フラワーCのスタートが切られ、武豊騎手のドロウアカードが1コーナーに入るあたりで先手を取り切り、そのすぐ外のポジションにしなやかかつ力強く走るファンディーナが取りついた時に勝負はほぼ決まりました。
いくらか気負ったファンディーナの道中の走りを見ながら、「3歳時にこんなにすっと好位がとれるディープインパクト産の牝馬はヴィルシーナ以来じゃないかなぁ」とぼんやりと考えていると、1000m通過が61秒というアナウンサーの声が耳に入り、「これは武豊の巧みなペースだな」と思っていたら、その通りに3〜4角にかけてドロウアカードとファンディーナの差が少し開いたのですが、そこからは1頭の名牝による独壇場。
4角で岩田騎手に促された(手綱を緩めた)ファンディーナはすっとペースを上げて逃げるドロウアカードを交わすと、直線でみるみる後続との差を広げ、ほぼ追われることもなく1着でゴールしました。
武豊騎手が後続に脚を使わせようと残り800mから巧みにペースアップしたにも関わらず、涼しい顔でドロウアカードを捲りきった4角のファンディーナの美しい走りがフラワーCのハイライトシーン。他馬と明らかに次元の違うスピードと力強さがどこから来るのか…ディープインパクト産駒の牝馬にしては恵まれた体躯はどこに由来しているのか、そんなことを考えさせられるレースになりました。
ファンディーナ
フラワーCの予想でもファンディーナの血統について少し触れたのですが、もう一度書き直します。また、今後の展望についても簡単に解説。
血統
父:ディープインパクト
母:ドリームオブジェニー(母父Pivotal)
ファンディーナは母ドリームオブジェニーの2番目の仔で、半兄のナムラシングン(父ヴィクトワールピサ)は昨年の皐月賞7着などオープン級の活躍を見せた現役馬。
ドリームオブジェニー
ドリームオブジェニーは父Pivotal(Polar Falcon←Nureyev)×母Gila(父A.P. Indy)という血統で現役時代は未出走。
Pivotalは母父CozzeneにNureyev直仔のPolar Falconがかけられ、競走馬として英GⅠナンソープS(5F)を制覇し、種牡馬としては1年目からGⅠ馬を輩出するなどの活躍を見せています。Pivotalの母父に入るCozzeneはCaro直仔で、この柔らかさを伝える血が日本の競馬にマッチします。
ドリームオブジェニーの祖母にあたるCoup De Genieは名種牡馬Machiavellianの全妹という良血。そこにしなやかなストライドを伝えるA.P. Indy→スプリンターのPivotalとかけられたドリームオブジェニーは、強いクロスも持たないけれど、良質の血が代々重ねられています。
ドリームオブジェニー | 競走馬データ - netkeiba.com
ファンディーナに伝わったもの
ファンディーナは母系からPivotal、A.P. Indy、Machiavellian=Coup de Genieの良いところを詰め合わせ、さらに父ディープインパクトのしなやかさが加わって、高い競走能力を持ち合わせることになりました。(ディープインパクト×Machiavellianと言えば、ヴィルシーナ、ヴィブロスの全姉妹がパッと思いつきます)
なかなか思い通りにいかないのが配合とは言え、スピード、パワー、しなやかさ、柔らかさ、馬格(良質な筋肉)など、父と母の良いところをすべて受け継いでいるのを見ると、すごいな…と溜息しか出ませんね。
桜花賞に向けて
フラワーCの内容から、ソウルスターリング、アドマイヤミヤビとの対決が楽しみになったファンディーナ。
桜花賞は中2週と間隔が詰まるので、馬の状態を見ながら出走の可否が決められるとは思うのですが、もし出走となれば、マイルの速い流れを今までのように余裕たっぷりに追走できるかが鍵になりそうです。
新馬戦、つばき賞のスローに比べればフラワーカップはペースが流れたものの、それでも後傾ラップだったことは確かで、マイルの速い流れを追走して脚が溜まらずに直線で今までほど弾けないというシーンも…(う〜ん、あまり思い浮かびませんが)
それよりも、フラワーC史上NO.1のタイムをマークした後の疲れが心配で、強く追わずの楽勝だったとは言え関東への長距離輸送もありましたから、桜花賞に体調面がしっかり整っての出走になるかが問題と言えそうですね。
