幕週はインベタ馬場

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サマー・スプリントシリーズの最終戦、そして、GⅠスプリンターズSの前哨戦となるセントウルS(GⅢ・阪神芝1200m)は例年、ビッグアーサーやロードカナロア、ファインニードルなどのGⅠ勝ち馬が人気の中心となるレースです。

今年は春のスプリントGⅠ・高松宮記念(中京芝1200m)を制したミスターメロディが出走。昨年のファインニードルに続き、セントウルSを叩き台として、春秋スプリントGⅠの連覇なるのかに注目が集まります。

 

秋の阪神開幕週は「逃げ・先行+イン有利」

例年、秋の阪神開幕週の芝コースは時計が速く、「逃げ・先行+インコース」有利というのがここ数年のデフォルトです。セントウルSの過去の成績を見ても、前々からレースを進める馬が好走しているケースがままあり、差し・追い込み馬は苦しい展開を強いられています。以下は過去5年のセントウルSの成績をまとめたものです。

セントウルSの過去5年

2018年(重馬場)

勝ちタイム:1分8秒8(33.3 - 35.5)

1着:ファインニードル(6 - 6)

2着:ラブカンプー(1 - 1)

3着:グレイトチャーター(14 - 14)

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2017年

勝ちタイム:1分7秒5(33.8 - 33.7)

1着:ファインニードル(3 - 3)

2着:ラインミーティア(6 - 7)

3着:ダンスディレクター(9 - 9)

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2016年

勝ちタイム:1分7秒6(33.1 - 34.5)

1着:ビッグアーサー(1 - 1)

2着:ネロ(5 - 5)

3着:ラヴァーズポイント(3 - 3)

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2015年

勝ちタイム:1分7秒8(34.0 - 33.8)

1着:アクティブミノル(1 - 1)

2着:ウリウリ(13 - 11)

3着:バーバラ(4 - 5)

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2014年

勝ちタイム:1分7秒4(32.9 - 34.5)

1着:リトルゲルダ(6 - 4)

2着:ハクサンムーン(3 - 3)

3着:エピセアローム(8 - 8)

✳︎重馬場で行われた2018年を除くと、残りはすべて1分7秒台の決着

セントウルSの特徴は以下の3点にまとめられます。

 1分7秒台の決着がデフォルト

 逃げ・先行が有利

 前半3Fでレースの質が決まる

このレースは雨の影響がなければ、1分7秒台の決着となり、4コーナーで5番手以内(前々)のポジションでないと1着になることができません。

また、ビッグアーサーやハクサンムーンなどのピュア・スプリンターが好走するときは「前半3Fが33.5より速い+1秒以上の前傾ラップ」、ダンスディレクターやウリウリなどの1400ベストのスプリンターが好走するときは「前半3Fが33.5より遅い+後傾ラップ」となっていることがわかります。

前後半3Fのバランスによって、好走するタイプが異なるので、レースの展開を読むこともセントウルSを的中させるためのひとつの近道です。

 

雨の影響を受けると……

昨年の2018年のように、雨の影響を大きく受けた重馬場だと、「前後半3Fのラップバランスうんぬん」というのがあまり通用しません。そのため、セントウルS当日の天気には注意をしなければなりませんね。

現時点(2019年9月3日)では阪神競馬場のある宝塚市は日曜日に雨予報となっているため、パンパンの良馬場でレースが行われるのかは週末になってみないことには……。

雨の影響を受けるようだと、セントウルSは1分7秒台の勝ち時計にはならず、例年とは異なる質のレース(2018年と似た?)になりそうです。そのため、土曜日の天気と馬場コンディションについてはしっかりとチェックしておきましょう。

 

上位人気は4歳馬

今年のセントウルSで上位人気となるのは高松宮記念を制したミスターメロディなどの4歳馬です。想定される1〜3人気の馬は以下の通り。

タワーオブロンドン

ミスターメロディ

アンヴァル

上位人気の3頭が非ノーザンファーム生産馬というのは、「いかにもスプリント重賞!」と言えますね。タワーオブロンドンはここのところ好調なモハメド殿下のゴドルフィン。しかもC・ルメール騎手が乗るとあって、上位の人気は間違いのないところです。

ミスターメロディはスプリンターズSの展望記事にて詳しく解説したので、よければ以下をご覧下さい。

簡単に触れておくと、この馬はストレイトガールと同じく1400ベストのスプリンター。そのため、ウリウリやダンスディレクターの好走した年のように、後傾ラップがベターな馬です。ただ、今年の高松宮記念のように、好位インのポジションを取れるのは大きな強み。セントウルSの適性に合う馬だと言えます。

アンヴァルは昨秋のオパールS(OP・京都芝1200m)から充実期に入り、今年はOP・重賞レースで2着→4着→2着→3着と手堅く好走しています。セントウルSは今後を占う意味でも試金石の1戦。この馬がここでどのような走りを見せるのかに注目です。

 

今年のラップバランスは前傾と後傾のどちらか?

