また今年も競馬の祭典、ダービーがやって来ます。
ダービーが近づくと、胸が高鳴ってドキドキするというより、ぎゅっと心臓を掴まれたような、胸を締め付けられる感じがあって、それはきっと「また今年もダービー馬が1頭誕生する」ことへの妙な哀しさから生まれるのでしょう。
競馬関係者の誰もが目指す競馬の祭典だからこそ、その年に産まれた競走馬の頂点を決めるレースだからこそ、ダービーを戴冠することができなかった数多くの馬たちの姿が頭をよぎり、少しだけアンニュイな気分になってしまう……それが私にとっての「東京優駿」です。
ダービーの喧騒を前にして
Google検索で「ダービー」あるいは「東京優駿」と文字を入力すれば、数多くの情報が現れるこのダービーウィーク。競馬に関するさまざまなメディアが「これでもかっ!」と情報を垂れ流しにしていて、この喧騒もまた楽しみの一つだと言えます。
多くの予想サイトやブログでは過去のデータであったり、それに基づいた出走馬の検討がなされていて、これまでのGⅠよりも力が入っているように見えるのは、それだけダービーの商業的な価値が高いことの証明です。
ダービーを含めたクラシックは伝統のあるレースですから、過去のデータが他のGⅠに比べて有用性が高いのが特徴です。厩舎、生産者、ローテーションなどをしっかりと吟味し、ダービー出走馬のこれまでのレースを分析することで、その予想は「馬券」としての正解に近づくことができます。
ただ、オークスを予想する時にも書いたことなのですが、クラシック、とくに「東京優駿」は戴冠して欲しい馬に◎を付けたくなるのです。過去のデータからは好走の確率が低くなっていたとしても、たとえ馬券が外れたとしても、悔いが残らない◎を打ちたいのがダービー。
というわけで、今回の記事ではダービーの喧騒の前に好走できそうな馬をピックアップします。
混戦模様のダービー
今年のダービーは混戦模様と言われています。皐月賞では牝馬のファンディーナが1番人気に支持されたように、牡馬のレベルが疑問視された今年の3歳世代。皐月賞はレースレコード決着ながら9番人気のアルアインが勝利したように、レースのレベルがはっきりとしないまま終わりました。
ダービーに向かうローテーションは大きく分けて皐月賞組か別路線組かの2つ。前走皐月賞組が1〜3着に1頭も入っていないのは'04年のキングカメハメハの年まで遡らなければなりません(2着のハーツクライは皐月賞→京都新聞杯→ダービーのローテーション)。そのため、皐月賞組の取捨選択ができればダービーを当てるのにもっともな近道だと言えるのです。
皐月賞がレースレコード決着だった年は…
1分59秒台を切るレースレコードが記録されたのは、今年を含めて過去4回あります。
'02年:1分58秒5
1着:ノーリーズン(11人気)
2着:タイガーカフェ
3着:タニノギムレット
'13年:1分58秒0
1着:ロゴタイプ(1人気)
2着:エピファネイア
3着:コディーノ
'16年:1分57秒9
1着:ディーマジェスティ(8人気)
2着:マカヒキ
3着:サトノダイヤモンド
'17年:1分57秒8
1着:アルアイン(9人気)
2着:ペルシアンナイト
3着:ダンビュライト
注目は'02年から'13年までレコードが破られなかったのにも関わらず、ここ5年間の間に3度も皐月賞のレースレコードが塗り替えられているということです。
中山競馬場の芝コースは排水性の向上を目的として14年の夏から路盤の改修工事を行なっており、これにより15年からは芝コースの高速化が進んでいます。'16、'17年の2年連続のレースレコード決着は路盤の改修工事による影響が大きく現れてのもので、'14年以前とは傾向は別物と考える必要があります('15年はレコードにはならなかったもののドゥラメンテが1分58秒2の好タイムで勝利)。
'02年は3着タニノギムレットがダービー制覇、'13年は2着エピファネイアがダービーでも惜敗の2着。それに対して昨年は皐月賞の1〜3着がダービーでも上位を独占するなど、傾向が少し異なります。レースレコード決着になると、どうしてもレースの疲労度がクローズアップされますが、'15年からはそもそもが高速馬場だったことを考えると、それほど疲労を割り引かなくともOKと言えるでしょう。
別路線組が上位を独占した'04年は