その他の馬について
2、3着に入選した馬と人気の一角だったディーパワンサ、デアレガーロ、ハナレイムーンについて解説します。
シーズララバイ(2着)
武豊騎手の巧みなペースとファンディーナの捲りで、先行馬には厳しい流れになったフラワーC。道中は後方に待機したシーズララバイはファンディーナの動きに合わせるように柴田善騎手がマイルドに捲り、ドロウアカードをゴール前で差して2着に上がりました。
スプリングSを勝ったウインブライトと若竹賞で0.4秒差ともともと能力は見せていましたし、ピッチ走法ですから中山のこの舞台は適性としては合っていました。
中山>東京という馬で、直線の長いコースであればスローが希望なタイプ。
ドロウアカード(3着)
ダイワメジャー産駒らしい先行力としぶとい粘りを見せて3着に入線しました。
ファンディーナに交わされてもばったりと止まることなく、実直に伸び続けるところがこの馬の長所です。何と言っても好走の要因は武豊騎手の巧みなペース・メイキング。前半1000mが「12.6 - 11.9 - 12.0 - 12.3 - 12.3」という芸術的なペースを作ってから、後半は持続戦に持ち込みましたから、先行勢には苦しい流れになりました。
イヤ、本当に武豊騎手の逃げは恐ろしい…
1800mもこなせましたし、上りのかかる競馬では今後もしぶといところを見せてくれそうです、
ディーパワンサ(6着)
パドックの様子では胴が少し伸びて1800mでも走れそうな体つきになっていました。長距離輸送がありながらも+8kgの体重も好印象。
最内枠に入ったこともあり、内田騎手がスタートから少し出して好位3番手のインのポジションを確保します。今までよりもワンポジション前で競馬ができたのはプラスで、スムーズな追走から4角手前から追い出して伸びずバテずの内容。休み明けとしては決して悪いないようではありませんでしたが、今回の結果を受けて桜花賞で差しに転じるようだと厳しい戦いになるかもしれません…もともと直線の長い桜花賞よりは小回りのフラワーCの方がチャンスがあった馬ですが…
外回りの桜花賞であれば、スローが希望です。
デアレガーロ(11着)
1コーナーを回るところからかかってしまい、向正面に入ってルメール騎手がなだめて中団を追走。ペースが上がったところでもスムーズに走れていましたが、かかった分もあったのか4角で手応えがなくなる感じで後退しました。
このペースで折り合いの上手なルメール騎手がかかってしまうということはそれだけエンジンがあるという証拠で、このレースはノーカウントでOK。新馬から3戦目のレースでテンションも高かったのかもしれません。今回初めてスロー以外のレースを経験した事になるので、次につながれば…
ハナレイムーン(5着)
シュタルケ騎手+堀調教師のコンビで、今開催はこの組み合わせを多く見ますね。
ハナレイムーンは馬体重が420kgそこそこの馬で、ルメール騎手のような折り合いに繊細な乗り方が合うと思います。シュタルケ騎手は当たりが強く、繊細さと言うよりも力強さが持ち味ですから、4番手を追走して伸びずバテずの結果になったのは順当かな、というところ。
この馬は中山だと4角で少し遅れてしまうので、東京でストライド勝負の方が向いていますね。
予想
◎ファンディーナ→▲シーズララバイ→△ドロウアカードの3連単が的中しました。
予想ではサクレエクスプレスを3着候補に入れていたのですが、パドックでエバープリンセスがよく見えたので、そちらを買い足し。まさかの4着で直線は熱くなりました。
まとめ
すべてにおいてハイレベルな牝馬ファンディーナが堂々とクラシックへ名乗りを挙げました。
とにかく今年の3歳牝馬クラシック路線は、同世代に産まれてしまったことが「惜しまれる」ほどのハイレベルな決戦になりそうです。
これほどの牝馬が集うのですから、桜花賞、オークス、秋華賞の勝ち馬がそれぞれ異なる結末も十分に考えられます。
この世代で牝馬3冠を達成したら、それこそ化け物です。
まずは第1冠の桜花賞が素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。