先に述べたように、セントウルSのレース特徴は大きく3つあります。そのなかで、どの馬が「逃げ・先行+インコース」に付けるのかは枠順確定によって、いくらか推測できます。

ところが、問題となるのはラップバランス。前半3Fのペースがどれくらいになるのかは、レースのスタートが切られてみないことにはわかりません。

それならば、前傾ラップに適する馬、後傾ラップに適する馬をそれぞれピックアップしてみましょう。

 

前傾ラップに向く馬は?

まずは前傾ラップに向く、ピュア・スプリンターをピックアップします。

アンヴァル

イベリス

ダイメイプリンセス

マテラスカイ

ラブカンプー

ペイシャフェリシタ

キングハート

(50音順)

前走で北九州記念を快勝したダイメイプリンセスは前傾ラップに強さを発揮する馬。マテラスカイはダートで活躍しているだけに、前傾ラップがずんどばなスプリンターです。

ロードカナロア牝駒のアンヴァルとイベリスは「1400mもこなせるけれど、ベストは1200m」のスプリンターだと思います。ロードカナロアを父にもつ牝馬の多くは短距離に適性をもつのが特徴です。上記の2頭はNorthern Dancer系のなかで最高のパワーを誇るVice Regentを母系に引き、これがピュア・スプリンターの源となっています。

キングハートとラブカンプーの兄妹はともに前傾ラップを好むピュアスプリンター。ペイシャフェリシタも前目からジリジリと粘り込むパワー・スプリンターとあって、前傾ラップはお手のモノです。

 

注目はマテラスカイ!

ピュア・スプリンターのなかで注目したいのは、これまでダートの短距離を主戦場としてきたマテラスカイ。ダートの短距離(1200〜1400ベストの)はゴールに向かって減速するラップになることがデフォルトですから、この馬も前傾ラップに高い適性をもっています。

父Speightstownは芝・ダートを問わず、コンスタントにOP級の馬を出す名種牡馬。スピード能力を産駒に手堅く伝え、速い時計の決着にも対応できます。マテラスカイは血統の字面だけを見れば芝もOKですし、新境地を切り拓けるのかに注目したい1頭。

今年のセントウルSはおそらくマテラスカイがハナを取る展開となり、雨の影響を受けない良馬場(✳︎)なら鞍上の武豊騎手もそれほどペースを落とさないでしょう。前半3Fが33.5よりも速く、ペースのバランスが前傾ラップとなれば、ピュア・スプリンターの活躍が見込めます。

✳︎雨の影響を受けると、騎手の心理的にペースを落とそうとすることも……

 

後傾ラップに向く馬は?

次は後傾ラップに向く馬について見ておきましょう。1400mベストのしなやかスプリンターは以下の通りです。

タワーオブロンドン

ファンタジスト

ミスターメロディ

1・2人気のタワーオブロンドンとミスターメロディは1400mベストのスプリンター。2頭ともに後傾ラップがベターのタイプだけに、もしゴリゴリの前傾ラップとなったときに不安が残ります。

 

ミスターメロディは後傾ラップがお好き?

ミスターメロディが高松宮記念でマークした前後半3Fのラップは33.7 - 33.6と0.1秒の後傾。このペースをインの4・5番手で楽々と流れに乗っていたのですから、レースが1.5秒以上の前傾ラップとなったときに対応できるのかは……まだわかりません。

 

タワーオブロンドンも後傾ラップがベター

タワーオブロンドンが好タイムで快勝した京王杯SCは、レースの前後半3Fラップが34.2 - 33.9の後傾。これを上り3F33.1の鋭さで差し切っているのですから、この馬も1400mベストのスプリンターと言えます。

前走のキーンランドC(GⅢ・札幌芝1200m)は自身の前後半3Fが34.4 - 34.9と前傾ラップ。ただ、時計のかかる馬場だったことと、このレースを制したダノンスマッシュが33.9 - 35.3の1秒以上の前傾ラップで走っていることを考えると、タワーオブロンドンをピュア・スプリンターと評するのはムリがあると言えるでしょう。

✳︎タワーオブロンドンはキーンランドCで58kgの斤量を背負っていたため、前半3Fのダッシュができなかったとの見方もありますが、そもそも出脚が速くないのはいつものことです

 

高配当の目があるとすれば……

セントウルSは上位人気の馬が強く、高配当を期待できないレースです。スプリンターズSを目指す有力馬がここで1・2人気に推されることが多いのも、大きな波乱の少ない要因となっています。

ただ、今年の1・2人気の馬はピュアなスプリンターではないだけに、マテラスカイが前後半3F「33.0 - 34.0(〜34.5)」と1.0秒以上の前傾ラップを作るのであれば、波乱の目も十分にありえるはずです。

 

まとめ

セントウルSは今年「も」堅くおさまるのか、それとも高配当が出るのか、また、スプリンターズSの前哨戦としても楽しみなレースと言えます。

以上、お読みいただきありがとうございました。