6月11日、東京競馬場ではGⅢエプソムカップ(芝1800m)が行われます。昨年はルージュバック、一昨年はエイシンヒカリが勝利し、秋のGⅠで活躍する馬の登竜門とも言われるエプソムカップ。今年はどの馬が主役に躍り出るのか、サマーシリーズや秋へ向けて注目の1戦です。
エプソムカップは4歳馬が好相性
過去10年で見ると、エプソムカップは4歳馬が好相性のレース。その成績は(7 - 5 - 2 - 20)と過去で7勝を挙げていることからも、今年もこの世代のチェックは欠かせません。
出走予定の4歳馬は4頭
今年出走予定の4歳馬は4頭。
アストラエンブレム:小島茂厩舎(美浦)
タイセイサミット:矢作厩舎(栗東)
デンコウアンジュ:荒川厩舎(栗東)
マイネルハニー:栗田厩舎(美浦)
関東馬と関西馬は2:2、牝馬はデンコウアンジュ1頭という内訳です。この中から好走する馬が現れるのでしょうか? 1頭ずつ解説していきます。
アストラエンブレム
父:ダイワメジャー
母:ブラックエンブレム(母父:ウォーエンブレム)
半兄のブラックエンブレム(父:ネオユニヴァース)と同じように、2歳から重賞戦線で好走し、クラシックへと期待された1頭。
2〜3歳春の重賞戦線では掲示板内には入るものの、本賞金を上積みできない消化不良のレースぶり。昨年の夏から条件戦を順調に勝ち上がり、今年の大阪城SでOP戦初勝利を飾りました。
マイルよりも1800mに向くタイプですから、エプソムカップの舞台はOK。秋の大きな舞台に向けてここは賞金を加算しておきたいところです。
血統
母ブラックエンブレムはデビューした4頭中3頭が勝ち上がり(3歳のオーロラエンブレムは未勝利で好走を続けています)、重賞勝ち馬のブライトエンブレムを出しているように名繁殖牝馬になりつつあります。
母系のしなやかさがこの馬にも伝わっていて、ダイワメジャー産駒としてはしなやかなストライドで走るタイプです。ただ、前走のメイSを観ても分かるように、上りの速い競馬になるのは不得手で、東京であればややスローくらいがベスト。
エプソムカップに向けて
1800m戦なので、距離はほぼベスト。スローからの上り3F勝負にならなければ、しなやかさのあるストライドからも東京の長い直線は適性としてOK。
長距離輸送のない関東馬、メイSから中3週のローテで小島茂之厩舎ですから、体調管理については問題ないでしょう。
不安点があるとすれば2つ。
1. 高速馬場で上りが速くなると
2. 中団よりも後方に控える競馬になると
東京競馬場は雨の影響がなければ、先週に続き高速馬場になるはずで、これ以上速い時計の勝負になると不安です。また、調教師のコメントからメイSの時よりも後方に控えるようだと、本質的に切れ味勝負に向かない馬ですから取りこぼすことも十分にあり得ます。
タイセイサミット
父:ダイワメジャー
母:ヴァインドレッサー(母父:エンドスウィープ)
3歳500万下寒竹賞を好内容で勝利し、弥生賞4着→毎日杯3着と一息足りずに春のクラシックは断念して休養に入りました。昨秋に復帰してから順調に条件戦を勝ち上がり、前走のメイSでOP戦初勝利を上げてエプソムカップへ参戦します。
1600〜2000mを中心としたローテーションが組まれているように、1800m前後に適性がある馬。先行して粘りこむ競馬が多いのは溜めてもそれほど切れる脚を使えないからです。マイル戦だと中団あたりに位置を取ることがあり、そこからも前半の入りはゆったりとしたペースが合います。
血統
タイセイサミットの走りはパワータイプに見えて、最後の直線でゴール前になると首を上手に使って少しだけストライドが伸びるのですが、これは母系のミスタープロスペクターの影響でしょう。
東京の1800mであれば前半はゆったりと入れるので、ダイワメジャー×エンドスウィープらしく前で受けて長い直線をしなやかに駆け抜けたいところでしょう。
エプソムカップに向けて
