7月23日(日)、中京競馬場のメインレースはサマーマイルシリーズの開幕戦「GⅢ中京記念」が組まれています。中京競馬場のリニューアル・オープンにともない、'12年からはマイルのハンデ重賞として行われるようになった中京記念は、GⅠ級の馬たちが夏休みに入っていることあって毎年波乱の決着になることの多い1戦。
今年の出馬登録を見ると確たる中心馬が不在とあって、かなりの混戦模様となっています。今回の記事では、開幕4週目を迎える中京競馬場の馬場とGⅢ中京記念の展望をしていきます。
中京の芝は速い時計が出るものの……
夏の中京開催は7月22日(土)から4週目に入ります。今開催の中京芝は開幕週から時計が速く、先週の時点でも傷みの少ないコンディション。ただ、時計が速い→先行有利というわけではなく、外差しがバンバン決まるのも今開催の大きな特徴にひとつです。
勝ち数は少ないものの、いかにも軽い芝らしくディープインパクト産駒が好調で、パワーよりも瞬発力がやや優勢な馬場らしい結果になっています。
7月15日(土)福島・中京・函館の馬場(芝)コンディション考察 - ずんどば競馬
先週、7月15日(土)と16日(日)の馬場は?
7月15日(土)の芝のレースは500万下マカオJCT(芝1400m)が1分20秒5、メインレースの1600万下マレーシアC(芝2000m)が1分58秒3のレコードタイムが出るなど、前の週に続いて「高速」な馬場コンディション。
マレーシアCは前後半1000mが60.1 - 58.2とスローペースにもかかわらずレコードタイムでの決着になったように、かなり時計の速い馬場だったと言えます。レースラップは12.8 - 11.3 - 12.3 - 12.1 - 11.6 - 11.5 - 11.6 - 11.5 - 11.7 - 11.9と後半はすべて11秒台のラップですから、瞬発力とスピードを持続できる能力が問われる1戦となりました。
7月16日(日)は500万下タイランドC(芝1200m)が1分8秒9、メインレースの1000万下シンガポールTC賞(芝2000m)が1分59秒6、最終レースの1000万下フィリピンT(芝1200m)が1分8秒3と土曜日よりも少しだけ時計のかかるようになりました。
土日を通して先行馬もソコソコ粘れる馬場になり、日曜日のフィリピンTは外差しではなくインコースを通った馬たちが上位を独占したことから、少しずつイン有利に変化していることが見てとれます。
今年の中京記念は逃げ・先行馬が揃い……
今年の中京記念は出馬登録を見るかぎり逃げ・先行馬がズラリと揃った1戦になることが想定されます。「逃げないとダメ」なウインガニオンを筆頭に、できればハナに立ってレースのペースを握りたいダノンリバティ、スプリント戦の内容からこのメンバーであればハナを切ることもできるトウショウピスト、重賞レースで逃げて連対の経験があるサンライズメジャー、好位の位置からしぶとく脚を使うマイネルアウラートなど強力な先行タイプが揃い、まずスローペースは考えにくいメンバー構成です。
好時計が期待できるメンバー
今年の中京記念で1番人気に支持されそうなブラックムーンは前走のOP米子S(芝1600m)を1分31秒9のレコードタイムで勝ち上がったように、速い時計の決着もOKのタイプです。また、これだけズラリと先行勢が揃うと極端なスローペースは考えにくく、前半800mが46秒台になることもありえるため、全体のタイムも1分32秒台の決着になる可能性は十分にありえます。
イン差しも利く馬場に
先週は最後の直線でインコースを突いて伸びてくる馬がソコソコいたことから、中京記念でも外差し一辺倒ではなくイン差しの利く馬場になりそうです。また、7月15日(土)は逃げ馬は全滅する馬場でしたが、16日(日)は逃げ・先行馬が前々でしぶとく粘るシーンもあったことから、今週は「イン+先行有利」へシフトする可能性があることも頭の中には入れておきたいところです。
今年の中京記念でインを伸びてこれる馬は?
