ディープインパクト産駒は既にダービーを3勝、'16年は1〜3着を独占するなど東京芝2400mへの適性の高さを示しています。
'17年は皐月賞馬のアルアイン、青葉賞勝ち馬のアドミラブル、池江寿調教師がその素質に惚れ込むサトノアーサー、弥生賞を勝ったカデナの4頭がスタンバイ。上位の人気に支持される馬がズラリと揃い、今年もディープインパクト産駒が活躍するダービーになるのでしょうか?今回の記事ではこの4頭を解説し、ディープインパクト産駒が'17年のダービーを好走できるのかを考察します。
ディープインパクト産駒のダービー
'16年はディープインパクト産駒が1〜3着を独占。'12年のディープブリランテ、'13年のキズナと連覇を達成したように、瞬発力勝負になりやすい東京芝2400mはこの種牡馬にとってどんと来いの舞台です。
過去、馬券圏内に入線した馬はディープインパクト産駒としては馬格があり、ダービー出走時の最低体重はサトノラーゼンの454kg、最高はトーセンホマレボシの504kgとなっています。
'16年
1着 マカヒキ:502kg
2着 サトノダイヤモンド:500kg
3着 ディーマジェスティ:472kg
'15年
2着 サトノラーゼン:454kg
'13年
1着 キズナ:478kg
'12年
1着 ディープブリランテ:496kg
2着 トーセンホマレボシ:504kg
しなやかさを伝える種牡馬ディープインパクトは自身と同じように、馬格の小さな馬が多いのが特徴です。3歳春のダービーを勝つために必要な筋肉がしっかりとついているのかは、この馬体重が一つの目安になります。
また、馬券圏内に入線した馬は2000m前後が敵距離が多いのも特徴です。この中で、古馬になってクラシックディスタンスよりも長い距離で好成績を上げているのはサトノダイヤモンドとキズナくらいでしょうか。
今年のディープインパクト産駒の馬体重
今年のダービーに出走するディープインパクト産駒の馬体重をチェックしてみましょう(馬体重は前走時のもの)。
アルアイン:512kg
アドミラブル:510kg
カデナ:452kg
サトノアーサー:472kg
全て関西馬なので長距離輸送があるものの、アドミラブル以外は前走から十分に間隔をとっての出走となることからも大きな馬体減はないと考えられます。アドミラブルは500kgを越える雄大な馬体ですから、多少減ってもOK。
4頭のなかではカデナの馬体が気になります。当日、もし440kg台の出走になるようなら不安が先に立つ仕上がりに……。
ディープインパクト産駒4頭について
ここからはそれぞれ1頭ずつ取り上げて解説していきます。ダービーに向けてのポイントは大きく分けて3つ。
1. 走法(東京コースの適性)
2. 疲労度(ローテーション)
3. ダービーのペース
また、混戦と言われる今年のダービーは上記の3つだけではなく、枠順や馬場なども考慮に入れる必要があります。ただ、現時点ではチェックできないので除外に。
アルアイン
皐月賞は9人気の低評価を覆す走りで、クラシック1冠目を制覇。その皐月賞は4角手前で内のペルシアンナイトと外のファンディーナに挟まれて後退するシーンもありましたが、そこから盛り返して勝利を掴みました。当日の中山は超のつく高速馬場だったとしても、1:57.8のレースレコードで乗り切ったのはりっぱの一言です。
池江泰寿厩舎の'17年ダービー(東京優駿)ーー有力馬がスタンバイ - ずんどば競馬
走法
外回りコースの毎日杯(阪神芝1800m)をパワーのあるストライドで1着になったことから、直線の長い東京もOK。このパワーはダートスプリントGⅠ勝ち馬の母ドバイマジェスティから影響したものでしょう。母父Essence Of Dubaiはアメリカの大種牡馬Pulpit直仔で、パワー型ながらしなやかな馬を出すのも特徴です。高速馬場に対応できたのもPulpit←A.P.Indyのしなやかスピードが受け継がれているからだと言えます。
疲労度(ローテーション)
皐月賞→ダービーへ直行というローテーション。この間は自厩舎での調整。ダービー・トレーナーの池江寿調教師であれば厩舎仕上げでも……むしろ、不安な点は毎日杯→皐月賞と間隔が詰まったなかでの好走の疲労がどこまで取れているかでしょうか。
ペース
ストライド+しなやかな走りをする馬なので、平均ペースの流れがベストです。小回りの中山コースで好走したことからも器用さのあるタイプでもあり、ややスローはOK。ただ、急なギアチェンジが問われるような瞬発力勝負は不向きなので、スローだとしても先週のオークスのように4Fからの持続戦に持ち込みたいところです。
アドミラブル
青葉賞をレースレコードで制し、未勝利からの3連勝でダービーへ向かいます。母系は活躍馬が多数出るバレークイーン牝系。ディープ産駒としては馬格もあり、パワーを感じさせる重厚な馬体をしています。
M・デムーロ騎手が皐月賞2着のペルシアンナイトのダービーでの騎乗を保留したのは、この馬の存在があったからと言われているように、素質は一級品です。
音無厩舎はダービー('17年)3頭出しーーアドミラブルが中心? - ずんどば競馬
走法
近親のヴィクトリーなどに似ていて、パワーピッチで走る馬です。本質的には直線の長い東京よりは小回りの中山向きの捲りが武器で、前走の青葉賞も東京コースながらひと捲りの競馬で快勝しました。