前走から中3週、2走続けての長距離輸送、斤量増と条件は厳しくなる今走。ただ、東京の1800mのコースは適性としてベストで、高速馬場もOK。フォームからも器用に立ち回るタイプではないので、スローで馬群が凝縮する形だと力が出せない恐れもあります。
もともの詰めの甘い馬なので、鞍上の戸崎騎手が強気に仕掛けていけるかもポイントです。
デンコウアンジュ
父:メイショウサムソン
母:デンコウラッキー(母父:マリエンバード)
2歳時には東京マイルのアルテミスSでメジャーエンブレムを豪快に差し切ったように、ペースが緩んで上り33秒台のレースになると力を発揮するマイラー。
クラシック戦線ではなかなか結果を出せませんでしたが、前走のGⅠヴィクトリアマイルでは久しぶりに好走を果たし、力のあるところを見せました。
前走に引き続き直線の長い東京コースでのレースとなり、牡馬相手の重賞でもてる力を発揮できるのかに注目です。
血統
父メイショウサムソン×母父マリエンバードですから、マイルよりも距離が延びてより良さが出るのかと思いきや、血統の字面以上にマイル適性の高い馬。
オペラハウス直仔のメイショウサムソンは産駒の東京マイル適性が高く、キレる脚を見せるのも特徴です。メイショウサムソンの母系に入るダンシングブレーヴの影響もあるのでしょう。
母デンコウラッキーもマリエンバード(カーリアン直仔)×サンデーサイレンスでしなやかさもあり、東京コースはベストと言えます。
エプソムカップに向けて
GⅠを2着に好走したことの疲労と3戦続けての長距離輸送が牝馬としては不安があります。
スローのキレ味勝負でないと持ち味を発揮できないため、牡馬相手の重賞でどれくらいのペースになるのかがポイント。
1600m→1800mの距離延長はそれほど気にならず、東京コースはしなやかにキレるこの馬にとってはベストで、問題はとにかくペースと言えます。
不安点は体調の維持ができているか、出走を予定しているマイネルの2頭がそれほど緩みのないペースで引っ張るのか……この2点です。
マイネルハニー
父:マツリダゴッホ
母:ブライアンハニー(母父:ナリタブライアン)
3歳時はスプリングS2着で賞金を加算し、ダービーまで駒を進めました。夏は休養にあて、アイルランドT2着→GⅢ福島記念4着→GⅢチャレンジC1着と古馬混合のオープン、重賞で連続好走を果たしました。
今年に入り、GⅢ京都金杯5着→GⅢ小倉大賞典16着といくらか精彩を欠く走り。ただ、京都金杯はインベタ馬場の外枠スタート、小倉大賞典はマルターズアポジーの作ったハイペースに巻き込まれての凡走と敗因ははっきりしていて、情状酌量の余地はあります。
血統
マツリダゴッホ×ナリタブライアンですから、素軽い先行力のある馬に出たのは納得です。
スプリングS2着の走りから母系のナリタブライアン(ブライアンズタイム直仔)のパワー捲りのタイプかと思いきや、阪神外回りのチャレンジCで重賞初制覇。これは母系のパワーで上りのかかる阪神の長い直線を乗り切ったという勝利でしょう。
エプソムカップに向けて
小倉大賞典で大敗した身体的・精神的なダメージが抜けているかは、ここで好走するために大切なポイントです。
先週同様の高速馬場はこの馬にはマイナス。中山と阪神の重賞で好走していて、上りのかかる競馬がベストです。
また、前走はマルターズアポジーのハイペース逃げに巻き込まれて大きく崩れてしまいましたが、本質的にはペースが流れて上り35秒台のレースが合うタイプで、同脚質のマイネルミラノとの折り合いが鍵を握ります。とは言え、さすがにここはこの2頭でスローのペースを作るとは思えませんが……ペースはキーポイントです。
まとめ
上記の4歳馬4頭はいずれも上位の人気に支持されることが予想されています。それぞれに魅力も不安も抱えていて、一筋縄では……。
この4頭は2〜3歳時に高いパフォーマンスを見せできた馬ばかりですから、昨年はハイレベルと言われたこの4歳世代が力を見せることができるのか?
注目の1戦に今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。