それでは、別路線組が好走した年を見てみましょう。ダービーで前走・非皐月賞組が1〜3着を独占したのはキングカメハメハが勝った年まで遡ります。
今年との類似点
この年の皐月賞は1分58秒6の好タイムでダイワメジャーが勝利し、2着に道営のコスモバルク、3着にメイショウボーラーが入りました。ダイワメジャーはこの時は10番人気の低評価を覆す走りを見せ、1〜3着までが4角で5番手以内での決着。道営のコスモバルク(今年のファンディーナ)が1番人気に支持されたこと、先行+高速決着だったことが今年との類似点です。
'04年のダービー
'04年のダービーの1〜3着馬の前走成績は以下の通り。
1着:キングカメハメハ
前走:NHKマイルカップ1着
2着:ハーツクライ
前走:京都新聞杯1着
3着:ハイアーゲーム
前走:青葉賞1着
この年はダービーがレースレコードの2分23秒3。現在の東京競馬場は高速決着が続いているので、23秒台前半の時計が出てもおかしくない状況です。
上記の3頭はすべて重賞を1着で通過してダービーへ向かった馬。今年の中で該当するのはアドミラブルのみとなります。また、上位の2頭は現在種牡馬として大活躍を見せていることからも、もっているポテンシャルがこのレベルにないと別路線から勝ち切るのは難しいとも言えるでしょう。
予想
今年のような混戦は、出走馬それぞれがもっている能力やポテンシャルよりも、枠順や馬場、そして厩舎の仕上げやレースのペースによって大きく結果が変わるダービーとなりそうです。まずは、ペースを考えてみましょう。
ペース
内枠にダンビュライト、アメリカズカップ、マイスタイル、クリンチャーと揃い、これらがスタートで後手を踏まなければ、すんなりと隊列は決まりそうです。
逃げるのはダンビュライトかクリンチャー。アメリカズカップとダンビュライトは同厩舎ですから、この2頭はお互いにスムーズな競馬が出来るような先行態勢を取るはずで、クリンチャーがハナを主張しなければおそらく武豊騎手がハナへ。マイスタイルの横山典騎手の出方は怖いですが、押して押してハナを主張するのかは「?」が付きます。
皐月賞で武豊騎手はダンビュライトの最大の武器である持続的な脚を測れたはずですから、ペースメイクはこの馬が務める可能性が高く、クリンチャーを行かせたとしても番手か外3番手につけると想定します。
高速馬場ですからそれほどペースは緩まず、それに加えて武豊騎手のペースメイクだと、キタサンブラックが逃げ切ったジャパンカップのような4Fからの持続戦になる公算が大。
外枠からの差しは厳しく、内枠勢が有利な流れに。
好走する可能性の高い馬
武豊騎手のペースメイクだと、外枠の差し馬には厳しい展開になりそうです。好走する可能性の高い馬を枠順に沿って挙げるとーー
ダンビュライト
スワーヴリチャード
クリンチャー
サトノアーサー
アルアイン
ペルシアンナイト
アドミラブル
大外枠に入ってしまったアドミラブルは、先週のオークスと同じような馬場と展開になるならば勝ち切るのは厳しい……。また、デムーロ騎手から戸崎騎手へと乗り替わったペルシアンナイトは騎手の腕がどうこうではなく、3歳の頂点を決めるレースでのテン乗りが大きくマイナス。
後は厩舎で考えれば、ダービーを勝てるのはサトノアーサーとアルアインくらいなので、馬単であればこの2頭から(スワーヴリチャードの庄野厩舎とクリンチャーの宮本厩舎がダービーを勝てるのかはイマイチ不安なので)。馬連であればペルシアンナイトとアドミラブルを除いた5頭のボックスというのが的中しやすい馬券と言えそうです。
サトノアーサーの川田騎手は昨年のダービー馬マカヒキと同じように中団まで押し上げるレースをする気がしてなりません。騎手の連覇があるのかも注目ですね。
アルアインは先行勢を見る形で、直線は馬群の真ん中に出してくるでしょうから、勝ちきれるかどうかはそれだけのポテンシャルがあるかどうかにかかっていると言えそうです。
まとめ
ダービーの喧騒の前に、印の順位をつけない好走馬の予想をしました。これはあくまで、馬券になりそうな馬の予想であって、ダービーの本予想ではありません。
◎を打ちたい馬は……これから、ダービーを戴冠するのに相応しい馬をじっくりと決めます。
以上、お読みいただきありがとうました。
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