フローラS(2020年)は良血馬がズラリと揃った1戦にーースカイグルーヴとエレヴァテッツァを中心に解説!

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4月の東京競馬場の開幕週を飾るのはオークス・トライアルのフローラS(GⅡ・東京芝2000m)。フローラSは3歳牝馬にとってハードなコースで行われること、そして、オークス出走を賭けたフルゲートの争いとなることから、白熱したレースが期待できます。

今年の1人気は新馬戦を完勝し、続く京成杯(GⅢ・中山芝2000m)を牡馬相手の2着と好走したスカイグルーヴ。C・ルメール騎手が新馬戦から続けて手綱を取ることもあり、グリグリの人気になるでしょう。

スカイグルーヴの他には、前走のクイーンC(GⅢ・東京芝1600m)を6着と凡走したものの、新馬戦→百日草特別を連勝したホウオウピースフル、フラワーC(GⅢ・中山芝1800m)を2着と好走したレッドルレーヴなどの素質馬が出馬登録をしています。

オークス行きのチケットを手にするのはどの馬なのでしょうか? 

 

東京の芝はエアレーション作業を実施

JRAは1年間を通して芝を良好な状態に保てるようにさまざまな馬場の管理を行っています。そのなかで取り入れられているのが「柔らかい馬場を造る」ために行われるエアレーション作業です。

エアレーションは芝に穴を開けて路盤をほぐして柔らかくする作業を指します。路盤に空気を取り入れることで「通気性」と「排水性」が向上し、芝がより育ちやすく、また傷みにくくなるのが特徴です。

東京の芝コースは今開催の前にエアレーション作業が行われました(JRAのHPで発表)。これによって、芝は以下のような特徴が現れます。

エアレーション馬場の特徴

クッション性が高い

脚質の有利不利が少ない

内外の伸びがイーブン

クッション性が高まることで、開幕週であっても「外差しもOK」なのがエアレーションの大きな特徴です(✳︎)。

✳︎「逃げ・先行天国のインベタ馬場」ではなく、外からも差し届く馬場コンディション。つまり、外からの差しばかりが好走するわけではありません

エアレーションについては以下の記事に詳しく解説しているので、よければそちらをご覧下さい。

 

 

上位人気は良血馬ばかり

今年のフローラSで上位の人気を形成する3頭はいずれも良血馬。

スカイグルーヴ

レッドルレーヴ

ホウオウピースフル

それでは3頭の良血っぷりを1頭ずつ見てみましょう。

 

スカイグルーヴ 3歳牝馬

父:エピファネイア

母:アドマイヤセプター(母父キングカメハメハ)

厩舎:木村哲也(美浦)

生産:ノーザンファーム

母アドマイヤセプターは2冠馬ドゥラメンテの全妹。3代母エアグルーヴは言わずもがなの名牝名繁殖で、数多の活躍馬が出る日本屈指の名門牝系です。

父エピファネイアは現3歳世代が初年度産駒となります。すでにデアリングタクトが桜花賞を制し、種牡馬として上々のスタートを切りました。

「エピファネイア×キングカメハメハ」はデアリングタクトと同配合。スカイグルーヴはSadler's Wells≒Nureyevのニアリークロス4×5、サンデーサイレンス4×3とA級馬の出る配合となっています。

牝系の活力も十分ですし、脚と胴の長い体型はいかにもドゥラメンテやエアグルーヴの血を感じさせるもの。フットワークはこの牝系特有のパワフルなストライド。大物感たっぷりの1頭です。

 

レッドルレーヴ 3歳牝馬

父:キングカメハメハ

母:ラストグルーヴ(母父ディープインパクト)

厩舎:藤沢和雄(美浦)

生産:ノーザンファーム

祖母が名牝名繁殖のエアグルーヴなので、スカイグルーヴと同牝系。「キングカメハメハ×エアグルーヴ」は種牡馬ルーラーシップと同配合のニックス。

数字以上に重力感のある馬体とパワフルなフットワークはいかにも「Nureyevとトニービン」の「重厚なキレ」が表現されています。ルーラーシップと4分の3同血ですから、これからの成長力にも期待のもてる1頭です。

 

ホウオウピースフル 3歳牝馬

父:オルフェーヴル

母:ツルマルワンピース(母父キングカメハメハ)