ピッチ走法だからどうこうという不安を一掃する圧勝劇はいかにも格が違うという走り。ただ、ダービーの舞台がベストかと問われると「?」が付くので、素質でぶっこぬけるかが焦点になります。
疲労度(ローテーション)
未勝利から青葉賞まで月1走のペースを守ってローテーションが組まれました。こちらも青葉賞からは自厩舎での仕上げ。関西の名門・音無厩舎ですが、ダービーに向けて抜かりなしとは言えません。ここまでダービーでの好走がない厩舎だけに、そこは不安な点。
また、青葉賞→ダービーと2連続の長距離輸送がどうか……青葉賞の勝ち馬でダービーで好走しているのは関東馬が多いことからも、ローテーションとしてはマイナスです。
ペース
パワーパッチなので、スローでもOK。もっとも不得意な展開は平均ペースで流れて、直線での叩き合いになった時でしょうか。ストライドがそれほど伸びないので、しなやかに走る馬に伸び負けしてしまう可能性は十分にあります。
また、スタートが甘い馬なので、おそらく道中は中団より後方に位置することになりそうで、捲り気味に前へ取り付く時に先行勢にペースを上げられると苦しい場面も……先週のオークスのような4Fの上り勝負になるとアドマイヤミヤビと同じようなレースになってしまうこともあり得ます。
カデナ
京都2歳Sと弥生賞はスローペースをひと捲りで快勝。ディープインパクト産駒ながら、内回りや小回りで決め手を活かす競馬ができることから皐月賞でも3番人気に支持されましたが、9着と敗退。皐月賞当日の中山コースは高速馬場の影響もあって外差しが効かないコンディションでした。
ディープインパクト×フレンチデピュティは昨年のダービー馬マカヒキやジャパンカップ勝ち馬のショウナンパンドラなど、東京芝2400mと好相性の組み合わせです。持ち前の瞬発力が活きる流れになるのかも注目したい1頭。
走法
しなやかなストライドを伸ばして走る馬で、弥生賞では4角を回る時に外へ大きく膨れてしまったように、コーナーで器用に加速できるタイプではありません。
東京コースはストライドを伸ばせる絶好の舞台で、百日草特別でアドマイミヤビの2着に好走したほどは走れる馬。
ローテーション
弥生賞→皐月賞→ダービーの王道ローテを歩み、レースレコード決着の前走も9着と敗退したことからダメージを最小限に抑えられました。
前走マイナス8kgの馬体が再度の長距離輸送でどこまで戻っているのか、中竹厩舎がこの大一番、どんな仕上げで臨むのかにも注目です。
ペース
昨年のダービーのように、中弛みをしてからの瞬発力勝負が合っている馬です。平均よりも速く流れて、全体として締まったペースだとスタミナの面、そして脚を溜められるかどうかの面で不安があります。
スローでもOKですが、先週のオークスのように4Fからの持続戦に持ち込まれると差し切れない可能性も高まるので……。
サトノアーサー
池江寿調教師が「良馬場であれば、この世代NO.1」と発言しているように高い能力を認められている素質馬。毎日杯でダービーへの賞金を獲得した時点で、直行のローテーションが組まれたほどです。
父ディープインパクト×母父パワー系マイラーはアルアインやカデナと配合のアウトラインは同じ。胴の長い馬体を見ても2400mの距離に不安はなく、きさらぎ賞→毎日杯→ダービーという異例のローテーションで戴冠を目指します。
走法
阪神の馬場を上り32秒台で圧勝したシクラメン賞のレースぶりからも、パワーのあるストライド走法。アルアインよりも前脚が伸びる走りで、東京コースは適性としてはベストです。
筋骨量が豊富で、ディープインパクト産駒ながらひ弱いところはまったく感じさせない走法。もちろん、しなやかさも十分にあるので、長い直線でどれだけ弾ける脚が使えるのかは楽しみな1頭。
ローテーション
疲労という意味では、皐月賞をパスしてダービー直行というのは好感がもてます。こちらもアルアイン同様に自厩舎での仕上げで、池江寿厩舎ですから大きな問題はないはずです。
間隔が空いたことがプラスと出るかどうか、そして初の長距離輸送をこなせるかなど不安な点もありますが、そこはダービートレーナーの手腕に期待したいですね。
ペース
ストライド走法の中距離馬ですからペースは平均前後であれば問題なく、極端なスローにならなければOK。
この馬の場合はペースよりも位置取りがどうなるのかの方が問題で、きさらぎ賞や毎日杯などのレースぶりを再現するのであれば、どうしても展開に注文がついてしまいます。
昨年のサトノダイヤモンドのように、中団から強気に仕掛けることができれば……。中弛みからの瞬発力勝負だと勝ち切れるかどうかは不安です。
まとめ
今年のダービーは例年以上に枠順と馬場が大きな鍵を握る1戦になりそうです。この4頭のディープインパクト産駒の基本的な情報を押さえておけば、枠順発表後のアレコレの予想も立てやすくなるはず。
皐月賞と青葉賞がレースレコード決着ですから、どれほど疲労(ダメージ)が少なくダービートへ臨んでこれたのかも重要な要素になるでしょう。
東京優駿がどのような結末になるのか、今から週末が楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。
関連記事
'17年の東京優駿(ダービー)も皐月賞と同じ超高速馬場へ? - ずんどば競馬