枠順によってインコースに入れるかどうかは変わるものの、現時点でイン差しができる馬をピックアップしておきます。
アスカビレン 5歳牝馬
父:ブラックタイド
母:スウェプトレジーナ(母父:スウェプトオーヴァーボード)
厩舎:中尾秀正(栗東)
前走のGⅠヴィクトリアマイルは13着と大敗したものの、勝ち馬とは0.8差ですからそれほど悲観する内容ではありません。
父ブラックタイド(中距離馬)×母父スウェプトオーヴァーボード(マイラー)ですから、本来は鋭く差すよりも「前でしぶとく粘り込む」のが身上のタイプです。母系はエンドスウィープ、Blushing Groomとしなやかな血も入っているため、本質的には直線の長いコースは向いています。
前々走のOP六甲S(阪神芝1600m)は道中インをぴったりと回り、直線を向いてすぐに追い出されると持ち前のしぶとさを発揮してゴール前で粘るペイシャフェリスを捕まえる競馬。馬群に揉まれてもOKなタイプなので、松山騎手がコースロスなくインを突ければ牡馬相手でもそう引けをとりません。
ケントオー 5歳牡馬
父:ダンスインザダーク
母:ポポチャン(母父:トウカイテイオー)
厩舎:西橋豊治(栗東)
昨年の中京記念の3着馬。ダンスインザダーク産駒ながらあきらかなマイラー体型の馬で、先行〜追い込みまで幅広い脚質が持ち味です。
馬群に揉まれてもOKですし、ハンデ重賞であれば好走できるだけの力はもっています。アスカビレンと同じように母系にBlushing Groomの血を引き、ストライドも伸びるタイプなので直線の長い中京はベストの舞台。
今回は逃げ・先行勢の直後のインが取れれば、馬群を縫って伸びてくるシーンも十分に描けます。グランシルクと同じ斤量となる56kgはやや見込まれた気もしますが、休み明けで仕上がっていれば……。
スーサンジョイ 5歳牡馬
父:エンパイアメーカー
母:グランジョイ(母父:ダンスインザダーク)
厩舎:岩本市三(栗東)
ダート短距離のバリバリのオープン馬が芝のマイル戦に出走します。祖母のレイナロバリーはエルフィンS3着、フィリーズレビュー5着と芝のマイルでもスピードを見せていた馬で、そこにダート馬としてはMr. Prospectorらしいしなやかさのあるエンパイアメーカーですから、決して芝がダメとは言えない配合です。3歳時には未勝利戦の阪神芝1600mで2着があることも後押しにはなりますね。
中京や東京などの直線の長いコースで良績があるように、ダート馬としてはしなやかなストライドで走るタイプ。最近は馬群に揉まれても競馬ができることから、和田騎手らしいイン差しが観れるかもしれません。
ただ、今ひとつスーサンジョイを強調しづらいのは時計の速い決着になった時にどれほど対応できるのかは未知数という点です。初の芝重賞で1分32秒台の決着になるようだと鋭さ負けの懸念もあるだけに……。とは言え、人気も薄いことから一か八かのイン差しができる立場にあるのはプラスです。
グァンチャーレ 5歳牡馬
父:スクリーンヒーロー
母:チュウオーサーヤ(母父:ディアブロ)
厩舎:北出成人(栗東)
脚の長い体型のマイラーで、父スクリーンヒーロー×母父ディアブロ(その父Devil's Bag)ですから、Haloクロス由来の素軽い脚さばきで器用に立ち回れるのが最大の長所です。
古馬になってからは馬群に揉まれても力を発揮できるようになっており、イン差しもOK。ブラックムーンがレコードで快勝した前走の米子S3着の内容から、時計勝負にも対応できるのは今の中京だと強気になれます。
Haloクロスらしいピッチ走法で走るので、本質的には中京の長い髪直線は合いませんが、前半のペースが緩んで上り4Fくらいの瞬発力勝負になればスルッと2、3着に潜り込むシーンも十分に描ける組み合わせです。斤量55kgも相手関係を考える有利で、古川吉騎手らしいイン差しができれば。
ブラックムーンは外差しなので……
M・デムーロ騎手が乗る人気のブラックムーンは前走の米子Sを大外一気で差し切っているため、今回も同じような競馬をするはずです。
中京の芝はバンバン外差しが決まるコンディションからイン有利へ変化している可能性があるため、ブラックムーンの取捨は土曜日の芝のレースを観てから慎重に考えたいところ。
人気馬が外差しですから、週中の展望としてはイン差しの馬をピックアップしておきます。
まとめ
現在の中京芝は高速馬場にもかかわらず外差しが決まるという不思議なコンディションになっています。レースの上りも速いため、瞬発力も問われるやや軽い馬場となっていることから、今年の中京記念はパワー・タイプの外差しよりもディープインパクト産駒的な軽さをもった馬にチャンスがありそうです。
今週の中京の芝コースがどのような状態になっているのかはまだわかりませんから、土曜日のレース結果はチェックしておく必要がありますね。
以上、お読みいただきありがとうございました。
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