厩舎:大竹正博(美浦)

生産:ノーザンファーム

半兄ブラストワンピースは有馬記念(GⅠ・中山芝2500m)の勝ち馬。母ツルマルワンピースはNorthern Dancer5・5×4のクロスをもつことから、ノーザンテースト4×3のオルフェーヴルを配するとややパワー過多のきらいが……。

ただ、オルフェーヴルは母系にMr. Prospectorを引く産駒が活躍しており、その点ではプラスの評価。父らしいピッチ走法をしており、直線の長いコースであればスローがベストのタイプでしょう。

 

良血馬たちの総評

上位人気3頭はいずれも良血馬。とくに、スカイグルーヴとレッドルレーヴは名門牝系の出身かつ大物感のあるフットワークをしており、いかにも「良血馬!」と太鼓判を押せる素質馬です。

ホウオウピースフルは配合とレースぶりは上の2頭に及ばないものの、デビューからの2連勝は並の馬にできる芸当ではありません。フローラSでどのような走りを見せるのかに注目しましょう。

 

上位人気以外の注目の良血馬

ここまでは上位人気の良血馬について簡単に解説してきました。でもちょっと待って下さい、今年のフローラルSには人気の薄そうな良血馬が出走登録をしています。

エレヴァテッツァ

フアナ

この2頭はともに近親に重賞馬が出ている良血馬。今回の記事ではより人気の薄いエレヴァテッツァの血統やこれまでのレースぶりを解説します。

 

エレヴァテッツァ 3歳牝馬

父:ディープインパクト

母:スキッフル(母父トニービン)

厩舎:松永幹夫(栗東)

生産:白老F

エレヴァテッツァは「松永幹夫厩舎のお家芸」とも言える血統。母スキッフルは中京記念を制したフラガラッハ(父デュランダル)をはじめ、エスティタート(父ドリームジャーニー)、フェルメッツァ(父ディープインパクト)、イリュミナンス(父マンハッタンカフェ)と異なる種牡馬を配しても、ほぼOP級の活躍馬を出す名繁殖牝馬。

スキッフルの仔は母から「トニービン×Nureyev」のパワーを受け継ぐため、フラガラッハのように直線の長いコースで重厚なストライドを爆発させるか、エスティタートやフェルメッツァのようにパワーで内回り・小回りを捲るかの2パターンに分けられます。

 

配合

エレヴァテッツァは母スキッフル+父母ウインドインハーヘアがHyperionとFair Trialを基調とした欧州血統で、父父サンデーサイレンスだけが米血統という配合。

これまでに活躍した兄姉たちからも、5代血統表のなかに4分の1だけ米血統のサンデーサイレンスを取り込むのがスキッフルの配合のキモと言えるのでしょう。

全体としてHyperionの血が多いため、古馬になってからグングンと成長するタイプ。まだ緩さの残る馬体はこれからの大きな伸びしろを感じさせます。

 

フローラSに向けて

エレヴァテッツァは全兄のフェルメッツァよりもストライドの伸びるタイプに出ました。阪神芝1800m外回りコースの未勝利戦をパワフルなストライドで勝ち上がったことからも、将来的にフラガラッハのようなタイプに完成するのでしょう。

スキッフルの仔は時計のかかる重馬場を得意としていることから、クッションの効いたエアレーション馬場は大歓迎。その反面、高速馬場になるとキレ負けする恐れがあるため、馬場状態には注意を払いたいところです。もちろん、雨が降ったら迷わず◎にします。

半兄のフラガラッハは気性的に燃えやすかったので、後方からズドーンと差す競馬をしていましたが、エレヴァテッツァは新馬と未勝利の2戦を観るかぎり、かかる素振りもないので前々からスタミナとパワーを振り絞るレースもできそうです。

レースの想定が津村騎手になっており、内枠を引いてスタートを決められたら、前々からの競馬を試してみるのも良さそうですね。

 

まとめ

エレヴァテッツァは上位人気の馬に負けず劣らずの良血馬だけに、どのようなレースを見せるのかが今から楽しみな1頭です。もし、雨が降って時計がかかるようなら……1発も十分にあり得ます。

フローラSはオークスを占う大切な1戦。今年はどの馬がニューヒロインとなるのでしょうか?